金融業界でRPAが導入される理由は?大手金融業の事例4選とRPA導入の注意点

さまざまな業界でRPAは導入されており、業務を自動化し生産性が上がった事例を目にします。その中でも、RPAが世に知られた2017年前後から、積極的に導入活用が進んでいるのが金融業界です。本記事では、
● 銀行業務にRPAを取り入れたいが具体的な成果の事例は?
● 大手銀行はどのようにRPAを導入した?
● RPAの導入で気をつけることは?
という点について解説し、金融事業におけるRPA導入の概要や注意点、大手銀行の事例についてみていきます。

RPAが金融事業で導入されている理由

金融業界は他の業界に先駆けてRPA導入・活用をしてきたと言っても過言ではないでしょう。なぜ、なぜ金融業界では、RPAの導入・活用が進んだのでしょうか。

定型化した業務が多い金融業界と相性がよい

RPAは、定型化した流れの業務を行う金融業界でも有効に活用できます。
あらゆる職種の中でも、金融業界は事務関連の業務がもっとも多い分野であり、振込処理や口座開設、利用者とのメールの送受信など、複数の定型化した事務業務が発生するからです。

これらの事務業務は金融業界において、企業の利益につながらないノンコア業務として扱われながらも、多くのリソースの投下と時間を必要としていました。
RPAは、そうした頻繁に発生するノンコア業務の自動化において特に能力を発揮し、人は、創造性の高い業務に集中することができるのです。

メガバンクをはじめとした多くの金融機関がRPAの導入を進めるおもな理由はここにあります。

自動化を進めることでヒューマンエラーを防げる

お金を扱う金融業界の業務は、ミスがないよう、細心の注意を払うものです。
RPAは、業務上のヒューマンエラーの防止に大きな効果を発揮します。

大量のデータを扱う事務処理はヒューマンエラーを起こしやすく、銀行業務で頻繁に発生する個人情報の取り扱いなどでは、誤記入や漏洩といったミスが起こらないよう、慎重に進めなければなりません。

どんなに注意しても、人間の場合、重要な業務においてミスが起こることがありますが、RPAは人間と違って疲労や感情の起伏などもないため、常に一定のクオリティを維持したまま業務を進めることができます。
RPAは設定した通りの動作を正確に行ってくれるため、ミスの許されない銀行業務において最適なツールだと言えるでしょう。

オンライン関連の取引も自動化することができる

RPAは、銀行業務の1つであるインターネット上における口座開設や資料請求、問い合わせといった、オンライン上の取引においても自動化の効果を発揮することができます。

スマートフォンの普及もあり、近年ではインターネットを通じた口座開設等の申し込みが増加しています。
RPAであれば、Webページ上などで顧客が入力した情報をベースに、必要な資料請求や情報の書き込みといった定型作業を自動化することができます。
オンライン上の取引はRPAとの親和性も高いため、高い導入効果が期待できる領域です。

大手金融機関のRPA導入による成功事例

金融業界において、RPAを積極的に活用しているのが大手金融機関です。
それぞれの大手金融機関では、どのようにRPAが運用されているのでしょうか。

三井住友銀行の導入事例

三井住友銀行は、2017年に発表した500億円のコスト削減目標に向け、大規模なRPA導入を行ったことにより、業務の合理化とコア業務への集中を実現しています。
RPAによる自動化で効率化が図れた業務の一例には、以下のようなものがあります。

● 海外送金に関する書類のOCR処理とデータベースへの保存
● 金融商品データのダウンロードやチェック
● 自動的な顧客営業資料の生成
● 情報収集業務
● 事務センターにおける定型業務

上記の業務以外にも、本部での各種報告や申請事務など、さまざまな業務プロセスに活用されており、広く自動化の効果を発揮しています。

この取り組みにより、三井住友銀行は2017年の発表時点で約200の業務と40万時間の業務量の削減を実現しています。

参考:生産性向上の実現に向けたRPA(Robotic Process Automation)の活用について

三菱東京UFJ銀行の導入事例

金融機関のコンプライアンス部門では、重大なリスクにつながる事務業務が頻繁に発生するものです。三菱UFJ銀行では、コンプライアンス部門にRPAを導入し、自動化によってリスクヘッジにつながる正確な業務処理を実現しました。

