人手不足の業界に役立つ4つの解決アイディアとRPAの活用法を解説
医療、物流、飲食業界だけでなく、あらゆる業界で人手不足が深刻な課題となっている昨今、労働力の確保や負担軽減を実現するために、RPA(Robotic Process Automation)の活用が注目されています。
RPAは、データ入力や経費精算、レポート作成などの定型かつ繰り返しの業務を人に代わり自動で作業し、工数削減や業務効率化、人的ミスの削減が期待できるツールです。
本記事では、人手不足に直面する業界で活用できる具体的なアイディアや、RPAで人手が不要になる業務の例、RPAの実際の導入事例について詳しく解説します。人手不足にお悩みの方は、ぜひご一読ください。
人手不足の現状
パーソル総合研究所が公開している「労働市場の未来推計 2030」によると、少子高齢化と人口減少の進行により、将来的に多くの業界で人手不足が深刻化すると予測されています。
2030年には、約644万人もの労働力が不足すると見込まれており、企業は新たなテクノロジーや自動化を活用した持続可能な業務運営の構築を求められています。
特に、医療・介護、建設、物流、小売業といった分野では、現場の人材確保が困難で、業務の効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務です。
企業における人手不足への対応は、単に業務を効率化するだけでなく、労働環境の改善や人材育成を含む包括的な戦略が鍵となります。
参照元:労働市場の未来推計 2030 – パーソル総合研究所・中央大学
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/roudou2030/
人手不足が著しい業種
人手不足が特に深刻な業種としては、医療・介護業界や物流業界、飲食業界などが挙げられます。ここでは、3つの業界の現状について詳しく解説します。
医療・介護業界
医療・介護業界では、高齢化社会の進行に伴い需要が急増している一方で、労働力の供給が追いつかない深刻な状況が続いています。特に介護士や看護師の人材不足が問題となっており、現場では長時間労働や過重な業務負担が日常化しています。
このような状況は、業務負担の大きさや待遇改善の遅れが改善されなければ、今後さらに悪化していくおそれがあります。
また、高齢化が進む地域では新規人材の確保が難しく、現場の負担が集中するケースも少なくありません。解決のためには、給与や福利厚生の見直し、働きやすい環境の整備、ICTやRPAの導入による業務効率化が必要な状況です。
物流業界
物流業界では、EC市場の急速な拡大により、業務量が大幅に増加していますが、一方で人手不足は深刻化しています。
特に、トラック運転手や倉庫作業員の高齢化が進行し、新しい人材の確保が難しい状況です。このような背景から、長時間労働や過酷な作業環境が問題となり、業界全体で効率化が求められています。
ドライバー不足は物流網全体に影響を及ぼし、一部では実際にサービスレベルの維持が難しくなってきている地域も見られます。労働環境の改善、賃金体系の見直し、物流拠点での自動化技術の導入など、さまざまな観点から環境の改善が求められています。
飲食業界
飲食業界では、少子化や若年層の労働市場縮小が影響し、人手不足が深刻な問題となっています。特にホールスタッフや調理補助員の不足が顕著で、営業時間の短縮や一部店舗の閉鎖に追い込まれるケースが増加しています。
加えて、労働環境の厳しさや待遇の不満から離職率が高い状況も課題のひとつです。業界では、労働条件の改善や勤務時間の柔軟性向上が求められており、同時に自動調理機器やデジタルオーダーシステムなど、デジタル技術の導入による業務負担軽減が進められています。
人手不足による企業への影響
人手不足による企業への影響として、業務効率の低下や売上・利益の減少、従業員の離職率上昇などが挙げられます。ここでは、3つの観点から人手不足が企業に及ぼす悪影響を解説します。
業務効率の低下
人手不足が進行すると、従業員一人あたりの負担が増加し、業務効率は低下する傾向にあります。
特に接客業やサービス業など、顧客対応が求められる分野においては、影響が深刻化しやすい傾向にあります。ミスの増加や作業の遅延が発生すると、個人だけでなく、企業全体の成長性やパフォーマンスが損なわれる場合もあるでしょう。
また、従業員が過剰な業務を抱えることで、サービスの質が低下し、顧客満足度にも悪影響を及ぼすことも考えられます。このような状況を防ぐためには、業務負担を軽減する仕組みや、効率的な作業フローを導入するなどの対策が求められます。
売上や利益の減少
