BtoB ECとは?基礎知識から構築方法、成功のポイントまで解説

企業間取引のデジタル化が急速に進むなか、「BtoB EC」への注目が高まっています。BtoB ECとは、企業間(Business to Business)の取引をインターネット上で行う電子商取引のことです。近年、従来の対面や電話、FAXなどによる受発注から、オンラインプラットフォームを活用した取引へと移行する企業が増加しています。本記事では、BtoB ECの基本概念から市場動向、導入のメリットとデメリット、サイトの構築方法まで、幅広く解説します。BtoB ECの導入を検討している企業の方々に参考にしていただければ幸いです。

BtoB ECの基本

まずは、BtoB ECの意味や類似概念との違いについて解説します。

BtoB ECとは

BtoB EC(Business to Business Electronic Commerce/企業間電子商取引)とは、インターネットを介して企業間で行われる商取引のことを指します。具体的には、企業間の受発注、見積もり、請求書発行、決済などのプロセスを電子化し、オンラインプラットフォーム上で行うビジネスモデルです。

BtoB ECの主な目的は、インターネットを通じてより多くの顧客に製品・サービスを提供し、新たな取引機会を創出することにあります。

  • EDIとの違い

BtoB ECを理解するうえで、しばしば混同されるEDIとの違いを押さえておくことが重要です。

EDI(Electronic Data Interchange/電子データ交換)とは、主に既存の取引先との間で、定型的な取引データを効率的にやり取りするために使用されます。例えば、従来紙でやり取りしていた帳票を電子化する場合に使われます。

一方、BtoB ECは商取引を電子化するだけでなく、取引先の需要や決済状況に応じて、柔軟にマーケティング戦略を展開できるのが特徴です。新規顧客の開拓や、多様な取引形態に対応できるため、ビジネスの拡大につながります。

つまり、EDIが主に既存の取引関係の効率化を図るツールであるのに対し、BtoB ECはより広範囲な企業間取引や新規取引先の開拓、さらにはマーケティングまで視野に入れた包括的なプラットフォームといえます。

EDIについて詳しくは、「EDIの教科書 ~EDIの始まりから流通BMS、ISDN終了問題(2024年問題)まで~」で解説しています。

BtoC ECとの違い

続いて、一般消費者向けのBtoC ECとの違いを解説します。BtoB ECは、BtoC ECと比較して、取引規模が大きく、複雑な価格体系や承認プロセスを必要とすることが多いのが特徴です。

主な違いをまとめると以下のようになります。

  BtoB EC BtoC EC
取引対象 企業間 企業と一般消費者間
取引の特徴 ・取引額が大きい
・購買・承認プロセスが複雑で長期化しやすい
・取引額が比較的小さい
・購買決定までが比較的早い
・不特定多数の消費者が対象
価格設定 取引先ごとに異なる価格設定がある 基本的にすべての消費者に同一価格で提供
決済方法 請求書払い、企業間決済が中心 クレジットカード、電子マネーなどが中心

BtoB ECに必要な機能

また、BtoB ECはその性質上、BtoC ECとは異なり以下のような機能が必要となります。

  • 企業情報管理機能

取引先の企業情報や取引条件を一元管理する機能です。

  • 見積り管理機能

複雑な価格体系や大口注文に対応し、迅速かつ正確な見積書の作成と管理を行う機能です。

  • 承認フロー機能

企業内の複数階層による発注承認プロセスを電子化する機能です。

  • 決済管理機能

多様な決済方法(銀行振込、クレジットカード、掛売りなど)に対応し、取引先ごとの決済条件や与信限度額を管理する機能です。

  • 掛率管理機能

取引先や商品カテゴリーごとに異なる掛率(定価に対する販売価格の比率)を設定・管理し、柔軟な価格戦略を実現する機能です。

  • 販路管理機能

商品ごとに販売可能な取引先を設定し、販売チャネルを管理できる機能です。

BtoB ECの種類

こうした多様な機能を備えるBtoB ECは、主に「クローズド型」と「スモール型」の2種類に分けられます。

  • クローズド型BtoB EC

クローズド型は、既存の取引先とのやり取りに特化したシステムです。事前に登録された特定の企業間でのみ取引が行われるため、セキュリティ面で優れています。また、取引先ごとにカスタマイズされた価格設定や取引条件を適用しやすいという利点があります。

例えば、製造メーカーが部品サプライヤー向けに構築し、登録された取引先企業のみがアクセスできるようなサイトがこれに当たります。

  • スモール型BtoB EC

スモール型は、多数の売り手と買い手が参加できる開放的なプラットフォームで、BtoCのECサイトと類似した形態ともいわれます。小規模な企業や取引金額の小さい企業も顧客として取り込むことができるのが特徴です。このタイプは、新規顧客の獲得や市場の拡大を目指す企業に適しています。

例えば、UCCグループが運営する「フーヅフリッジ」では主に飲食店向けの業務用食材を、「モノタロウ」ではオフィス家具や物流用品などを広く販売しています。

なお、近年の傾向として、「半クローズド型(セミクローズド型)」と呼ばれるBtoB ECサイトも注目を集めています。これは、サイトへのアクセスはオープンにしながらも、商品詳細の閲覧や購入には会員登録が必要となるような形態です。