具体的には、データ確認などの目視確認を伴った単純作業をRPAによって自動化し、誤入力や情報漏れといったリスクを回避しながら効率化を図り、コンプライアンス部門の業務時間の6〜7割の業務削減に成功しています。
これにより専門業務に集中できる社員の割合が増え、業務全体の生産性を向上させることができています。

また、三菱東京UFJ銀行は、コンプライアンス部門以外にも積極的にRPAの導入を進めており、2023年度までに9,500人分(全行員数の1/3に該当)の業務を削減し、さらに約2,000もの業務をRPAで自動化する計画を掲げています。

参考:三菱東京UFJ銀行が可能性を拡げる、金融機関でのRPA導入による業務効率化

みずほ銀行の導入事例

AIを使ったコールセンターサポートやQRコード決済など、フィンテック分野で先進的な取り組みを行うみずほ銀行は、RPAの導入にも積極的に取り組んでいます。
2016年以降RPAの導入を推し進め、年間約77万時間にも及ぶPC作業を自動化することに成功し、大きな成果を上げています。

みずほ銀行では主に、事務センターと本部の2つの場でRPAが採用されています。
事務センターでは大量のデータを扱う業務に対してRPAを導入し、自動化によって正確かつスムーズな業務遂行を図りました。
一方、本部では、扱うデータの種類が多い業務にRPAが導入され、データ種類別の適切な業務処理の自動化を実現しています。

参考:みずほ銀行がRPA導入で年77万時間分の効率化、効果てきめんの「2大作戦」とは

PayPay銀行

日本初のインターネット専業銀行として創業したPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)は、業務自動化を図るRPAツール「Autoジョブ名人」を導入し、自動化を実現、成果を上げています。
PayPay銀行はRPA導入によって次の業務を自動化しました。

● モニタリングのグループにおける取引停止の通知書送付業務
● デビットのグループにおける不正取引停止業務
● Visaデビットカードに関連する業務

モニタリングのグループにおける取引停止の通知書送付業務では、対象者のデータ抽出や自動封函機への印刷指示などが自動化されています。
また、不備のある口座情報から更新が必要なデータを抽出し、システム上必要なステータスを更新するといった業務も自動化しています。

デビッㇳのグループにおける不正取引停止業務では、RPAでカードの不正利用を検知し、行内システムへの登録するまでを自動化しています。
この仕組みにより、カード等の不正利用を未然に防止することが可能となりました。

Visaデビットカードに関連する業務では、オートコールに必要な架電リストの作成や郵便物を不着システムに登録する作業、立替金回収リストの作成といった事務業務を自動化しています。
これらの作業を自動化することで、事務業務の大幅な効率化を実現しています。

参考:安定感に高い信頼PayPay銀行がAutoブラウザ名人との5年を振り返る

RPAを導入する際に確認すること

前述の事例から、事務業務や処理の自動化に、RPAによる自動化が効果を発揮することがお分かりいただけたと思います。
ここでは、RPAを導入する前に必ず確認し、準備しておくべきことについて解説します。

業務フローをマニュアル化する必要がある

RPAをスムーズに導入するためには、導入前に自動化できる業務とできない業務を分けるため、一旦業務フローをマニュアル化することによって業務全体を見直す必要があります。

長期にわたって手作業で行ってきた業務を自動化するためには、RPAに対する社員の理解と業務の全体像を把握することが欠かせません。

これは銀行などの金融業界だけに限らず、企業がRPAを導入して業務の効率化と生産性を向上させるには、まずは業務の全体像がわかるようにマニュアル化しておくことが必要条件になります。
特に中長期における事業計画でRPAの導入を検討している際には、社員がRPA導入の効果と業務フローのマニュアルを理解することと、社内のITリテラシーの向上が重要になるでしょう。

RPA開発を内製するか外注するか検討する必要がある

RPAを導入する際には、RPAの開発を自社で内製するか外注するか検討する必要もあります。
RPA開発の内製に必要なITスキルを有した人材が不足している場合は、メーカーや外部ベンダーのサポートを利用することも考えます。
また、自社でRPA開発を内製し、運用まで行う場合でも、メーカーや外部ベンダーのサポートを受けられる状態を作っておくことをおすすめします。
専門家の知識と経験を取り入れることで、トラブルや問題発生時にスムーズな対処ができますし、業務効率化の効果を最大限引き出せるからです。

