- 生成AIは、業務効率化ツールにとどまらず、DXの進め方にも影響を与え始めている
- これまで多くの企業では、DXに向けたデータ化・可視化・自動化の取り組みが中心だった
- これからは、蓄積したデータや情報を活かし、意思決定や業務変革につなげるDXが重要になる
こんにちは、DXGO編集長の大崎です。
今回から新しいシリーズとして、
「生成AI時代のDX 次の一手」というテーマでお話ししていきます。
ここ1〜2年で、生成AIという言葉を聞かない日はなくなりました。
ChatGPTをはじめとする生成AIの登場によって、企業における仕事の進め方は大きく変わり始めています。
一方で、実際の企業現場では、
- とりあえず使ってみた
- 一部の社員だけが使っている
- 便利だとは思うが、業務に組み込めていない
という状況も多く見られます。
生成AIは話題になっているものの、まだ「個人の便利ツール」としての活用にとどまり、会社全体の業務改善や意思決定の仕組みにまでは広がっていない企業も少なくありません。
では、生成AIを一時的なブームで終わらせず、企業のDXにどうつなげていけばよいのでしょうか。
今回のシリーズでは、
- 生成AIによってDXはどう変わるのか
- 企業は何を考えるべきなのか
- 中小企業はどこから始めるべきなのか
について、実際の事例や現場視点も交えながら整理していきたいと思います。
これまでのDXとは何だったのか
まず、これまで企業が進めてきたDXについて整理してみます。
ここ数年、多くの企業がDXに取り組んできました。
具体的には、
- 紙業務のデジタル化
- クラウドサービスの導入
- データの蓄積
- 業務の自動化
- 見える化
といった施策です。
例えば、
- 営業活動をSFA/CRMで管理する
- 受発注業務をRPAで自動化する
- BIツールで経営数値を可視化する
といった取り組みは、多くの企業で進められてきました。
これらに共通しているのは、
👉業務や情報をデジタル化し、データとして扱いやすくする
という考え方です。
つまり、これまで多くの企業が取り組んできたのは、DXそのものというよりも、DXに向けた土台づくりだったと言えます。
ここで、DXという言葉自体を改めて整理してみたいと思います。
DXには3つの段階がある
多くの企業で「DX」という言葉が曖昧になっている理由の一つに、デジタル化の段階が混在して語られていることがあります。
一般的に、デジタル活用は次の3段階で整理されます。

まず1つ目が、デジタイゼーション(Digitization)です。
これは、紙やアナログ情報をデジタル化する段階です。
例えば、
- 紙の帳票をPDF化する
- FAXをデータ化する
- 紙で管理していた情報をExcelに入力する
といった取り組みがこれに当たります。
次に2つ目が、デジタライゼーション(Digitalization)です。
これは、デジタル化にとどまらず、業務プロセスそのものをデジタル技術で改善する段階です。
例えば、
- SFA/CRMによる営業管理
- RPAによる業務自動化
- ワークフローによる承認電子化
などが代表例です。
そして3つ目が、
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)です。
これは、業務改善だけを指すものではありません。
デジタル技術によって、
- 意思決定
- 組織のあり方
- 業務プロセス
- ビジネスモデル
- 企業の競争力
そのものを変革する段階です。
ここで重要なのは、生成AIがこの「トランスフォーメーション」に踏み込みやすくする技術として注目されている点です。
これまで多くの企業では、紙のデータ化や業務の自動化など、デジタイゼーション/デジタライゼーションにあたる取り組みが中心でした。
もちろん、これらはDXの土台として非常に重要です。
しかし、データを蓄積したり、業務を効率化したりするだけでは、企業の意思決定や仕事の進め方そのものが変わるとは限りません。
生成AIの登場によって、企業はようやく、蓄積したデータや情報をもとに、判断や提案、改善につなげやすくなりつつあります。
つまり、デジタル化の取り組みを、本来のDXへ近づける追い風として、生成AIが活用され始めているのです。
DXが思ったほど進まなかったワケ
DXに取り組む中で、実際には、
- システムを導入したが活用されない
- 現場に定着しない
- データはあるが意思決定に使われていない
という課題が多く見られました。
これはなぜでしょうか。
理由の一つは、
👉データを活用できるかどうかが、人に大きく依存していたから
です。
例えば、SFA/CRMに大量の情報が入っていても、
- 誰も見ない
- 見ても理解できない
- 分析できる人が限られる
という状況では、結局「記録されているだけ」になってしまいます。
つまり、
👉データが存在することと、活用されることは別問題
だったのです。
