生産性向上にRPAが効果的な理由と活用事例5選を解説

近年、ビジネスの世界では生産性の向上が重要なテーマとなっています。さまざまな施策が注目される中で、特に多くの企業で導入が検討されているのが定型業務を自動化できる「RPA」です。

RPAは、繰り返し行われる単純な業務を自動化することにより、時間とコストの削減、ヒューマンエラーの削減など、さまざまなメリットをもたらします。本記事では、生産性に関する基礎知識やRPAが生産性向上につながる理由、実際のビジネスシーンでの活用事例について解説します。

生産性とは

生産性とは、生産に必要な各要素(生産拠点、設備、エネルギー、労働力、原材料、資材など)をどれだけ効率的に使って成果を出せるかを示す指標です。「投入したリソースに対してどれだけの商品やサービスが生産されたか」の比率であり、生産性が高いほど、少ない資源で多くの成果を上げることを意味します。

生産性を向上させるためには、時間、労力、コストを最小限に抑えながら、より多くの価値や成果を生み出す必要があります。効率的な生産活動は経済成長に貢献し、企業や国家の競争力を高める重要な要素です。

生産性の指標には、最新技術の導入や業務プロセスの改善、業務品質の向上など、さまざまな要素が関与します。従って、生産性の向上は個人や組織にとって重要な目標であり、持続的な成功と成長に不可欠な要素であるともいえます。

組織における生産性向上の重要性

組織における生産性の向上は、日本の現状を考慮すると特に重要です。国際的に見て生産性が低いといわれている日本において、業務効率化を推し進めて生産性の向上を図るための取り組みは急務です。

また、少子高齢化が進んでおり、組織は労働力不足を補うためにより効率的な経営を行う必要もあります。顧客ニーズが多様化する一方、労働力不足の改善や生産性の向上を図らなければならない組織にとって、現状のリソースを有効活用したり、デジタル技術を導入してDXを推進したりする取り組みが求められているのです。

生産性向上を実現するためには自社の状況を把握する必要がある

生産性の向上を実現するためには、まず自社の現状を正確に把握することが重要です。具体的な現状分析を行い、その結果に基づいて適切な施策を実行することが、効率的な生産性向上につながります。

ひと口に「生産性が低い」といっても、自社にとってどの要素が不足しているのかを分析して現状を正しく理解することで、資源の適切な配分や業務プロセスの最適化、必要な技術投資など、生産性を高めるための具体的なアクションプランを立てることが可能となります。

現状を理解していないままやみくもに施策を打ち出すと、十分な効果が得られず、かえって工数の無駄につながってしまうおそれがあるため注意が必要です。

生産性の計算式 

前述のように、生産性とは生産に関わる要素(設備や労働力など)をどれだけ効率的に活用し、どの程度の成果が得られるのかを示す指標です。

生産性を求めるための計算式は、下記の通りです。

労働生産性=産出量(アウトプット)÷労働投入量(インプット) 

また、生産性には「物的生産性」と「付加価値生産性」の2種類があります。物的生産性は大きさや個数、重さなどの物量を指標とする生産性です。一方の付加価値生産性は、生産物を販売したときに得られる金額を指標とした生産性を表します。

RPAが生産性向上につながる理由

生産性を向上させるためには、RPAの導入が効果的です。定型業務の自動化やヒューマンエラーの削減、リソースの最適化を実現する上で、RPAは手軽かつ高い効果を発揮してくれます。

ここでは、RPAが生産性の向上につながる3つの理由を解説します。

定型業務の自動化が可能なため

RPA(Robotic Process Automation)は、定型的な業務プロセスを自動化することに特化しているソフトウェアです。「シナリオ」と呼ばれる業務手順を記憶したルールに則って、繰り返し行われる手順が決まったタスクを自動化できるため、従業員は単純作業から解放されてより高度で戦略的な業務に集中することが可能になります。

RPAの活用により、業務の生産性が大幅に向上し、組織全体の効率が改善されます。従業員は人間の判断が求められる生産性の高い業務に時間を費やせるようになり、企業の成長や競争力の向上に貢献します。

ヒューマンエラーを削減できるため

RPAの導入は、ヒューマンエラーを削減する効果も期待できます。人間の手作業には避けられないミスが伴います。ダブルチェックなどの対策で発生率をある程度下げることは可能ですが、完全にゼロにすることは難しく、チェックのためのコストも嵩みます。

一方、RPAは一定の規則に基づいてタスクを正確に実行し続けられるため、エラーの発生率を大幅に下げられます。

これにより、作業品質が向上するだけでなく、作業の手戻りやエラーの修正にかかるコストの削減が可能になります。結果として、組織全体の信頼性と効率の向上が可能です。

リソースの最適化につながるため

RPAは、業務効率化を通じてリソースの最適化にも貢献します。特に、処理に時間がかかる単調な作業をロボットに任せて自動化できるため、従業員がより価値の高い業務に注力できる点は大きなメリットです。

