店舗DXとは?意味やメリット、事例、成功のポイントを紹介

近年、小売業界を中心に注目を集める「店舗DX」。店舗DXとは、その名のとおり、店舗ビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を意味します。店舗DXに取り組むことで、顧客体験の向上から業務効率化まで、幅広い効果が期待されています。本記事では、店舗DXの基本概念や導入のメリット、成功のポイントなどを詳しく解説します。デジタル時代における店舗運営にお悩みの方は、ぜひご一読ください。

店舗DXとは

店舗DXとは、デジタル技術を活用して店舗運営を変革する取り組みです。具体的には、スマートフォンアプリやAI、IoTなどの最新技術を店舗に導入し、業務効率化や顧客体験の向上を図ることを指します。店舗DXは小売業界におけるDXの具体的な実践形態といえ、従来の店舗運営に革新をもたらす重要な戦略となっています。

DXについて詳しくは、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

店舗DX2つの種類

店舗DXは大きく分けて2つの種類があります。それぞれの特徴を理解することで、自社の店舗に最適なDX戦略を立てることができます。

  • 店舗運用(オフライン型)DX

店舗運用(オフライン型)DXは、実店舗内でデジタル技術を活用し、業務効率化や顧客体験の向上を図るものです。例えば、キャッシュレス決済やセルフレジ、在庫管理システムや店内分析システムの導入などが、この種類のDXに含まれます。これにより、店舗スタッフの人件費削減や生産性向上のほか、顧客行動の分析に基づいた商品レイアウトの見直しや待ち時間の短縮を通じて、顧客体験の向上につながります。

  • 店舗体験(オンライン型)DX

オンライン型DXは、店舗体験そのものをデジタル化する取り組みです。ECサイトやバーチャルショップの構築、チャットボットによる顧客対応、メタバース広告の掲示など、店舗のデジタル化を通じて新たな顧客体験を創出します。実店舗とオンラインの連携を強化し、いわゆる「オムニチャネル」戦略を実現することで、顧客の利便性を高め、販売機会の拡大につなげることができます。

店舗DXが注目される背景

昨今店舗DXが注目されている背景には、主に以下3つの要因があります。

  • 消費者行動の変化

スマートフォンやSNSの普及により、消費者の購買行動が大きく変化しました。いつでもどこでも商品の情報収集や比較検討ができるようになり、よりパーソナライズされた体験への要求が高まっています。これらの変化に対応するため、デジタル技術を活用した新たな顧客体験の創出が求められています。

  • 技術革新

AIやIoT、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)などの技術が急速に進歩し、より高度な店舗運営ができるようになりました。例えば、AIを活用した需要予測や、IoTセンサーによる店内の動線分析、ARを用いた家具の試し置きなど、これまで実現困難だった施策が可能になり、店舗運営に変革をもたらしているのです。

  • 新型コロナウイルスの影響

コロナ禍により、多くの消費者が非接触型のサービスを求めるようになりました。キャッシュレス決済の普及、セルフレジの導入、オムニチャネル戦略の加速など、安全・安心に配慮したデジタルソリューションの重要性が高まっています。

店舗DXのメリット

店舗DXに取り組むメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

業務効率化

店舗DXの一環としてセルフレジやキャッシュレス決済を導入することで、レジ業務の効率化が進み、店舗運営の生産性が大幅に向上します。また、業務の効率化により、従業員の労働時間削減にもつながるでしょう。

人的ミスの削減

店舗DXでデジタル技術を導入することにより、手作業によるミスを減らし、より正確に業務を遂行できます。例えば、在庫管理システムを導入すれば、在庫の過不足や発注ミスを削減できるでしょう。

人材不足の解消

店舗DXの導入により、自動化やデジタル技術の活用が進むことで、従来人手に頼っていた業務の多くを効率化できます。これにより、限られた人材をより付加価値の高い業務に集中させることもできます。

顧客体験の向上

店舗DXを通じて店内のトラフィックデータや顧客の購買履歴、アプリの利用データを分析することで、個々の顧客ニーズを把握し、よりパーソナライズされたサービスや商品の提案に活用できます。これにより、顧客満足度の向上や新規顧客の獲得といった効果が期待できます。

店舗DX課題

一方で、店舗DXには課題も存在します。

導入・運用コストがかかる

店舗DXの導入には多額の初期費用と継続的なランニングコストが必要になります。特に中小規模の小売店にとっては、この費用負担が大きな障壁となる可能性があります。長期的な視点で費用対効果を確認し、段階的な導入を検討することが重要です。

人材育成が必要

DXを成功させるには、人材育成を通じて従業員のデジタルリテラシーを向上させることが欠かせません。しかし、従業員のデジタルスキルの向上はけっして容易ではなく、十分な教育には時間とコストがかかります。

DX人材の育成方法について詳しくは、「DX人材を育成するには?方法や成功事例、重要なポイントを解説」をご覧ください。

長期的な改善が必要

店舗DXは一度導入して終わりではありません。継続的に社内リソースを投下し、PDCAサイクルを回しながら地道に改善を重ねていく必要があります。短期的な成果が見えにくいため、組織全体のモチベーション維持が課題になることもあります。

