
RPA導入でどんな効果が得られる?具体的な効果測定方法まで解説

人手不足・働き方改革によるテレワークの推進などを受け、業務の効率化を課題としている企業が増えています。主に、パソコンを使った事務業務の効率化に効果がある、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)の導入が進んだ理由はここにあります。
RPAの導入にあたっては、無料で利用できるツールではなく、自動化したい業務に合わせて、機能が充実している有料のものを導入する場合が多いのではないでしょうか。
導入を検討する際に、経営層へ説明するための費用対効果をどのように測るべきか、悩む方もいらっしゃると思います。
それを踏まえ、本記事ではRPAを導入してどんな効果が得られるのか、具体的な効果測定の方法について解説していきます。
RPAとは?
RPAとは「ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)」の略で、人がパソコン上で行う業務を自動化できるツールのことです。
RPAはデジタルレイバーともいわれ、パソコン上での作業手順をシナリオ化し、自動的に作業を実行します。繰り返し作業や、決まったパターンで行う業務などの事務業務をRPAに任せることで、人は手間がかかる作業から解放されます。RPAは、24時間365日稼働が可能で、ヒューマンエラーを起こすことなく、迅速に処理を進めることができます。
RPAが注目されている理由としては、働き方改革への対応、生産性の向上が挙げられます。公益財団法人日本生産性本部が公開している「労働生産性の国際比較2024」によると、日本の労働生産性は時間あたり56.8ドル(5,379円)でOECD加盟38カ国中29位と、他の先進国に比べ非常に低い水準に甘んじているのが現実です。多くの企業で生産性の向上が求められており、RPAを導入する企業は増えているのです。

RPAが効果的な業務
業務の生産性を向上させるRPAで特に効果が得やすい業務について、具体的に解説します。
パソコンを使った業務
パソコンを使った多くの事務業務は、RPAで自動化できます。データ入力や集計、Webサイトにある情報を検索・コピーし、システムに登録する、といった一般的な定型業務は、大抵の場合、RPAに任せることが可能です。
ルール化できる業務
作業手順が決まっており、ルール化・マニュアル化できる業務は、シナリオに起こしやすいため、RPAで代行できます。
一方、頻繁にルールが変わる業務や人による判断が求められる業務などは、RPAに任せても人による修正が必要になるため、向いていません。
繰り返しの多い業務
同じことを繰り返す業務の自動化も、RPAが得意とする分野です。
例として、毎回同じ内容を入力する業務やWebサイトを使った情報収集などが挙げられます。
同じ作業を繰り返す業務を人の手で処理すると、ヒューマンエラーが発生したり、ストレスを感じて業務負担が募りやすくなったりしますが、RPAはそういったことがありません。
RPA導入の目的

RPA導入の際には、導入後の効果測定を行うために、目的を明確に定めましょう。
ここでは、どのような目的でRPAを導入するケースが多いのかについて説明します。
業務効率化
決まったタイミングで必ず発生する定型業務は、1回あたりの作業時間が短かったとしても、総合的に見ると意外と時間をとられるものです。単純な作業をRPAに任せることで、効率を高めている事例は多くあります。
人件費の削減
人件費の削減も、RPAを導入する目的のひとつです。
導入時の初期コストはかかるものの、業務をRPAに任せることで、事務作業にかかっていた人件費を削減できるため、長期的なコスト削減効果が期待できます。
ヒューマンエラー防止
ヒューマンエラーを防止するために、RPAを導入する企業も多いです。
人の手で事務作業を行う場合、ヒューマンエラーが発生するケースも少なくありません。
業務量が多くなり、長時間の作業になると集中力が切れがちになり、ミスにつながりやすくなります。
ミスをすると、その修正に時間を割くことになり、結果的に膨大な工数がかかってしまいます。
RPAを活用すれば、正確に業務を進められるため、ミスが発生するリスクを最小限に抑えることができます。
働き方改革の推進
働き方改革が推進されている昨今、多くの企業にとって社員の残業時間の削減が課題となっています。
しかし、業務量が多く、思うように残業時間を減らせていない企業も少なくありません。
RPAの導入によって事務作業を自動化し、社員の残業時間を減らすことで、企業の働き方改革を推進できます。
RPA導入による4つの効果

