業務属人化とは?放置のリスクやRPAを活用した解消方法を徹底解説

企業活動を円滑に進めるうえで、特定の担当者に業務が集中する「業務属人化」は大きなリスクをはらんでいます。担当者が不在になると業務がストップし、引き継ぎにも膨大な時間がかかるなど、多方面への悪影響が避けられません。
本記事では、業務属人化の定義や発生する背景、具体的なリスクや解決策を分かりやすく解説します。属人性を排除するために業務を標準化し、RPAを適用するポイントも紹介するので、業務効率化にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

業務属人化とは

業務属人化とは、「企業や組織において、特定の担当者しか業務の進め方や内容を把握していない状態」を指す言葉です。

業務が属人化している状態が続くと、担当者の不在時に業務が滞るリスクがあります。他のメンバーの代替がきかない状態は、社内だけでなく社外に対しても多大な迷惑をかけてしまうことでしょう。

属人化は、業務範囲の大小にかかわらず、日々の細かい業務こそ気を配る必要があります。担当者個人のスキルと知識に依存する業務のやり方は、ブラックボックス化しやすいものです。組織の成長や安定的な運営を目指すなら、放置せずにできるだけ早期に対策を講じる必要があります。

業務属人化が注目されている背景

業務属人化は、人材不足や多忙な現場環境などが原因で、引き継ぎやマニュアル作成の時間を確保できないことによって生じやすくなります。特に、組織内で標準化や共有が後回しになるケースでは、個人にスキルやノウハウが集中しがちです。

さらに、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、柔軟な働き方を実現しようとする中で、非効率な属人化業務は生産性向上の妨げとなり、企業の変革スピードを落とす要因として注目されています。

将来的に企業としての競争力を維持するためには、属人化の解消と業務効率化を同時に進める取り組みが欠かせません。

属人化しやすい業務の特徴

属人化しやすい業務には、いくつかの共通点があります。特に、プロセスが複雑であったり、担当者の頭の中にしかノウハウが存在しなかったりするケースは要注意です。
何が原因で属人化が進行しやすいのかを理解し、早めに対策に乗り出すことで、組織全体のリスクを大幅に軽減できるでしょう。ここでは、属人化しやすい業務の特徴について解説します。

業務プロセスが複雑

プロセスが必要な業務は、処理するために多数のステップや判断が必要になるため、属人化しやすい傾向にあります。

例えば、複数のシステムを横断的に操作したり、各段階で専門的な判断が求められたりする作業は、経験のある担当者でなければスムーズに進まない場合が多いです。プロセスが細分化されすぎていると、全体像を共有しにくく、担当者に依存するリスクが高まります。

マニュアルやチェックリストなどが整備されていない

業務の詳細が担当者の頭の中だけにある場合、マニュアルやチェックリストが存在せず、他のメンバーが参照できない状態が生まれます。日々の業務を担当者ひとりに任せきりだと、ブラックボックス化が進み、不在時に業務が滞る原因になります。

また、業務の標準化が進まないまま放置すると、新任の担当者が着任することになっても、自分で学習することが難しいため、必ず他のメンバーによる教育が必要になります。

結果的に、日々の業務と並行して教育に多くのリソースを割かなければならず、組織全体の生産性を落としてしまう可能性があります。

担当者ひとりだけで完結できる

特定の担当者が、ほかのメンバーに協力を仰がずに業務を完結してしまう仕組みも属人化の一因です。日常的なルーティン作業であっても、誰も内容を把握していなければ、引き継ぎや改善が進みにくくなります。

担当者不在時に作業が停滞してしまうだけでなく、フィードバックを得られにくくなるため、業務効率の向上やナレッジの蓄積が進まない点もリスクのひとつといえるでしょう。

専門的なスキルや豊富な経験が求められる

医療やIT、研究開発など、高度な専門性や長年の経験が必要とされる業務は、特に担当者のスキルに依存しやすいです。

ただし、業務プロセスを分解しやすい部分はマニュアル化や自動化を推し進めるなど、社内で知識を整理できる環境を整備すれば、属人化解消の糸口が見えてきます。

業務に必要なスキルを形式知化することで、担当者の作業をほかのメンバーも実施できる体制づくりを目指すことが大切です。

業務属人化が招くリスク

属人化を放置すると、繁忙期や担当者が休暇などで不在になっただけで、業務が停滞するおそれがあります。引き継ぎが難しくなるばかりか、一部の担当者に業務負荷が偏ることで組織全体のモチベーションも低下しかねません。

さらに、顧客対応やサービス品質に悪影響が及ぶと、企業の信用そのものを揺るがす大問題に発展する可能性もあります。ここでは、属人化が引き起こす主なリスクを解説します。

