OCR×RPAの特徴を解説!業務効率化ツールとしての活用法も紹介
近年、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を重要視する中で、業務効率化ツールを導入する現場が増えています。特に注目を集めているのが「OCR」と「RPA」です。
これらのツールの名前を耳にしたことはあっても、具体的な機能や業務へのメリットについて詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。本記事では、「OCR」と「RPA」の機能や、両者を組み合わせて活用できる業務の例、OCRの選び方などについて解説します。
業務効率化ツールについて理解を深めたいと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。これを読めば、「OCR」と「RPA」のそれぞれの特徴や違いについて理解できるようになります。
まず、「OCR」と「RPA」それぞれにどのような特徴があり、何ができるのかを見ていきましょう。
OCRとは
OCRとは、Optical Character Recognition(光学文字認識)の略語で、紙に書いてある文章を光学装置を用いてテキストデータに変換する技術・ソフトウェアのことです。
画像として取り込んだアナログ文字情報を、パターンに照らし合わせることによってデータ文字に変換する仕組みです。
OCRを使って紙の書類を画像やテキストデータに変換すると、PCを使っての情報検索が格段にやりやすくなります。
1枚ずつ紙の書類を確認しながら検索するよりも、効率的かつスピーディーに情報検索ができます。
テキストデータをオンライン上に格納しておくことができるため、関係者同士で素早く情報共有できることもメリットです。
昨今では当たり前になったテレワークでも書類を持ち帰る必要がなくなるため、在宅とオフィスワークをスムーズに切り替えることができます。
また、OCRは紙資料のアナログデータをデジタルデータに変換できるため、ペーパーレス化につながるのも有用な側面です。
紙資料は物理的な保管スペースや、廃棄・整理といった定期的な管理が必要になってきますが、OCRでデジタルデータ化することにより、大量の紙資料の保管場所が必要なくなります。
OCRはアナログ文字情報をテキストデータに変換することにより、業務効率の向上とテキストデータ化による情報管理の2つの面で効果を発揮してくれます。
OCRにAI技術を組み合わせたAI-OCRも存在します。AI技術の機械学習によって手書き文字の認識の精度を大きく向上させたり、帳票フォーマットの設計をせずに必要な項目を抽出するといった、OCRに自動化の要素を加えてより効率的に運用することができます。
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、PCを使った業務を自動化するソフトウェアロボットのことです。RPAは「シナリオ」と呼ばれる、事前に定められた手順に従って、作業をプログラムにより自動実行します。
RPAは、人の判断を必要としないルールに則った業務において特に効果を発揮します。特にバックオフィス業務で広く利用されており、勤怠管理、請求書発行、財務業務、レポート作成、受発注業務などで活用が広がっています。
バックオフィス業務には手順が決まったルーティン作業も多く、正確性とスピードが求められるため、RPAの導入によって大幅な負担軽減が可能となります。
ただし、RPAを効果的に活用するためには、対象業務がデータ化されている必要があります。紙で行われている業務については、OCR(光学文字認識)技術を使用して文字情報をデータ化し、その後にRPAを適用することで効率化を図れます。
RPAの導入によって、企業は定型業務を自動化し、貴重な人的リソースをより付加価値の高い業務にシフトさせることができます。また、RPAは24時間365日稼働可能であるため、業務の継続性を確保できる点もメリットです。
企業では、紙を使った業務が多く存在しています。例えば請求書の処理や受注処理など、データ化されていない紙媒体でのやり取りを必要とする場面が多々あります。
DXへの取り組みが叫ばれる昨今では、業務をデジタルに移行し、事務業務などを効率化することが急務となっています。
紙媒体が多く残る事務業務でのデジタル化の案として、OCRとRPAの連携があります。OCRを使って紙の文字情報を取り込んでテキストデータ化し、RPAによってテキストデータ化した情報をPC上で自動処理することで、効率化を図れる業務は多いのではないでしょうか。
OCR×RPAで効率化できる業務の例として、FAX・手書き注文書の取り込みや経理業務、申請書類の登録業務、アンケート情報の登録業務などがあります。ここでは、代表的な6つの業務を紹介します。
FAX・手書き注文書の取り込み
FAXや手書きの注文書の取り込みにおいて、RPAとOCRの組み合わせは非常に効果的です。紙の注文書をOCRでデジタルデータに変換した後、変換済のデータをRPAが自動的に受発注システムに登録します。
この一連の作業が自動化されることで、手動でのデータ入力作業が不要となり、入力ミスやデータ漏れのリスクが大幅に減少します。
また、RPAを活用することで、注文情報の確認や修正も自動化できます。例えば、注文内容に不備があった場合や、在庫状況に応じて注文内容を調整する必要がある場合、RPAが自動的にアラートを発し、担当者に通知します。これにより、トラブル時でも迅速な対応が可能となり、業務の効率化を図れます。
