自治体においてRPA活用が推進される理由とは?

国内では、少子高齢化によって労働力人口は右肩下がりを続けており社会問題となっていますが、それに伴いRPAを活用して業務の自動化・効率化に取り組む自治体が増えています。

RPAは人手不足を解消し大幅な効率化を実現するツールとして注目されており、国内での導入実績も多くなってきました。
本記事では自治体でのRPA導入について、期待される効果や活用するためのノウハウを紹介します。

● 自治体でRPAを導入するとどのような効果が得られるのか知りたい
● 自治体のIT化が遅れているため、早急にRPAを導入して活用したい

このようにお考えの方は、ぜひご参考ください。

自治体におけるRPA活用が推進される理由

近年、多くの自治体がRPAを導入し効率化に取り組んでいる背景として、総務省が開催している「自治体戦略2040構想研究会」の存在が挙げられます。この研究会では労働力人口が減少を続ける社会において、自治体行政の課題やあるべき方向性を協議することを主旨としています。

少子高齢化が社会に与える影響は大きく、教育、医療・介護、防災対策などさまざまな分野で課題が生じますが、自治体行政においても税収の低下や職員数の減少に耐え得るよう変化が求められているのです。

いまや民間企業だけではなく自治体でもテクノロジーの活用や行政事務の効率化は、避けては通れない課題となりました。自治体におけるAIやRPAの活用は、このような時代背景が大きく影響しているのです。

自治体におけるRPA導入のメリット・効果

自治体でのRPA導入・活用のメリットや効果について見ていきましょう。

自治体におけるRPA導入のメリット

コスト削減

RPAはパソコンの事務作業を自動化するためのITツールです。人が対応している定型的な作業や単純作業は、RPAで自動化フローを作成することによって、人が作業する必要がなくなります。

一度作成した自動化フローは業務やシステムに変更が生じない限り、ずっと使い続けることができますので、その業務に実務担当者を配置する必要もありません。

自動化の対象作業を増やすごとに比例して、コスト削減効果も高くなっていきます。

人手不足の改善

RPA導入理由のランキング上位に上がるのが、人手不足の解消です。

RPAは、24時間365日作業を続けることができるので、これまで複数人で行っていた業務も一つの自動化フローで完結できるようになり、人手不足を解消できます。

業務の効率化

RPAは作成した自動化フローに基づき業務を実行します。処理速度も人と比較し圧倒的に速いため、大幅な業務の効率化が実現できます。

たとえば半日かけて人が行ってきた業務をRPAで実行すると、わずか数分で完了することもあります。後続の作業がある場合などには、全体を通じて業務の時間が短縮されるので特に有効です。

コスト削減や人手不足の解消とあわせて、業務の効率化もRPAの大きなメリットです。

作業の正確性の向上

事務作業の問題点として「ミスの発生」が挙げられますが、RPAの自動化フローでは事務ミスは発生しません。

人の場合、勘違いや集中力の途切れ、疲労、体調などの影響によって、ミスが発生してしまうものですが、RPAはあらかじめ決められたとおりに処理をするのでミスは起こりえません。

RPAを活用すれば、効率性とともに作業の正確性も大幅に向上するのです。

自治体におけるRPA導入の効果

下記の表は総務省が発表した「自治体におけるRPA導入ガイドブック」に掲載されているRPA導入による効果です(一部)。

団体名 人口 会計部門の職員数 RPA業務数 年間削減時間
愛知県阿久比町

28,698人

187人

5業務

552時間

鹿児島県奄美市

43,267人

508人

3業務

298時間

富山県氷見市

46,732人

374人

4業務

421時間

石川県加賀市

66,350人

567人

4業務

321時間

長野県塩尻市

67,035人

518人

2業務

2,412時間

引用:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」

RPAの効果は年間削減時間のみではなく、「職員の精神的負担が軽減された」や「住民から行政サービス向上に対する好評価を受けた」といった内容も報告されています。

RPAの導入は自治体行政にとっても大きなメリットが得られることが実証されています。

自治体におけるRPAの活用方法と業務例

ここでは自治体におけるRPAの活用方法について紹介します。

自治体におけるRPAの活用方法

データの入力・転記・照合

ある情報元からデータ参照して別のファイルに入力したり、コピーして貼り付けたり、両方の値を照合したり、といった作業は事務処理ではニーズの高い作業の一つです。

データの入力・転記・照合は手順が決まっているので、RPAでの自動化に向いています。

RPAで自動化することで、業務効率の向上やミスの削減に大きな効果を発揮します。

情報の収集と分析

RPAはWebサイトから特定の情報を収集する作業を自動化することもできます。

Webサイトは更新頻度の高いメディアとなりますので、RPAを用いたWebスクレイピングは情報収集によく活用されている機能です。

また、収集した情報を所定のフローにより分析を行っているのであれば、あわせて自動化フローを作成することで、情報の収集から分析まで一貫してRPAで作業することが可能になります。

システム・アプリケーション間の連携

RPAはパソコンで操作するシステムやアプリケーションを使う業務も自動化できます。Excelファイルやメールアプリケーション、Webブラウザ、独自のシステムなどと連携して、業務自動化を実現しているケースは多く見受けられます。

