RPA導入をわかりやすく!要注意点も解説
RPA(Robotic Process Automation)の導入に際して知っておきたい基本事項を紹介します。RPAの導入フローから、RPA導入の2つの方式、サポートやガバナンスといった運用に必要な環境や体制づくりの注意点まで取り上げています。まずは基本を押さえて、RPAツールの具体的な導入・検討に入りましょう。
RPAの導入フロー
RPA導入はどのような流れになるのでしょうか。RPA導入に際して必要な6つの手順を説明します。
1.RPA対象業務を見定める
最初に、対象業務にRPA導入がふさわしいのかを見定めましょう。判定基準としては、RPA導入による効果が見込めること、また、手順が複雑でないことなどがあげられます。
【RPA導入にふさわしい業務】
- ミスが許されず、ダブルチェックが必要な作業
- 繰り返し行う定型業務、単純作業
- 業務の繁閑の差が大きい
- 業務手順が複雑でなく、ルール変更も少ない
上記のような業務では、RPA導入によって、品質・生産性向上や人的コストの削減、生産的な業務に人的資源をあてられるといった効果が見込めます。
ただし、なかにはRPAよりマニュアル運用が適している業務があることに注意しましょう。作業時間が年1回など低頻度の定期作業であれば、手作業による対応のほうが低コストです。
業務ルールの変更頻度が高い場合や、RPAの処理結果によって工程が分岐する場合には、その分の設計や管理の手間がかかるため、コスト的にRPAが最適かどうか、見極めが必要です。
2.対象業務のプロセスや業務量の可視化
RPAに任せる業務範囲を決定するために、現行業務の洗い出しをします。業務における課題はもちろん、業務フローや工数、どのソフトウェアを利用しているかが明確にわかるよう可視化しましょう。
プロセス・マップを作成すると可視化しやすく、RPAを適用する具体的な業務範囲の抽出とその実現性の検証が容易になります。人間の判断が混在しているプロセスであれば、RPAの導入に際し、業務フローの再構築が必要です。
各業務の工数や件数を把握しておくと、導入効果の予測や、導入後の効果検証にも役立てることができますし、費用対効果の算出も可能です。RPAで自動化対象業務を選定する前に、業務プロセスの見直しを行うと、さらに業務が効率化します。
3.RPAの運用ルールの整備
RPAは現場の担当者に開発や改修、運用を任すケースが出てきます。しかし、個々の部署が自由裁量でロボットを利用すると収拾がつかなくなるおそれがあります。RPA利用にあたり、社内的なガイドラインを設けるべきでしょう。ガイドラインで定められた権限の範囲でRPAを活用し、業務の効率化をはじめ、本来の責務が全うできるように制度を整備すべきです。
また、RPA運用にあたって、障害・トラブル発生や問い合わせに対応できる部署・業務分担を明確にし、文書化しておく必要があります。いざというときに対応が遅れ、現場に重大な影響が生じるような事態を予防しましょう。
4.RPAの開発
RPAに任せる業務範囲を決定後、まずは効果が大きく見込めるものをいくつか選定し、RPAのロボット開発を行います。開発の方法としては、ベンダーに一括依頼したり、社内開発したりする方法があります。
ベンダーに開発を一任すると非常に早く開発できます。ミスが許されない基幹システムに連携する業務などの自動化には安心して任せられます。ただし、自社開発に比べすぐに改修できない点や業務自動化のノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。RPAは今後の業務自動化を推進するうえで必要なツールになるため、自社主体で開発できるといいでしょう。しかし、一定のITスキルがないと、効果的なロボットの作成や改修は難しいため、現場部門での開発はエラーが起きやすく、不安定になりがちです。自社で開発をする場合はベンダーのサポートをしっかり受けるようにしましょう。
5.RPAの動作テスト・検証
開発したRPAロボットは、単純なエラーや誤動作を起こさないかなどの動作確認テストや検証を行います。意図した通りの動作をロボットが実行し、業務の分岐点がある場合にはきちんと手順通りに進むか確かめましょう。
