中小企業でDXを推進するには?現状や成功させるためのポイント

DXやデジタライゼーションは、大手企業だけが華々しく進めるものではありません。中小企業にも、時代に合わせた変化が求められています。トップダウンで全社的に進めていくような取り組みでは、むしろ中小企業のほうが有利な場合もあります。

ここでは、中小企業のDX推進の現状や、成功事例、成功させるためのポイントを紹介します。

※デジタル化には、デジタイゼーション(アナログデータのデジタルデータ化)、デジタライゼーション(業務・製造プロセスのデジタル化)、DX(全体業務・製造プロセスのデジタル化、ビジネスモデルの変革)の3段階があります。今回は、中小企業のDXについて考えます。

国内の中小企業でのDX推進の現状

現状ではまだ、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んでいません。中小企業でDXが進まない原因としては、以下が挙げられます。

  • アナログな文化・価値観の定着
    社内全体に「これまでのやり方で大丈夫」という雰囲気があったり、漠然とデジタル化への抵抗があったりする中小企業は少なくありません。そのような企業では、DXはなかなか進みません。ビジネス環境が激しく変化するなか、アナログな文化のままでは競争力の低下が避けられないことを、経営層、従業員ともに理解しなければなりません。
  • 組織のITリテラシーの不足、人材不足など内部の問題
    組織全体のITリテラシーや人材リソースの不足から、DXを進められないケースが多く見られます。組織のITリテラシーを高めるために、教育の場を設けることが必要です。デジタル人材は多くの企業で不足しており、容易には確保が難しいでしょう。採用と人材育成によるDX人材確保を、長期視点で計画する必要があります。
  • DXへの理解が足りない                                                    経営者層も従業員も、そもそもDXが何を意味するかを正確に理解していない、あるいは、DXの重要性を認識していないといったケースも見られます。特に経営層にDXへの理解が足りず、推進への意欲がない場合は、DXを進めることはほぼ不可能です。また、理解が不十分な状態で明確な目標が定まらないままDXを推進しようとしても、中途半端に終わってしまうおそれがあります。経営層が率先して意識を変え、DXの重要性や進め方などについて、従業員にも共有する必要があります。

デジタル化やDXについて経営層が積極的にかかわることの重要性を、以下で解説しています。
ぜひご参照ください。
中小企業の経営層がデジタル化(デジタライゼーション)を意識することの重要性

なお、コロナ禍においてテレワークの導入が進み、社内会議をオンラインで行うことが増えました。また顧客対応も、オンラインでの商談・営業など非対面で行われるようになりました。コロナ禍は、デジタル化の重要性が再認識されるきっかけになったといわれています。今はDX推進をあらためて検討する好機といえるかもしれません。

業種別 DX推進の成功事例

比較的DXが進んでいる大手企業では、どのようにDXを成功させたのでしょうか。経済産業省が東京証券取引所と共同で選定した「DX銘柄2021」から、業界別に事例を紹介します。

参考:「DX銘柄2021」「DX注目企業2021」を選定しました!|METI/経済産業省

製造:株式会社小松製作所

小松製作所では、一連の建設プロセスを見える化する「スマートコンストラクション」を提供しています。スマートコンストラクションでは、顧客の建設に関するデータをICTでつなぎ、施工管理や進捗など、現場のデータをすべてデジタル化することにより可視化に成功しました。建設のプロセスを変化させ、顧客の業務の無駄をなくして生産性を向上させています。これはまさに新しい顧客体験といえます。

卸売:トラスコ中山株式会社

トラスコ中山では、積極的にさまざまな取り組みや、新しいサービスの提供を行っています。例えば、顧客の手元に必要な工具を在庫化し、必要なときに必要な分だけ商品を利用することができる即納サービス「MROストッカー」を提案しました。需要を分析し予測した商品を配置することで「管理コスト0円」「納期0分」「ムダ買い0個」を実現するツールです。「置き薬」の仕組みに IT技術と高度なデータ分析を掛け合わせたもので、まさにデジタル技術により創出された新しいビジネスモデルといえます。

サービス:株式会社ベネッセホールディングス

ベネッセグループはDX推進を経営計画に盛り込み、トップが率先してさまざまな取り組みを行っています。例えば、グループが展開する通信教育講座「進研ゼミ」では、個人別の学習コンテンツを配信する専用タブレットを受講者に提供しています。専用タブレットでは、約40年間蓄積された進研ゼミの指導・分析データや一人ひとりの学習状況の分析データなどから最適なレッスンを提案。さらにつまずきの原因を自動判定し、苦手克服のための個別指導がなされます。これまでに蓄積された膨大な学習履歴データとAIの活用により、「個別最適化された学習の提供」という新たな顧客価値の創出を実現しています。

物流:SGホールディングス株式会社

佐川急便の持株会社であるSGホールディングスでは、さまざまな場面でデジタル化による業務効率化を行うと同時に、IoTやAIなど先端技術を利用したビジネスモデルの変革も進めています。例えばビッグデータの活用や分析により経営のデータドリブン化を推進。また、AIを導入することで、手書き伝票の入力自動化や配送ルートの最適化、不在予測などを可能にしました。より効率的なロジスティクスを実現し、大幅な業務効率化とともに、サービス品質や顧客の利便性の向上に成功しています。

中小企業でのDX推進を成功させるためのポイント

多くの大企業でDXの推進が見られる一方で、中小企業のDX導入は大企業のようには進んでいません。どうすれば中小企業でもDXを推進できるのでしょうか。いくつかポイントを紹介します。

  • DXの目的はビジネスの変革であることを理解する
    DXの目的は業務のデジタル化ではありません。デジタル化を利用して、全社規模でビジネスモデルや企業風土を変革し、ビジネス環境の変化に対応して競争優位性を確立していくことです。DXの真の目的を経営層と従業員がしっかり理解することが、DX推進の第一歩です。
  • 経営層がリーダーシップをとる
    DXは単なる一業務のデジタル化ではありません。全社規模での改革であり、ビジネスモデルの変革をもたらすものです。そのため、経営層が率先してDXを進めていく必要があります。経営層はデジタルリテラシーを持ち、DX推進の必要性を理解することが重要です。
  • DXに関する情報は全社で共有する
    DXは経営層だけで実現することはできません。社員一人ひとりも、自分はどのような意識を持って何をすればよいのかを把握しておくべきです。そのためには、DXの重要性、計画、実行について全社で意識統一、情報共有をすることが重要です。
  • 内製化が基本だが必要に応じて外部のリソースやサービスも活用する
    中小企業では、DXを推進するためのリソースが足りず、DXの推進が遅れているケースも少なくありません。DXを推進する際は、コアとなる部分は自社内で作成し、ノウハウを蓄積するのが理想です。しかし人材不足でそれができない企業や、資金が足りずデジタル化を進められない企業もあります。

そのような場合は、ITベンダーや自治体のIT導入補助金など、外部のサービスやリソースを利用するのも選択肢のひとつです。ただし、ITベンダーを利用する場合は、ブラックボックス化を防ぐため、ベンダーと情報を共有し、ノウハウを自社内に蓄積する必要があります。

DXの推進は一度で終わりではない

DXは、一度大きな改革を推進したら終わりではありません。DX推進の効果が出たら満足してしまいがちですが、その後も、ビジネス環境は変化し続けます。変化し続ける環境で勝ち続けていくためには、より効率的な方法はないか、より新しいビジネスモデルに変えていくことはできないかなどを考え、改善し続けていくことが重要です。

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