RPAツールとは?できることや選び方のポイントを徹底解説

20197月、仙台市は行政事務作業にRPAを導入することで、最大95%の業務負荷を軽減できると発表しました。

近年、民間企業でも行政機関でも働き方改革を目的としてRPAを活用する動きが見られ、RPAを用いた業務改善が広がりつつあります。

本記事では、RPAを利用することで具体的にどのようなことができるのかを解説するとともに、RPAツールを選ぶ時の5つのポイントや具体的な導入事例を紹介しましょう。

RPAツールとは

RPA(Robotic Process Automation)ツールとは、デジタルで行われる作業を自動化するソフトウェアです。あらかじめ記録したシナリオに沿って、繰り返しの定型作業をソフトウェアロボットが人間に代わって処理します。

自動化できる作業は、データ入力、データ抽出、レポート生成など多岐にわたります。特に大量のデータ処理や単純なルーティンワークに適しており、業務の効率化と正確性の向上に寄与します。

RPAツールの主なメリットとして、業務効率化、コスト削減、ヒューマンエラーの削減などが挙げられます。人間の作業負担が軽減され、より付加価値の高い業務に集中することが可能になります。また、RPAツールは24時間365日稼働できるため、継続的に業務を行える点もメリットです。

さらに、RPAツールの中にはパソコン1台のみで動作する製品など、比較的容易に導入できるものもあるため、既存のシステムに大きな変更を加えることなく導入できる点も魅力のひとつと言えるでしょう。

RPAツールでできること

RPAツールを使うとさまざまな作業を自動化できますが、代表的なものとしては次のようなものが挙げられます。

  • パソコンの画面上で行う操作の自動化
  • 文字・数値・図形・色などの認識
  • さまざまなアプリケーションの起動・終了
  • スケジュールの設定・実行
  • アプリケーション間のデータ送受信
  • リモート操作
  • データ整理・分析
  • レポートの生成

ここでは、上記の8つの作業について詳しく解説します。

パソコンの画面上で行う操作の自動化

RPAツールは、パソコンの画面上で行うキーボードやマウス操作を自動化できます。例えば、Excelを使った定型的なデータ入力やクリック操作、複雑なワークフローなどを手順書どおりに実行することが可能です。

操作の自動化により、繰り返しの作業を迅速かつ正確に処理できるだけでなく、従業員がよりクリエイティブで戦略的な業務に集中できるようになります。生産性の低い業務を自動化することで、全体の生産性向上の貢献につながるでしょう。

文字・数値・図形・色などの認識

RPAツールは、文字や数値、図形、色などを自動的に認識して判別する能力を持っています。この機能により、OCRでスキャンした文書や画面キャプチャから必要な情報を抽出し、データベースに入力することが可能です。

また、特定のパターンや色の変化を認識した時に次のアクションを起こすように設定しておくと、複数の手順を自動で実行することもできます。これにより、データ処理の精度とスピードが向上し、効率的な業務運営が実現するのです。

さまざまなアプリケーションの起動・終了

さまざまなアプリケーションの起動や終了を自動で行うのも、RPAツールの使い方のひとつです。起動や終了の過程でログインが必要な場合には、IDやパスワードの自動入力できます。

この使い方は、異なるシステム間の連携や、複数のソフトウェアを使用する業務プロセスを自動化する際に有効です。会計ソフトの起動とデータ入力、メールクライアントの起動とメール送信などをする場合、手間のかかる操作を自動化することで、業務効率を向上できます。

スケジュールの設定・実行

RPAツールは、スケジュールを事前に設定し、自動的に実行できます。例えば、特定の時間にデータを抽出して報告書を作成したり、毎週の定例業務を自動で処理したりするなど、時間を有効活用できるでしょう。

あらかじめスケジュールを設定しておくことで、業務を計画的に実行でき、突発的な対応に追われることなく安定した業務運営が可能です。スケジュール管理の自動化は、人的リソースの最適配置にも貢献し、全体の業務効率を向上します。

