いま注目されるSXとは?重要視される理由やDX・SDGsとの関係などを解説

いま注目されるSXとは?重要視される理由やDX・SDGsとの関係などを解説

昨今耳にするようになった用語の「SX」は、企業と社会のサステナビリティを保つ取り組みであり、DX推進とも大きく関連します。SXは具体的にどのような内容を指し、なぜ重要視されているのでしょうか。また、DXとはどのようにかかわっているのでしょうか。

本記事では、SXの内容や、DXやSDGs との関係、SXの事例などを紹介します。

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SXとは?

SXとは“Sustainability Transformation” (サステナビリティトランスフォーメーション)の略称で、経済産業省が設置した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」で提唱されました。

「企業のサステナビリティ(企業の稼ぐ力の持続性)」と「社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿や持続可能性)」を両立させる、経営や対話のあり方を指します。

ここでいう社会のサステナビリティとは、社会や環境がより良い状態で持続するよう配慮する企業の姿勢を指す、「ESG」に置き換えることもできます。ESGはSX同様、昨今よく聞く言葉で、“Environment” (環境)、“Social” (社会)、“Governance” (ガバナンス)の頭文字を取った略称です。気候変動問題や人権問題などのさまざまな課題が山積みになっている現代、企業が長期的に成長するには、ESGに配慮する姿勢が必要とされています。

現代は、社会やビジネスでの変化が激しく未来の予測が困難な、VUCA時代(ブーカ時代:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))といわれています。そんな時代において企業価値を維持・向上させて生き残るために有用な戦略指針として、SXが注目されているのです。

SXは、すでにその言葉が浸透してきたSDGsやDXとも関係してきます。

SXとSDGsとの関係

SDGsとは“Sustainable Development Goals”の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。2015年の国連サミットにて採択された、環境問題や人権問題など、ESGにかかわるような地球上のさまざまな問題を、2030年までに地球規模で解決していこうという取り組みです。

SDGsは17の目標と169のターゲット、231の指標で構成されています。

SDGsとSXの目的は同じ方向にあるため、SDGsに取り組むと自然にSXの実現につながることが期待できます。SDGsの目標やターゲット、指標を活用し、SXへの取り組みの具体的な方向性を決めるのもよいでしょう。SDGs の17の目標と169のターゲット、231の指標については、総務省が仮訳した内容を下記からダウンロードできます。

SDGsの17の目標と169のターゲット、231の指標(総務省仮訳)

SDGsについて詳しくは、「SDGsとDXはどう関係する?「Society 5.0」とあわせて解説」をご覧ください。

SXとDXとの関係

DXとは、デジタル技術の活用によって組織やビジネスモデルなどを変革し、新しい価値を創造して社会のニーズに応えていくことです。経済産業省の発行したDX推進指標では、次のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

引用:「DX推進指標」とそのガイダンス(PDF)|経済産業省

DXもSXも、企業が生き残るため、これまでのあり方を変革して新しい価値を創造していくものであることは、共通しています。

違いは、SXは長期的な成長を視野に入れた取り組みである一方、DXは、「2025年の崖」が目前に迫っていることもあり、SXと比較すると短期的な成果が期待される取り組みとなっていることです。

ただし、両者は優劣をつけるべきものではなく、このあと紹介するように、SXはDXの価値をより高める関係性にあります。

なお、2025年の崖とは、レガシーシステムを使い続けてDXを推進しないでいると、市場競争での競争優位性の維持・向上が困難になり、2025年以降に大きな経済損失が発生するとされている問題です。詳しくは「2025年の崖とは?意味と企業への影響、克服するためにすべきことを紹介」をご参照ください。

また、DXについての詳細は【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

なぜいまSXが重要視されるのか?

なぜいま、SXが重要視されているのでしょうか。主に次のふたつの理由が考えられます。

  • 企業が投資家の理解を得るため

経済産業省が2020年に発表した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ」のなかで、下記の内容について、企業は投資家から理解されにくいと指摘されています。

・多角化経営やそれに伴う複数事業のポートフォリオ・マネジメントの在り方

・新規事業創出やイノベーションに対する「種植え」に関する取組

・ESG/SDGs などの社会的価値と企業の稼ぐ力・競争優位性に基づく経済的価値の両立に向けた取組

引用:サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ(PDF)|経済産業省

これらは、不確実性が高まりESG投資が求められる昨今において、企業が長期的に存続するために必要な取り組みです。しかし、その取り組みについて投資家と企業の間で認識にギャップが生じやすいため、投資家の理解を得るために質の高い対話が求められます。投資家の理解を得て、企業が生き残るための価値創造がしやすい環境を整えるために、対話のあり方を変革するSXが重要視されているのです。

  • DXやSDGsとも大きく関係しているため

競争力強化のためにあらゆる企業に求められる取り組みのDXと、社会や環境との共存のためあらゆる企業に求められるSDGs。先に説明したとおり、これらの実現に必要な概念としても、SXは重視されています。

