IoTを活用して新しい事業を開始したり、業務効率化に生かしたりしている企業が増えてきました。「2025年の崖」を克服するため、企業にはDX推進も求められています。デジタル化とIoT機器の導入によってDXに取り組んだ、と考えている企業もあるようですが、IoTとDXは同義ではありません。IoTは、DXを実現するための手段のひとつです。
ここでは、IoTとDXの違い、IoTを導入・活用することのメリットや注意点、IoT化によってDXを推進している事例などを解説します。また、DXやIoTと一緒に語られることの多いICTやAIなどについてもあわせて紹介します。
2025年の崖については、「2025年の崖とは?意味と企業への影響、克服するためにすべきことを紹介」をご覧ください。
IoTとDX
IoT(Internet of Things)とは、あらゆるモノをインターネットに接続し、情報を送受信する技術のことです。日本語では「モノのインターネット」と訳されます。
IoTには次のような機能があり、DX化の手段のひとつとしてよく使われています。
IoTの機能
IoTには、次のような機能があります。
- モノの状態を把握する
- センサーで動きや状態の変化を検知して、現状を把握する
- 遠隔地にあるモノを操作する
- センサーで検知した変化と連携して、モノを自動的に操作する
- 遠隔地のモノ同士で通信を行い、そのデータにもとづいて自動的に操作する
IoTの機能や効果については、「IoTとは?仕組みと効果・課題、導入事例などを紹介」もご参照ください。
DXとIoTの違い
DX(Digital Transformation)とは、データやデジタル技術を活用して、業務プロセスだけでなく事業や組織など企業全体を変革し、顧客に新しい価値を提供することです。その結果、企業全体が質的に変化し、競争的優位を確立できます。DXの推進は、これから企業が生き残っていくためには欠かせない取り組みといわれています。
DXについて詳しくは「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。
IoTは、DXを実現するために重要な技術のひとつといえます。そのため、DX関連の言葉としてよく耳にすることがあるのではないでしょうか。
ほかにも、DXに関連する言葉としてICT、AI、RPAなどがあります。それぞれの違いを紹介します。
ICT
ICT(Information and Communication Technology)は「情報通信技術」ともいい、ITに通信(コミュニケーション)を加えたものです。
SNSやチャット、メールなど、コミュニケーションが主体となっている技術がICTです。ビジネスだけでなく、教育や高齢者の見守りなどにも用いられています。
ICTもIoTと同じように、DXを実現するための重要な技術のひとつといえます。
AI
AI(Artificial Intelligence)は「人工知能」ともいい、人間の判断なしに自動的に判断できるシステムのことです。さまざまなレベルのAIがあり、なかには機械学習のように、多くのデータをもとに自分で学習してレベルを上げていくものもあります。
AIもDXを実現するための技術のひとつで、IoTと組み合わせて、IoTで取得したデータの処理、分析、解析などによく使われています。
AIについて詳しくは、「AIとIoTを組み合わせると何ができる?活用方法とその注意点」をご覧ください。
RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、ソフトウェアロボットを導入して業務を自動化し、効率化するための技術です。ルーチンワークや単純作業に向いており、それらの作業を自動化して業務を効率化します。AIとは違い、学習してレベルを上げることはありません。
RPAは、DXの3段階のひとつであるデジタライゼーションを実現するための技術のひとつです。
RPAについて詳しくは、「DX推進に大きく貢献するRPA―導入メリットや注意点・事例まで」をご覧ください。また、RPAを活用し、全社的に大幅な業務改善効果を得られた事例をまとめた資料は以下よりダウンロードいただけます。
【RPA導入事例】昭和電機株式会社がRPAで自動化した40業務とは
IoT導入のメリットと注意点
IoTの導入には、次のようなメリットがあります。
IoT導入のメリット
- 操作・作業の自動化
IoTデバイスで取得できる「モノの状態の変化」と連携して、ほかのデバイスを自動的に操作することができます。作業を自動化することで、業務効率化や生産性向上、ミスの削減などが可能です。
また、自動化によって人間の作業を減らせるため、働き方改革の推進や人手不足問題の解決につながります。 - DX実現に寄与する
IoTデバイスは自動的にデータを収集し、サーバーに送信します。そのデータをAIやBI(Business Intelligence)を利用して分析することで、これまでになかったような商品やサービスの開発、すなわち新しい価値創造につなげることが可能です。
IoT導入における注意点
- セキュリティへの注意
IoTデバイスは、常にインターネットにつながっています。セキュリティが甘ければ情報漏えいやそれをもとにしたサイバー攻撃のリスクが高まることを理解し、対策を講じておかなければなりません。 - プライバシーの保護
IoTデバイスでは、多くのデータを収集できます。これらのデータは利用する側にとってはビッグデータの一部ですが、データを収集される側にとっては個人的な情報です。住所、氏名、画像などのデータが含まれることもあるので、取り扱いには厳重に注意する必要があります。
IoTを活用したDXの事例
IoTを利用・活用したDXでは、次のような事例があります。
株式会社クボタ
株式会社クボタでは、GPSを搭載したトラクタ・田植機・コンバインとIoTの組み合わせで、農機の自動運転・無人化を実現し、「スマート農業」を推進しています。
人が一度農機に乗り込み操作したら、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)と組み合わせてマップが作成されます。このマップにより無駄なスペースをつくらず、かつ植えた作物を踏まないように作業を進めることが可能になります。
あとは自動運転農機のスタート・ストップを操作するだけです。ほかの作業はすべて自動で行われます。GPSと組み合わせることで、マップとの誤差は数センチメートル以内と非常に精密な制御が可能です。
自動化はトラクタ、田植機、コンバインなど何種類もの農機で実現しています。自動運転の農機と人間が操作する農機を組み合わせることで、より多彩な作業も可能です。
これを利用することで、より安全で効率的な農業が実現できます。
三菱電機メカトロニクスエンジニアリング株式会社
同社では、顧客の工場管理を行う数値制御装置リモートサービス「iQ Care Remote4U」を提供しています。
これにはふたつの大きな機能があります。
- リモート診断機能
顧客の工場でトラブルが発生した場合でも、サービスセンターの端末から遠隔診断が可能です。加工条件の最適化も可能で、ダウンタイムの削減や保全性の向上に貢献します。 - ダッシュボード機能
工場や現場から離れた場所でも、現地の情報をリアルタイムに確認できます。IoTプラットフォームでさまざまなデータを収集・蓄積し一元管理することで、業務効率化も可能です。
IoTはDXを実現するために欠かせない技術のひとつ
IoTは、ビッグデータの収集や遠隔地からの操作、データを利用した自動操作などを行うことができる、DX化に欠かせない技術のひとつです。AIと組み合わせて収集したデータを分析し、さまざまなかたちで活用できます。
しかし、単純にIoTやAIを導入するだけでDXが実現できるわけではありません。それらの技術を活用して企業全体を変革し、顧客に新しい価値を提供することがDXの本来の目的です。DXを実現することにより、現代の変化の厳しい市場において企業の優位性を確立し、この先も生き残っていくことが可能となるのです。
IoTを活用してDXを進めるためには、IoTをはじめとするDXに必要な技術について、正確に理解する必要があります。