人手不足により業務の継続が難しくなると、新規顧客への対応や需要の増加に応えられなくなり、売上や利益の減少に直結します。
特に小売業や飲食業では、営業時間の短縮や店舗の閉鎖を余儀なくされるケースが多く、利益への影響が顕著です。また、商品やサービスの提供が間に合わず、顧客からの信頼が低下し、さらなる売上減少を招くリスクもあります。
こうした課題を克服するためには、業務効率化や自動化技術の導入、外部リソースの活用が重要です。
従業員の離職率上昇
人手不足は、既存の従業員に過重な労働を強いる要因となり、疲弊やストレスの増加を招きます。その結果、モチベーションが低下し、離職率が上昇する悪循環に陥る可能性があります。
さらに、新たな従業員の確保が難しい状況では、離職者が出ても補充が追いつかないために、現場の負担がさらに増加します。働きやすい職場環境の整備や、柔軟な働き方の導入により、離職を防ぐような工夫が求められます。
また、従業員のスキルアップを促進する教育や研修機会の提供も、離職率の低下につながる有効な施策のひとつです。
人手不足を解消するためのアイディア
人手不足を解消するために取れる対策はさまざまですが、特にバックオフィスでの業務においては、RPAの導入や働き方の整備、AI・IoTの活用は効果的です。また、従業員のスキルアップ支援も離職率の低下に役立ちます。
ここでは、人手不足の解消に貢献する4つのアイディアを紹介します。
RPAの導入による業務自動化
RPAを活用して繰り返しの作業や単純業務を自動化することで、労働力不足の解消が期待できます。例えば、データ入力やレポート作成などの手順が決まった業務をロボットに任せると、従業員はより付加価値の高い業務に集中できます。
また、RPAの導入は、業務効率化だけでなく、全体の業務フローを見直すきっかけとしても有効です。自社の業務をリストアップし、無駄を削減したり、手順を整理したりすることで、さらなる生産性向上を実現できます。
柔軟な働き方の整備
リモートワークやフレックスタイム制の導入により、さまざまな背景を持つ人材が、より働きやすい環境を整備できます。
育児や介護を行う必要がある社員や、通勤が難しい高齢者、地方在住者など、これまで労働市場に参加しづらかった層の就労を促進できます。
また、柔軟な働き方は、従業員の満足度向上や離職率の低下にも寄与します。企業には、働き方の選択肢を増やすだけでなく、それに適応した評価制度や管理方法を整備し、柔軟性と生産性を両立させることも求められます。
AIやIoTの活用による作業人数の削減
AIやIoT技術を導入することで、業務プロセスを効率化し、必要な人員を最適化できます。
例として、小売業の需要予測にAIを活用すると、シフト管理や在庫管理を効率化でき、過剰な労働力を削減できます。
また、IoTセンサーを活用した作業の自動化により、現場の作業を省力化し、人的負担を軽減できます。AIやIoTは、特に物流や製造業などの業界で即効性が期待でき、業務効率化とコスト削減の両方を実現する手段として注目されています。
従業員のスキルアップ支援
従業員が複数の業務に対応できるように、スキルアップを支援する施策は、労働力不足の解決に一定の効果をもたらします。
具体的には、新たなスキルを身につけるための研修プログラムやeラーニングの提供、資格取得の支援などが挙げられます。
また、技術的なスキルだけでなく、リーダーシップや問題解決力といったソフトスキルの向上も重要です。少人数のチームでも効率的に業務を遂行できる体制を構築し、組織全体の生産性を高められれば、人手不足の解消にもつながります。
RPAで人手が不要になる業務の例
前述のように、人手不足の解消にはさまざまなアプローチがあります。中でも、RPAの導入は、高い効果が期待できるおすすめの解決策のひとつです。ここでは、RPAで自動化でき、人手が不要になる5つの業務の例を紹介します。
データ入力や転記業務
Excelや社内システム間でのデータ入力や転記作業は、RPAによる自動化の代表例です。例えば、受注データを販売管理システムに入力したり、帳票を作成して送付したりする作業は、RPAを活用することで正確かつ効率的に処理できます。
RPAの活用により、業務効率化を図れるだけでなく、人的ミスの削減にも効果を発揮します。また、深夜や休日でも稼働できるため、業務処理のスピードアップや納期短縮にも寄与します。
請求書や経費精算の処理
請求書や領収書をスキャンし、AI-OCR技術で内容をデータ化した後、RPAで経費精算システムに入力する業務も、自動化の効果が得られます。
これにより、経理部門が直面している膨大なデータ処理作業の負担を軽減し、作業時間を短縮できます。また、手作業による入力ミスを防止できるため、作業の正確性も向上します。