RPAを導入することで得られる4つの効果について、見ていきましょう。
業務品質の向上
これまで人が行っていた事務作業をRPAに任せることで、エラーが起こる可能性が大幅に低くなり、業務品質が向上します。
業務担当者の負担を減らせる上に仕事の質が高まるため、社員やクライアント企業の満足度アップにもつながります。ヒューマンエラー防止によって、業務品質の向上の効果が得られるのです。
人手不足の解消
慢性的な人材不足は、多くの企業にとって深刻な課題です。特に、事務作業やルーティンワークに多くの時間を割かれてしまうことで、本来注力すべき業務に手が回らないケースも少なくありません。RPAを導入することで、人の手に頼っていた定型業務を自動化し、効率的に業務を進められるようになります。これにより、社員はより付加価値の高い業務や、顧客対応、戦略的な業務に集中できるようになり、結果として企業全体の生産性向上につながります。
顧客サービスの向上
RPAを活用することで、これまで事務業務に費やしていた時間・工数を大幅に削減できます。RPAで創出できた余力で、既存サービスの改善や新サービスの検討など、付加価値の高い業務に取り組むことができます。顧客満足度向上につながり、売上拡大も期待できます。
業務プロセスの可視化
RPAを導入する際に、自動化する業務の棚卸しやフローを見直すことで、社内全体の業務プロセスを把握できます。RPAの導入をきっかけに、「その業務は必要か」「ほかにやり方があるのではないか」という改善につながったり、プロセスの順番を変えてスリム化したり、問題点を発見できます。
RPA導入の4つの注意点
業務効率や生産性の向上に役立つRPAですが、導入時には次の4点について把握しておきましょう。
導入コストがかかる
RPAを導入する際には、初期費用・月額費用・サポート費用など、さまざまなコストが発生します。特に、有料のRPAツールを導入する場合は、ライセンス費用や導入時の設定費用、トレーニング費用も必要です。
また、運用開始後も保守・サポート費用がかかるため、長期的なコストを見越して導入計画を立てることが重要です。費用対効果をしっかりと見極め、無駄な出費を抑える工夫も求められます。
突然業務が止まる可能性がある
RPAを導入すると、システムに障害が発生したり、バグが生じたりした場合に、業務が突然止まってしまうリスクがあります。特に、業務プロセス全体をRPAに依存している場合、予期せぬ停止が業務全体の遅延や生産性の低下を引き起こす可能性があります。
また、RPAは設定されたシナリオ通りに動作するため、外部システムの仕様変更やデータフォーマットの変更にも弱く、メンテナンスやシナリオの修正が必要になることがある点にも注意が必要です。
情報漏洩のリスクがある
RPAツールを、ネットワークを介して使う場合、社内の大切な情報が漏洩してしまうリスクがあります。
特に事務作業では、経理や顧客に関する情報を取り扱うことが多いため、情報が漏洩してしまうと多大な被害が発生する危険性があることを念頭に置いておきましょう。
セキュリティ対策としてRPAを扱うための権限付与は必要最低限としたり、ID・パスワードは暗号化して保存したりするなど、適切な策を講じることが重要です。
RPAの運用管理が属人化する可能性がある
RPAの運用や管理が特定の担当者に偏ってしまうケースでは、自動化シナリオのノウハウやスキルが展開されにくいことがあります。せっかくのRPAを多く業務で活用するためにも、情報共有は必要不可欠です。
RPAの効果測定

RPAによる効果を測定するためには、定量・定性の2つの基準をもとにする必要があります。効果測定をした上でRPAの運用を改善することで、より高い費用対効果が期待できます。
定量的効果の測定
RPAによって、年間を通して人件費がどの程度削減できたかを定量的に測る方法として、次のように算出できます。
年間で削減できた人件費=1件の処理にかかる時間×1年で処理できた件数×担当者の時給
また、この「年間で削減できた人件費」と「RPAの導入・運用にかかったコスト」を比較することで、費用対効果を測ることができます。
定性的効果の測定
RPAは、人的ミスの削減や業務の精度向上、処理スピードの向上が見込めます。これらは、顧客満足度の向上に貢献するだけでなく、業務担当者のストレス軽減、モチベーションの向上、離職リスクの低減にもつながります。RPA導入では、こうした数字に表れない定性的効果を把握することも重要です。RPA導入前に、現在の業務についてアンケート調査をするなどし、定性目標を明確にしておきます。
RPA導入の投資対効果を最大化するには
ユーザックシステムのRPA「Autoジョブ名人」は、RPAの稼働状況や投資対効果の可視化ができるクラウド管理機能(Pixis Cloud:ピクシスクラウド)があり、上層部への業務自動化の成果レポートとして活用できるようになっています。また、Pixis Cloudは、RPAロボットの稼働・空き状況をみながら効率的に業務を自動化したり、管理者不在のロボット(野良ロボット)をなくせます。
さらに、Autoジョブ名人は、業務効率効果を最大化し費用対効果を早期に出す支援プラン「カスタマーサクセスプラン」を提供しています。
自動化したい業務の洗い出しから、RPAの基本的な使い方や運用管理サポートなど、RPA導入・活用の伴走支援を行います。
RPA導入がゴールではなく、自動化の成果を出し続けるためにも定量面、定性面での効果を正しく把握し、社内で共有することをおすすめします。RPA活用による、業務効率化や改善のよいサイクルを定着させることが重要です。
RPAの導入事例
RPAはさまざまな業界で活用されており、どの業界においても、業務の効率化やコスト削減などを実現しています。
例えば、ある卸売業の導入事例では、RPA導入により受注業務や注文データの連携の自動化に成功しています。
この企業は、受注データを出力する業務に多大な手間がかかり、従業員に負担がかかっている状態でした。取り扱っている商品の種類が多いため、作業にかかる時間を減らすことができず、課題を解決できない状況でした。
そこで、ユーザックシステムの「Autoジョブ名人」で動作する「標準化スクリプト(シナリオ)」を導入し、運用を開始。
RPAツールを導入したことで、年間の作業にかかる時間を3,276時間削減できました。
また、人的ミスも解消され、社員のモチベーションの向上などの効果も確認されています。
【事例】1カ月に100以上のスクリプトを開発し、3,276時間の削減に成功!→
また、酒類や食品の総合卸売を行っているある商社では、月に5,000〜7,500ものファイルを人の手で業界標準のフォーマットへ変換していました。そのため、膨大な人的リソースがかかり、業務効率化を課題として抱えていました。
2015年にRPAを導入したことにより、出荷案件に関する業務の50%を自動化することに成功し、業務効率化や人件費の削減などを達成しました。また、社員のモチベーションが向上したこともRPAの導入により得られた効果として挙げられます。
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