RPAでシステムをつなぐ。データマッピングツールとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、人がおこなうパソコン操作を自動化するソフトウェアです。多くの企業でRPAの活用が進んでおり、成功事例を目にする機会が増えてきました。
そのような企業のなかで、業務全体の自動化に成功した企業は、多くの場合、RPA単体ではなく様々なツールを組合せて自動化していることがわかりました。
ツールを組合わせる方法として、APIや特定システム用の補助ツールなどもありますが、今回はデータマッピングツールについて解説したいと思います。
例えば、社外のWebシステムから出力された実績データに、自社の商品コードを付加して販売管理システムに入力する。この処理をRPAだけで自動化させる方法を考えてみます。
まずは、社外のWebシステムからダウンロードした販売実績データをExcelで確認します。もちろん、このデータには自社の商品コードは含まれていません。
最初に、商品コードを付与する場合のルールをまとめておきます。例えば、自社の商品コードが10ケタなら、最初の二桁は大分類、次の二桁が中分類、下四桁は連番にするといった情報です。
ルールをまとめられたら、販売実績データに自社の商品コードを適用するための条件を、RPA上で設定します。複雑な条件分岐になると思いますが、何とか頑張って進めましょう。販売実績データのExcel上でも数式を駆使する必要がありそうです。
ここまで設定できたら、後はRPAで操作を自動化する処理を作るだけです。Excelの各項目を商品コード付与のルールに則ってコピーし、基幹システムの受注入力画面に貼り付ける処理を作りましょう。
ここまで大変でしたが何とかできました。この仕組みを応用して、それ以外の社外Webシステムからダウンロード・変換・入力する処理を作るだけです。あと、たった50社分です。さあ、担当営業とスケジュールを調整しましょう・・・
いかがでしょうか?
頑張ったら作れないことは無いと思いますが大変そうです。
しかもこれだけではなく、設定が複雑になるため
①ルール変更に対応した修正作業が大変、システムの改修が発生した場合にはボトルネックになりかねない
②エラーが発生した際に項目毎に確認が必要となり、原因追及に時間がかかる
③データ量に比例して処理時間が長くなり、同時にエラー発生の確立も高まる
といった問題も生まれます。
これらの問題を発生させないためには、RPAだけに全てを任せるのではなく、販売実績データをそのまま基幹システムに入力可能なデータに変換する仕掛けをつくる方式をお勧めします。
システム間連携においてデータ変換が発生するような業務をRPAで自動化したい場合、どのような仕組みで変換を行うのか、事前に考慮しておく必要があります。
具体的には、
【項目の並び替え】例:発注日、商品、納品先を 納品先、商品、発注日に並び替える
【項目の結合分割】 例:年,月,日個別項目を年月日1項目にする
【項目の付加】 例: 連番や不足している取引先コードを付加する
【マスタ参照】 例: 商品番号の変更や、商品コードから商品名を付加する
【計算や関数の利用】 例: 消費税の計算や、休日だった場合に営業日を計算する
等が機能として必要で、データ変換を実現する方法はいくつかの選択肢があります。
選択肢としては、主にこの3つが挙げられます。
①Excelのマクロを使う
②データ変換部分だけプログラム開発する
③データ変換ツールを使う
①「Excelのマクロを使う」は、スキルのある方であれば簡単に実現でき、外部へのコストを抑えられますが、過去に属人化・ブラックボックス化を引き起こしてきた手法であり、あまりお勧めできません。
②「データ変換部分だけプログラム開発する」は、1~2本だけであれば問題ありません。しかし、それ以上となるとコストも掛かりますが、システム改修時にも影響を与えてしまいます。何故なら既存のデータレイアウトを前提としたプのグラムですので、データレイアウトを変更しようとすると変換設定も修正が必要となります。そのため、改修時のボトルネックになりかねません。
③「データ変換ツールを使う」は、②の問題を解消するためにもお勧めです。簡単な設定でデータ変換が可能なツールを選べば、小回りが利くためRPAとの相性は非常に良好です。一方、データ変換ツールは価格や機能に大きな差があります。自動化のための機能はRPAがカバーしてくれますので、RPAと連携がしやすいツールをお勧めします。
RPAで自動化を行う際にデータ変換ツールを使う。その際に覚えておいていただきたいコツをいくつかご紹介します。
①エラー判別については、データ変換ツールに全て任せずに、データの受け渡しを行うシステムと切り分けを行ってください。必須項目が足りていない、データ形式が間違っている等のルール通りのデータかどうかのチェックはデータ変換ツール側で行います。一方、取り扱っていない商品がデータに載っているケースや名称が間違っている等、マスタ管理が必要なチェックはシステム側で行います。ここまでデータ変換ツール側に持たせてしまうとマスタの2重管理が発生するので注意が必要です。
②イレギュラー時のリカバリ方法はなるべく小回りが利くように設計しましょう。せっかくRPAを基本として小回りの利く自動化を進めるのですから、データ変換を重たくするともったいない。何かあったときに、一から全てのデータを揃え直して再度連携というやり方をとらず、問題のあった箇所だけ判別し、それ以外のデータは全て流す。問題の対処は、運用上問題の無い範囲で後からでもでえきるようにしておく事をお勧めします。
③部品化や共通化を意識してください。当たり前のようですが、以外とデータ変換のロジックが共通化できておらず、システム改修時に影響範囲の確認や対応に苦労したという実例もあります。部品化や共通化は、作成時の工数削減・品質向上だけでは無いメリットがあるので、ぜひ取り組んでみてください。
RPAを前提としたシステム間のつなぎ方ポイントはつぎの3点です。
・RPAで全てを自動化せず、データ変換機能と組み合わせる。
・データ変換ツールは、RPAと相性の良いツールを選択する。
・データ変換は、なるべく小回りの利くツール・設計・運用を考慮する。
システム間をつなぐ場合は、特に安定性と小回りを重視して自動化を検討してください。システム間連携は、システムに関わる方にとっては得意分野ですので、システム部門やシステムベンダーに相談しながら進めてみてください。
・週刊アスキーとコラボ!RPA専門情報誌「RPAマガジン」
プロフィール:
ユーザックシステム株式会社 RPAカスタマーサクセス部 リーダー1997年入社後、受発注や物流分野の業務改善プロジェクトを数多く手がけてきた。2004年ブラウザ操作自動化ツール発売を機に、今でいうRPAにも活動の幅を広げる。2020年7月よりRPAカスタマーサクセス部門のリーダーに着任。休日は陶芸で創造力を養っている。