経理業務
経理業務においても、RPAとOCRの組み合わせは有効です。例えば、請求書の発行作業において、手動での入力や確認作業を削減できます。OCRを用いて請求書の内容をデータ化し、RPAを使って自動的にシステムに取り込むことで、入力ミスを防ぎ、スピーディーに処理が完了します。
さらに、経理処理にかかわるさまざまな帳票をデータ化し、定型処理することも可能です。例えば、仕訳作業や支払処理において、RPAが自動的にデータを処理し、必要な項目を入力するなどの使い方が考えられます。これにより、経理担当者はデータ入力や確認作業から解放され、より高度な分析や戦略的な業務に集中できるようになります。
申請書類の登録業務
顧客からの申請書類の登録業務に、RPAとOCRを活用する方法もあります。申請書類をOCR技術で読み取り、テキストデータに変換した後、RPAを使って自動的に自社システムに該当データを取り込みます。
RPAを活用することで、入力にかかる手間や時間を削減できるだけでなく、データチェックやエラーチェックも自動化できます。また、RPAは大量の申請書類を迅速に処理することができるため、顧客対応のスピードも向上し、顧客満足度の向上につながります。
アンケート情報の登録業務
アンケート情報の登録業務においても、RPAとOCRを組み合わせて活用できます。
多くの企業では、イベントや営業活動を通じて得た名刺情報やアンケート結果を手動でデータベースに入力しています。しかし、このプロセスは時間がかかり、入力ミスが発生するリスクもあります。
OCRを活用することで、手書きの名刺情報やアンケートの回答を正確にデジタルデータに変換できます。変換されたデータは、RPAによって自動的に名刺管理システムや顧客管理システムへの登録が可能です。
自動化によってデータ登録のスピードが向上し、リアルタイムなデータ更新ができれば、営業活動やマーケティング活動において、最新の顧客情報をもとにした迅速で効果的なアプローチが可能になります。
納品書のデータ変換
紙の納品書をOCRで読み取り、テキストデータに変換した後、変換されたデータをRPAで自動的に在庫管理システムに取り込む使い方も有効です。
手動でのデータ入力が不要となり、入力ミスやデータ漏れのリスクが大幅に減少するだけでなく、納品書のデータと在庫管理システムのデータを自動的に照合できる点がメリットです。納品内容と在庫状況の不一致を迅速に検出し、在庫管理の精度向上につながります。
また、納品書のデータをリアルタイムで取り込むことで、在庫の変動を即座に反映し、正確な在庫管理が実現します。これにより、在庫切れや過剰在庫のリスクを低減し、効率的な在庫運用が可能となります。
勤怠情報の登録業務
勤怠情報の登録業務においても、RPAとOCRの組み合わせは効果的です。OCRを活用することで、手書きの勤怠情報やタイムカードの情報を正確にデジタルデータに変換できます。変換後のデジタルデータは、RPAが自動的に勤怠管理システムに取り込みます。
自動化によって勤怠データの登録スピードが向上し、リアルタイムでの勤怠情報の更新が可能になります。これにより、労務管理や給与計算がスムーズに行われ、業務効率の向上が期待できます。また、勤怠情報の入力ミスも削減でき、業務の正確性向上にもつながります。
ここでは、業務自動化に精通したプロの目線による、「OCRツール」と「RPAツール」を選ぶ基準をお伝えします。
OCRツールの選び方
文字認識精度の高さ
OCRツール選びで重要になるのが、文字認識精度の高さです。各社ツールの文字認識精度のチェック方法としては、対応文字数を確認したり、OCR提供各社の無料体験版で実際に読み取りテストしてみるのが近道です。
読み取った文字を可能な限り正確に変換するためには、できるだけ多くの文字数に対応していることが重要になります。対応文字数の多さは絶対的な判断材料ではありませんが、文字認識精度の良し悪しを計る基準の一つとして押さえておくと良いでしょう。
活字・手書き文字の対応範囲
活字や手書き文字の対応範囲も、OCRツールを選ぶ時の大切なポイントになります。手書き文字の読み取りが多い場合は、AI-OCRツールを選択することも視野に入れたほうがよいでしょう。手書き文字は人によって癖があるので、OCRの文字認識が安定しづらいからです。幅広く活字や手書き文字に対応できるAI-OCRツールならば、OCRによっては読み取れない活字や手書き文字に対応することができます。
多種帳票のフォーマットへの対応
多種帳票のフォーマットに対応しているかどうかも、OCRツール選びには重要になります。OCRツールの中には帳票フォーマットに対応していないものもあり、選択の際には調べておく必要があります。
OCRツールによって電子化した帳票は、社内の業務システムから閲覧、編集、出力、管理を行えるため、帳票に関する業務の効率が大きく向上します。
紙の帳票で起こっていた紛失や持ち出しの問題、書類偽造といったトラブルを回避でき、より安全な状態で帳票を管理することができます。
他ツール・システムとの連携の可否
RPAを含めた外部システムと連携できるかどうかも、OCRツールを選ぶ際の大切なポイントとなります。どこまで連携できるのか、どのように連携するのかは、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
