DXリテラシーとは? ITリテラシーとの違いや求められる理由などを解説

DXリテラシーとは? ITリテラシーとの違いや求められる理由などを解説

DXを推進するにあたり、求められているのが「DXリテラシー」です。

DXリテラシーとは何かを知らなければ、それを身につけ、高めることは不可能です。DX推進を成功させるためにも、DXリテラシーについて正しく理解する必要があります。

DXリテラシーの概要や、DXリテラシーが求められる理由、経済産業省が定めるDXリテラシー標準などについて解説します。

社内のDX推進には、社員のDXリテラシーの向上やDX人材の確保が必要です。以下のダウンロード資料では、社内DXの進め方やDX人材に求められるスキル、具体的な事例などを紹介しています。
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DXリテラシーとは? 

まず、DXリテラシーとは何かを見ていきましょう。

そもそもDXとは?

DXとは、デジタル技術を活用して、組織のあり方やビジネスモデルなどのさまざまな点を変革し、顧客に新しい価値を提供していくことです。激化する市場競争のなかで生き残るために、多くの企業に求められている取り組みです。

DXについて詳しくは、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

一方、DX推進を検討しているものの、「DXを一気に進めるのはハードルが高い」と感じる企業もあるようです。そのような場合、部門単位で業務の見直しやデジタル化といった小さな改革に着手し、新たな価値をつくっていくDXなら取り組みやすくなります。これを社内DXと呼びます。

社内DXの詳細は、「社内DXとは?推進が必要な理由や成功させるポイントを紹介」をご覧ください。

また、社内DXの進め方や必要なスキルについては以下のダウンロード資料をご覧ください。
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DXリテラシーとは? 

リテラシーとは、ある分野に関する知識やそれらを活用する能力のことです。つまり、DXリテラシーとは、「DXとはどのようなことか、DXにはどのような意義があるのかといった知識」や「なんらかの課題を解決するためにDXを活用できる能力」のことです。

DXを成功させるためには、DXリテラシーの高い人材を確保し育成する必要があります。

DX推進の成功に必要な人材や人材確保の方法については、以下で説明しています。
DXを推進するために必要な人材と自社でDX人材を確保するためのポイント

DXリテラシーとITリテラシーの違い

DXリテラシーと混同されやすい言葉に、ITリテラシーがあります。両者の違いを見ていきましょう。

  • ITリテラシー:ITとはInformation Technology(情報技術)の略称で、デジタル技術とほぼ同義で使われます。ITリテラシーとは、デジタル技術についての理解とそれを活用する能力を指します。
  • DXリテラシー:DXは単なるデジタル技術の活用ではなく、デジタル技術を活用して組織・ビジネスに変革をもたらすことです。つまりDXリテラシーとは、ITリテラシーの「デジタル技術についての理解とそれを活用する能力」に、「組織・ビジネスにDXが変革をもたらすことへの理解とそれらを活用する能力」が加わったものです。

なぜいま企業にDXリテラシーが求められているのか

なぜいま、企業にDXリテラシーが求められているのでしょうか。

日本では、企業の競争力向上や「2025年の崖」対策として、DXの推進が必要とされています。

現在多くの日本企業に残っているとされるレガシーシステム。それらを使い続けた場合、最新のデジタル技術を適用しにくいなどの理由から、市場ニーズの変化に迅速かつ柔軟に応えられなくなります。そのような状況では競争優位性を高めることができず、2025年以降に大きな経済的損失が発生するとされている問題が、「2025年の崖」です。

2025年の崖や、レガシーシステムについては以下をご覧ください。
2025年の崖とは?意味と企業への影響、克服するためにすべきことを紹介
レガシーシステムを使い続けることの弊害とは?脱却するための対策も紹介

2025年の崖対策のためにDXが求められているものの、下記のような理由からDXが思うように進まない企業も少なくありません。それらを解決するカギとなるのがDXリテラシーです。

DXが進まない理由と解決のカギ「DXリテラシー」

DXが進まない主な理由と、DXリテラシーがどのように解決につながっていくのかを見ていきましょう。

ユーザー企業にDXを推進できる人材が少ない

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表している「IT人材白書2020」概要のデータによると、ユーザー企業におけるIT人材の「量」に対する過不足感の割合の経年においては、「大幅に不足している」の割合が年々高くなる傾向となっています。

