レガシーシステムを使い続けることの弊害とは?脱却するための対策も紹介

レガシーシステムを使い続けることの弊害とは?脱却するための対策も紹介

DXの推進に関連して、レガシーシステムを使い続けることの問題やその刷新の必要性がクローズアップされています。DXレポートの「2025年の崖」に表されるように、データ活用、ビジネスのスピードの点で、競争力が阻害されてしまうからです。とはいえ、現在レガシーシステムを使っていて特に不都合を感じないため、実際何が問題なのか理解できていないケースもあるのではないでしょうか。

ここではレガシーシステムに起因する問題とその対策、レガシーシステムと2025年の崖との関係などについて紹介します。

レガシーシステムとは

英語の“legacy”という単語には、本来「遺産、先人の遺物」というポジティブな意味合いがあります。しかし、ITの世界で legacy は、「時代遅れで古くなったもの」といったネガティブな意味合いで使われるのが一般的です。

レガシーシステム(Legacy System) は、過去の技術や仕組みで構築されているため複雑化・ブラックボックス化したシステムのことを指し、メインフレームなどの基幹システムに多く使われています。構築してから20年以上経過しているシステムも多く、維持管理が難しい、新しい技術に対応できない、DX推進の足かせになっているなど、さまざまな問題の要因になっています。

レガシーシステムと2025年の崖との関係とは?

激化する市場競争において競争優位性を保つため、あらゆる企業にDX推進が求められています。DXとは新しいデジタルテクノロジーやデータを活用して、新たな価値を提供することです。しかし、日本企業では、レガシーシステムの存在がDX推進を阻む障壁のひとつとなっているのです。

レガシーシステムは過去の技術や仕組みで構築されているため、最新のテクノロジーの適用が困難です。また複雑化・ブラックボックス化していることで維持費用がかかり、本来なら新しいテクノロジー導入に回したいリソースが不足してしまうといった問題もあります。

そのため、レガシーシステムの存在はDX推進やビジネス戦略上の足かせとなっています。

このままレガシーシステムを使い続けていると、DX推進ができず、顧客のニーズに即した有効な戦略を展開することもできないまま、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じるといわれています。これが、「2025年の崖」問題です。

「2025年の崖」問題についての詳細は、「2025年の崖とは?意味と企業への影響、克服するためにすべきことを紹介」ご覧ください。

レガシーシステムは何が問題なのか

前述のとおり、レガシーシステムを使い続けると、最新のテクノロジーの適用ができない、新しいテクノロジーの導入に必要なリソースが不足するといった問題が発生します。

それらも含めレガシーシステムを使い続けることの弊害を、あらためて確認しましょう。

  • 複雑化・肥大化によるパフォーマンス低下
    たび重なるカスタマイズで複雑化・肥大化したレガシーシステムは、処理速度が低下したりシステム障害への対応ができないなど、システム本来のパフォーマンスを発揮しにくくなります。
  • システム障害につながる場合がある
    システムの複雑化・肥大化は、データの処理が追いつかないなどパフォーマンスが低下するだけでなく、システム障害につながる場合があります。
  • デジタル競争に遅れを取り、企業の競争力が低下                              DXの目的である「顧客への新しい価値提供」を実現するには、IoTやビッグデータ活用が欠かせません。それには最新のテクノロジーが優位であり、レガシーシステムではデジタル競争についていけず、企業の競争力が低下します。
  • 保守運用の人材不足
    レガシーシステムを知る人材が定年退職を迎えることにより、システムがブラックボックス化します。レガシーシステムを保守運用する人材が不足し、何らかのトラブルがあった際に迅速な対応がしづらくなります。
  • 新しい技術への投資ができない
    レガシーシステムに対応できる人材不足から、人材確保が常に問題となり人件費の高騰につながります。結果、システムの維持管理費用がかさみ、新しいシステムや技術の導入にリソースを割けません。
  • ビジネス環境の変化や顧客の要望に対応不可
    レガシーシステムでは新しいシステムやデバイス、アプリケーションなどに対応できません。ハードウェアの面でもソフトウェアの面でも、最新の技術を取り込めないため、顧客のニーズに応えることができず、ビジネス戦略上の大きな足かせとなります。 

