食品業界でRPAを導入するメリットとは?活用事例5選を徹底解説
迅速かつ正確な業務処理は、製品の品質維持と顧客満足度向上のために重要です。
それらを踏まえ、食品業界における業務効率化を達成するうえで注目されているのが、現場へのRPAの導入です。RPAはPCを使った定型的な業務を自動化できるソフトウェアロボットです。業務効率化や人件費の削減、労働環境の改善など、現場に多くのメリットをもたらします。
本記事では、食品業界でRPAを導入するメリットやRPAを導入する前に検討しておきたいチェックポイント、具体的な活用事例などについて解説します。
食品業界においても、各社が抱える課題解決を目的としてRPAを導入する現場が増えてきました。そこで、業務効率化と人件費の削減、労働環境の改善、生産管理や品質管理の向上の3つの観点から、食品業界でRPAを導入するメリットを解説します。
業務効率化と人件費の削減
業務効率化と人件費の削減は、食品業界におけるRPA導入の大きなメリットのひとつです。
発注処理や在庫管理、品質チェックのレポート作成などがRPAの導入によって自動化され、これまで手作業に多くの時間を要していた業務の作業効率が向上します。業務効率化によって定型業務のために確保していたリソースを他の業務に割り当てられるようになり、社内全体の生産性も高まります。
RPAは24時間働き続けることも可能であることから、繁忙期やピーク時にも貴重な戦力として活躍するでしょう。また、自動化に伴って人の手を必要としなくなるため、人件費の削減にもつながります。
労働環境の改善
RPAの導入は、労働環境の改善にも貢献します。
近年では働き方改革が重視されており、企業には労働負担を軽減するための施策が求められています。人手不足が深刻化する中で、安定的な労働力を確保するためには、労働環境を改善して「働き続けたい職場づくり」を進めていくための工夫が不可欠です。
例えば、請求書処理のような反復的で時間がかかる事務作業をRPAによって自動化することで、従業員は勤務時間内に全ての業務を終えられる可能性が高まり、残業時間の抑制につながります。
労働環境の改善は従業員のストレスと疲労軽減に直結するため、モチベーションの維持・向上をはかるうえで重要です。
生産管理や品質管理の向上
生産管理や品質管理の分野においても、RPAの導入が効果を発揮します。
特にエラーの発生しやすい作業にRPAを適用することで、ヒューマンエラーを減らし、高い品質を維持しやすくなります。
一定の品質が維持された製品を提供し続けることで、消費者の信頼を高めて市場における自社の競争力を強化できます。また、一定の品質を維持することでブランドイメージの向上や顧客満足度の向上にもつながり、長期的な視点で企業の成長が期待できます。
RPAを導入する前に検討しておきたいチェックポイントとして、次のようなものが挙げられます。
- ルール化できる定型業務の精査
- 導入効果のKPI設定について
- 定量的・定性的な効果分析について
ここでは、3つのチェックポイントについて詳しく解説します。
ルール化できる定型業務の精査
RPA導入の前段階として、ルール化できる定型業務の精査は不可欠です。RPAは繰り返し行われる定型業務の処理に適していますが、一方で人間の判断を必要とする業務はうまく処理することができません。
そのため、自社の業務を事前に洗い出し、どの業務をRPAで自動化できるのかを精査する必要があります。
例えば、受発注プロセスの自動化、在庫管理、メール返信の自動化などはルール化が可能な業務の代表例です。自動化の対象となる業務を特定し、それらをRPAで効率的に処理できるようなプロセスを設計することが、RPA導入を成功させるためのポイントです。
導入効果のKPI設定について
RPA導入の効果を測定するためには、適切なKPIの設定が重要です。KPIは日本語で「重要業績評価指標」と表される言葉で、ビジネスやプロジェクトの目標達成度を測定するための主要な指標です。目標達成の進捗を明確にし、戦略や改善の方向性を示します。
例えば原材料の発注処理をRPAで自動化した場合、効果を測定するためには、「発注に要する時間をどれだけ削減できたか」「エラー率がどのくらい低下したか」などがKPIとして検討されます。
KPIは組織やチームが定めた目標や目的に対して達成度を定量的に示すものであり、施策を改善してより高い効果を得るために重要な役割を果たします。
定量的・定性的な効果分析について
RPA導入の効果は、定量的・定性的な観点から評価する必要があります。定量的な分析とは「数値で計測できる分析結果」であり、生産性の向上や作業時間の短縮、コスト削減などが含まれます。
一方、定性的な分析は「数値で計測できない分析結果」を表し、従業員のモチベーションの向上や顧客満足度の改善など、具体的な数値では表現が難しい要素について評価します。
定量的な分析と定性的な分析の双方を通じて、RPA導入の効果を総合的に判断することが重要です。
RPAを導入し業務の自動化を成功させるためには、過去の事例を参照して自社の施策に取り入れることも大切です。
ここからは、食品業界で具体的な成果を上げたRPAの活用事例5選を紹介します。これからRPAの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
