RPAでできることは?導入するメリットや成果事例を紹介
■RPAは具体的に何ができて何ができないツールなの?
■RPAが対応している業務の範囲は?実際にRPAを導入した企業はどんな成果を上げているの?
このように思っている方に向け、本記事ではRPAの効果と導入のメリット、実際の業務での成果事例について解説します。
RPAによる自動化は、企業・組織にとってどのような価値があるのでしょうか?
そもそもRPAとは?
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上で行うホワイトカラーの業務やバックオフィスなどの業務を自動化するためのツールです。
ロボットに業務プロセスを記録し、条件に応じて反復させることで、業務を自動かつ効率的にこなすことが可能になります。
RPAは複雑な思考を挟む業務や状況判断を必要とする一部の業務、マニュアル化が困難な業務には適していないものの、パソコンを使った定型業務や手順の決まった業務を処理するツールとして高いサポート能力を発揮してくれます。
基本的には知的作業を伴った複雑な業務には対応していませんが、AIを組み込み、機械学習が行えるようにすることで、一定の分析や判断を下して業務遂行できるようにすることも可能です。
RPAには、できることとできないことがあります。RPAを導入する際は、業務の特性や自動化の対象範囲を適切に見極めることが重要だと言えるでしょう。
RPAには3つのクラスがある
RPAは総務省が認定している3つのクラスがあり、ツールの機能や自動化できる業務のレベルに応じて分類されています。以下の3つがRPAのクラスです。
● クラス1:RPA
● クラス2:EPA(Enhanced Process Automation)
● クラス3:CA(Cognitive Automation)
クラス1:RPAは、PCで行う定型業務を自動化します。Excelやアプリケーションからデータをコピー・抽出し、社内システムに入力するなどといった業務です。
クラス2:EPAは、一部の非定型業務を自動化するため、AIを組み込んで進化させたRPAです。例えば、顧客からの問い合わせや取引先からの発注メールをAIが解析し、自動対応するなどです。
AIの判断が入ることにより、データの抽出・入力作業などしか自動化できなかったRPAが、状況に応じて動きを変える複雑な作業を自動化できるようになりました。
クラス3:CAは、収集されたデータをもとにRPAが自律的に判断し、業務プロセスの分析や改善の提案、さらに業務上の意思決定までを自動化するクラスです。クラス1・2と大きく異なる点は、自律型AIが機械学習を通じて意思決定の能力・精度を向上させられる部分です。
このクラスはまだ普及していませんが、AIの進化・普及に伴って将来的に運用されることが期待されています。
RPAでできること
RPAはオフィス内の業務なら何でも自動化できる万能ツールではありません。パソコンを使った定型業務や事務作業に向いており、高いパフォーマンスと効果を発揮してくれます。
RPAで自動化できる作業にはどのようなものがあるのかご紹介します。
作業手順が単純で判断を伴わない作業
RPAは、人間のように複雑な判断や創造性を発揮したり、知的生産を伴った業務を自動化することはできません。
作業手順が決まっており、判断などの思考を伴わない作業を自動化できます。
例えば、請求書や経費などの処理や発注や納品処理などは、RPAによる自動化が可能な業務の一例です。
ただし、これらの業務でもすべての業務が無条件でRPAに置き換えられるわけではありません。
あらかじめ作業手順が決まっている、繰り返しの業務などの形で処理可能な業務がRPAで自動化できます。
臨機応変な判断が求められる業務では、RPAによる自動化は困難です。
部分的に単純作業の領域に導入できる場合もありますが、その場合、人の手で行う業務との兼ね合いや、導入コストについて十分に吟味する必要があるでしょう。
一定のルールが決まっている定型の作業
RPAの対象業務についてさらに細かく分解すると、ルールや手順が決まっている業務の自動化に適しています。
例として、以下のような作業を自動で実行することが可能です。
● 収集したデータをエクセルなどに転記する作業
● データから抽出した数値の集計処理
● 受信したメールに対して決まった動作を実行する
RPAはこれらの作業を得意としており、製品の価格調査やニュースの収集を自動で行うこともできます。
請求情報と入金情報を照合して入金確認済みの項目のみを消し、未入金のみをリスト化するといった、やや込み入った作業でも、ルールが決まっていれば自動化することができます。