また、専門家など高いスキルを持った人との連携は、社員がRPAやその他ITスキルの知識を深めることにもつながるため、人材育成の側面も期待できます。
RPAを導入する際には内製・外注を問わず、まずはその道のプロである外部ベンダーに相談してみてはいかがでしょうか。

関連記事≫RPA開発は自社でできる?開発するメリットや手法・手順を解説

運用できる人材を確保する必要がある

RPAを導入した後は、日々の運用改善やメンテナンス、エラー対応などの管理を行える人材を確保する必要があります。
長期にわたる持続的な運用を考えると、IT関連のスキルを持ったRPA担当者を複数人立てることが望ましいでしょう。

ただし、RPA運用に必要なITスキルを持った人材が社内に不在だった場合は、社員に一定の知識を身につけてもらうため、RPAの運用と同時に人材育成を行うことも必要です。
前項の「RPA開発を内製するか外注するか検討する必要がある」でもお伝えした通り、専門性のあるメーカーや外部ベンダーのサポートを受け、ITやRPAに関する知識を吸収しながらRPA運用を行うのがおすすめです。

また、メーカーや外部ベンダーが開催する勉強会やセミナーなどに参加し、RPAに関する知識を深めることも有効です。
複数のRPA担当のエンジニアを育成し、退職や欠員といった事態にも対応できる体制を整える必要もあるため、RPAについて学習できる仕組みは積極的に活用していくことが大切です。

RPAを導入する際の注意点

RPAによる業務の自動化には多くのメリットがある一方で、導入の前後には注意点があります。
ここで解説する2つの注意点は、RPAを導入する際によくある内容ですので、押さえておきましょう。

導入に抵抗のある従業員もいる

RPAの導入はこれまでの業務をロボットに任せることになるため、仕事を奪われる・リストラされるなどのネガティブなイメージを持ち、導入に抵抗する社員がいる場合もあります。
社員に強い不安を抱かせたり、モチベーションの低下を招かないためにも、企業側には慎重な対応が求められます。
現場の社員に対しては、RPAのツールとしての本質的な部分の説明や、社員の業務負担軽減の具体的な効果について丁寧に説明する必要があります。

RPAの導入は、人員削減を目的としているわけではなく、業務効率化や生産性の向上を促進するためのものです。
単純な定型業務を自動化して人の手から離し、浮いたリソースを創造性のある業務や他の重要な作業に就くことで、企業全体の生産性を向上させることが目的なのです。

RPA導入の効果が思ったほど大きくない、把握できない

RPAを導入においては、自動化を想定していた業務の中で限られた部分にしか適用できず、導入コストだけが大きくかかってしまった例もあります。

自動化したい業務が、RPAと互換性のない独自開発のクライアント・サーバーのアプリケーションだったケースや、全社での活用を想定してRPA導入したものの、個別の部署の導入障壁により、全社展開を達成できなかったケースなどです。

また、RPAが正しく動作しているか、効果が出ているかを検証しきれないことを理由に、広く業務に導入することを躊躇してしまうケースもあるようです。

RPAを導入し、効果を最大限引き出すために、環境や周辺ツールと連携し実行できるかを事前に確認することは基本です。
その上で、自動化された業務の実行状況を管理し、客観的に運用の効果を検証できる仕組み作りもポイントになります。

まとめ

RPAは、定型化した事務業務の多い金融業界で高い効果を発揮しています。
金額や個人情報の扱いにおいて、誤記入や記入漏れといった重大な問題に発展しうるヒューマンエラーを防止し、自動化によって効率的でスピーディーな業務遂行を実現しています。

実際、三井住友銀行や三菱UFJ銀行などの大手銀行が積極的にRPAを導入して業務改革を行い、莫大な金額のコストを削減したり、業務や作業時間の削減に成功しています。

金融業界でのRPAの普及からわかるように、事務業務をはじめとする、定型化されたルーティーン作業を自動化し、業務の質や生産性を上げることを検討してはいかがでしょうか。

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