店舗DXの成功事例

店舗DXには課題もありますが、店舗DXを成功させた企業はどのような施策を行ったのでしょうか。ここでは、店舗DXに取り組む企業の事例を紹介します。

レジに並ばない会計システムの構築

イオンリテールは2020年3月から、レジに並ばない新たな買い物のスタイルとして「どこでもレジ レジゴー」を本格展開し始めました。このシステムでは、顧客が専用スマートフォンやスマホアプリで商品のバーコードをスキャンし、専用レジで会計することで、レジの待ち時間をなくしています。これにより顧客体験の向上につながり、2023年度には利用件数が5,000万回を超える成果を上げています。

参考:

イオンリテールは3月より、“レジに並ばない”お買物スタイル「レジゴー」本格展開|PR TIMES

【イオンリテール】「レジゴー」展開店舗が300店を突破|PR TIMES

自社アプリの開発によるオムニチャネル対応

カインズは、リアルな店舗とデジタルの融合を目指し、「カインズアプリ」を開発しました。店舗の在庫情報や商品の位置を確認できる機能、商品の注文・取り置き、店舗外ロッカーでの受け取りなどの多彩な機能で、業務効率化を促進しつつ、顧客の買い物体験を向上させるサービスを提供しています。

参考:株式会社カインズ | セールスフォース・ジャパン

AI搭載カメラによる店舗分析

小売業界では、AIを搭載したカメラを店舗に導入し店舗DXを推進している例があります。具体的には、AIカメラで顧客の動線を詳細に把握し、より直感的に買い物しやすい商品の配置に生かしています。さらに、AIカメラにより顧客の入店数を分析し、混雑時間帯のスタッフの増員や閑散期のイベント・キャンペーン企画など、効果的な運営に役立てています。こうした取り組みにより、購買点数や平均客単価の増加、そして顧客満足度の向上が実現しました。

参考:株式会社GRoooVE|入店カウント・店内動線を基にした店舗分析の効果とは?

店舗DXを成功させるポイント

最後に、店舗DXを成功させるために押さえておくべきポイントを紹介します。

店舗DXの目的を明確にする

店舗DXを導入する目的や達成したい具体的な成果を明確に定義し、全社で共有することが重要です。

店舗DXの大きな目的は、顧客体験の向上を通じて売上拡大や競争力強化につなげることでしょう。こうした目的を実現するために、レジの待ち時間の削減、顧客リピート率の向上、在庫回転率の改善などの具体的な成果指標(KPI)を設定します。これらの指標で施策の進捗や効果を可視化し、目的と照らし合わせながら改善を進めることで、効率良く店舗DXを推進できます。

段階的に導入する

全店舗一斉導入ではなく、まずは一部の店舗で小規模な実験(PoC)を行い、効果検証と改善を重ねながら段階的に展開することが効率的です。段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えつつ、各段階での学びを次のフェーズに生かしながら、効果的な店舗DXを進めることができます。

従業員の教育を行う

新しいシステムやツールの使用方法だけでなく、店舗DXの必要性や目的について従業員の理解を深めることが望ましいです。例えば、定期的な勉強会の開催や活動内容の共有、部門横断的なDXプロジェクトへの参加促進などを通じて、従業員が主体的にDXに関わる機会を増やすことが効果的です。また、DXに伴いデータを取り扱う機会が増えるため、データ分析などのリスキリングが必要になる場合もあります。

リスキリングについて詳しくは、「リスキリングとは?DX推進のための人材確保に不可欠な戦略」をご覧ください。

適切なサービスの選定

自社のニーズに合ったソリューションを慎重に選定し、長期的な視点で導入を検討することが重要です。例えば、店舗オペレーションの改善を図る場合はPOSシステムと連動した販売管理ソリューションが、顧客体験の向上を重視する場合はデジタルサイネージを用いた商品案内システムが適しているでしょう。

また、発注業務・棚卸や返品、在庫管理を効率化したい方には、ユーザックシステムの「Pittaly(ピッタリー)」がおすすめです。スマートフォンでバーコードをスキャンするだけで、どこでも簡単に発注や棚卸作業ができます。

iphone、Android向け店舗発注アプリ Pittaly|ユーザックシステム

店舗DXで目指す持続可能な店舗運営

店舗DXは、単なるデジタル技術の導入ではなく、顧客体験の向上と業務効率化を通じて、店舗の価値を見直す大きな取り組みです。本記事で解説した基本概念、メリット、注意点、そして成功のポイントを押さえながら、自社の状況に合わせた店舗DXを推進しましょう。

現在、自社のデジタイゼーションやデジタライゼーションがうまく進められていないのであれば、ぜひユーザックシステムにご相談ください。さまざまなツールにより、幅広い業種でのデジタイゼーションやデジタライゼーションをサポートしています。

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