例えば、OCRツールで紙などのアナログ文章を読み取った後、社内システム等にデータを蓄積するなどの業務を自動化する場合においては、RPAやAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)による連携が必要になります。
OCRツールの利用目的に合わせ、他システムの連携が簡易的なのか、RPAを活用し、業務を自動化することができるのか、調べておく必要があります。
OCRツールを使いこなせるかどうかも重要です。無料トライアルやデモ、活用事例を問い合わせてみることをおすすめします。
汎用型か業務特化型か選択する
OCRを選定するにあたって、汎用型か業務特化型かを選択する必要があります。汎用型のツールは、特定の業務に限定せず利用できるため、さまざまな業種や業務に対応できる柔軟性が特徴です。
汎用型は幅広い用途に対応できるため、導入後に異なる業務にも転用できるというメリットがあります。例えば、文書のスキャンから始まり、経理や人事、マーケティングなど、多様な部門での活用が可能です。
一方、業務特化型のツールは、特定の業務に特化して設計されています。例えば、請求書業務に特化したOCRツールは、請求書のフォーマットを認識しやすく、データ抽出の精度が高いという特徴を持っています。
汎用型か業務特化型かを選択する際は、自社の用途に合ったツールを見極めることが大切です。汎用型ツールを選ぶ場合、幅広い業務に対応できる一方で、特定の業務における効率性や精度は業務特化型に及ばない場合があります。
そのため、汎用型を選ぶ際には、自社の業務プロセス全体を俯瞰し、複数の業務でツールを活用する計画を立てることが重要です。
RPAツールの選び方
導入目的に即した機能クラスの選択
総務省のWebサイトによると、RPAには3段階のクラスがあると記述されており、以下のような定義で適用が分けられています。
● クラス1「定型業務の自動化」
● クラス2「一部非定型業務の自動化」
● クラス3「高度な自律化」
クラス1「定型業務の自動化」は、ルーティンとなっている単純な業務を自動化させるRPAです。
例えば、取引先から送られてきたExcelの発注リストを自社の受発注管理システムに自動的に転記したり、定期的に取引先のデータを確認し、受注があった際に自動的にデータをダウンロードするなどが該当します。
高度な判断を必要としない、決まった手順で処理できる業務などは、クラス1のRPAが適用範囲となります。
クラス2「一部非定型業務の自動化」は、RPAではなくEPA(より強化されたプロセスの自動化)と呼ばれ、非定型業務と言われる判断や解析を必要とする業務までを自動化する仕組みです。
例えば、ビッグデータを参考に顧客の傾向を分析したり、取引先から送られてきた発注メールから受注に必要な商品管理番号等の情報を読み取り、システムに登録するといった流れを自動化できます。
AI(人工知能)を組み込むことにより、クラス1には不可能だった、より複雑な業務の自動化を実現しています。
クラス3「高度な自律化」はCA(認識の自動化)と呼ばれ、クラス2で情報解析するだけだったAIが進化し、意思決定を含めた高度な分析・判断を可能とする自動化です。
例えば、蓄積された顧客データをもとに、自動対応・コールセンターに繋ぐ・資料送付といった対応を自動で判断して実行したり、商品やサービスの売上データ・流行・経済情勢といった複雑な情報を分析して経営方針を提案するといったことが可能となります。
実装することができれば経営に心強いクラス3のCAですが、現状はまだ実用化には至っていません。
RPAの導入を検討する際には、自動化したい業務を洗い出し、導入規模を含めて目的に即したクラスを選択するようにしましょう。
サポート体制の充実
サポート体制が充実しているかどうかも、RPAツールを選択する際の大切な要素となります。RPA導入前は手厚いサポートだったが、導入後はなかなかタイムリーにサポートをもらえない、というのはよくある話です。せっかくコストをかけてRPAツールを導入しても、使いこなせない、他の業務自動化に横展開できないとなってしまうのは、もったいないことです。
RPAツールを取り扱っている企業によっては、ユーザー向けにツールの機能や活用方法、事例紹介などの勉強会やセミナーを実施しています。また、導入活用の伴走支援サービスもあり、社内でRPAを活用・実践する知識をつけることができます。
無料トライアルの有無
無料トライアル期間を設けているRPAツールを選び、まずは短期間で小規模のテスト導入をしておくと、本格導入後の失敗のリスクを減らすことができます。
スモールスタートをすることで社内の負担も小さくできますし、効果がなかった場合などに導入を止める選択も取りやすくなります。
各メーカーの公式ホームページや口コミ情報などでどれだけ情報収集しても、実際に使ってみて体験する以上の情報はありません。無料トライアル期間があるRPAツールならば、検討の上で積極的にテスト導入してみることをおすすめします。
企業のDX推進を阻害する「アナログ」業務をデジタル化するために、まず進めたいのが紙帳票のデータ化ではないでしょうか。
紙帳票にある文字情報をデータに変換できる「OCR」と、業務を自動化する「RPA」を組み合わせることで更なる業務の効率化が期待できます。
紙帳票がかかわる業務のデジタル化と自動化推進のご相談は、オンライン相談で承っております。お気軽にお申込みください。