変化の激しいビジネス環境に、柔軟に対応できるEDIシステム
流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)とは
流通BMSは、流通業界全体の業務効率化・コスト削減を目的とした新たなEDIのガイドラインです。大手小売業を中心に採用が進んでいます。
流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準の略)とは、経済産業省の「流通システム標準化事業」により、日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会などの業界団体が検討を重ねて作成された、EDIの新しいガイドラインです。
流通BMSの普及によって、流通業界全体の業務効率化・コスト削減につながると期待されています。
何が変わるのか?
通信インフラの標準化
通信手段が電話回線からインターネットに切り替わったため通信速度が向上。通信コストや送信時間の削減につながります。インターネットに切り替わったため、専用モデムも必要ありません。また、今まで実現できなかった画像データの送信も可能になりました。
メッセージフォーマットの統一
また、メッセージのフォーマットも小売業全体で標準化されました。これまでは、小売業ごとにフォーマットが異なっていたため、EDIの相手先が増えるたびにシステム開発が必要でしたが、今後はどの小売業にも同じシステムが使えるため、開発期間や開発コストが大幅に削減されることになります。これは画期的な出来事です。
検品レス、伝票レス
流通BMSは、通信時間の短縮、通信コストや開発コストの削減というメリットに加え、業界全体の業務改善を促進するという大きな狙いもあります。
それは、従来のEDIでも一部の小売企業で実施されてきた「検品レス・伝票レス」です。 流通BMSでは、伝票レスの取引を想定しており、納品書や受領伝票のやり取りもEDIに置き換える事で、紙の伝票を無くし、事務処理コストや伝票代の削減が可能になります。
すべての小売業のEDIメッセージを統一する画期的なプロジェクトで、JCA手順の課題を解決
JCA手順によるオンラインの課題を解決するため、小売・卸・メーカーが集結。通信回線がインターネットになり、各社バラバラであったEDIメッセージを統一しました。 40年近くにわたり利用されてきたJCA手順がいよいよ終結に向かいます。※2024年問題とは?EDI再構築のポイント 参照
1982年、日本チェーンストア協会に加盟する小売企業が中心となりオンラインを標準化、JCA手順が制定されました。1985年にはVAN事業が全面的に自由化され、これまで小売が自らおこなっていたデータの集配信をVAN事業者に委託し、JCA手順によるオンラインが一気に普及しました。
取り扱うデータも受注から出荷、請求、支払などに拡大しEDIと呼ばれるようになりました。しかし長年各企業にメリットをもたらしたEDIは、様々な問題点が浮き彫りになってきたのです。
これまでのEDIの問題点
(1)小売毎の対応が必要
やり取りするメッセージ(受注や請求データのこと)の内容が小売企業毎にバラバラで、注文を受ける企業では各社ごとのシステム開発が必要だった。
(2)モデムの入手が困難
電話回線を利用するために必要となるモデムが製造されなくなってきた。
(3)通信速度が遅い
データ量が増大した現在、通信速度が遅いため、出荷などの業務に支障をきたしている。
さらに近年、WebEDIといわれるインターネットを利用した受発注システムが普及しています。これはブラウザ操作により受注データをダウンロードするため手作業を伴います。各社毎に操作方法が違うばかりか、自動化が非常に困難です。
こうしたEDIの問題を解決するため、経済産業省は流通システム標準化事業を推進してきました。小売・卸・メーカーなど多くの企業や団体が参加し検討を重ね、実証実験を通してまとめられたのが「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)」です。
ここで、流通BMSの特徴をもう一度ご紹介します。
流通BMSの特徴
(1)メッセージフォーマットの統一
小売毎バラバラであったメッセージを統一し、どこでも同じシステムの利用が可能になる。 流通BMSVer1.3の基本メッセージは、発注、出荷(3種)、受領、返品、請求、支払データが標準化され、食品、酒類、日用品などで利用されている。
(2)通信インフラの標準化
流通業界では日本独自のJCAや全銀、全銀TCP/IP手順が利用されてきた。流通BMSはインターネットによる通信手順 ebXML MS、EDIINT AS2、JX手順の3つが採用され、高速通信を実現している。