業務停滞と品質の不安定化

担当者しかノウハウを持たない環境では、繁忙期や担当者が休暇を取得する時期に業務のボトルネックが顕在化しやすくなります。結果として、顧客への対応や製品・サービスの提供が遅れる、品質が一定に保てないなどのリスクが高まります。

さらに、外部からの客観的評価が難しくなるため、誤ったやり方が継続されている場合に気付きにくい点も懸念材料のひとつです。実はもっと効率的な処理方法があっても、誰も気がつかないまま、非効率な業務を長年続けているケースはよくあります。

引き継ぎが困難になる

属人化が長期間放置されると、担当者の頭の中だけに溜まった知識が共有されにくくなります。この状況が長く続くと、担当者の退職や異動が発生した場合、引き継ぎに多大なコストがかかったり、最悪の場合は業務が停止したりするおそれがあります。

退職の原因が体調不良などの場合は、出社ができないケースもあるため、「社内に誰も分かる人がいない」という状況にもなりかねません。結果として、顧客対応や社内手続きが後手になり、売上や信用を損なうリスクが高まります。

従業員のモチベーションが低下する

一部の担当者にのみ膨大な業務が集中すると、残業やストレスが増加し、モチベーションが低下して離職リスクが高まる可能性があります。

一方で、他の従業員は新たな業務に参画するチャンスが得られず、経験やスキルを積むことができないまま、企業内での存在意義を見出しにくくなる場合があります。

このように、業務の属人化は人材の流動性を下げる原因にもなり得るため、組織全体で早めの対策が必要です。

企業の信用が損なわれる

担当者不在による業務停止や品質低下が続くと、顧客や取引先の信頼を得にくくなります。企業ブランドのイメージが低下すれば、新規顧客の獲得や既存顧客との関係維持にも悪影響が及ぶでしょう。

一般消費者を対象とする事業なら、口コミなどで悪評が広がることも考えられます。企業が長期的に発展し続けるためには、業務属人化が生むリスクを最小化して安定的なサービス提供を目指すことが不可欠です。

業務属人化を解消する方法

属人化を解消するためには、最初に自社の業務を可視化し、組織全体で共有できる体制を作ることが大切です。そのうえで、マニュアル整備やジョブローテーションなどを実施し、誰が担当しても同じ成果が得られる仕組みを目指しましょう。

また、業務を簡素化・標準化して、RPAを適用し自動化することも考えられます。ここでは、業務属人化を解消する4つの方法を紹介します。

業務の可視化とマニュアル整備

属人化を解消するための第一歩は、現状の業務フローをしっかり洗い出すことです。フローチャートやプロセスマップなどを活用して、「どの業務を誰が担当しているか」を明確にするだけで、問題箇所を特定しやすくなります。

続いて、属人化しているタスクを発見し、担当者が行っている手順をできるだけ具体的にマニュアルやチェックリストへ落とし込みます。標準化された作業手順を共有すれば、担当者が変わっても一定の品質を維持できるようになります。

業務の可視化と標準化を進め、RPAを適用する

近年では、属人化を解消し、業務の効率を向上させる手段として、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が急速に広まっています。

RPAを適用するためには、まず業務の可視化を行い、プロセスを標準化することが重要です。定型的で繰り返しの多い作業を整理し、ルール化することで、自動化しやすい業務フローを構築できます。

業務プロセスの明確化によって、属人化を解消しながら、RPAによる効率的な処理が可能になります。結果として、浮いたリソースは本来注力すべき業務に集中できるため、組織全体の生産性向上につながります。

情報共有を促進する仕組みづくり

属人化を解消するためには、オープンかつ活発なコミュニケーション文化を育む必要があります。

例えば、チームミーティングや朝会などを定期的に設定して担当業務を報告し合ったり、人事評価制度に「ナレッジ共有」の項目を組み込んだりすると、情報共有が促進され、より良い意見が集まりやすくなります。

気軽に情報交換を行い、各社員の知見を共有する風土を醸成できれば、新しい取り組みや改善案が生まれやすくなり、属人化の防止につながります。

ジョブローテーションやチーム体制の整備

特定の担当者だけに依存しない環境を作るためには、定期的に複数の社員間で担当者の役割を入れ替える「ジョブローテーション」を採用したり、複数人でひとつの業務を担当したりする仕組みが有効です。

複数人が同じ業務をこなすことで、自然と共通理解が生まれると同時に、手順書の整備や見直しも進めやすくなります。新しい視点が入ると業務改善アイデアも出やすくなり、組織全体で業務効率を高める好循環が期待できます。

