アノテーションとは?基礎知識と業務への活用例を紹介

多くの企業でDXが推進されるなか、AI(人工知能)やデータ分析はDXにおいて欠かせない技術です。この技術開発において、必要とされているのがアノテーションです。一般的な英単語としても使われますが、AIやデータ開発の分野においては「タグ付け」という重要な作業を意味します。本稿ではアノテーションの意味や重要とされている理由、アノテーションの種類についてまとめます。また、最後にどのように業務に活用・貢献しているのか、いくつかの事例をご紹介しましょう。

アノテーションとは

最初に、アノテーション(annotation)とは何か、AIやデータ分析でなぜ重要とされているのかを紹介します。

アノテーションの意味

本来は「注釈」や「注解」といった意味の英語です。AI分野では下記のデータを対象とし、タグやメタタグといった情報を付ける作業を指します。

  • テキスト
  • 画像・動画
  • 音声

AIやデータ分析に重要な理由

アノテーションは、AIやデータ分析における機械学習を正確に行うための事前準備となります。機械学習のひとつである「教師あり学習」では、教師データというものを作成する必要があります。教師データとは、AIやデータ分析に入力するデータに対し、正しい出力をさせるための正解データのことです。アノテーションによって正解という情報をタグ付けすることで、教師データを作成します。

教師あり学習、教師なし学習など機械学習について詳しくは、「ディープラーニングと機械学習の違いは?それぞれの意味と関係性を解説」をご覧ください。

AIやデータ分析に用いるのは、膨大な情報量のビッグデータです。このビッグデータをそのまま使うのではなく、まずは各データをアノテーションによりタグ付けし分類します。そうすることで、膨大なデータの中からでも必要なデータを必要なときに適切に利用できるよう管理し、作業の効率化を実現できます。そのため、アノテーションは、AIの学習やデータ活用において重要な役割を担うのです。

アノテーションの種類

次に、アノテーションの種類について紹介します。アノテーションは、先にも紹介した対象となるデータによって3つに分類されます。

テキストアノテーション

事前に設定したルールに基づき、テキストの文章や段落にタグを付けます。特定のテキストの抽出だけでなく、バラバラになっているデータの中から必要なテキストを情報ごとに集約することも可能です。一例として下記のようなものがあります。

  • SNS投稿のタグ付けで特定のワードを抽出する
  • ニュースサイトで「芸能」や「経済」「スポーツ」などカテゴリの分類をする

画像アノテーション

画像データにおいて、物体をタグ付けします。車の自動運転や、生産ラインにおける不良品検出など幅広く利用されています。画像アノテーションには、タグ付けする物体を検出する方法にいくつか種類があります。

  • 物体検出(バウンディングボックス)

物体を検出するのに長方形の囲みを使います。写っている特定の物体を探し出して長方形で囲み、その物体が何であるのかタグ付けします。例えば、画像に人とパソコンが一緒に写っている場合、それぞれに「人」「パソコン」などとタグを付けます。

  • 多角形で領域指定(ポリゴンセグメンテーション)

物体を検出するのに、長方形ではなく多角形を使って囲み、タグ付けをします。長方形で囲む物体検出より正確に領域を検出することができます。

  • 領域抽出(セグメンテーション)

特定の領域を抽出し、その領域の中にどのような画像が含まれているのかをタグ付けします。例えば画像の中に犬がいる場合、犬の部分のみを抽出し、犬としてタグ付けします。

  • 目印を検出(ランドマークアノテーション)

顔における目や口などのパーツを点で指定することで物体を検出し、タグ付けします。より細かくアノテーションすることが可能で、物体の検出より顔の表情や身体の動き、ポーズを捉えるために使われることが多いです。表情から感情を読み取るAIに活用されています。

  • 画像分類

画像1枚に対してタグ付けをし、先に紹介したような画像内の領域検出は行いません。「その画像に写っているのは犬かどうか」といった簡単な検出のみ行います。

音声アノテーション

音声をテキスト化することで、その中にある単語を検出し、タグ付けをします。議事録の書き起こしや自動翻訳に活用されています。精度を高めるには、年齢・性別・国籍などさまざまなパターンの話し方を考慮する必要があります。特に日本語は世界的に見れば使用人口が少なく他国へオフショアしにくいため、人件費が大きくなる傾向があるので注意が必要です。

一方で、音量や音の種類にタグ付けすることもあります。

業務へのアノテーション活用例

アノテーションはさまざまな業界におけるDX推進へと活用されており、製造業・卸売業への活用も積極的に行われています。実際に活用して成功を収めた事例もあるので、いくつか紹介しましょう。

発送ラベルや納品書の自動読み込みとタグ付け

発送ラベルや納品書などの画像データに対し、アノテーションによる自動処理を行います。従来は目視により発送ラベルや納品書などの内容を確認し、手作業で発送先・納品先、商品ごとに整理をしていましたが、例えばAI-OCRを活用したシステムにより記載されている内容を画像として読み込むことで、発送先・納品先、商品ごとにタグ付けを行い、整理を自動化することが可能になります。目視による作業よりも早く効率的に作業ができ、ヒューマンエラーの削減も実現できます。

AI-OCRについて詳しくは、「AI-OCRを業務に導入するとどのような効果がある?DXへの効果や活用シーンも紹介」をご覧ください。

倉庫に保管する商品バーコードの読み取りによるタグ付け

商品に添付されているバーコードから情報を読み取ることで、倉庫内に保管している商品に対しタグ付けを行います。倉庫には多くの商品が保管されており、多くが箱に梱包されていることから外観での区別も困難です。商品のタグ付けを効率化することで、タグごとに倉庫内での保管場所を分けたり、商品情報のデータ管理をタグごとに整理したりすることなどが容易になります。

配送業務の自動化・効率化

自動車における自動運転に活用することで、効率的な配送を実現できます。信号や標識をアノテーションによりタグ付けし、AIにその意味を学習させることが可能です。ドライバーが見落としたとしても、AIによる自動検知により、事故を未然に防ぐことができます。

自動運転ロボットを活用した倉庫内の効率化に向けた取り組みが実施されています。これらの取り組みは、人手不足の解消や利便性の向上に役立つと期待されています。

品質管理の自動化による精度向上

アノテーションを活用した異常検知は、業務に必要不可欠な機械が異常を起こした場合の多大な損失を防ぐために極めて重要であり、事故リスクの低減や業務負担の軽減にも寄与します。ここでのアノテーションは、学習用のデータセットに対して、正常か異常かのラベル付けを行うことです。高品質なアノテーションデータを大量に準備することで、AIモデルは正常状態からのズレを高精度で検知できるようになります。その結果、従来は熟練の技術者の勘と経験に頼っていた異常検知を自動化することができ、生産性の向上や品質管理の改善が期待できます。

アノテーションはDX推進において、大事な作業

DX推進においてAI・データ分析は欠かすことができない技術であり、その技術を効率的に活用するためにはアノテーションが必要です。アノテーションを効率的に行うツールがさまざまな企業から提供されているので、今後のDX推進のためには検討するとよいでしょう。