SoEとは?SoRやSoIとの関係と、なぜDXに必要なのかを解説

SoEとは?SoRやSoIとの関係と、なぜDXに必要なのか

昨今、IT分野では「SoE」「SoR」「SoI」の3つがよく話題にのぼります。DXに関連する社内会議で耳にした、DXについてインターネットで調べているときにたまたま目にした、という人もいるかもしれません。

SoE、SoR、SoIはITシステムの分類で、いずれもDXに必要なシステム設計の概念です。なかでもSoEは、DX推進に重要なものとして注目されています。

本記事では、SoEの概要や、SoR、SoIとの関係性、SoEがDXに必要な理由などを紹介します。

DX推進に関しては、以下のダウンロード資料もご参考ください。DX推進までのステップや事例を分かりやすくまとめています。
DX推進!どこから手を付ければよいのか?e-bookダウンロード

SoE、SoR、SoIとは

SoEとは

SoEとは“System of Engagement”の略称で、「エンゲージメントのためのシステム」という意味です。企業と顧客とのつながりである「エンゲージメント」を重視し、顧客視点で最適化するように設計されたシステムがSoEに分類されます。

細部まで顧客の視点を意識して設計されており、顧客とのやりとりで活用することで価値を発揮します。SoEを活用して顧客との関係を構築し、企業の競争力を上げて利益の維持・拡大を目指します。例えば、CRM(顧客管理システム)やグループウェア、電子メール、SNSなどがSoEに該当します。

SoEで集めたデータは、環境の変化に合わせて構造的に変化します。これはユーザーとの関係が常に変化するため、動的に対応する必要があるからです。継続性よりも、市場の変化や顧客との関係性の変化に素早く対応することが重要になってきます。

SoRとは

SoRとは“System of Record”の略称で、日本語では「記録のためのシステム」ともいわれます。データを正確に記録することと、信頼性、安定性、継続性が重視されるシステムです。

例えば、業務システム、基幹システムのような、以前から存在するシステムなどがSoRに該当します。基本的には、設計段階からデータ構造が大きく変化することは少ない、いわば静的なシステムです。SoEが登場するまでは、業務システムのほとんどがSoR型のシステムだったと言われています。

SoIとは

SoI とは“System of Insight”の略称で、日本語では「インサイトのためのシステム」ともいわれます。データ分析から得られた顧客の隠れたニーズや深層心理、つまり顧客インサイトを理解・実現するためのシステムです。一般的にSoIは、SoEやSoRと組み合わせて利用されます。

例えば、SoRで蓄積した顧客に関するデータをSoIで分析し、顧客インサイトを把握します。分析結果をもとに、今後の経営戦略の方向性を決定し、競争力強化や利益の維持・拡大を目指します。

BI(ビジネス・インテリジェンス)ツール、レコメンドシステム、ERP(統合基幹業務システム)などがSoIに該当します。

SoEとSoR、SoIとの関係

説明したように、SoE、SoR、SoI は、それぞれ異なる性質のシステムを指しますが、実は互いに深くかかわりあっています。どのような関係にあるのかを順に見ていきましょう。

SoEとSoRは相互補完的な関係

SoEは顧客との「つながり」を構築・強化するシステムで、企業と顧客が双方向のコミュニケーションを図り、エンゲージメント率を高めるためのツールです。顧客の視点に立って構築された、比較的新しいタイプのシステムともいえます。

一方SoRは、以前からある構造的なデータベースで、顧客視点のシステムを実現するためのベースにもなります。

SoEとSoRは次のように、相互補完的な関係といえます。

  1. 顧客のニーズを正確に把握するためには、さまざまなデータが必要です。SoEで集めたデータをSoRが構造化して、蓄積します。
  2. SoEのデータをSoRが構造化した結果は、再度SoEに取り入れられ、もう一度顧客のエンゲージメントを高めるために活用されます。

このサイクルを繰り返すことによって、蓄積されたデータから分析を行うことで顧客とのつながりを深めることが可能になります。

以上のように、SoEとSoRの双方向のデータ活用が、顧客視点のシステムを実現するためには欠かせません。

SoEとSoRを組み合わせ、応用したものがSoI

SoEで集めたデータをSoRに蓄積し、SoIで分析することで、顧客インサイトを正しく理解することができます。

つまり、SoIはSoEとSoRを組み合わせ、応用して新しい価値を付加したものといえます。例えばレコメンドシステムでは、これまでの購買履歴というSoEデータをSoRで蓄積します。そして、SoIがSoRに蓄積されたデータを分析し、顧客ごとにおすすめの商品を提案するのです。

SoEとSoRを組み合わせて活用し、顧客視点の新しいビジネス、新しい価値の提供を実現するためには、SoIも欠かせません。

SoEとDX

SoEは、あらゆる企業に推進が必要とされている「DX」に必要なシステム設計の概念です。それは、SoEが顧客の視点に立って構築されているからといえるでしょう。

SoEは先に説明したように、顧客とのつながりを重視し、顧客にとって使いやすいシステムに最適化することで、競争力強化をもたらします。顧客との関係をベースに構造が変化することで、顧客ニーズの変化・多様化にうまく対応ができるからです。

ユーザー体験をダイナミックに変化させるSoEの例として、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)があります。CRMは、日々顧客に関するあらゆるデータが入力され、データが蓄積されていきます。この部分において、CRMはSoRの働きを内包していると言えるでしょう。CRMは入力されたデータをもとに、それぞれの顧客に必要なアプローチを提案します。

CRMによって提案されるアプローチは、顧客の育成段階に合わせたものです。さらに、データが入力されたり、時間が経過したり、顧客からのアクションがあったりすると、それにしたがって提案されるアプローチが異なっていきます。それによって、より効果的な営業活動が可能となります。

DXは顧客視点で新しい価値を提供することを主眼とするため、DXの実現にはSoEが不可欠です。しかし、SoEがその機能を発揮するためには、相互補完的関係にあるSoRの力が必要です。DX レポートにも、以下のような記述があります。

「DXを推進するためにはSoR、SoE両方のバランスをとることが求められ、そのためのITエンジニアのスキルシフトが必要とされる」

引用元:DXレポート(概要)|経済産業省

DXでは、新たな価値を顧客に提供することが求められるため、SoRやSoEと組み合わせて顧客インサイトに迫ることのできるSoIの存在も忘れてはいけないでしょう。SoEだけでなくSoR、SoIもDX推進には必要です。

DXについて詳しくは、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

また、スキルシフトを実現するためのリスキリングについては、「リスキリングとは?DX推進のための人材確保に不可欠な戦略 」をご覧ください。

SoE、SoR、SoIいずれの概念もDX推進には重要

現在は、CRMやERP、SNSなど、SoEに分類されるシステムが多く導入されるようになってきました。もちろん、以前からの業務システム・基幹システムであるSoRも、広く使われています。デジタイゼーションの段階では、これらのシステムをそれぞれ単独で使っていることが多いかもしれません。

DX推進のデジタイゼーションの段階では、両方のシステムを組み合わせて使用することも多くなります。しかし、顧客視点で新しい価値を提供するには、SoEやSoRだけでなく、それらと組み合わせて活用するSoIも重要になります。SoE、SoR、SoIの3つはいずれもDXに必要なシステム設計の概念です。

3つのシステムの分類について理解し、DX推進へ取り組んでいきましょう。