データを集める仕組みは整っていても、それを読み解き、判断し、次の行動に移すところまでは、人の経験やスキルに頼る部分が大きく残っていました。
生成AIが変えるもの
ここに登場したのが、生成AIです。
生成AIによって変わり始めているのは、「作業効率」だけではありません。
大きな変化は、
情報を理解し、整理し、次のアクションを考える支援ができるようになったこと
です。
これまでのシステムでは、
- データを蓄積する
- 人が分析する
- 人が判断する
という流れが一般的でした。
しかし生成AIを活用すると、
- 情報を要約する
- 傾向や課題を整理する
- 複数の情報をもとに論点をまとめる
- 次に確認すべきことを提案する
といったことが可能になります。
もちろん、最終的な判断は人が行う必要があります。
しかし、判断に必要な情報を整理したり、考えるための材料を提示したりする役割を、生成AIが担えるようになってきました。
これは、DXにおいて非常に大きな変化です。
DXの重心が変わる
この変化によって、DXの考え方そのものも変わり始めています。
これまでの取り組みでは、
- どうデータを集めるか
- どう可視化するか
- どう自動化するか
が中心でした。
しかしこれからは、
👉集めたデータや情報を、どう意思決定や業務変革につなげるか
がより重要になります。
つまり、DXの重心は、業務効率化から意思決定の高度化、仕事の進め方の変革へと移りつつあります。
これは、「効率化が不要になる」という意味ではありません。
むしろ、効率化によって生まれた時間や、蓄積されたデータを、より価値の高い判断や提案に活かすことが求められるようになる、ということです。
中小企業にとってもチャンスがある
この変化は、中小企業にとっても大きな意味を持ちます。
これまでのDXでは、
- 大規模なシステム投資
- 専門人材の確保
- 長期間のシステム構築
が必要になるケースも少なくありませんでした。
そのため、「重要性はわかっているが、なかなか進められない」と感じていた企業も多かったのではないでしょうか。
一方、生成AIは比較的低コストで試しやすく、既存の業務の中にも取り入れやすい特徴があります。
例えば、
- 会議や商談の内容を要約し、次の対応を整理する
- 問い合わせ履歴や営業メモから、顧客対応のポイントをまとめる
- 社内文書をもとに、必要な情報を探しやすくする
- ベテラン社員の知見を整理し、若手社員の判断を支援する
といった使い方が考えられます。
ここで重要なのは、「文章作成が楽になる」「議事録作成が早くなる」という効率化だけで終わらせないことです。
- 生成AIを使って、情報共有の質を高める。
- 判断のばらつきを減らす。
- 属人化していた知識を活用しやすくする。
こうした取り組みにつなげることで、中小企業でもDXの一歩を踏み出しやすくなります。
ただし、AIを入れれば成功するわけではない
ここで注意したい点もあります。
それは、
AIを入れればDXが進むわけではない
ということです。
実際には、
- どこにAIを使うのか
- 何を変えたいのか
- どの業務プロセスに組み込むのか
- 人はどの判断を担うのか
を設計しなければ、“便利ツール”で終わってしまいます。
重要なのは、AIを使うこと自体ではありません。
生成AIを活用して、
👉情報の扱い方、判断の仕方、仕事の進め方をどう変えるか
を考えることです。
ここまで設計してはじめて、生成AIはDXを進めるための力になります。
これからDXに必要になる視点
これからのDXでは、
- データ
- 業務プロセス
- AI
- 人の役割
を一体で考える必要があります。
特に重要なのは、
人が何に集中すべきか
という視点です。
AIが情報整理や要約を担うようになると、人はより、
- 判断
- 提案
- 顧客理解
- コミュニケーション
- 新しい価値づくり
といった領域に時間を使えるようになります。
つまり、生成AIによって人の仕事がなくなるというよりも、
人にしかできない仕事の価値が、より問われるようになる
とも言えます。
次回予告
では実際に、中小企業ではどのような生成AI活用が始まっているのでしょうか。
次回は、「中小企業の生成AI活用事例から見える変化」をテーマに、実際の業務や現場で何が起きているのかを具体的に見ていきます。
まとめ
生成AIは、新しいITツールとして捉えるだけでは不十分です。
企業のDXの進め方にも影響を与え始めている存在です。
これまで多くの企業では、データ化、可視化、自動化といったDXに向けた土台づくりが進められてきました。
しかし、データを蓄積するだけでは、企業の判断や仕事の進め方は大きく変わりません。
これから重要になるのは、蓄積したデータや情報を、意思決定や業務変革につなげることです。
生成AIは、その橋渡しを担う技術として活用できる可能性があります。 生成AIをどう使うかではなく、生成AIによって何を変えるのか。
それが、これからの企業にとって重要なテーマになっていくでしょう。
