多くの業界で、従来のやり方やビジネスモデルでは解決できない課題が生まれています。流通・小売業界も例外ではありません。課題の多くは、DXの推進により解決につながる可能性があります。
ここでは、流通・小売業界の現状と課題、DXで課題を解決する方法、 DX推進を成功させるポイント、成功事例などを紹介します。
流通業における出荷業務の効率化については、以下のダウンロード資料をご参照ください。
物流現場だけではなく、流通業における出荷業務に多く見られる課題や解決策について事例を交えながら解説しています。
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流通・小売業界の現状と課題
流通・小売業界では、現在、次のような課題を抱えています。
モノが売れない時代
現在は「モノを売るのが難しい時代」といわれています。理由のひとつは、市場にはすでに多くの商品があふれていて、類似製品との差別化が難しいことです。
ほかに、消費者の価値観が変化していることも理由にあげられます。それにより、以下の状態が生じています。
- 一定の品質を満たしているだけでなく、オリジナリティやストーリーのある「ほかの商品で代替できないモノ」が求められている
- 商品を買うことがメインの「モノ消費」から、サービスを体験することがメインの「コト消費」へ消費者の関心が移っている
- モノをむやみに増やしたくない、所有という形態をとる必要はないという考え方が浸透し、購入ではなくサブスクリプション形式を好む消費者が増えている
慢性的な人材不足
少子高齢化に伴う労働人口の減少により、多くの業界と同様に、流通・小売業界でも人手不足が大きな問題となっています。
消費者のニーズや行動の変化と多様化
消費者が商品を購入するときの行動が多様化し、これまでの画一的なマーケティングでは大きな売上につながりにくくなっています。具体的には、以下の傾向が見られます。
- 消費者ニーズが多様化されており、大ヒット商品が出にくくなっている
- 実店舗からネットショッピングへ移行する消費者が増えている。実店舗で実物を吟味し、ネットショップで購入する「ショールーミング」という行動も多く見られる
- メーカーや店舗の説明よりも、ネットショップやSNSでのレビューや口コミを重要視する消費者が増えている
コロナ禍による環境の変化
コロナ禍により、消費活動にも大きな影響が出ています。外出自粛や実店舗の敬遠(ネットショッピングの多用)、収入の減少による節約志向などです。
また、次のような店舗を選ぶ傾向が見られます。
- 感染予防対策ができている店舗
- 混雑していない店舗、ソーシャルディスタンスをキープできる店舗
- キャッシュレス決済へ対応している店舗
DX推進で流通・小売業界の課題を解決できるか
DXとは、デジタル技術を利用して製品やサービス、ビジネスモデル、そして組織のあり方にまで変革を起こし、消費者に新しい価値を提供することです。激化する社会の変化や消費者ニーズの多様化などに対応し、市場競争に打ち勝つため、あらゆる企業に求められる取り組みです。
DXについての詳細は、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご参照ください。
紹介してきたような流通・小売業界の課題は、DXを推進して次のような施策を実行し、解決することが期待できます。
オンライン販売の強化
解決策のひとつは、ECサイトを立ち上げオンライン販売を強化することです。販売チャネルを増やし、ネットショッピングを好む顧客のニーズに応えることができます。
<対処できる課題>
・消費者のニーズや行動の多様化
・コロナ禍による環境の変化
サブスクリプションの導入
自社の製品やサービスにサブスクリプションを導入します。サブスクリプションで多様な顧客のニーズにきめ細かく対応することで、顧客満足度の向上につなげていきます。
<対処できる課題>
・モノが売れない時代
・消費者のニーズや行動の多様化
データの活用
購買履歴や販促活動の履歴などを収集・分析することで、顧客の好みやニーズを細かく知ることができます。また、分析結果をもとに戦略を立て、販売管理、受発注、在庫の調整をすることで、効果的な販促活動、緻密な需要予測、販売ロスの削減などが期待できます。
<対処できる課題>
・モノが売れない時代
・消費者のニーズや行動の多様化
業務効率化
DX推進により、作業自動化、迅速な情報伝達、勤怠管理や在庫管理などの業務効率化が実現できます。それによって作業を減らし、店舗運営に必要な人員を削減することが可能になります。
また、従業員教育にITを導入することで人材育成を効率化できます。従業員一人ひとりのレベルに合った教育が可能となり、個人の能力やスキルを最大限引き出して、生産性向上へつなげることが期待できます。
<対処できる課題>
・慢性的な人材不足
感染予防策
現在、実店舗に顧客を呼び込むためには、ソーシャルディスタンスの維持や必要な情報の提供など、感染予防策が不可欠です。感染予防策の充実は、大きなアピールポイントになります。