(3)検品レス、伝票レス
これまで小売が入荷をおこなうにはチェーンストア統一伝票と商品の検品が必要であったが、卸・メーカーが正確な出荷検品を行い、事前に出荷データを小売に送信することで、入荷検品および伝票発行を無くすことができる。
流通BMSの最大の特徴は、対象とする業務プロセスを明確に整理したことで、メッセージ種及びデータ項目の定義がより明確になったことです。
そして多くの業界・業態が参加して標準を策定したことも大きな意味を持ちます。
これにより小売とのEDIが統一され、個別開発から解放されるのです。
また、通信はインターネットを利用するため、通信速度が格段に向上しました。
そして「検品レス・伝票レス」を実現し、業界全体の業務の効率化を目指しています。
経済産業省から事業を引き継ぎ、流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)を運営する財団法人流通システム開発センターは「流通BMSは流通業界の共通インフラであり、より多くの企業に導入してもらいたい」とし、維持・普及に取り組んでいます。
流通BMSは流通業界のインフラ
流通BMSの制定は経済産業省の主導によって行われたと思われがちですが、発端はスーパー業界のニーズです。消費税の内税対応が一段落した2004年の暮れに主なGMSの情報システム部長が集まり、技術的な限界が見えていたJCA手順の後継となる標準EDIの必要性が話し合われました。
この流れは、2005年6月の日本チェーンストア協会と日本スーパーマーケット協会の合同情報システム委員会開催に発展します。
ここに両協会の情報システム委員会に所属する25社が集まり、次世代EDIの標準化について合意しました。
同年8月には、両協会加盟の12社が参加した「次世代EDI標準化WG」が発足し、イオン、イトーヨーカ堂、ダイエーなど、それまではお互いの業務内容を見せ合うことなど考えられなかったライバル企業同士が、各社のメッセージ項目を同じテーブルに持ち寄るという画期的な動きにつながったのです。
財団法人流通
システム開発センター
研究開発部 部長
坂本尚登 氏
検討の当初では「当面は通信手順の変更を優先し、その後にメッセージ標準化を行う」という議論もありましたが、「それでは各小売個別のデータフォーマットの変換という負担を取引先にかけ続けることになり、サプライチェーン全体の効率化は実現できない」という意見に一蹴されるという一幕もありました。
卸・メーカーの皆様もこのような経緯をご理解いただき、流通業界の共通インフラとして最大限の効果を発揮できるよう、小売業の流通BMS導入の要請には積極的に取り組んでいただきたいものです。
2.卸・メーカーにおけるメリット
(1)メッセージの統一化で開発コストが大幅に削減される 100社の取引先1社につき5年に1回プログラムを改修する場合、1回あたり10万円のコストがかかるとして10万円×20本/年=200万円/年の維持コストが削減可能。 |
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(2)通信時間が短縮され通信コストが削減される 流通BMSはJCA手順に比べて約93%の時間短縮が実証されている。 通信コストの削減メリットも大きいが、1時間早く出荷業務に取りかかれる効果は計り知れない。 |
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(3)伝票レスにより伝票発行時間とコストが削減される 複写式の伝票そのものは1枚当たり数円だが、一連の業務に関わる人件費を考えると、それぞれの企業で1枚当たり数十円のコストが発生しているという試算もある。 |
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(4)出荷業務の品質向上につながる 小売にとっての「検品レス」は卸・メーカーに出荷精度の向上を求めている。 |
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(5)売掛照合がタイムリーにおこなえる 受領データは小売から日々受信。 これまで月単位の売掛照合が毎日チェックできる。 |
「何を検討すればよいかわからない」企業のために、 流通BMS導入に失敗しないためのチェックポイント
2024年問題への早急な対応をと考えてみたものの、「いざシステムを導入しようとすると、何を検討すればよいかわからない」 そんな企業のために、流通BMS導入に失敗しないためのチェックポイントをご紹介します。
流通BMSを導入~パッケージソフトはどんなものがあるのか?
