ZKテクノロジー(ゼロ知識証明)とは、高いプライバシーとセキュリティを守りつつ、認証や検証を行える技術です。あまり聞いたことがないという人も多いでしょう。ブロックチェーンの普及に伴って利用される場面も増えてきました。
ZKテクノロジーはブロックチェーンに関連する場所で使われることが多いですが、実はビジネスでも幅広く利用できます。ただし高度な技術が必要になるため、まだあまり普及しているとは言えません。
ここでは、ZKテクノロジーの概要と、その活用シーンや導入ポイント、またDX推進との関係について紹介します。
ZKテクノロジーとは
ZKテクノロジーとは、プライバシーとセキュリティを維持しつつ、情報の所有者や情報の有効性を検証する技術です。ゼロ知識テクノロジー、ゼロ知識証明、ZKP(Zero Knowledge Proof)とも言います。
ZKテクノロジーでは、証明者(prover)であるAが「この情報を所有している」ということを、情報の中身を明かすことなく、情報を持っていることだけを検証者(verifier)であるBに対して、安全かつ効率的に証明します。Bは「Aが情報を所有している」こと以外、何もわかりません。情報の内容もAの個人情報も明かされません。
例えば下記の図でいうと、A(購入者)がB(店員)に「自分が成人済みであること」を証明します。ここで、Aの年齢その他の個人情報について、Bには一切知らせず、「Aが成人済みであること」を証明する技術が、ZKテクノロジーです。
ZKテクノロジーのプロトコル
ZKテクノロジーのプロトコルには次の3つの性質があります。
ZKテクノロジーは、この3つをすべて満たしていなければなりません。
- 完全性(completeness)
証明者の主張が正しいなら、検証者がそれを高い確率で証明できる。 - 健全性(soundness)
証明者の主張が偽りなら、検証者がそれを高い確率で見破れる。 - ゼロ知識性(zero knowledge)
検証者は、証明者の主張が正しいこと以外の情報を得ることはできない。
ZKテクノロジーの検証プロセス
ZKテクノロジーの検証プロセスには、2通りあります。
- 対話型
証明者と検証者が対話を行って検証を行います。
検証のための質問(課題)は何度も行うことが可能です。ただし、検証のたびに証明者と検証者が対話を行わなければなりません。 - 非対話型
証明者と検証者は対話を行いません。証明者の主張は、複数の他者が検証します。
検証者の検証は一度しか行いません。
ZKテクノロジーが注目されるようになった背景
ZKテクノロジーのアイデア自体は1980年代に数学の世界で登場していました。しかし注目されるようになったのは最近で、ブロックチェーンが普及してからです。
ZKテクノロジーは、ブロックチェーンの持つ「両者のプライバシーを守りながら、真実かどうかを証明したい」というニーズを解決できるため、注目されるようになりました。
ブロックチェーンについては、「NFTとは?ブロックチェーンやWeb3.0との関係性を紹介」を参考にしてください。
ZKテクノロジーの活用シーン
ZKテクノロジーはブロックチェーンに関する場面で活用されることが多いですが、ほかにもさまざまなところで利用されています。
- ブロックチェーンでのプライバシー確保
送金者や受取人を秘匿しながら、取引のみを行うことが可能です。 - トルネードキャッシュ
ブロックチェーン上で特定のユーザーの取引をトレースできなくする、ミキシングという方法の一種です。複数のユーザーの取引情報を混ぜることで、特定のユーザーの取引情報を追えなくします。 - 分散型アイデンティティ
パスポートや運転免許証などでプライバシーを明かすことなく、自分の属性を示したり、本人確認を行ったりします。 - 所得証明
金額を明かさずに、一定範囲内の所得もしくは財産があることを証明します。海外では住宅ローンの申請に使われることがあります。 - ユーザー認証
Webやサーバーにアクセスしたとき、パスワードなしに認証を行い、本人であることを確認します。
DX推進におけるZKテクノロジーの重要性
ZKテクノロジーはDX推進にも大きな役割を果たします。
- データセキュリティとプライバシーの強化
ZKテクノロジーを利用すれば、個人情報を明かさずに認証を行ったり、属性情報を部分的に開示したりすることができます。
また、データを安全に共有して改ざんを防ぐことも可能です。それによって、データの信頼性や透明性を高めることができます。 - 効率化とコスト削減
個人情報を守りながら認証を行えるので、認証情報のやり取りなどにかかる時間やコストを削減できます。また取引のプロセスの透明性が高く、効率的に進めることが可能です。 - イノベーションの促進
認証などのやり取りを減らすことができるので、処理のスピードアップが可能です。それによって作業時間を削減し、新たな価値の創出に回すリソースが増えます。
また、ZKテクノロジーをこれまで使っていなかった分野で応用することで、新たなイノベーションを作り出すことも可能です。
DXについては、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。
企業がZKテクノロジーを導入する際のポイント
企業がZKテクノロジーを効果的に導入するには、次のようなポイントを押さえましょう。
- 目的の明確化
ZKテクノロジーを導入することでどのような問題を解決したいのか、どのような価値を生み出すのかを明確にします。例えばプライバシーやセキュリティの強化、新たなビジネスモデルの創出などです。
それによって、ZKテクノロジーを導入する範囲が決まります。 - コストと導入効果
ZKテクノロジーは新しい技術なので、導入するには費用がかかります。そのコストと導入による効果を長期的に検証することが必要です。 - 技術的要件と準備
導入に必要な技術的要件と、事前に準備すべき事項を可視化します。
ZKテクノロジーの導入・運用には高度な技術が必要なので、実装するには難しい場合もあるでしょう。 - スタッフの教育と意識向上
ZKテクノロジーは新しい技術で、専門的な知識も必要です。そこで、技術の理解と適切な運用に向けたスタッフ教育が重要になります。必要であれば、専門家のサポートも利用しましょう。
ZKテクノロジーを導入する企業の増加に備えて理解しておこう
ZKテクノロジーを導入するには、自社に高い技術を持つ人材や活用できる環境が必要です。そのため、どの企業でもすぐに導入できるわけではありません。
しかし、ブロックチェーンではすでに使われている技術です。これからは、ZKテクノロジーもビジネスで利用する場面が増えていくでしょう。
まずは、基本的な内容を理解しておくことが重要です。