業務属人化におけるRPAの導入メリット

RPAを導入すれば、システム間のデータ転記やメール送信などの定型的な作業を自動化でき、ミスの削減だけでなく担当者の負担軽減にも寄与します。担当者が異動・退職しても業務品質が下がりにくい体制を構築でき、業務が停止するリスクも回避できるため、企業としての信頼性向上にも役立ちます。

RPAで自動化できる業務の例

RPAは、繰り返しの多い定型的な作業をロボットに任せることで、人手不足の解消やミス削減に大きく貢献します。特に、請求書処理や勤怠管理など特定の担当者が定期的にやる事務作業は、属人化しているとみて良いでしょう。

こうした業務を簡素化・標準化し、自動化することで、担当者の負荷を軽減しつつ、効率と品質の向上を両立できます。ここでは、RPAで自動化できる業務の例を紹介します。

請求書処理

請求書の内容確認や金額・項目のチェック、経理システムへのデータ入力などは、RPAと相性が良い業務です。手作業による入力ミスを減らし、処理時間を短縮することで担当者の負荷を低減できます。

特に、月末や年度末など大量の請求書が集中するタイミングでは、RPAの導入による業務効率化が高い効果を発揮します。

処理する件数が増えると一件ずつの確認がおろそかになりやすく、ミスも発生しがちですが、RPAなら疲労や集中力の低下による確認漏れを心配する必要もありません。

勤怠管理

従業員の出退勤データ収集や打刻エラーの確認、勤怠システムへの入力といった作業も、RPAで自動化できます。

リアルタイムで正確な勤怠情報を把握できれば、給与計算や労務管理の精度が高まり、法的リスクの軽減にもつながります。担当者が手作業で対応している場合と比較すると、ヒューマンエラーのリスクが大幅に減る点もメリットです。

在庫データ更新

RPAは、在庫数を常に正確に把握するためのシステム更新作業にも活用できます。

在庫データの把握は、業務の正確性維持や、過剰在庫・在庫不足を防止するうえで重要です。仕入れや販売のデータを随時反映することで、過剰在庫や欠品リスクを回避でき、業務判断のスピードアップにも寄与します。

また、RPAが自動的にデータを更新する仕組みを整えられれば、担当者の入力ミスや数え間違いで在庫が合わなくなる可能性を低減できるというメリットもあります。

RPA導入を成功させるためのポイント

RPAの導入は業務効率化に有効ですが、ただ導入しても、期待通りの成果を得られない場合があります。特に、業務の選定や導入後の運用ルールを適切に設定しなければ、トラブルの発生やシナリオの陳腐化などが起こりやすいです。

組織全体でRPAの導入効果を最大化するためには、事前の洗い出しや優先順位付けから運用体制の整備、定期的な見直しに至るまで、一連のステップを計画的に実践する必要があります。

ここでは、RPA導入を成功させるための3つのポイントを解説します。

対象業務の洗い出しと優先順位付けを行う

RPA導入の際は、最初に「手作業が多く、繰り返しが多い業務」をリストアップし、優先順位を明確にすることが大切です。そのうえで、コスト削減効果や、導入により得られる生産性向上のインパクトを見極めましょう。

各業務に優先度を設定して、導入効果が高い業務から順番に自動化に着手すれば、短期間で成果を出しやすく、社内の理解や支持を得るうえでも有利になります。

導入後の運用体制を整備する

RPAの本格運用にあたっては、運用チームや担当者を明確にしておき、障害やトラブル発生時の初動対応をあらかじめ定義しておくとスムーズです。

また、現場にいち早く浸透させるためには、RPAツールの操作方法やシナリオの更新方法などを学ぶための社内研修を実施して、関係者全員が最低限のスキルを身につける必要があります。

導入後は定期的に運用状況をモニタリングし、エラーや非効率な箇所を早期に発見して改善する体制を築くことも重要です。

定期的にシナリオを見直し・改善する

社内の業務フローは、RPAの導入後もシステムのアップデートや体制の変化などに伴い、少しずつ変わっていく可能性があります。

そのため、RPA導入時のシナリオをアップデートせずに使い続けていると、作業効率が低下したり、エラー率が上がったりするおそれがあります。

作業効率と正確性の高い運用を維持するためには、定期的にシナリオの見直しを行い、現場の運用に合わせて柔軟にアップデートすることが大切です。

RPAで業務属人化を解消しよう

業務属人化は、担当者と組織全体に大きな負担とリスクをもたらす重大な課題のひとつです。放置していると、長時間労働によるモチベーション低下や品質の不安定化など、企業の成長を阻害するおそれがあります。

対策としては、現行の業務の可視化やマニュアル整備による標準化、ジョブローテーションやRPAの活用などが有効です。特に、RPAの導入は、属人化解消にあたって高い効果を期待できます。

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