流通BMSに対応できるソフトウェアは大きく3つにわけることができ、それぞれにできること・できないことがあります。
特定の小売専用に開発されたパッケージソフトは、その小売との取引のみが完結できますが、基幹システム等の外部システムとの連携は考慮されていません。
通信ソフトウェアでは、受注・出荷などの業務機能は提供されていないことがほとんどです。
その点、EDI汎用ソフトウェアは、EDI業務を効率化するために考えられていますから、受注から出荷までの業務が効率化できるのはもちろんのこと、基幹システムとの連携もシームレスに行えます。
EOS名人は、EDI汎用ソフトウェアに分類され、流通BMSだけでなく、レガシーEDIにも対応しています。
取引する小売りの増加に対応する
(1)小売りの追加に対応しやすいか ~小売ごとに異なる対応が必要と考えよう~ 同じメッセ―ジ(たとえば受注データ)でも小売により利用する項目が異なる場合があります。 基幹システムとの連携も項目ごとにデータ変換するため、1社対応したからといって、そのまま他社の流通BMSに対応できるとは限りません。流通BMSといえども小売毎に対応するという考えが必要です。 |
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(2)小売りの追加のコストは適切か、または自社開発可能か ~2社目以降の追加コストを事前に把握しておこう~ 特定小売専用ソフトは2社目以降は対応できないものがあります。また追加できる場合でもそのコストはいくらかかるか、自社で簡単に開発できるか、あらかじめ把握しておきましょう。 |
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(3)将来、拡張性のあるシステム構成か ~データ量に応じた機器を選定しよう~ 1回で受信するデータ量に応じてシステムを選定する必要があります。データ量が多い場合はサーバーOSでの運用が望ましいと言えます。 またバックアップシステムも検討しておきましょう。 |
開発コストを抑える
(1)データマッピング機能は使いやすいか ~EDIの追加は自社でコストをかけずに開発しよう~ パッケージソフトの選定で確認したいのがデータマッピング機能の使いやすさ。新たな小売の追加や基幹システムと連携する際に必ず必要となります。 特にJCAの変換にも利用する場合は、その使いやすさが生産性に大きく影響します。 |
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(2)基幹システムとの連携は容易か ~基幹システムと柔軟に連携できるパッケージを選定しよう~ パッケージソフトを導入してから気づくのが基幹システムの連携の必要性。特定小売専用ソフトは基幹システムとの連携が難しい場合もあるので注意が必要です。 |
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(3)EDIシステムに各種メッセージを保管できるか ~基幹システムに手を加えず、EDIシステム側にデータベースを持とう~ 小売により利用するメッセージ種別は異なりますが、それらをどこで保管するのが良いのか。流通BMSはJCAに比べ受信データの項目数がはるかに多くなっています。 極力基幹システムには手を加えたくないので、EDIパッケージ内にデータベースとして保持することをおすすめします。 |
EDI業務を柔軟に運用する
(1)拠点や複数端末からの処理は可能か ~複数の出荷拠点がある場合、データ操作は分散しよう~ 営業拠点や物流拠点から分散して処理する場合や、同一拠点で複数端末からデータをメンテナンスする必要がある場合は、複数の端末で運用が可能なシステムが望ましいと言えます。 |
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(2)データの新規、訂正入力や帳票出力は可能か ~受注データの新規作成や訂正が必要な場合、EDIで対応しよう~ 本来すべての受注はオンライン化されるものですが、どうしても緊急の受注や訂正が発生します。 |
センターに納品する
(1)出荷検品に対応しているか ~出荷梱包メッセージを作成しよう~ 流通BMSは伝票レス、検品レスを実現するため、特に小売の物流センターに納品する場合は、正確な出荷情報の送信が求められます。 出荷梱包ナンバーと商品のヒモ付きデータを作成するための検品システム構築が、卸・メーカーで必要となります。 |
再構築する
(1)JCA、全銀、全銀TCP/IP手順も対応しているか ~EDIを汎用機、オフコンから移行しよう~ これまで構築してきたレガシーEDIの資産をどうするか。JCAや全銀、全銀TCP/IP手順に対応しているとシステムを再構築する際、流通BMSとレガシーEDIを統合することができます。 |