定期的な周期で繰り返す作業
RPAは、日次・月次・定時などの一定の期間内、もしくは期限が決まっているなど時間的制約のある業務にも適応させることができます。
例えば、毎月の社員の勤務時間の集計や累計残業時間の計算・確認、給与計算や振込手続き、明細書の自動発行などが該当します。
これらの業務は従来、人の手によって行われていましたが、RPAによって自動化することで作業時間の短縮と人的リソースの確保が可能になります。
人為的なエラーや作業の遅延などが起こることもないため、より効率的な事務処理が行えます。
RPAでできる代表的な業務
人の判断を伴わない・ルールが決まっている・定期的な周期で行うの3つの要素を持つ業務が、RPAで自動化できる業務ですが、具体的にはどのような業務があるのでしょうか。
ここでは、多くの企業が行っている業務の中で、RPAによる自動化が可能な代表的な業務についてお伝えします。
勤怠管理に関すること
毎月発生し、全社の膨大なデータを一括処理しなければならない勤怠管理業務は、RPAによる自動化にもっとも適している業務の1つです。
勤務時間の集計、累計残業時間の確認、有給休暇の残日数のチェックなどを自動化することができます。
さらにそれらのデータを基に給与計算を行ったり、明細書などの作成までをRPAで自動処理したりすることが可能です。
また、人事部門においては、勤怠管理集計のために勤怠システムから残業時間のデータを抽出し、残業が多い社員や部署を特定することも可能です。
複数のアプリケーションを連携させることで、これらの情報を関係者に自動通知するなどといったこともRPAによって実現することができます。
在庫管理に関すること
在庫管理は、販売機会の損失や過剰に在庫を抱えることによる経費負担を防ぐために必要ですが、RPAを活用し、在庫状況を定期的に把握することができます。
あらかじめ設定した時刻に自動で営業担当者に在庫数や出荷予定数などの情報をメールで通知することが可能です。
これにより営業担当者は常に自社商品の在庫状況を把握できるため、生産部門に対して適切なタイミングで生産の指示を出すなど、損失リスクを最小にした業務遂行が可能になります。
また、RPAは複数のシステムやアプリケーションを経由する業務を担当することもできます。
例えば、営業管理システムに入力された受注情報データをCSVファイルとしてダウンロードし、商品管理システムに取り込んだり、担当者に報告メールを送信するといった一連の流れを自動化することも可能です。
従来は専用システムの開発や手作業によるデータの連携が必要でしたが、RPAによる自動化によって、開発コストや作業時間の大幅な削減を行うことができます。
顧客情報に関すること
複数のシステムに手作業で顧客情報を登録するなど、大量処理の場合、コピペミスや誤入力といった人為的なエラーや、登録漏れなどのリスクが出てきます。
こうした顧客情報の入力や管理に関しても、RPAによる自動化は有効になります。
例えば、専用フォームに顧客情報を一度入力するだけで、自動的に各システムに情報が登録されるように仕組化することができます。
別のシステムに手作業で1つ1つ入力する手間がなくなるため、業務の正確性向上や、負担軽減や人的リソースの確保につなげることができるでしょう。
また、RPAで顧客情報の管理を自動化すると、顧客の企業名を基に公式サイトにアクセスし、必要な情報を自動的に取得するといったことも可能になります。
顧客から問い合わせがあった場合、RPAが問い合わせへの回答に必要な顧客の企業データを自動で取得し、企業情報に基づき最適化された回答を提供する、といったことが可能になります。
レポート作成に関すること
ECサイトを運営している場合、最新のデータを収集し、徹底した分析を行いながら戦略的に運営することが欠かせません。
サイトの閲覧者数、滞在時間、販売数、広告プロモーションの投資効果など、収集しなければならない情報は多岐に渡ります。
そのようなECサイト運営においても、RPAを導入して自動化することにより、ECサイトや広告媒体の管理画面からあらかじめ設定した情報を自動的に収集し、スピーディーに定型レポートを作成することが可能です。
始業前にRPAにデータ収集を自動で行うように設定しておけば、作業工数を大幅に削減することができるでしょう。
さらに、始業と同時にレポートをチェックすることで、ECサイト運営に必要な考察と分析をスムーズに行い、迅速かつ適切な対策の実施が可能になります。
メールなどの配信に関すること