引用元:「IT人材白書2020」概要(PDF)|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

また、同調査においてユーザー企業におけるIT人材の「質」に対する不足感について、「大幅に不足している」割合は、2016年~2018年度調査までは33%前後でしたが、2019年度調査では過去最高の39.5%となっています。

引用元:「IT人材白書2020」概要(PDF)|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

DXが重要だと理解していても、それを活用する能力や知識を持つ人材が社内にいなければ、DXは推進できません。

しかし上述のように、日本ではまだ、 ITリテラシーを有する人材がIT企業以外の企業に多く所属していません。ましてや、DXに関する深い知識も持ち合わせるDX人材となると、さらに割合が少ないことが予測できます。

一方で、DX推進にはDXに関する知識だけでなく、自社や自社の事業についての知識も必要です。DXの知識を持つ外部の人材を確保できた場合でも、自社のことを熟知している既存社員の参画が求められます。

そのため企業では、既存社員を教育してDXリテラシーを高めていくことが重要になります。

DXの重要性が上層部に伝わらない

上層部がDXの重要性を理解していなければ、担当者がどれだけ働きかけても、積極的な協力は得られません。また、DXに関する予算もなかなか承認されないでしょう。

人材の育成やソフトウェアの購入、開発や研究といった具体的な方策を進めるには、全社的にDXリテラシーを高め、DXの重要性を上層部にも理解してもらう必要があります。

DXが現場の課題解決につながらない

上層部がDXの重要性を理解していても、上層部や情報システム部門だけでDXを進めようとして、うまくいかないケースがみられます。「現場にどういった課題があるのか」を十分に把握できていないため、「何をすれば解決に向かうのか」がわからず、DXを課題解決につなげることができないためです。

現場の社員に十分なDXリテラシーが備わっていれば、課題解決のためにどうDXを進めればよいのかといった有効な意見が出てくる可能性が高まります。

以上、紹介したように、DXをスムーズに進めるためには、上層部から現場の社員一人ひとりがDXリテラシーを高めて、積極的に取り組む姿勢が必要なのです。

しかしDXリテラシーを高めるといっても、どういったことをどのようなレベルまで高めるべきなのかを知っていなければ、対策を講じることも難しいでしょう。DXリテラシー向上への指針となるのが、経済産業省が2022年3月に策定した「DXリテラシー標準」です。なお、近年の生成AIの登場や進化によって、DXに関わるビジネスパーソンに求められるスキルも変化している状況を踏まえ、2023年8月に「デジタルスキル標準」改訂版が公表されています。

経済産業省が定めるDXリテラシー標準とは?※デジタルスキル標準改訂追記

デジタルスキル標準は「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つの標準で構成されています。前者はすべてのビジネスパーソンに向けた指針や学習項目例を定義し、後者は DXを推進する人材の役割(ロール)及び必要なスキルを定義しています。

デジタルスキル標準の構成(2023年8月改訂)引用:デジタルスキル標準 ver.1.1

デジタルスキル標準の改訂は、社会の変化によることが大きいとみられます。とりわけ、2023年上期に話題になった生成AIについて多く記述が追加されました。生成AIの活用がDX推進を加速することが考えられ、ビジネスパーソンのスキルやリテラシーも高度に変化していく必要があるのです。

デジタルスキル標準全体像(2023年8月改訂)引用:デジタルスキル標準 ver.1.1


「デジタルスキル標準」は、DXの推進に必要な基本的な知識やスキル、マインドセットを身につけるための指針を提供するものです。これらのスキルを日常業務に活用し、革新的な解決策を生み出す柔軟性が重要です。組織がDXを成功させるためには、これらデジタルスキルの普及と教育が不可欠となります。

DXリテラシー標準策定の理由

DXリテラシー標準には、その策定のねらいについて、「働き手一人ひとりが『DXリテラシー』を身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになる」ことと明記されています。

DXリテラシー標準を活用し、上層部も含めて社員一人ひとりがDXリテラシーを身につけることが、DX推進への第一歩となるとの前提で策定したことが読み取れます。

上図にはありませんが、資料にはDXリテラシー標準を活用する主なユーザーを「組織・企業」「個人」「教育コンテンツ提供事業者」の3者と想定し、それぞれ下記のような趣旨の活用方法を示しています。

