生産性向上とは?その重要性や向上のポイントなどを解説

生産性向上とは?その重要性や向上のポイントなどを解説

生産性向上を目標に掲げている企業は少なくないでしょう。しかし、何をどう向上させるのか明確な指示がなく、従業員が具体的な行動に移せない状況もあるかもしれません。生産性とはどのような意味なのかを正確に把握していなければ、生産性向上に向けて具体的な対策を立てることは困難です。

ここでは、生産性の意味、主な種類と計算方法、生産性向上のためのポイントや手法などを紹介します。

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生産性とは?なぜ重要か

「生産性が重要」なのはだれもが納得できることでしょう。しかし、「なぜ重要なのか」といった理由を正確に理解していない人は多いかもしれません。

まずは、生産性の定義から見てみましょう。

生産性とは

生産性の定義としてよく知られているのは、ヨーロッパ生産性本部による「生産諸要素の有効利用の度合い」です。

生産諸要素とは、生産拠点や生産設備、エネルギー、労働者、原材料、資材など、生産に必要な要素のすべてを指します。これらの生産要素を投入してどれくらいのモノを生み出したかを示す割合が、生産性です。

平たくいうと、できるだけ少ない量の生産要素で可能な限り多くの産出物を得ることができた状態が、「生産性が高い」状態ということになります。

なお、生産性向上とよく似た言葉に、業務効率化や業務改善などがありますが、これらは生産性向上とは少し意味が異なります。

業務効率化や業務改善は、ムダを取り除くといった意味合いが強く、投入する生産要素を減らすことを意味します。 一方で、生産性向上は生産要素の有効利用の度合いを表すため、投入する生産要素が増えたとしても、それ以上の比率で産出物が増えれば「生産性は向上した」ことになります。

業務改善については「業務改善とは?進め方や効果、向いている業務・部門まで幅広く紹介」もご覧ください。

生産性向上が重要な理由とは

では、なぜ生産性が重要とされるのでしょうか?

第一の理由は、企業の経営活動の主な目的である「利益確保の最大化」につながるからですが、ほかにも次のような理由があります。

  • 日本全体の生産性の低下

公益財団法人日本生産性本部が調査した労働生産性の国際比較では、世界における日本の労働生産性の現状が報告されています。同調査によると、主要先進7ヵ国の国民1人あたりのGDPは米国65,143ドル、ドイツ56,305ドル、カナダ51,342ドル、フランス49,145ドル、英国48,745ドル、イタリア44,218ドル、そして日本は43,279ドル。日本の国民1人あたりのGDPは主要先進7ヵ国のなかで最下位となっており、危機感を抱かずにはいられない状況が浮きぼりとなっているのです。このまま企業の生産性が上がらなければ、日本が世界のビジネスで遅れをとってしまいます。生産性を向上させて、このような状況から脱却しなければいけません。

  • 労働力不足の対応策として

慢性的な労働力不足の対応策としても、生産性向上が必要です。少子高齢化を起因とする労働力不足は簡単には解決できません。労働力を増やすことが難しいならば、少ない労働力でいかに多くを生み出すかといった視点が必要です。つまり、限りあるリソースのなかでいかに生産性を向上させるかが重要になるのです。

生産性向上のためまずは生産性の種類と計算式を知ろう

生産性とひと言でいっても、内包される要素の違いによっていくつかの種類に分けられます。

生産性の種類

生産性は、生産要素に対しての生産量という広い意味で定義されています。生産によって生み出される産出物と、生産要素の種類別に見ていくと、生産性は細分化できます。

まずは、産出物に着目しましょう。産出物には、物理的な製品と付加価値の2種類があります。

物理的な製品とは、大きさや数などの単位によって数えることのできるものです。一方、付加価値とは、新しく生み出される金額ベースの価値を指します。売上高から経費を除いた金額で、原材料に手を加えることで付加された価値を指します。物理的な製品に対する生産性を「物的生産性」、付加価値に対する生産性を「付加価値生産性」といいます。

また、生産要素も細分化できます。労働者数、労働時間、資本ストック量、すべての生産要素を合計した全要素といった4種類に分けられます。 このように、生産性の主な種類には、2種類の産出物と4種類の生産要素を用いる合計8種類があります。

生産性の計算式

各生産性の計算方法は次のとおりです。

  • 物的な労働生産性(1人あたり)=生産量÷労働者数
  • 物的な労働生産性(1時間あたり)=生産量÷(労働者数×労働時間)
  • 物的な資本生産性=生産量÷資本ストック量
  • 物的な全要素生産性=生産量÷(労働、資本、原材料などの全生産要素投入量)
  • 付加価値についての労働生産性(1人あたり)=付加価値額÷労働者数
  • 付加価値についての労働生産性(1時間あたり)=付加価値額÷(労働者数×労働時間)
  • 付加価値についての資本生産性=付加価値額÷資本ストック量
  • 付加価値についての全要素生産性=付加価値額÷(労働、資本、原材料などの全生産要素投入量)

生産性向上に取り組むメリットとは?