特に、このあと説明するように、SXはDXの価値をより高めるものとして強く期待されています。

DXの価値を高めるSX

SXはDXの価値を高めます。では、どのように価値を高めるのでしょうか。

  • DXによる価値を持続可能なものにする

DXによって、顧客に新しい価値を提供することは可能です。しかし、DXだけでは「時間軸の視点」がなくなりやすく、一過性の新しい価値提供に終わる可能性が高くなってしまいます。そこに「中長期的な視点」を持って推し進めるSXを組み込むことで、今後事業環境が変化しても対応でき、DXで新しい価値を提供し続けられる体制となっていくことが期待できます。

  • DXを社会貢献につなげやすくなる

DX単独では、業務効率化や収益向上など、「自社」のみに視点を置いた新しい価値提供に終わるケースが考えられます。そこに「社会のサステナビリティ」を含むSXの視点を加えると、DXを社会貢献につなげやすくなります。

また、DXがSXの実践に役立つ場合も考えられます。

例えば、DXによってビッグデータを収集したとしましょう。こうしたデータを分析してまとめ、投資家を含めたステークホルダーに、自社が「持続可能な社会」に貢献している企業であると証明することも可能です。DXのデジタル活用により、SXに求められる「投資家との対話」のあり方の変革につなげることが期待できます。

SXの事例

SXの事例を、国内と海外、それぞれ2例ずつ紹介します。

MEGURUBOXプロジェクト(国内)

「水平リサイクル(使用済みの製品が資源となり元と同じ製品として生まれ変わるリサイクル)」の実現を目的とした、プラスチック資源の回収事業です。

エステーや花王、ライオンといったさまざまな日用品メーカーが参加しています。同プロジェクトでは、北九州市の小売店や公共施設などに回収箱「MEGURU BOX」を設置し、使用済みプラスチックを回収します。回収したプラスチックを利用して、より環境への負荷の少ないプラスチック製品の研究開発に活用し、回収品1個につき5円を地域の社会支援団体に寄付する仕組みです。参加企業は、自社の長期存続につながる環境負荷の少ないプラスチック製品の開発ができると同時に、環境保護や地域の活性化などの社会貢献も実現できます。

2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト(国内)

傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開するNature Innovation Groupが、使い捨て傘ゴミの削減を目的に立ち上げたエコプロジェクトです。雨が降るごとに60万本の傘が購入・消費されており、なかでも使い捨てされるビニール傘の消費本数は年間8,000万本ともいわれています。

大手企業を巻き込むことで、いつでもどこでもアイカサを借りられる仕組みの拡大を狙っています。ビ二-ル傘購入の主な理由と考えられる「突然の雨」に遭遇した場合に、アイカサのようなシェアリング傘の利用をあたりまえにすることを目指します。2030年までに使い捨て傘をゼロにすることが、プロジェクトの最終目標です。

自動販売機Smart Fill(海外)

世界的な日用品メーカーであるユニリーバ社が開発した自動販売機「Smart Fill」は、一般の自動販売機にはない特徴があります。

消費者が家にある容器を持参し、必要な製品と量を自動販売機で設定すれば、新たな容器を消費することなく、ユニリーバの製品を必要な量だけ購入することが可能です。プラスチックの排出量の抑制と自社の収益確保を両立させています。

Coop Visbyの取り組み(海外)

スウェーデンのゴットランド島にあるスーパーマーケットCoop Visbyでは、食品廃棄物を減少させる取り組みを積極的に行っています。

例えば、地元の蒸留所と連携して、売れ残った炭水化物やパッケージが破損したコーヒー豆を利用した蒸溜酒やリキュールを製造しています。また、売れ残った野菜や肉などをコンポストマシンで堆肥化して園芸用の土につくり替え、自社で使用したり販売したりしています。ほかにも、食品ロス削減アプリケーションを導入して食品廃棄物量のデータを集め、仕入れの調整を積極的に行っています。

以上のような取り組みにより、収益の確保、無駄な経費の削減、環境への配慮などを同時に実現しました。

SXの視点をDXに取り入れてサステナブルな企業へ

2025年の崖が目前に迫り、DX推進による成果を急ぐ企業もあるでしょう。しかし、不確実性が高まっている現代社会では、一度成果につながった変革がすぐに通用しなくなることも考えられます。DXは本来、短期で終わらせる取り組みではなく、中長期的な視野で継続していく取り組みです。

短期的な取り組みと捉えられがちなDXに、長期的な成長を目的とするSXの視点を取り入れることができれば、社会の変化に柔軟にかつ持続的に対応できる、競争力の高い企業となるでしょう。

SXとDXそれぞれの意義や関係性をしっかりと理解し、企業力向上につなげていきましょう。

参考: