DXの推進でビジネスはどう変わる?DXを進めないとどうなる?

DXの推進により、新しい商品やビジネスモデルの導入がもたらされ、自社のビジネスが大きく変わっていくことが期待されます。しかし実際にどのような変化が起こるのかがわからないため、DXの推進に前向きになれなかったり、不安に感じたりする人もいるかもしれません。 すでにDXを実現している企業ではどのような変化が起こっているのか、DXを推進して新しい価値を創出している企業の事例などを紹介します。DXへの疑問や不安を払しょくし、DXを実現するための足がかりとしてご活用ください。

DXの実現でビジネスは大きく変化する

DXとは、単独の業務だけでなく、企業の業務プロセス全体をデジタル化して変革し、顧客に新しい価値を提供して企業の競争力優位を確立することです。DXの実現により、次のようにビジネスは変化します。

なお、DX自体についての詳細は、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

DXによるビジネスの変化

DXを推進していく過程で、次のような変化が起こります。

  • 新しい価値の提供
    現在のビジネス環境や技術に合わない古いシステム(レガシーシステム)の刷新が行われ、業務システムは総合的に再構築されます。
    それによって、新しいビジネス環境や技術に対応し、新しい価値を生み出すことが可能です。
  • 業務効率化
    IT化が進むことで、業務効率化が実現し、生産性が上がります。
    同時に業務の自動化が進み、人的ミスの削減と品質向上が実現可能です。
    その結果、企業の利益と顧客満足度を同時に向上させることも見込めます。
  • ワークフローや組織の改変
    新しいシステムを導入するときには、これまでの業務やワークフローの見直しが行われます。業務やワークフローをより効率的に再編することで、組織の改変にまでおよぶこともあります。
  • 事業ドメインの拡大
    新しいIT技術がビジネスに導入されることで、業界への新規参入者が増加します。例えば化学薬品メーカーが化粧品業界に参入するような動きです。
    それによって技術革新が起こり、業界の活性化にもつながります。
  • 新しいビジネスモデルの導入
    新しい技術の導入により、新しいビジネスモデルの採用が実現可能になります。例えば、サブスクリプション、プラットフォームビジネス、パーソナライゼーションによるレコメンドなどです。

DXによる業界ごとの変化

DXにより、業界に大きな変化が起こることもあります。業界に影響を与えた変化の事例を紹介します。

  • タクシー事業
    日本交通株式会社では、タクシー配車アプリ「JapanTaxi」を配布しています。
    アプリを起動して「今すぐ呼ぶ」をタップすると、周辺にいる配車可能なタクシーを呼ぶことができます。注文前に料金相場の確認も可能です。
    また、日本交通のタクシーだけではなく、ネットワークに加盟しているすべてのタクシー会社の車の検索が可能です。顧客に新しい利便性をもたらし、タクシーの稼働率を向上させています。
  • 製造業
    ダイキン工業株式会社では、自社の経験を生かした「工場IoTプラットフォーム」を確立しています。
    最初に大阪に設立した新工場(デジタル・ファクトリー)でプラットフォームを整備しました。工場のすべての設備をネットワークでつなぎ、IoTによる製造現場のデータの収集・統合・見える化を可能にしています。データを分析することで、従来人の目では見えなかった改善点を迅速に把握できるようになり、より高い価値の製品をスピーディーに提供することが可能です。現在、このプラットフォームは海外拠点も含めて、グローバルに展開しています。
    製造業のDXについては「製造業におけるDXの必要性―求められるアクションと推進事例を紹介」もご参照ください。
  • 物流業
    佐川急便を中心としたSGホールディングス株式会社では、グループ共通のプラットフォームを設置しています。AIによる手書き文字の読み取り、伝票情報や再配達情報などのデジタル化による配送ルートの最適化など、業務の大部分をデジタル化しました。さらにTMS(輸配送管理システム)を強化して、配車や積載率をより効率化することに成功しています。これらをプラットフォーム化して、本社だけでなくグループ全体で利用し、より大きな業務効率化を実現しており、サービス品質や顧客の利便性向上につなげています。物流のDXについては、「物流におけるDXー業界の課題と推進のポイント、取り組み事例などを紹介!」もご参照ください。