例えば卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」では、誰でも商品の閲覧ができる一方、卸価格の確認や仕入れには会員登録を求めています。

BtoB ECの市場動向

ここでは、BtoB ECの市場について解説します。

国内BtoB ECの市場規模とEC化率

経済産業省の調査によると、国内のBtoB EC市場規模は年々拡大しており、2022年時点で約420.2 兆円(前年比12.8%増)でした。また、EC化率(すべての商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合)は、BtoC ECで 9.13%に対し、BtoB ECでは37.5%であり、こちらも増加傾向です。

引用:令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書|経済産業省

BtoB EC市場拡大の背景

このような市場拡大の背景には、DX推進の重要性や、アナログからデジタル化への移行需要が増していることがあります。多くの企業が業務効率化のために、従来の紙ベースや電話による取引から、オンラインでの取引へと移行しています。

また、AIやIoT、クラウドサービスといった情報技術の進化もあり、BtoB EC市場は今後も拡大を続けていくことが予想されます。

BtoB EC導入のメリット・デメリット

BtoB ECの導入には、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 受発注業務の効率化

BtoB ECの導入により、従来は手作業で行っていた受注処理や発注作業が自動化されます。例えば、注文書の入力や確認、在庫チェックなどがシステム上で瞬時に行われるため、人的ミスが大幅に減少し、業務の効率化につながります。

  • 新規顧客獲得と販路拡大

BtoB ECを取り入れることで、時間や地理的な制約を受けずに、新規顧客の獲得や販路の拡大ができます。特に、従来の対面取引では難しかった遠隔地の顧客へのリーチが可能になる点は大きなメリットといるでしょう。

  • データ活用によるマーケティング強化

BtoB ECの導入で取引データの蓄積と分析が可能になることで、顧客ニーズの把握や効果的なマーケティング戦略の立案に活用できます。例えば、顧客の購買パターンを分析し、クロスセルやアップセルの機会を見出すことができます。

デメリット

  • 初期・運用コストの負担

BtoB ECの導入には、システム構築や既存業務との統合に伴う初期費用がかかります。また運用時には、システムの保守・アップデート費用や、カスタマーサポートのための人件費など新たな負担が生じる可能性があります。

  • 取引形態の変化への対応

アナログ形式からオンライン取引への移行により、既存顧客へのフォローが必要になります。特に、デジタルに不慣れな顧客に対しては、丁寧なサポートが求められるでしょう。

BtoB ECサイトの構築方法

BtoB ECサイトの構築方法には、主に3つのパターンがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

ASP(SaaS)型

ASP(Application Service Provider)型またはSaaS(Software as a Service)型は、クラウド上のサービスを利用する方式です。初期費用を抑えつつ迅速な導入でき、運用時のメンテナンスも、多くの場合ベンダーに任せることができます。一方で、大幅なカスタマイズは難しい場合があるため、標準的な機能で十分な企業には適しています。

パッケージ型

パッケージ型は、既製のソフトウェアを必要に応じてカスタマイズする方式です。ある程度の柔軟性と安定性を兼ね備えており、企業特有の要件に対応できます。導入までの期間はASP型より長くなりますが、自社の業務に合わせた調整が可能です。

フルスクラッチ開発

フルスクラッチ開発は、完全にオーダーメイドで一からシステムを構築する方式です。独自の業務フローや要件に柔軟に対応できるため、特殊な取引形態や複雑な価格設定が必要な企業に適しています。ただし、開発期間とコストは他の方式に比べて大きくなる傾向があります。

BtoB EC導入のポイント

最後に、BtoB ECを導入する際の重要なポイントを解説します。

複雑な受注業務に対応できるシステムを選ぶ

BtoB ECを導入する際は、BtoB取引特有の複雑な受注業務を柔軟に処理できるシステムが望ましいです。必要に応じて、それらの業務を自動化できるツールを併用することで、業務効率の大幅な向上と顧客満足度の改善が期待できます。

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基幹システムと連携する

既存の基幹システムと、BtoB ECサイトをシームレスに連携させることが重要です。在庫情報や顧客データ、受発注情報などをリアルタイムで共有することで、より正確で効率的な業務運営ができます。例えば、ECサイトで受けた注文情報を自動的に基幹システムに反映することで、在庫管理や出荷指示までスムーズに行えるようになるでしょう。

RPAを活用し、基幹システムと連携することも可能です。ユーザックシステムの「Autoジョブ名人」は、受注業務の自動化に強いRPAとして、基幹システムとも柔軟に連携し受注業務の負担を軽減します。

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購買企業のニーズに配慮する

BtoB EC導入の際は、購買する側の企業の利便性も考慮しましょう。使いやすいインターフェース、柔軟な支払い方法、詳細な商品情報の提供など、購買企業のニーズに応えることが大切です。同時に、急なBtoB ECの導入による顧客の混乱を避けるため、例えば、従来の取引方法と並行してBtoB ECを運用するなどし、互いに安心して取り引きできる体制を作ると良いでしょう。

BtoB ECの導入でデジタル時代の企業間取引を進めよう

BtoB ECは、企業間取引の効率化と新たなビジネス機会の創出に大きな可能性を秘めています。本記事で解説したポイントを参考に、自社の状況や目的に合わせたBtoB ECの構築と運用を進め、持続的な成長につなげていきましょう。

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