  • 組織・企業:DXリテラシー向上を目的とした教育プログラムを検討する際の指針としたり、全社的にDXリテラシーを身につける必要性を示すための材料としたりする
  • 個人:DXリテラシー向上にむけての学習計画を立てる際の参考にする
  • 教育コンテンツ提供事業者:「ビジネスパーソンに対してどのような内容を伝えるべきか」検討する際の指針とする

DXリテラシー標準の概要

上図のように、DXリテラシー標準では、DX推進に参画するうえで身につけるべき「Why:DXの背景 」「What:DXで活用されるデータ・技術」「How:データ・技術の活用」についての3つの知識と、企業がDXを進める際に社員(構成員)に必要な意識や姿勢「マインド・スタンス」の、合計4つの大項目を挙げ、それぞれ以下のような学習のゴールを示しています。

  • マインド・スタンス…「社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、自身の行動を振り返ることができる」
  • Why:DXの背景 …「人々が重視する価値や社会・経済の環境がどのように変化しているか知っており、DXの重要性を理解している」
  • What:DXで活用されるデータ・技術…「データ・デジタル技術の活用事例を理解し、その実現のための基本的なツールの活用方法を身につけたうえで、 留意点などを踏まえて実際に業務で活用できる」
  • How:データ・技術活用…「データ・デジタル技術の活用事例を理解し、その実現のための基本的なツールの活用方法を身につけたうえで、留意点などを踏まえて実際に業務で活用できる」

また、4つの大項目についてそれぞれ学ぶべき複数の項目を、以下のように示しています。

例えば「Why:DXの背景」については「社会の変化」や「顧客価値の変化」などの項目を、「What:DXで活用されるデータ・技術」については「社会におけるデータ」や「データを読む・説明する」といった項目を学ぶとよい、といった趣旨になります。

経済産業省におけるDXリテラシー標準策定のねらい(Why,What,Howとマインドスタンス)

引用元:DXリテラシー標準ver.1.0(PDF)|経済産業省

さらに、各項目の内容や学習項目例(マインド・スタンスの項目についてのみ行動例)を詳しく説明しています。例として、「Why:DXの背景」の項目「社会の変化」の内容を紹介します。

世界全体におきている変化や課題を理解する必要があり、それらに対応するためDXを活用する知識が求められるといったことを説明しています。また、そのための学習の例として、「SDGs」や「高齢化」「教育格差」などを挙げています。

引用元:DXリテラシー標準ver.1.0(PDF)|経済産業省

すべての項目の内容・行動例・学習項目例については、上記の「DXリテラシー標準Ver.1.0 (PDF)」のリンクよりご覧ください。

社員にDXリテラシーを習得させる方法3つ

社員にDXリテラシーを習得させるには、どうすればよいのでしょうか。効果的な方法を3つ紹介します。

講座・研修

DXリテラシーを学ぶ講座や研修を活用する方法です。オンライン研修やeラーニングなどさまざまな方法があります。

DX関連の資格取得のための勉強

一般社団法人日本イノベーション融合学会の「DX検定」一般財団法人全日本情報学習振興協会の「デジタルトランスフォーメーション検定」などの資格制度があります。DXに関連する資格取得を目指すための勉強を通じて、体系的にDXについて学べます。資格取得という明確な目標があるため、モチベーションも維持しやすいでしょう。

ナレッジシェアリング

ナレッジシェアリングとは、個々が持つスキルや知識を共有することです。例えば「グループウェア上の特定チャネルに書き込んでいく」「社内で話し合う時間を設ける」などが挙げられます。

講座を受講したり独学で勉強したりして、ある程度DXに関する知識やスキルを身につけた人が、その知識やスキルを互いに共有することで、少しずつ知識を深め合います。

DXリテラシーの向上が、DX推進を加速させるカギ

DX推進が多くの企業に求められているとわかっていても、なかなか進まない企業も多く存在します。そこには「経営層がDXの重要性を十分に理解していない」「DXに必要な人材が確保できない」「DXに懐疑的な社員がいる」など、さまざまな理由があるでしょう。

DXリテラシーの向上がそれらの問題を解決し、DX推進を加速させるカギとなります。全社的にDXの必要性を共通認識として持つことが、DXプロジェクトの成功と企業の成長を確実なものにします。