限られた人的リソースの配置を最適化し、人件費の削減や業務の効率化を実現できれば、労働力不足の解消や従業員の負担軽減といった課題にアプローチが可能になります。

また、RPAによる自動化は、人間の判断が必要な分野で高いスキルを持つ従業員の能力を有効活用でき、組織の生産性向上に大きく貢献することが期待されます。

RPAが生産性向上に貢献した事例5選

実際にRPAを導入するにあたって、どのような業務に取り入れられるかを検討する際は、他者の成功事例を参考にするのがおすすめです。ここでは、RPAが生産性向上に貢献した5つの事例を紹介します。

これからRPAの導入を検討している方は、自社の業務と照らし合わせて、活用の参考にしてください。

アンケート結果のデータ分析効率化 

東京のある人材紹介会社では、新たに登録された保育士に対して希望の勤務地や待遇をヒアリングし、条件と合致する保育園を紹介していました。しかし、適切な施設が見つからない場合は、求職者情報をFAXで複数施設に送信し、面接につなげる作業が必要でした。

この作業は日頃から多くの手間を要しており、負担の重さを理由に事務員が退職してしまうほどでした。結果的に人手不足から社長が直接該当の業務を手掛けなければならず、1日4時間以上の時間を割かなければならない事態に発展しています。

同社はRPAの導入によって「求職者の希望に合致する条件の施設を抽出」する工数を大幅に削減できました。空いたリソースは重要な会議等に充てることができ、結果、売上高が2.5倍に増加し、働き方が劇的に改善することに成功しました。

入出金業務の自動化 

ある国内の大手メーカーのグループ企業では、RPA導入において、社内から約500件の業務が自動化の対象として挙げられました。特に入出金業務では、自動化により業務時間が大幅に削減され、月末などの繁忙期でも効率的な処理が可能となりました。

これにより、従来10人で4時間以上かけていた作業が3人で作業を行ってもわずか3時間で完了するようになり、ヒューマンエラーの減少とチェック作業のストレス軽減が実現しました。

社内での成功事例は他部門にも波及し、さらなる自動化の導入が進んでいます。また、社内研修を通じて知見が共有され、標準化された業務プロセスの開発と運用支援が可能な体制が整いました。

受発注業務の自動化 

受発注担当者は、取引先からメールで届く発注書を手作業で確認し、それらを受発注システムに入力する必要があります。しかし、RPAを導入することで、この作業を自動化することが可能です。

あらかじめRPAに受発注業務の手順をシナリオとして記憶させることで、メールで受信した発注書データをダウンロードし、内容をシステムに転記するまでの一連のプロセスを自動化できます。

これにより人的ミスを削減し、担当者をRPAでは対応しづらい他の重要業務に割り当てることができ、全体の業務効率を向上させることが可能になります。

在庫管理業務の効率化 

原材料や製品の在庫管理は、製造・生産業において非常に重要です。在庫不足は生産プロセスに悪影響を及ぼし、納期の遅延や販売機会の損失を引き起こす可能性があります。

そこで、RPAを活用して在庫管理業務を自動化する取り組みが有効です。具体的には、取引先から製品の納品書がメールで受信された際に、RPAが自動的に在庫システムから納品書に記載された数量を引き落とし、在庫残高数を計算して在庫管理システムに自動登録します。

上記の手順により、従来のように人が手動で在庫数を確認し調整する必要がなくなり、リアルタイムで正確な在庫情報を維持できます。

Web-EDI業務の負担軽減 

九州を中心に活動するパンメーカーのフランソアでは、複雑な仕入れ業務や財務データの取りまとめ、品質管理業務の効率化など、さまざまな課題を抱えていました。

この課題に対して、同社はRPAを導入して解決を図っています。RPAの導入により、仕入れ業務の効率化や財務データの自動化処理が実現され、品質管理業務も改善されました。

WebEDIのエラー件数は導入前の1/3に減少し、エラー時の復旧時間も30分から5分程度へ短縮されるなど、高い効果を実感しています。

株式会社フランソアの事例はこちら

まとめ

本記事を通じて、生産性の基礎知識やRPAが生産性の向上に貢献する理由、そして効果的な活用方法を5つの事例を通じてご紹介しました。これらの事例は、RPAが業務品質を向上させ、従業員の働き方をサポートする力を持っていることを示しています。

企業が市場における競争力を維持し、成長し続けるためには、RPAのような最新技術を効果的に活用し続けることが重要です。自社のビジネスに上手く取り入れて、生産性向上を意識した運営を実現しましょう。

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