アプリケーション間のデータ送受信

社内システムと外部アプリケーションとのデータ送受信を自動化する際に、RPAツールを活用できます。異なるシステム間でのデータ連携をスムーズに行えるようになるため、手動でのデータ移行作業が不要になるのです。

ERPシステムから抽出したデータをCRMシステムに入力したり、メールに添付されたデータを自動的に処理したりすることで、データベースに反映するなどの作業ができるようになります。アプリケーション間のデータ送受信を自動化することで、データ処理の精度とスピードがさらに向上するでしょう。

リモート操作

RPAツールは、遠隔操作が可能なため、現場にいなくても特定のツールやアプリケーションを操作できます。これにより、自宅や海外といったオフィス以外の場所でも業務を行えるようになります。

例えば、IT部門が遠隔地からシステムのメンテナンスや更新をしたり、経理部門がオフィス外で経費精算業務を実行したりすることが可能です。リモート操作の機能は、業務の柔軟性を向上し、突発的な対応が必要な場合でも迅速に対処できる体制を整えられます。

データ整理・分析

RPAツールは、蓄積したデータの整理や分析を自動で行えます。大量のデータを迅速に整理し、必要な情報を抽出して集計することで、業務の効率化を実現できるのです。

売上データや在庫データの集計や、トレンド分析などを自動化するという場合、経営判断の高速化と精度向上が期待できます。また、データの整理や分析結果を定期的にレポートとして出力することで、継続的な業務改善にも役に立つでしょう。

レポートの生成

RPAツールを利用して、データをもとに自動的にレポートを作成できます。レポートの作成により、定期的な業績報告やKPIのモニタリングを簡単に行えるようになるでしょう。

月次報告書の作成や日々の業績データの集計といった作業を自動化する場合、レポート作成にかかる時間を大幅に削減できるのです。また、レポートの精度が向上し、タイムリーな情報提供が可能になるため、経営層の戦略的な意思決定をサポートします。

RPAツールを選ぶときの5つのポイント

RPAツールを選ぶときは、同じ業務の自動化実績があるRPAを検討したり、解決したい課題を明確にしたりする必要があります。また、自社システムとの相性やサポート体制のチェックも重要です。

ここでは、RPAツールを選ぶ時の5つのポイントを解説します。

 

同じ業務の自動化実績があるRPAを検討する

RPAツールを選ぶ際には、同じ業務の自動化実績があるツールを優先して検討することが重要です。同様の業務で実績を持つツールは、すでに導入までの一連のプロセスを経験しているため、導入後の効果が見込みやすく、リスクを抑えられます。

Webサイトに記載されている導入事例やユーザーの評価を参考にし、同業種や同規模の企業での利用状況を確認すると良いでしょう。なお、成功事例が豊富なツールは、特定の業務に最適化されていることが多く、スムーズな導入と運用が期待できます。

解決したい課題を明確にする

RPAツールを選定する前に、解決したい課題を明確にすることが必要です。具体的な課題を洗い出し、その課題に対応できる機能を持つツールを選びましょう。

データ入力の自動化、エラーチェックの自動化、レポート生成の効率化など、目的に応じた機能を持つツールを選定すると、最大限の効果を得られます。課題が明確であればあるほど、最適なツールを見つけやすくなり、導入後の成果も上がりやすくなるでしょう。

自社システムとの相性を確認する

自社の既存システムとの相性を確認することも、RPAツールを選定する際に重要です。ツールが自社システムとスムーズに連携できるかどうかを事前に確認し、技術的な問題がないかどうかをチェックしましょう。

特に、ERPやCRMなどの主要な業務システムとの互換性があるかどうかは重要なポイントです。システム間のデータ連携や情報の自動更新をスムーズに行えるようにしておくことで、導入後の運用が円滑に進み、業務効率化の効果を最大限に引き出せます。

サポート体制が整っているかチェックする

RPAツールの選定において、提供元のサポート体制が整っているかをチェックすることも大切です。導入後のトラブルや使い方の疑問に対して、迅速に対応してもらえるかどうかを確認しておきましょう。

