こんにちは、大崎です。
前回は「生成AIが開くマーケティングの新時代」と題して、AIがマーケティングに与える大きなインパクトを整理しました。
今回のテーマは、その延長線上にある「マーケティングの役割の再定義」です。生成AIの登場によって、マーケティングの仕事はどのように変わり、マーケターにはどんな力が求められるのでしょうか。
従来のマーケティングの役割
これまでのマーケティングは、大きく分けて以下の役割を担ってきました。
- リサーチ:顧客や市場の情報を集め、分析する
- コンテンツ制作:広告コピーや記事、資料を作成する
- キャンペーン運営:広告やイベントを企画し、実行する
- 効果測定:成果を数値化し、次の施策に活かす
この流れは長年続いてきました。デジタル化が進み、SEO、SNS、MAツールが加わっても、基本構造は変わらず「情報を集め、加工し、届ける」という枠組みの中に収まっていました。
マーケターとして日々現場に立っていると、『時間の大半は作業に取られているな』と実感します。
生成AIの登場による役割の変化
生成AIは、この従来の構造に大きな変化をもたらしています。ポイントは「作業」と「戦略」の切り分けが進むことです。
1.作業の自動化
- 記事の下書き、広告コピーのアイデア出しはAIが短時間で可能に
- データ整理やレポートの初稿もAIが担うようになる
2.戦略の強化
- 人間はAIが出した結果を編集・判断し、ブランドや顧客戦略に活かす
- 「どう顧客に価値を届けるか」を考える時間が増える
3.意思決定支援
- AIは膨大なデータからパターンを抽出し、示唆を提示する
- ただし最終判断は人間に委ねられる
つまりAIは「代行者」というよりも「参謀」に近い役割を果たすようになっていきます。

マーケターに求められる新しいスキル
こうした変化の中で、マーケターに必要な力も変わっていきます。
1.AIを使いこなす力
- AIを単なる便利ツールとしてではなく「チームメンバー」として活用する
- プロンプト設計やAIとの対話力が新しいスキルとなる
2.編集力・批判的思考
- AIの出力はそのままでは不十分。ブランドらしさを維持するために、人間が意味づけを行う必要がある
- 「どこを活かし、どこを修正するか」を判断する力が鍵となる
3.戦略構想力
- AIによって省力化された時間を活かし、顧客体験全体を設計する
- 経営と直結した戦略を描くことがますます求められる
未来のマーケティング部門像
これは私の持論ですが、マーケティングは“編集”の仕事に近づいていると思います。
生成AIが普及した未来、マーケティング部門はどのように変わるでしょうか。いくつかのシナリオを描いてみます。
- AIが同僚になる職場
ルーチンワークはAIが引き受け、マーケターはAIに「指示を出す」役割を担う。チームの中に「AI担当者」がいるのではなく、全員がAIを相棒として扱うイメージです。
- マーケターは編集長的存在に
AIが生成する無数のアイデアやデータを、人間が取捨選択して「物語」に仕立てる。マーケターは“戦略の編集者”としての立場を確立していくでしょう。
- 経営に近い存在へ
顧客理解とデータ活用を武器に、マーケティングは経営戦略の中核に。生成AIが作業を支えることで、マーケターはより上流の意思決定に携わるようになる可能性があります。
歴史から見える再定義の必然性
マーケティングは常に新しい技術によって形を変えてきました。
- インターネット広告が登場したとき、広告の主戦場は紙からWebへ移行しました
- SNSの普及によって、企業は「発信者」から「対話者」へと変わりました
- マーケティングオートメーションが広がると、リード育成やキャンペーン運用が体系化されました
生成AIの登場は、この流れの延長線上にあります。しかし今回の変化は単なるツールの追加ではなく、「マーケティングとは何か」という根本的な問い直しにつながる点で、過去の変化よりも本質的です。
変化を恐れるか、チャンスと捉えるか
もちろん、生成AIの普及は不安も伴います。従来の「作業」を担ってきた人にとって、役割が縮小するように感じられるかもしれません。しかし視点を変えると、これは大きなチャンスです。
- これまで手をつけられなかった戦略課題に集中できる
- 顧客体験の質を高めることに時間を使える
- マーケティングが「企業の未来をつくる」立場へ一歩近づける
生成AIはマーケターの存在価値を奪うのではなく、「本来やるべき仕事」に立ち返らせてくれる技術だと言えるでしょう。
個人的には、各社が生成AIを活用することで似たり寄ったりなアウトプットになる可能性があるので、メンバーには当社の独自性を出すよう言ってます。
まとめ:マーケティングの再定義が始まる
生成AIの登場によって、マーケティングの役割は大きく変わろうとしています。作業から解放されたマーケターは、より戦略的・創造的な活動に集中することになります。
つまり、これからのマーケティングは「効率化」ではなく「再定義」のフェーズに入ったと言えるでしょう。マーケターはAIを活かしながら、顧客と企業をつなぐ新しい形を築いていくのです。
次回予告
第3回では「生成AIが拓くマーケティングの可能性」をテーマに、顧客理解の深化やマーケティングの民主化について掘り下げていきます。