AIという言葉を日常生活で耳にする機会が増え、多くの人に知られるようになりました。AIは、日々の生活の利便性の向上に活用されるようになりましたが、企業が取り組むDX推進に大きく貢献することも、AIが注目される大きな理由のひとつです。AIはDX推進とどのような関係があるのでしょうか。本記事では、AIとは何かについて説明するとともに、DXとAIの関連や、活用事例、AIにより進化した技術を紹介します。
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AIとは?
AIの意味
AIとは“Artificial Intelligence”の略称であり、人工知能を意味します。AIの定義はさまざまな研究者により微妙に異なっており、実は統一された明確な定義はありません。一般的には、人間の知的ふるまいを再現し、自己学習することで、人のようにタスクに対して柔軟に対応するソフトウェアのことをいいます。
ビジネスの現場では、AI導入により下記のようなメリットが期待できます。
- 生産性の向上
AIは学習したデータに基づき、スピーディー、かつ正確な作業を行います。また、ルールを学習させるとその通りに作業をするため、ミスが発生しづらく、やり直しによる時間のロスも生じにくくなります。
- コスト削減
AIが作業することで、人件費の削減につながります。
また、例えば物流の現場では荷物の入庫から出庫、配送まで一元管理することにより、正確で無駄のない作業ができる、営業部門では顧客データに基づきより成果が出やすいアプローチができるなど、最小限のアクションやコストで、効率的に業務を遂行することが可能になります。
- データ分析の効率化
AIは、人では不可能な大量データのスピーディーな分析が可能です。AIのデータ分析により、素早く正確に市場ニーズを把握して、戦略に生かすことができます。
AIについては、下記の記事もご参照ください。
AIとIoTを組み合わせると何ができる?活用方法とその注意点
AIとDXの関係
DXとは簡単にいうと、デジタル技術やデータを活用することで企業に変革を起こすことです。DXにより業務の改善・効率化、既存ビジネスの拡大、新規ビジネスの創出などをめざし、生産性や市場競争力の向上を図ります。
市場ニーズを的確にとらえるため、また意思決定材料として生かすため、DXにおいては「ビッグデータ」を扱う必要があります。そのためには、デジタル技術の活用が必須です。
数あるデジタル技術のなかでもAIは、膨大なビッグデータを効率的に分析することが可能で、DX実現のための代表的で革新的な手段と考えられています。
AIによって進化した技術
AIが開発され、今までさまざまな技術が進化してきました。その一例を紹介します。
画像認識
写真や動画などの画像をコンピューターに読み込ませることで、文字や物体、人の顔や指紋などを識別させる技術です。AIを活用して、パターン認識による特徴の自動抽出を行います。
AIが進化することで深層学習が可能となり、自動抽出の精度が向上しました。顔認証によるロック解除や医療現場における画像診断などに活用されています。
音声認識
音声をAIに認識させることで、その音声に応じ自動処理する技術です。人が話した内容を文字として変換する、カスタマーサポートの自動対応・生活アシスト、駅案内ロボットなどに活用されています。
自然言語処理
人が日常使う言語をコンピューターにより解析します。AIの導入によりビッグデータが扱えるようになったことから、さまざまな言語の翻訳が可能になりました。「Google翻訳」に活用されるようになったことで、私たちにも身近な技術となっています。
また、最近話題に上っている「chatGPT」も、AIの自然言語処理によるものです。chatGPTとは米国の非営利団体OpenAIが開発したチャットボット。従来のチャットボットのように事前に学習したルールに基づく応答ではなく、学習によって得た膨大なデータに基づき応答をするため、人と人とのような自然な対話や幅広いジャンルの回答が可能なのが特徴です。
自動運転
自動運転には「認知(目)」「予測・判断(頭脳)」「操作」の3つのプロセスが必要とされますが、このうち「予測・判断」のプロセスでAIが利用されています。車に搭載したセンサーや人工衛星の位置情報などから得られた周辺状況をAIが分析して、どのように運転するかを判断し、ハンドルやアクセルなどに操作させます。
自動運転は、利便性の向上や交通事故のリスク削減を実現します。日本では2020年4月から、一定の基準を満たした自動運転のできる自動車が、一定の条件下で公道を走れるようになりました。完全自動運転車の実現を目指し、さらなる開発が進められています。
AIの業種別活用事例
さまざまな業種で、AIを活用したDX推進に取り組んでいます。業種別のAI活用事例を紹介します。
物流業
ドライバーの高齢化やオンラインショッピングの発達による小口荷物の増加などで、物流業の慢性的な人手不足はいっそう深刻化しています。2024年4月に予定されている、自動車運転業務に対する時間外労働上限規制の適用も、この問題に追い打ちをかけそうです。
その解決策のひとつとして、AIの活用が進められています。
- 実績・ノウハウを活用した、配送ルート・計画の自動設定
配送ドライバーが持つ実績やノウハウをデータ化し、AIに学習させることで配送ルートや計画を自動設定させます。人材不足により配送ドライバーの過重労働が問題となるなか、配送の効率化により負担軽減を実現しています。
- 倉庫管理システムによる作業効率化、配置・導線の見直し
AIが倉庫内における荷物の移動データを分析し、作業効率化や配置・導線の見直しを行います。倉庫内の作業が最適化され、作業者の負担軽減へとつながります。
物流業におけるDX事例は以下でもご覧いただけます。
物流におけるDX―業界の課題と推進のポイント、取り組み事例などを紹介!