特に、24時間対応のサポートや専任のサポート担当者がいるかどうかは重要です。また、導入初期の設定支援や運用後のメンテナンス、定期的なアップデートに関するサポートが充実していると、安心して利用できます。

万が一のトラブルが起こったときでも安心して運用できるよう、信頼性の高いサポート体制を提供しているツールを選びましょう。

費用対効果をよく検討する

RPAツールの導入にあたっては、費用対効果を十分に検討することが欠かせません。初期導入費用だけでなく、運用コストやメンテナンス費用も考慮し、トータルコストを算出しましょう。その上で、導入によってどれだけの業務効率化やコスト削減が見込めるかを比較検討します。

コスト削減だけでなく、業務の正確性向上や従業員の負担軽減など、数値だけでは測れない効果も含めて、総合的に評価することが重要です。長期的な視点で見た場合のメリットをしっかりと把握し、ツールの導入判断を行いましょう。

RPAツール導入による成功事例

ここからは、実際に成果を上げたユーザックシステムでの2つの成功事例を紹介します。これからRPAの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

【勤怠管理の自動化】月間140時間の時間短縮に成功

Autoメール名人を活用して勤怠管理を自動化し、月間140時間の創出に成功した事例です。

動送風機、集塵(しゅうじん)機、乾燥機などを開発・販売する機器メーカーの昭和電機株式会社は、働き方改革の一環として、勤怠管理の自動化を目的に『Autoジョブ名人』と『Autoメール名人』を導入しました。

RPAを導入する前は、総務担当者がタイムカードの打刻漏れを手動でチェックし、漏れが生じている社員に対してメールで注意喚起を行っていました。RPAの導入後は、勤怠管理システムから自動で条件に該当するデータを抽出し、注意喚起メールを送信するプロセスを自動化することに成功しています。

自動化によって勤怠管理の効率化を達成した後、社内全体の業務に続々とRPAを拡充していき、業務全体の4割にあたる21個の業務のRPA化を進めました。結果的に、導入前と比べて月間で140時間もの時間を創出できるようになりました。

今後RPAの活用を予定している59業務の自動化が完了すると、時短効果は年間で10,500時間にも上ると想定されています。RPA化で創出した時間を使って自社サービスを深め、顧客満足度を高めながら売上拡大につなげていく事業計画が予定されています。

【受発注業務の自動化】

九州で広く愛されるパンメーカーの株式会社フランソアは、直営店やスーパーでの販売を支える受発注業務の効率化を目指してRPAの導入に踏み込んでいます。同社は、以前はフリーの自動化ソフトを使用していましたが、メンテナンスのためにプログラム言語の専門知識が必要であり、Web画面の変更時にスクリプトの修正に手間がかかるという課題を抱えていました。

そこで、安定した稼働とサポート体制が整ったユーザックシステムの『Autoジョブ名人』と『Autoメール名人』を導入し、WebEDIの操作やメールでの受発注の自動化を実現したのです。

導入前と比較すると、以前利用していたフリーの自動化ツールと比べてエラー件数が3分の1に減少し、エラー復旧時間も大幅に短縮することに成功しました。これにより、業務の安定性が向上し、従業員の負担を軽減できたのです。

また、フランソアは今後、RPAの活用範囲を受発注業務以外にも広げていき、人事や総務、経理などの部門での業務自動化を推進して、さらなる業務効率化と生産性向上を目指しています。

自社に合ったRPAツールを導入して働き方改革を進めよう

RPAの導入は従業員の負担軽減にもつながり、働き方改革の一環としても有効です。自動化によって、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるため、全体の生産性が向上します。自社に最適なRPAツールを選定し、積極的に働き方改革を進めましょう。

RPAを導入するにあたって導入コストを少しでも抑えたい場合は、補助金を利用する方法も検討するのもひとつの手です。経済産業省は、中小企業・小規模事業者を対象にIT導入補助金を交付しており、上手く活用することで初期費用を抑えられます。

働き方改革や生産性向上を目的として、行政も業務の合理化に力を入れています。行政のサポートを活用しながらRPAツールの導入を進めることで、自社の業務改善や生産性向上を効果的に進められるでしょう。

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