生産性向上を目標に掲げていても、それによって実際にどのようなメリットがあるのかを理解していなければ、取り組み方がわからず、取り組みへのモチベーションも維持しにくいでしょう。 生産性を向上させることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

コスト削減と人材の有効活用

生産性が向上すれば、これまでより少ない人数で業務遂行が可能となります。そのため、人件費や光熱費などさまざまなコストの削減が実現します。

また、生産性向上により余裕が出た人員を、よりクリエイティブな業務や、利益に結びつく業務などに有効活用することも可能です。生産性を向上させることによって、新たなビジネスの展開や、経営戦略の強化などを図ることもできます。

人手不足への対策

前述のとおり、慢性的な労働力不足が続く日本では、新たな人材の増員は簡単にはできません。生産性向上によって1人あたりの産出量が増えれば、人材を増やさずに必要な生産性を確保することができます。

ワークライフバランスの実現

生産性が向上すれば長時間労働の改善が可能になり、ワークライフバランスの実現につながります。また、ワークライフバランスが実現すると、従業員の仕事へのモチベーションや集中力が向上し、さらなる生産性の向上につながるといった、良い循環が見込めます。

生産性を向上させるには?

では、生産性を向上させるにはどのようにすればいいのでしょうか? 次のような取り組みを進めていくと効果的です。

生産性を下げている原因の把握

生産性向上に向けた取り組みの第一歩として、自社の現状の生産性を把握し、課題を洗い出します。

例えば、長時間労働やマルチタスクが常態化している部署や担当業務がないかを確認します。そのような労働環境では、従業員の集中力やモチベーションが低下し、結果的に生産性が低下するおそれがあるため、現状を把握する必要があります。

業務の平準化と標準化

特定の従業員に負担が偏らないよう、業務の平準化に着手します。どのような業務をどのくらいの量抱えているのか、一人ひとり確認していきます。

各従業員の業務量を把握できたら、業務の平準化を試みます。不要な業務はないか、進め方に問題はないか、比較的余裕のある従業員に業務を分担させられるかなど、負担が大きい従業員の業務を減らす方法を考えます。

また、業務が属人化してほかの従業員に任せることができないことが、負担の偏りにつながっているケースもあります。これを解消するため、業務フローを統一してマニュアルを作成し、業務を標準化することも効果的です。

情報の共有

情報が社内で共有されていないと、情報を探す時間がかかる、作業の分担が難しい、他部署との連携がスムーズにいかないなどの問題が生じ、生産性の低下を招くおそれがあります。生産性向上のためには、情報を共有できる体制づくりも大切です。

だれが、今どのような作業をしているのか、進捗状況はどうなのかといった情報も共有できるようにすると、業務負担の偏りの防止策にもなります。

ITツールやロボットの活用

生産性向上には、ITツールの活用も有効です。

例えば、前述の情報の共有が容易になります。社内ネットワークだけでなく、クラウドで管理するアプリケーションの利用により、どこにいてもリアルタイムで効率的な情報の共有が可能です。

また、製造業や物流業などでは、産業用ロボットを活用した省人化も有効です。省人化によって投入する人員を削減できるため、生産性向上への最短ルートのひとつとなります。

また、バックオフィスであれば、RPAを導入して自動化を進め、人員や時間を削減して生産性を向上させることが可能です。

RPAについて詳しくは「RPAとは?必要性や効果を徹底解説」もご覧ください。

生産性の意味を理解して具体的なプロセスを

生産性を向上させることは、企業にとって重要な目的である利益確保に直結し、日本が世界に対し競争力を維持することにもつながります。

まずは、自社の生産性の現状と、生産性を阻害している原因を把握することからはじめましょう。業務の標準化とシステム化、自動化などは、生産性を向上させる手法として非常に有効です。

生産性の意味を理解して現状を把握し、具体的なプロセスによって生産性向上を図りましょう。

生産性向上と働き方改革の関係性や、生産性向上にまつわる事例については以下もご参照ください。
働き方改革推進で直面する「生産性向上」―事例を交えて紹介!