DXは新しい価値を創出する

DXを推進することで、新しい価値が創出されます。具体的には、顧客に新しいサービスが提供されたり、新しいビジネスが生まれたりするのです。事例を紹介します。

NSSの顔認証カメラシリーズ

株式会社NSSのAI搭載カメラは、人やものを個別に判断して検索できます。これによって、入退室管理や顧客管理、迷子検索、指名手配犯の検知などが可能です。

具体的には、ホテルや店舗などでリピーター顧客の再来を早い段階で察知し、より質の高いサービスを提供できるようになります。また、オフィスや機密情報があるエリアなどへの本人のなりすましや代理チェックイン・アウトの防止も可能です。このように、入退室管理の精度を高めて大幅なセキュリティ向上に寄与するうえ、非接触による管理が可能なことから、感染症対策を講じながら事業継続ができる環境づくりにも役立ちます。

ブラザー工業のプリンターIoTプロジェクト

ブラザー工業株式会社では、出荷前のプリンターをテストしたデータを集め、販売後の紙づまりや印字不良などの不具合発生の可能性を事前に検知・解消するシステムを実現しました。これを開発中のプリンターの試作機に応用し、データ分析をした結果、設計段階で改善を行って、設計プロセスでの手戻りや製品化後の不具合発生を減少させることに成功しています。

この事例はまだ進行中ですが、実用化されると、顧客は従来の製品に比べて極めて高品質な製品を、安価で購入できるようになります。

ZOZOのMSP

ファッション通販ZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOでは、「試着できない」という通販の大きな弱点をデジタル技術で補っています。

細かいところまでサイズを計測できる「ZOZOSUIT」で収集されたビッグデータを生かし、MSP(マルチサイズプラットフォーム)を展開しました。すべてのアイテムではありませんが、1アイテムにつき多くのサイズを展開し、身長や体重などのデータを入力することで体型に合ったサイズをレコメンドしてくれます。画面上で複数の商品を組み合わせてコーディネートし、同時に購入することも可能です。

サイズ違いによる返品・交換の手間をなくし、顧客の利便性を向上させました。同時に、自社の販売機会の損失を抑えることにもつながっています。

トライアルのスマートショッピングカート

全国で展開するスーパーマーケット、トライアルを運営する株式会社トライアルカンパニーでは、スマートショッピングカートと呼ばれるセルフレジ機能付きのカートを導入しています。専用のタブレットにプリペイトカードを登録することで、商品をカートに入れるたびに、現在の購入品目と合計料金が表示されるというものです。プリペイドカードで支払いも素早く完了します。買い忘れや買いすぎの防止にもつながります。

さらに店内のAIカメラにより、手元のタブレットに「おすすめ商品」を表示することもできます。

DXに取り組まないとビジネスはどうなる?

もし今DXに取り組まなければ、企業はどうなってしまうのでしょうか? 経済産業省の「DXレポート」を参考に、DXを実現できた場合とできなかった場合のビジネスについて考えます。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

DXを実現できた場合

DXを推進することで、次のふたつを実現できます。

  • 新たなビジネスやビジネスモデルの構築
  • 顧客への新しい価値の提供

これらの実現は、企業の競争力優位を確立します。それによって自社の利益や成長につながるだけでなく、ステークホルダーや顧客にも利益がもたらされます。

DXを実現できなかった場合

他社がDXを進めているなかで、自社だけがDXを推進できなければどうなるでしょうか?

市場における競争力が低下し、淘汰される運命が待っています。IT化やDXへの取り組みを進めた競合他社のビジネスのスピードや、顧客への新しいサービス・価値提供を横目に、いくつものビジネスチャンスを逃すことになるでしょう。

企業の競争力を維持し生き残るためにはDX推進が必要

DXを推進すると、企業の業務プロセス全体に大きな変化が起こります。そのため、多かれ少なかれ抵抗を感じる従業員がいるでしょう。あるいは「IT化で十分、DXまでは必要ない」という声もあるかもしれません。

業務プロセスの一部や単独の業務をIT化することで、ある程度、業務効率化や人材不足解消などの課題解決につながることは期待できます。しかしそれだけでは、激しく変化するグローバル市場において十分な競争力を発揮できるとはいえません。DX推進によって新しいビジネスモデルを形成し、顧客に新たな価値を提供していくことで、厳しい市場で打ち勝っていく力をつけることが可能となるのです。

すでに、それぞれの企業で、DX推進によりどのような価値を市場にもたらすことができるのかを考えるときがきています。今回紹介したさまざまな事例を参考に、DXへの取り組みについて、検討してはいかがでしょうか?