データガバナンスとは?取り組むべき理由や注意点も解説

世界に後れを取っていると言われた日本においても、DX推進への積極的な取り組みが見られるようになりました。DXを成功させるためには企業が持つデータを適切に運用していかなくてはいけません。そこで必要になるのが、適切なデータガバナンスです。

本記事では、データガバナンスとはどういったことか、データガバナンスに取り組むべき理由や取り組む際に押さえておきたい注意点などを紹介します。

DXについての詳細は、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

データガバナンスとは

データガバナンスとは企業が扱うデータを、最も効果的にかつ安全に活用するための取り組み全般を指します。

経済産業省・総務省では有識者によるガイドブック「DX 時代における 企業のプライバシーガバナンスガイドブック ver1.2」を公表し、金融庁では「2021事務年度 金融行政方針」や「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」などで、データ活用の在り方について、触れています。

国においても、DXとデータガバナンスは肝要であるとしています。

なお、データガバナンスと似た言葉に、データマネジメントがあります。データマネジメントとは文字どおり、データの蓄積、更新、保管など、実際にデータを管理することを意味します。一方データガバナンスはデータの安全性・信頼性を担保したうえで最も効果的に運用するためのルールです。

データマネジメントの最適化のためのルールが、データガバナンスと言うこともできます。

DX推進に適切なデータ活用が必要とされる理由は、DXを推進するうえでなぜデータ活用が重要?その関係と効果とは」をご覧ください。

データガバナンスに取り組むべき理由・メリット

DX推進が積極的に進められる中、データの取り扱いは企業にとって重要な課題です。データの価値を最大化し、セキュリティリスクを最小化するためにはデータガバナンスが必要となります。

適切なデータガバナンスにより享受できるメリットをいくつか見てきましょう。

データに対する社内共通認識が確立できる

企業ではIT、営業、経理などさまざまな業務・部署があります。業務・部署が複数存在すると、それぞれ異なる認識でデータが扱われ、うまく連携できず、データ活用ができていないケースがみられます。認識の行き違いから業務・部署間でのデータの取り間違いが起こるリスクも否定できません。

データガバナンスによってデータの扱いに関する共通認識を確立することで、業務・部署間での連携がうまくいくようになります。データの効果的な活用につなげることができるでしょう。

データ所在が見える化される

企業で扱うデータは膨大で、日々増え続けています。その結果、データが多くなりすぎて十分な管理ができず、データの保存場所やデータ間の関係などが不明確となることがあります。そのような状態では、必要なタイミング、必要なところでデータの効果的な活用はできません。

データガバナンスを機能させることで、データがどこにあるか、各データがどのように関連しているかなどが見える化され、把握が容易になります。

また、不適切なデータ管理ではデータの調査や確認作業、ミスによる後戻りなどさまざまな無駄作業が発生しがちです。見える化されることで、そのような無駄作業は排除され、業務の効率化が実現します

コンプライアンス強化につながる

企業が扱うデータには顧客に関するものもあり、適切な管理を欠かすことはできません。しかし、セキュリティに関するルールが明確になっておらず、社内で統制されていなければ、不正利用や情報漏えいなどのセキュリティリスクが高くなります。

データガバナンスに基づくことで、データを扱う際のセキュリティポリシーや監視ルールを明確にすることができます。その結果、コンプライアンスを強化し、このようなリスクを軽減することができるのです。

一方でどれだけコンプライアンスを強化し、リスクを軽減しても、トラブルを完全になくすことは困難です。万一トラブルが発生した場合でも、データガバナンスに基づけば迅速な対応が可能となります。

データガバナンスに取り組む際の注意点

最後にデータガバナンスに取り組む際の注意点について紹介します。

所有するデータの整理

本格的にデータガバナンスに取り組む前に、まずは事前準備が必要です。社内で所有するデータが点在し、整理されていなければ整理することから始めましょう。また、紙媒体でしか保管されていない場合、効率的なデータの運用が難しいため、デジタル化を進めることも重要です。

紙での業務に関してデジタル化することは、データガバナンスに取り組む準備となるだけでなく、さまざまなリスクを回避するためにも重要です。具体的なリスクについて詳しくは、「アナログのリスクとは?デジタル化(デジタイゼーション)を進めるためのポイント」をご覧ください。

スモールスタートから

これまでなかったところにデータガバナンスを導入すると、現場には大小さまざまな変化が生じます。そのため、最初から企業全体への本格運用を始めてしまうと、社員が対応しきれず混乱を招く可能性があります。まずは試験的に部署ごと・各部門のキーパーソンごとなど、導入範囲を限定し運用を始めるのが理想的です。

実際に導入して、はじめて見えてくる問題もあります。その都度フィードバックして、改善しながら段階的に導入範囲を全社へと広げていけば、社員の混乱を最小限に抑えつつ、効率的な運用が可能になります。

取り組みの目的を見失わない

データガバナンスへの取り組みの目的は企業が所有するデータを適切に活用・運用し、自社の利益につなげることです。目的を見失い、データガバナンスの取り組みそのものやルール作りを実現することに満足し、それで終わらせてしまっては何も生み出しません。

そこからデータを自社内の業務効率化や新しい製品・サービスの創出など、DX推進につなげていくことこそが重要です。

データガバナンスは今後の企業存続・成長に不可欠

DXが推進される世の中において、企業は膨大かつ重要なデータを扱う必要が出てきました。データをどのように運用していくかは、今後の企業の業績に大きく影響してきます。適切に管理し、最大限の活用効果を生むことで、企業が大きく成長する可能性もありますし、万一データの不正利用や情報漏えいなどがあった場合には、企業の存続に関わってきます。 データガバナンスへの取り組みは、企業にとってそれほど重要なものです。まだ十分に対応できていない場合は、その重要性を理解して、すぐにでも取り組む必要があります。