WebEDIの受注業務を自動化し年間3,276時間を削減
食品卸売業の株式会社マツヤは、ホテルやレストラン、ハウスウェディング向けにヨーロッパからの輸入食材を提供しています。
同社では「遠方から空輸を行う必要があるためリードタイムが短い」という業務の性質上、前夜に届いた注文を翌朝6時には発注処理しなければならず、スムーズな処理を行うための工夫が必要な状況にありました。
この課題に対応するため、同社はユーザックシステムが提供する「Autoジョブ名人」を導入し、ホテル購買システム「IPORTER」と企業間商取引クラウドサービス「BtoBプラットフォーム」から受注データをダウンロードする作業を自動化しました。
1か月で106本もの自動化シナリオを開発し、年間で3,276時間もの業務効率化を実現しています。RPAの導入によって業務効率は大幅に向上し、リードタイムを守りながら、効率の良い業務運営を実現しました。
WebEDIのエラー件数削減と安定稼働を達成
九州のパンメーカーである株式会社フランソアは、かねてからフリーの自動化ソフトを導入して受発注業務の自動化を進めてきました。
しかし、フリーソフトの機能性には限界があり、特に開発のためにプログラム言語のスキルが必須だったことから、エラー発生時の対応が困難になってしまうという課題を抱えていました。
そこで、WebEDIの業務でRPAの稼働安定性に定評があるユーザックシステムの「Autoジョブ名人」を導入しました。これまでの受注業務の自動化では、たびたびエラーで停止していたものが、Autoジョブ名人の導入後は、エラー件数は従来の1/3に削減し、業務プロセスの安定性を大幅に向上させることに成功しました。
バーコードとRFIDタグを活用したトレーサビリティ強化
食品業界においては、バーコードとRFIDタグを活用してトレーサビリティを強化する取り組みを行っている企業もあります。
具体的には、製品の追跡可能性を高めるために、製造から流通、消費者に到達するまでの各プロセスでバーコードやRFIDタグを使用し、製品情報を記録して詳細な情報を参照可能な状態に整える仕組みです。
バーコードとRFIDを使って基幹システムに読み込んだデータをRPAで自動的に収集・分析することで、データを基に詳細なレポートや分析結果を生成する業務を省力化できます。
サプライチェーン全体の製品の動きを追跡し、関連データを収集・分析できれば、製造プロセスの透明化にもつながります。また、分析結果を活用して、よりスムーズな運用を実現するための業務改善も実現可能です。
製品の流通経路が明確になることで、サプライチェーンの効率化とコスト削減にも寄与しています。
衛生管理作業の自動化・効率化を実現
食品業界において、衛生管理作業の自動化と効率化を成功させている例もあります。
工場においては、製造記録や温度・湿度のモニタリングなど、さまざまな繰り返しの作業が発生します。RPAを用いてこれらの作業を自動化することで、人手に頼ることなく衛生管理の精度を高めることが可能になるだけでなく、ヒューマンエラーの発生リスクも低減できます。
また、RPAの導入によって食品の衛生管理に関するコンプライアンスの確保も容易になり、食品安全規制への対応がスムーズに行えるようになるという利点もあります。RPAを用いた自動化施策により、衛生管理作業の時間とコストを節約し、より効率的な運用を実現している事例です。
売上・在庫等の各種データをデジタル化
米菓の製造・販売を行うA社では、売上・在庫等の各種データをデジタル化する施策にRPAを利用しています。
同社では、日々の生産データや記録を紙の日報に記載し、その後デジタル情報に変換するという従来の方法に多くの時間と労力を費やしていました。
この課題を解決するため、現場情報のデジタル化を目指してRPAを導入し、日報の記入と同時にデータがデジタル化されるシナリオを作成しました。結果として、インプットに要する工数の大幅な削減に成功しています。
転記工数の削減や紙の使用量減少にも大きく貢献し、生産性の向上や環境問題の改善にも寄与している事例といえます。
Autoジョブ名人は、食品業界でのさまざまな日常業務の自動化実績が豊富です。特に「受注処理業務」の中でもWebEDI受注業務の自動化においては、「注文情報ダウンロード」「納期回答データダウンロード」など、利用するBtoB ECサイトごとのシナリオテンプレートを用意しています。RPAを導入する際に、こうしたテンプレートを合わせて活用すると、業務自動化までの準備工数を大きく削減できます。
初めてRPAをお使いになる方でも直感的なUIでわかりやすく、柔軟なカスタマイズ機能を備えているため、業界特有のニーズに応じた自動化を実現できます。
Autoジョブ名人の詳しい資料はこちらからダウンロードをしてください。
本記事を通じて、食品業界におけるRPA導入のメリットや導入時の注意点、具体的な活用事例をお伝えしてきました。
実際の事例にもあるように、RPAは食品業界における業務効率化や品質管理の向上、従業員の労働環境の改善に大きく貢献できるツールです。アナログな運用から脱却し、デジタル活用と業務効率化を実現するために、RPAの導入を積極的に検討することをおすすめします。