特に月末や四半期末など繁忙期においては、自動化による業務効率化の効果が高まります。
定型的なメール対応
定期的に行われるメール配信や返信業務も、RPAによる自動化が可能です。在庫確認や発送通知、定期報告などの繰り返し業務をロボットが処理することで、担当者の手間を削減し、より重要度の高い業務にリソースを割り当てられます。
また、受信後に速やかな対応が可能になるため、事前に設定したルールに基づいて適切なタイミングでメールを送信できる体制を整えられれば、顧客満足度の向上にもつながります。
勤怠データの集計と処理
RPAの活用は、勤怠データの集計と管理にも有効です。特に、定期的に発生する勤怠データの集計作業は、人的ミスが発生しやすく、時間もかかる業務です。RPAを導入すれば、タイムカードや出退勤システムからデータを自動で取得し、必要な形式に整えて給与システムに転送するまでの一連の流れを自動化できます。
RPAの導入により、処理スピードが向上して管理部門の負担を軽減するだけでなく、給与計算の正確性維持にも役立ちます。月末や給与計算締め切り時などの繁忙期に、特に効果を発揮します。
定期的なレポート作成
売上、在庫状況、業績データなどを抽出して定型レポートを作成する作業も、RPAによる自動化が効果的です。
例えば、営業データを抽出してグラフや表を作成し、指定されたフォーマットでレポートを仕上げる作業は、従来の手作業では多くの時間を要していました。RPAを導入することで、これらのデータ処理を迅速かつ正確に行えるようになり、作成時間を大幅に短縮できます。
さらに、データの抽出からレポート送付までの一連の作業を自動化できれば、担当者の手間を減らし、分析業務や意思決定により多くの時間を割く余裕が生まれます。これにより、業務全体の効率が向上し、迅速な意思決定が可能になります。
RPAの活用事例
最後に、RPA「Autoジョブ名人」の具体的な活用事例を2つ紹介します。RPAに興味を持っているものの、どのように業務に取り入れていけば良いのかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
医療法人 英仁会 大阪ブレストクリニック 様
医療法人英仁会大阪ブレストクリニック様では、RPAツール「Autoジョブ名人」を導入し、医事会計システムから診療実績明細データを抽出し、経営会議に使用するための資料を作成する一連の作業を自動化しました。
この取り組みにより、月間4~6時間の作業時間を削減し、業務負荷を軽減することに成功しました。
また、将来的な医療業界の労働人口減少を見据えて、省力化や機械化を推進し、人的業務の効率化と経営改善を目指しています。さらにIT化やデータの見える化も進めており、従業員の利便性向上と業務効率化の両立に取り組んでいます。
RPA導入事例 | 医療法人 英仁会 大阪ブレストクリニック 様 | ユーザックシステム
https://www.usknet.com/jirei/breast-clinic/
SBSロジコム株式会社 様(旧:東洋運輸倉庫株式会社)
SBSロジコム株式会社(旧東洋運輸倉庫株式会社)様では、最新のAI-OCR技術「AIスキャンロボ」と「Autoジョブ名人」を活用し、AI-OCRとRPAを組み合わせて通関依頼書の入力業務を自動化しました。
PDFやFAXからのデータ抽出から社内システム入力までの一連の作業を自動化したことで、月平均800件ほど手動対応していた業務負荷の一部が軽減し、入力ミス削減と業務効率化を実現できました。
同社は今後、倉庫業務へのRPA拡張も計画しており、さらなるRPAの適用業務範囲拡大を目指しています。
SBSロジコム株式会社 様(旧:東洋運輸倉庫株式会社) | ユーザックシステム
https://www.usknet.com/jirei/toyo-wh/
RPAで業務効率化・自動化を促進しよう
少子高齢化や働き方改革の影響で、多くの企業が人手不足に直面しています。この課題に対応するためには、限られたリソースを最大限に活用し、生産性を向上させることが重要です。
RPAは、データ入力やレポート作成、経費精算など、さまざまな繰り返しの業務を自動化し、従業員の負担を大幅に軽減します。労働力不足の解消と同時に、企業全体の競争力向上にもつながります。
Autoジョブ名人は、初めてRPAの導入を検討されている企業様にもおすすめのツールです。専門知識がなくても直感的に扱いやすく、手軽に業務自動化をスタートできます。人手不足解消への足がかりとして、ぜひ一度無料トライアルをお試しください。