自治体におけるRPAの活用業務例

下記の表は総務省が発表した「自治体におけるRPA導入ガイドブック」に掲載されているRPA導入業務です(一部)。

導入分野

導入業務

住民基本台帳

  • 個人番号カード交付管理
  • ご遺族手続支援コーナー資料作成業務

個人住民税

  • 当初課税準備:住民税申告書の入力、所得税確定申告書の入力、給与支払報告書の入力、法定調書の入力
  • 当初課税:エラー解消業務
  • 更正:年金資料の入力、給与所得者異動届出書の入力、退職所得分納入申告書の入力、納税通知書の作成
  • 照会:公用照会による課税証明書の発行

法人住民税

  • 基本情報登録:法人設立届出書の入力
  • 申告書受付:法人住民税申告書の入力、電子申告データの取込み
  • 更正・決定:法人税額更正データとの照合

軽自動車税

  • 当初課税準備:新規車両登録、車両変更登録、廃車登録

固定資産税

  • 課税客体把握:償却資産申告書の入力、登記異動情報の入力
  • 評価:評価情報の入力
  • 更正:納税通知書の作成

収滞納管理

  • 収納:口座情報の登録・廃止、入金消込
  • 還付・充当:還付入力、還付充当
  • 滞納整理:納付書・催告書
  • 明細書等の作成、預貯金調査

引用:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」

 

RPAの導入を成功させるために気を付けるべき7つのこと

RPAの導入を成功させるためにはどのような点に気を付ければよいのでしょうか。
ここでは総務省が発表した「自治体におけるRPA導入ガイドブック」を参考に、気を付けるべきポイントを7つ紹介します。

RPAの特性に合った業務を対象に選ぶ

RPAは特性を理解して活用することで大きなメリットを生み出すことができますが、何でも自動化できる訳ではありません。

人の判断が排除されロジック化された業務を自動化することができます。そのため、現在の業務を洗い出してRPAの特性に合った業務選定をしなければなりません。

「RPAの理解」と「業務の理解」の両方が必要

RPAの導入にはRPAに関するスキルと、業務の内容・プロセスに関する理解の両方が必要です。どちらか一方が欠けた場合、自動化の実現が困難になりますので、予め運用体制や役割分担を明確にする必要があります。

RPA担当者と業務担当者でうまくコミュニケーションを取りながら協力して進めていきましょう。

RPA導入の効果目標を設定する

RPAで業務を自動化し、どのような効果を得たいのかを、あらかじめ決めておきます。RPAの効果には削減時間という目に見える指標もありますが、精神的な負担の軽減などといった定性的な効果もあります。

例えば削減時間のみを効果目標にした場合、導入後の評価段階で思うような結果とならず、RPAの推進が滞ってしまうことも考えられます。

効果目標を設定する時には定性的な内容も含めることをおすすめします。

業務の整理・見直しにより導入効果を高める

RPAで自動化フローを作成する際、既存の業務プロセスをそのまま移行するのではなく、無駄な工程を省いたり、手順を効率的な順番に見直したり、といった業務の整理・見直しが非常に重要です。

中には、RPAで自動化不可能と思われていた業務でも人の判断基準を明確にして、機械的な処理を行えるように改善することで、自動化が実現できるケースもあります。

またシンプルな自動化フローほど、後々のメンテナンスも楽になります。

利用の促進によりRPA導入業務の幅を広げる

RPAは特定の部署で活用するだけではなく、他部署も含めて広く活用することで導入効果は飛躍的に高まるでしょう。

一つの業務の自動化に成功したのであれば、その関連業務や他部署にも広げていくことが重要です。効率化が進めば職員のモチベーションも高まり、自動化に積極的な雰囲気になることも期待できます。

シナリオの保守性を確保し、継承する

RPAで作成した自動化フローは業務手順の変更や制度改正、操作対象のシステム・アプリケーションのバージョンアップ等に伴ってメンテナンスが必要になる場合があります。

そのため継続的に活用できるようにメンテナンスのしやすい自動化フローを作成することが重要です。また、RPAの運用管理が属人化しないためにも、しっかりと引継ぎを行える体制づくりをしておくことも必要です。

RPAのガバナンス体制を構築する

RPAを安全に活用するためには、全庁的なガバナンス体制を整えることが必要です。勝手に自動化フローを作成されたり、改変されたりといったトラブルを発生させないためにも、共通的なルールを作成しておかなければなりません。

また業務システムの認証IDやパスワードの入力までPRAに対応させるかどうかの検討や、職員の異動、退職などが発生した場合でも、業務を継続できるような保守体制の構築、RPAの仕様を文書化するなども重要です。

場合によっては、RPAの開発や保守を外部事業者に委託することを検討してもよいでしょう。

全体的なマネジメントを担うRPAの運用管理者を定めておくことも効果的です。

まとめ

自治体をテーマにRPA導入の理由やメリット、活用事例などを紹介しました。

自治体における行政の効率化はこれまで以上に進んでおり、自治体運営の効率化だけでなく、住民サービスの向上も期待できます。

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