業務において、あらかじめ内容の決まった定型文のメールを配信することは多々あります。採用業務の場合では、面接希望者への会社説明会や他のイベントの告知など、面接日程のリマインドなどもRPAによって自動化することができます。
また、業務上のメールだけでなく、社内外に向けたメルマガの定期配信に関しても、RPAによって自動化することが可能です。
RPAは社内システムに登録されている送信者リストから対象者を抽出・選択し、メールの自動送信を行うことができるため、業務負担を軽減するだけでなく、連絡漏れや誤送信といった人為的エラーを防ぎます。
問い合わせ対応に関すること
専用フォームに寄せられた問い合わせに対しての回答も、RPAによって自動化することができます。
担当者が1つ1つの問い合わせに対し、回答内容を考えて返答を送信することは手間がかかります。
RPAでは問い合わせへのメール返信の設定を行うことで自動的に回答を送信すると同時に、問い合わせ内容を社内の業務管理システムに転記したり、関連部門の担当者に通知することができます。
上記のように、問い合わせへの返答や情報の登録、社内での共有を自動化することで、業務効率を向上させることができます。
またメールなどの文書による問い合わせ対応だけでなく、電話対応においてもさまざまな効率化が可能になります。
例えば、着信番号を参照してデータベースから顧客情報を取得し、オペレーターに提供するといった流れを自動化させることもできます。
実際に、RPAを活用して大きく効率を向上させたコールセンターもあります。
RPAでできないこと
イレギュラーな事態の対応や複雑な作業工程が含まれている業務はRPAでの自動化は難しいと言えます。
ここでは、RPAでの自動化が不可能、あるいは難しい業務の種類について見てみましょう。
人の判断を要する業務
RPAは、手順が決まっていたりルールが設定されている業務は自動化できますが、業務上の課題を見つけ、改善案を出すなどのアップデートや、人の状況判断を必要とする業務には適していません。
以下の業務は、RPAでできない業務の代表例になります。
● ユーザーの潜在的なニーズを探り、新規のサービスや商品を生み出す業務
● 紙に記載された手書き文字や画像などの認識が必要な業務
● OCRで書類をスキャンするなど、物理的な操作が必要な業務
● 接客や電話対応など状況に合わせてやり方が変わる非定型業務
RPAは高度な判断や創造性が必要になる作業は困難です。
ただし、将来的にAIなどの技術を組み合わせることで、思考や判断を伴う作業にも対応できるようになる可能性はあるでしょう。
複雑な処理やルール化できない業務
アップデートなどアプリケーションの複雑な操作手順が必要な業務や、頻繁なデザイン変更が必要なWebサイト運用など変更の多い業務は、RPAでの自動化は適していません。
RPAはあらかじめ設定されたルールに基づいて作業を行うものだからです。
1つ1つの作業を自動化することができても、業務全体の作業の手順が複雑な場合は、設定が複雑になりすぎるためシナリオ開発が難しくなります。
こういった業務の場合、一部の作業だけをRPAで自動化することにより、部分的な効率化を図ることはできます。
発生頻度が不定期な業務
新規の顧客対応や、トラブルシューティングといった発生頻度が不定期、あるいは突発的に発生する業務は、RPAによる自動化が不可能な業務になります。
RPAの特徴の1つとして、事前に設定された手順を繰り返し実行することがあります。
ルールが明確ではなく、発生頻度が不定期な非定型業務は人の判断が必要となるため、RPAでの自動化をすることが困難な業務になります。
RPAの活用事例
RPAは、各職種の現場においてどのように活用されているのでしょうか。
経理部署の作業を効率化
RPAの活用事例として、経理部門での入金消込作業の自動化が挙げられます。
売り上げが発生した際に実際の入金で売掛金を消し込む作業は、従来、人の手で行われていましたが、RPAで自動化することができます。
RPAの事例では、工数の日程を10分の1にまで減らしたケースもあり、大きな効果を発揮しています。
また、日常的な経理業務も、RPAによって自動化を図ることができます。
例えば、システムからデータを抽出し、Excelでの資料作成業務や、各部門から提供されたデータを社内システムに登録し、検索条件を入力してさまざまなデータを抽出するといった作業などです。
これらの作業も、RPAによって全体、または部分的に自動化し、作業の人的・時間的負担を軽減することができます。