キャッシュレス決済の導入や、LINE やTwitterといったSNSを活用した感染状況・対策などの情報発信は、DXによる感染予防策の第一歩と言えます。ショッピングモールや飲食店などの入り口でのAIを活用したスピーディーな検温、IoTセンサーによるリアルタイムな混雑度の可視化なども、DXによる有効な感染予防策です。
なお、AIとIoTはどちらもDX推進には欠かせないテクノロジーです。さらに双方を組み合わせることで、より活用の幅が広がり、業務効率化や利便性の向上、新たな価値創造へとながります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
「DXを支える技術とは?技術を生かしてDXを推進するために必要な人材も紹介」
「AIとIoTを組み合わせると何ができる?活用方法とその注意点」
<対処できる課題>
・コロナ禍による環境の変化
流通・小売業界でDX推進を成功させるポイント
DX推進により現在の流通・小売業界の多くの課題を解決できる可能性は大いにあります。しかし、DXを進めようとしても、100パーセント成功するとは限りません。DX推進を成功させるポイントを紹介します。
- 経営陣が積極的にかかわり、推進する
DXの推進は、全社規模での経営方針の変革を伴います。そのため、経営陣の積極的な参加が不可欠です。 - 社内横断的な体制づくり
縦割りの組織・体制のままでは、一部署や業務ごとの単なるデジタル化だけで終わってしまう可能性があります。すべての部署から横断的に人材を確保し、全社的な協力を得る必要があります。 - 現場の声を重視
DXの実現には経営陣の協力が必要ですが、実際に行動するのは現場の従業員です。そのため、現場の要望に沿わないシステムを導入しても意味がありません。現場の意見も取り入れていきましょう。 - 顧客志向の視点
DXの最大の目的は、顧客に新しい価値を提供することです。そのためには、顧客の視点でニーズを把握する必要があります。 - データの一元管理
DXの推進には、データ活用が不可欠です。データ活用では、データの収集と分析が大きなポイントになるため、データの一元管理が可能なシステムを導入する必要があります。
DXにおけるデータ活用の重要性は、「DXを推進するうえでなぜデータ活用が重要?その関係と効果とは」をご参照ください。
- 内製化と外注のバランス
コア業務にかかわるシステムはある程度の内製化が必要ですが、いきなり内製化できるものでもありません。自社が主体になりながらも、ITベンダーなどの外部の知見を利用することが大切です。 - 成果が出るまで時間が必要であることを理解する
DXは、業務効率化にとどまらない、より本質的な改革であるため、成果が出るまでにはある程度の時間が必要です。現場や管理職がそのことを理解し、モチベーションを維持していくことが大切です。
流通・小売業界におけるDXの成功事例
流通・小売業界におけるDXの成功事例を紹介します。
- 株式会社良品計画
同社が展開する「無印良品」は、店舗だけでなくオンラインショップも好調です。2013年には、店舗とオンラインショップを融合してさらに集客に結びつけるスマートフォンアプリ「MUJI passport」の提供を開始しました。
利用者はこのアプリからクーポンや新製品情報を入手できます。また、オンラインショップと実店舗の買い物でのポイントが貯まり、店舗でのチェックインポイントを受け取れます。販売チャネルにかかわらず、ひとつのブランドイメージを形成し、自然な集客と顧客データの収集を可能にしています。 - 株式会社ローソン
同社は、コンビニエンスストアにおけるさまざまな課題解決のためにIT技術を積極的に取り入れ、実験と検証を繰り返しています。
すでに多くの店舗で利用されている自動釣銭機付きPOSレジだけでなく、顧客が自分で商品をスキャンする「ローソンセルフレジ」、スマートフォンを使って商品を選びながらスキャンして決済まで行う「ローソンGO」などの仕組みがあります。
これらの技術は、顧客の待ち時間を短縮すると同時に業務を効率化し、従業員の負担軽減にも成功しています。
流通・小売業界は消費者ニーズに対応するためデジタル化を推進しよう
あらゆる業界でDX推進が求められるなか、流通・小売業界でも積極的にDXを推進する必要があります。消費者ニーズの多様化や購買行動の変化、販売チャネルや決済方法の多様化、さらには人材不足や働き方の多様化など、業界を取り巻く環境の変化はとどまるところを知りません。それらの変化に対応するためには、DXの推進によって業務効率化を実現し、素早く対応できる体制にしておく必要があります。
なかには、全社でのDX推進は体力的に厳しいという企業もあるかもしれません。その場合、まずは部署単位でデジタライゼーションを進めることから始める方法があります。小さな単位で少しずつ実績を積み、効果を実感することで、DX推進のための知見が蓄積されると同時に、社内全体のモチベーションを高めていくことが期待できます。 このように小さな単位から始めるDXを「社内DX」といいます。詳しくは、「社内DXとは?推進が必要な理由や成功させるポイントを紹介」をご覧ください。
参考リンク
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