レガシーシステムから脱却するための具体的な対応策とポイント

レガシーシステムから脱却するには、部分的な改修ではなく、システム全体の刷新、移行、変更などの根本的な対策が必要です。これらをどう実行すればよいのでしょうか。

その方法には、モダナイゼーションとマイグレーションのふたつがあります。どちらの方法も、まずは現状分析から着手します。システムが現場でどのように運用されているかを調査してから、新しいシステムに移行する方法を決定します。レガシーシステムから脱却する手法と、有効な対策について説明します。

モダナイゼーション

モダナイゼーションとは、レガシーシステムを刷新することです。これまで構築したソフトウェアや蓄積されたデータを活用しながら、新しい技術と組み合わせたハードウェアやシステムに入れ替えます。

モダナイゼーションには、例えばリプレース(新しいシステムに移行する)、リライト(現行システムを新しい言語に書き換える)、リビルド(現行システムの仕様を基本に、設計からやり直す)、リホスト(サーバー、OSなどのインフラを新しくする)などの複数の手法があります。改修のニーズを基本にコスト、スピード、システムの規模などの基準で選びます。

モダナイゼーションは、多くの場合、次の2段階で進められます。

  1. オープン化
    従来は、多くの場合、独自の業務システムを汎用機で運用していました(クローズド系のシステム)。これを、公開されている技術を使ってパソコンベースで運用するオープン系のシステムに変更します。オープン化を行うときは、現行機能を担保することが必要です。
  2. 最適化(リファクタリング)
    現行システムの機能でオープン化したあと、新しい要件を追加する作業です。重複機能の共通化、新規要件にもとづく機能の修正・追加、パフォーマンスのチューニング、クラウド移行などの作業を行います。

オープン化と最適化を段階的に行うことによって、最低限の改修をしながら、予算や期間に応じて機能を追加することが可能です。また、オープン化と最適化では、必要なスキルやツールが異なります。そのため、両者を分けて行うほうが効率的で、リスク低減にもなります。

マイグレーション

レガシーシステムや既存のソフトウェア、データなどを新しい環境へ移行することです。システムやデータなど全体を移行するマイグレーションのほかに、システムのみを移行するレガシーマイグレーション、データのみを移行するデータマイグレーションがあります。

現行システムに過剰に影響されないこと、業務への支障が少ないこと、コストを抑制しやすいことなどがメリットです。

レガシーシステム脱却の際のポイント

モダナイゼーションとマイグレーションのどちらの方法でも有効なのは、クラウドサービスの導入です。

多くのクラウドサービスは、自動的に機能のアップデートが行われるうえ、保守運用も必要ありません。契約からサービス利用開始までのリードタイムも短く、気軽に利用できます。

クラウドサービスを利用するときには、できるだけ自社の業務に合ったものを選ぶことが重要です。場合によっては、業務プロセスそのものをクラウドサービスの仕様に合わせて改変するケースもあります。

また、レガシーシステムからの脱却を図るには、人材不足の解消も重要です。社内に対応できる人材がいないことが原因で、将来的にシステムのブラックボックス化が進むといったことのないよう、自社で人材を確保・育成することも必要です。人材不足の解消については、次の記事をご参照ください。

DXを推進するために必要な人材と自社でDX人材を確保するためのポイント

レガシーシステムの刷新で「2025年の崖」のリスクを排除しよう

自社のシステム、特に基幹システムが「レガシーシステムと呼ばれるもの」だとわかっていても、「まだ動いているから」「いま現在特に不便はないから」と使い続けている企業があるかもしれません。しかし、レガシーシステムを使い続けることは、パフォーマンスの低下に加え、DXの目的を果たせないなど、ビジネス戦略上の足かせとなって、企業の存続にかかわってきます。

レガシーシステムを刷新してDXを推進していくことが、目前に差し迫っている「2025年の崖」の克服や、企業の競争力強化および企業の存続につながります。

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