製造業
製造業では、日々製造される製品に対し目視の検査が必要です。しかし、目視では個人差が出てしまい、検査の精度にばらつきが出てしまうおそれがあります。そのため、画像認識やビッグデータが扱えるAIを次のように活用しています。
- 製造物の傷・へこみ・異物混入などの外観異常検知
製造物の品質維持のため、正確な検査が必要となります。しかし、正確な検査を行うには熟練の技術が必要です。また、熟練の技術者であっても、そのときの体調によって検知ミスを犯す可能性があります。AIにより、精度を落とすことなく安定した検査が可能となります。
- 製造現場の各種データ分析
日々製造現場から蓄積される多量のデータには欠損データも多く含まれ、分析に時間がかかる割には活用できていないケースが多く見られました。データ分析にAIを活用したことで、分析の効率化と精度の向上を実現しています。
製造業におけるDXの必要性や、スマートファクトリーについては以下の記事をご参照ください。
製造業におけるDXの必要性―求められるアクションと推進事例を紹介
小売業
小売業でもカスタマーサポートや人員調整など、作業効率化のためにAI導入が進められています。
- 顧客問い合わせに対するチャットボット
急増する問い合わせに対し、電話やメールによる有人対応では限界があります。そこで、チャットボットを導入することで、よくある問い合わせについては24時間対応可能とし、問い合わせ対応の効率化と顧客の利便性向上につなげています。
- 人員の配置やシフトの自動作成
人員の配置やシフト作成は、各従業員の勤務形態や能力、人件費や時間ごとの多忙さなど、考慮すべき要素が多く、煩雑な作業です。そこにAIを導入することで、最適な人員の配置やシフトの自動作成を実現し、担当者の負担を大きく削減しています。
小売業のDX事例については、以下もご参照ください。
流通・小売業界の課題はDXで解決できる?成功ポイントや事例も紹介
農業
農業は、自然環境による影響が大きく、経験や勘に頼っていた分野です。また、人手不足も問題となっています。AIにより農業のノウハウをデータとして蓄積し、作業を自動化することで問題解決に取り組んでいます。
- 収穫する作物の収穫可否を画像認識により選別する機械
育てている作物の育成状況を、長さ・太さ・色つや・病気の有無などの要素で等級分けをし、AIによる画像認識で、収穫の可否を判断できるようにしています。これにより出荷作業の作業効率化が実現しています。
- 画像解析で散布範囲を限定したドローンによる農薬散布
農薬散布は人の手で行うと、大きなタンクを背負って散布するという大きな負担があります。また、農薬を吸い込むことによる人体への影響も問題とされていました。AIによるデータ分析を活用し、カメラ搭載ドローンによって必要なところにピンポイントの農薬散布を行うことに成功しています。
農業におけるDX事例は、以下もご覧ください。
建設業
建設業では、作業効率や安全性を高めるため、AIの導入が進められています。
- インフラ設備の自動点検
日々使われ続けるインフラ設備の老朽化は安全上大きな問題ですが、さまざまな場所に設置されているインフラ設備を点検するのは、大きな負担となります。目視により行っていた点検をAIによる自動点検にすることで、作業効率化と、点検の質向上を実現しています。
- 無人化施工システム
危険な場所での作業や重機を使った作業など、安全性の確保が難しい作業が発生することがあります。AI技術による無人施行システムにより、危険が伴う作業を無人で行うことができるようになりました。安全性の確保とともに、コスト削減や品質管理の向上にもつながっています。
医療・介護
医療や介護における高度な技術や機器に対しても、AIが活用されています。
- 画像診断
画像診断よる異常の発見は、医師個人の経験や知識により行われており、場合によっては見落とすケースや判断が難しいケースもありました。AIによる画像診断を活用することで、医師個人の経験や知識にかかわらず、異常発見の精度の向上が可能です。
- 介護入居者の観察
介護業界では、慢性的な人手不足が問題となっています。AIを搭載したセンサーによって、介護施設の入居者の動きを察知することが可能です。プライバシーに配慮する必要はありますが、AIにより入居者の位置情報を得られることで、施設スタッフの見回り業務の負担軽減につなげています。
以上のように、社会のいたるところでAIは利用されています。逆にいえば、AIに不具合があれば、社会全体の大損害となることもありえるのです。
そのため、AIには高い信頼性が求められます。AIの信頼性担保のため、注目すべき技術トレンドとして今注目されているのが、「AI TRiSM」です。AI TRiSMについての詳細は、以下の記事をご覧ください。
AI TRiSMとは?DX推進に向けて押さえておくべきトレンド
AIは今後も進化し、課題解決に貢献し続ける
DX推進は、企業が競争力を高めて生き残っていくために、すべての企業に求められる取り組みです。そのDX推進のために重要なデジタル技術のひとつがAIです。紹介したように、すでにさまざまな業種でAIの利活用がされています。
AI技術は日々進化しています。今後社会や市場にどのような変化が訪れても、それに対応できるかたちに変わりながら、 さまざまな業種の多様な課題の解決に、今後も寄与していくことが期待されます。