RPAツールによっては対象システムの画面レイアウトの変化や対象項目を認識できず、うまく動作してくれないことがあります。そのため、対象の画面ごとの動作検証が必要になってきます。対象となるアプリケーションやブラウザ環境とRPAツールの相性を見て、最終的な本格導入の検討・判断をします。
6.RPAの実運用開始
RPAの運用開始後はロボットによる業務処理のモニタリングと評価を定期的に行い、必要であれば改修をしていきます。技術者が開発する業務システムと違い、RPAならば業務変化に応じてすぐに改修が可能なのがメリットです。
RPAの導入を段階的に行う企業もあれば、複数の部門で一律に導入を図る企業もあるでしょう。RPAロボットは人と協業するパートナー的な存在です。効率的な業務遂行のため、人とロボットのバランスのよい活用を図りましょう。
RPAの2つの導入方式
RPA導入には、主に2つの方法があります。自社の事情に応じて適した方法を選択しましょう。
現場へのライセンス配布方式
RPAの対象となる業務は現場での手作業による操作のため、担当部門では人員が足りず、開発・展開に時間がかかるケースが多くあります。現場でRPAを扱える人材を育成してライセンスを与え、自律的に業務の自動化を推進できるのであれば合理的といえます。
ただし、RPA利用のスキルだけではなく、業務フロー・プロセスの理解や業務設計スキルが不足していると、非効率な業務プロセスの生成や誤った処理が発生しかねません。属人性を防ぐための管理体制も求められます。
集中管理方式
ベンダーによっては、RPAの一元管理が可能な運用管理システムも提供しています。全社にあるRPAを集中管理して、ユーザー権限や利用端末の制限などの運用管理、RPAの実行まできめ細かな管理が行えます。
運用管理システムは追加コストや管理者が必要なうえ、多機能型は不要として導入を見送る企業もあるようです。また、現場ユーザーと開発・運用部門が分離しているため、現場の意見が反映されなかったり、品質過剰になりロボット運用コストが高くついたりすることもあります。
RPA導入における注意点
最後に、RPAに関する社内外のサポート体制や、管理体制についても見ておきましょう。
社内の運用・保守体制づくりとベンダーのサポート体制
RPA開発後の保守や業務改変への改修対応のため、社内の担当部署をあらかじめ決定しておきます。また、例外処理など稀なケースでのエラー発生に備えて、人手を用意する余裕も必要です。
さらに、RPA導入前に導入支援サポートが受けられるかどうかも考慮します。ツールの活用方法やテスト、稼働後のメンテナンスに関してアドバイスがもらえれば、スムーズな導入が可能となるでしょう。対応スピードや電話対応が可能かどうかなど、ベンダーのサポート体制も重要なチェックポイントです。RPAツールは機能比較だけでなく、サポートサービスの有無もあわせてチェックし、自社に合うかどうかを判断しましょう。
ガバナンス構築とロボットも含めた管理体制
現場でのRPAの運用にはさまざまなスキルが必要とされます。ツール操作のほか、業務設計やエラー対応などがあります。開発者の知識不足により不安定なロボットが作成されたり、担当者の異動でメンテナンス不能に陥ったりしないようにしなければなりません。野良ロボや放置ロボの発生や、ロボットのブラックボックス化を抑止するためには、属人的な管理を排し、ガバナンスの構築が必要です。
また、RPAを活用した業務プロセス実行にあたっては、人とRPAロボットの統合管理が必要になってきます。実行主体が違うからと分けて考えるのではなく、人とRPAロボットのそれぞれの特性に応じた適切な配置や業務フロー設計を行いましょう。
RPAと人の協業による効率的な業務遂行を
RPAを活用すると、人の判断が必要な業務と、RPAが得意な高精度な定期・反復作業の分業により、大幅な業務の効率化が実現します。RPAロボットと社員は別々に管理するのではなく、全体の業務プロセスとして統合的に管理することで真の効率化が実現します。そこで、RPA導入にあたっては、ロボットの管理にとどまらず、人やそのほかのリソースも含めて見渡し、業務全体の最適化を図る視点が必要です。RPA導入に際しては、保守・管理の担当部署を設けることも必要です。管理不能なロボットの発生を抑止しつつ、本来の目的である効率的な業務遂行を実現しましょう。
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