事例1
流通BMS対応を機にEDIを再構築
株式会社ヤクルト様
これまで、汎用機やUNIXで構築してきたEDIは、約250社500メッセージ。流通BMS対応を機にJCA手順も全面的にダウンサイジングし、導入、維持コストの大幅な削減に成功しました。
事例2
基幹システムの再構築を機にEOSも刷新
日本農産工業株式会社様
日本農産工業様では、EOS端末の老朽化や、新規EOS先追加時のコストや納期、システムの分散化による運用負荷の増大などが課題となり、EDIシステムを刷新しました。
事例3
事業継続計画(BCP)を重視しつつ流通BMSに対応
アシックス商事株式会社様
スーパー イズミとの流通BMSに対応することになったアシックス商事様では、一時はEDIのアウトソーシングを検討するも、将来を見据え、自社開発を基本としたパッケージシステムの導入を決定しました。
事例4
シジシージャパンとの流通BMSに対応
恩地食品株式会社様
関西CGCから流通BMSへの対応要請が来た恩地食品様。それにはオフコンでは対応不可能と判断。そこで新たに流通BMS用EDIをクライアントPCで構築しました。
事例5
JCA手順や流通BMSによるEDIへの対応を実現
扇町運送株式会社様
近畿・中四国エリアへの物流サービスを得意とする扇町運送様は、新たに量販店向けの出荷業務を受託したことから、JCA手順や流通BMSによるEDIへの対応が必要になりました。
出荷梱包メッセージの要請は積極的に対応しよう
卸・メーカーのあるべき姿は、正確な出荷体制にあり
流通BMSは伝票レスを目指しているため、小売側の入荷検品作業も大きく変わります。
卸・メーカーの出荷検品が正しいと判断し、梱包に貼付されたSCMラベルのバーコードをスキャンするだけで入荷検収とするのです。そのため、卸・メーカーでは物流品質の向上が求められることになります。
つまり、誤出荷を防止するため、ハンディターミナルなどを用いたバーコード検品の体制と出荷梱包データの作成が必要となります。
これは一見小売の都合であり、小売にしかメリットがないように思われます。
しかし出荷精度の向上を実現するのは卸・メーカーの本来あるべき姿であり、正確な商品管理につながるのです。
小売の要請のあるなしにかかわらず、物流品質向上は常に意識すべき経営課題と考えましょう。
2022年12月1日現在の公開企業数 (小売業223社、卸売業・メーカー227社)
卸・メーカー向け流通BMS対応パッケージEDI業務に必要な機能をオールインワンで提供
出荷実績2500本を誇るEOS名人、流通BMSからレガシーまで中堅企業のEDI業務をトータルでサポート
小売業と取引する卸・メーカー向けに開発・サポートしてきたEOS名人の出荷実績が約2500本になりました。
大手量販店、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなど様々な小売とのオンラインをワンシステムで実現するため、通信機能(JCA、全銀、全銀TCP/IP、流通BMS=JX手順)だけでなく、追加入力やデータ訂正、さらに帳票発行機能まで実装。 流通BMSの基本形9メッセージをデータベースで提供します。
基幹システムとの連携で欠かせないのがデータマッピング機能。直感的な操作性が好評で、入出力項目間の演算やマスタ参照にも対応しています。さらにJCAのデータ変換にも威力を発揮し「プログラム開発から解放され、生産性が一気に向上した」(ヤクルト本社 石川所長)と、EDI再構築にも適したパッケージです。
流通BMS、レガシー対応 EDIシステム「EOS名人.NET」
運用に合わせ柔軟に選べるラインナップも魅力
ひとことで卸・メーカー向けといっても規模や運用形態は様々です。
そのためEOS名人は運用に合わせ柔軟にシステムが選択できます。
最小構成はStandard版で、パソコン一台で複数社とのオンラインが可能。複数端末からの処理やデータ量の増加に対応する場合はEnterprise版となります。
また、通信機能が必要のないクライアント用として拠点用ソフトウェアが用意されています。出荷検品オプションは、出荷梱包メッセージに必要な機器とソフトがセットされた商品で、複数小売のラベルが発行できます。
拡張性 -モデルケース-
導入ステップ1
PC1台によるスタンドアロン運用
・JCAオンライン先は10社あり、基幹システム(オフコン)で行っている。
・流通BMSの対応のためEOS名人Standard版を導入。
取引量増加への対応、レガシー通信の統合、多拠点運用へ拡張
導入ステップ2
サーバー運用による大規模システム
・基幹システムのオープン化に伴い、EDIも再構築。
・EOS名人をEnterprise版にアップグレード。JCAのオンラインを統合し、データ量の増加に対応。
・さらに物流センターなど他拠点からの出荷にも対応。