RPAは定型化した事務作業と相性が良く、自動化させやすいため、特に経理業務においては高い効果を発揮しています。
顧客情報管理でコールセンター業務を効率化
RPAによる自動化は、コールセンター業務の効率化にも大きく貢献しています。
通常、コールセンターでは顧客への対応が中心であり、人間の判断力が必要不可欠だと思われがちですが、顧客情報の紹介やデータベースの更新など、RPAが活躍する作業は存在しています。
例えばRPA導入以前は、顧客情報を参照するために手順が多く、画面の切り替えにも時間がかかっていましたが、RPAを導入することで処理時間を劇的に短縮できたと言います。
複数のスタッフで行っていた業務を、新人スタッフ1人だけでも行えるまでに業務効率を向上させることに成功しています。
ECサイトのマーケティング業務を効率化
ECサイトのマーケティング業務を効率化することも可能です。
ECサイト上では複数の販売サイトが比較情報として掲載されている場合、各販売商品の価格や在庫といった情報はリアルタイムで更新されていきます。
それらの情報を1つ1つを人の手で取得するのは、大変な労力がかかってしまうものです。
そこでRPAを導入し、情報の収集を自動化することで、大幅な時間と労力の削減を可能にしました。
思考や判断が必要なマーケティング戦略などの業務をRPAで自動化することは不可能ですが、ECサイト運営に関係するパソコン上で行う手作業であれば、RPAを適用させることができます。
RPAによる情報収集の自動化は、単に時間と労力を節約するだけでなく、戦略的な計画策定に集中するための人的リソースを確保できるといった、マーケティング業務で重要なサポートを得られます。
人事労務のダウンロード処理を効率化
RPAによるダウンロード処理の自動化で、人事労務を効率化させる例もあります。
複数の求人サイトから応募者のデータをRPAが自動的にダウンロードし、採用管理システムに適切な形式で取り込むまでの作業を自動化することができます。
それ以外にも、採用に関係するイベントや説明会の案内を応募者に自動送信したり、採用試験の採点作業を自動化したりするなど、人事労務の領域でRPAが活躍する業務は多くあります。
人事労務では、RPAの導入により採用業務の効率化と時間の節約、人的リソースの確保を実現しています。これにより、採用担当者は優れた人材の獲得するための戦略的な活動に注力できるようになり、企業にとってプラスとなる業務状態を生み出せるようになりました。
不動産物件の自動データ入力
不動産業界でも、RPAによる自動化は効果を発揮しています。
Excelにあるデータを異なるシステムに手動で入力するには手間がかかりますが、RPAを導入することで1件約15分かかる作業を約5分に短縮し、年間1万時間もの工数の削減を実現した事例もあります。
また、不動産仲介業者においてもRPAの導入は有効です。
例えば、不動産情報を掲載している媒体やシステムから物件情報データ取得をし、自社Webサイトへの最新情報として自動転記できるようにします。
これにより、不動産の空室情報をリアルタイムで提供したり、Webサイト上の誤情報の掲載といった人為的エラーも防止する、といった効果を得られます。
迅速で正確な物件情報を自社Webサイトに掲載することで、顧客からの問い合わせやトラブルの発生を減らすことも期待できます。
不動産業界では、とくに顧客側が抱く物件情報を素早く知りたいニーズと、間違った情報を受け取りたくないニーズの2つの側面で、RPAが活躍しています。
その他にもRPAはさまざまな業界・業務で活用されています。
より詳しく活用・導入事例について知りたい方は、こちらの導入事例一覧からご確認ください。
まとめ
RPAで自動化できる業務の条件は、「作業手順が単純で判断を伴わない作業」「一定のルールが決まっている定型の作業」「定期的な周期で繰り返す作業」の3つです。
複雑な思考や判断、イレギュラーな事態にアドリブで対処する必要のある業務などは、RPAには向いていません。
データ入力や抽出、転記といった手順の決まった業務は、RPAでの自動化がもっとも適している作業だと言えるでしょう。
事務業務はルーティンワーク化されているイメージがありますが、考えている以上に負担の大きい業務です。業務の生産性向上を目指すために、RPAの導入で事務作業の人的・時間的負担を軽減し、効率化することをおすすめします。
ユーザックシステムでは、RPAの導入から運用まで、業務自動化実績19年で蓄積したノウハウを活かし、適切にサポートします。
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