八州電工株式会社 様
全国から寄せられる大量のFAX注文書を効率よく処理。
お客様満足を支えるFAX受注システムとは。
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電気配線の分岐個所を保護する「プルボックス」で、国内シェア4割を誇るメーカーがある。大阪市に本社をおく、八州電工 株式会社 様だ。さらなる「お客様満足の向上」を目指して同社が導入したFAX受注システムについて紹介する。
八州電工 株式会社 様(本社 大阪市)は、電気配線の分岐個所などを保護するプルボックスや、配線を保護するワイヤリングダクト、それに各種の架台などの電気工事付属品を製造販売する会社だ。中でも主力商品のプルボックスは、国内市場で約4割のシェアを占めるなど高く評価されている。
同社の営業拠点は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡など国内に全11ヶ所。各拠点から全国のお得意先へ、きめ細やかなサービスを展開中だ。
同社は、「最適な商品を、必要なとき、要求の仕様で、適正な価格で届ける」との経営理念を掲げている。その実現のため、ISO9001の認証取得をはじめ、製販連動型情報システムの構築や、それと連携したFAX受注システムの導入などを積極的に推し進めてきた。
また新規事業として、得意の金属加工技術を活かしたビジネスもスタートさせた。ホームセンター店頭にタッチパネル式の受注端末「まちのかじやさん(商標登録済)」を設置し、一般のお客様から、規格品や特注品の注文を専用回線で受け付けるのだ。
IT経営百撰」 優秀企業に認定
このような取り組みが評価され、先ごろ同社は、経済産業省が推進する「平成18年度 IT経営百撰(*1)」において、見事、優秀賞企業として認定された。経営戦略・ITの活用実態などが優れており、中小企業経営者の目標となり得る企業として評価されたのである。
また同社の情報システムは、経済産業省の「平成17年度 IT活用型経営革新モデル事業(*2)」にも認定された。
そこで、一連の取り組みを推進された統括部長の高野さんにお話をうかがった。
「近年、当社が扱う電気工事付属品の需要は、バブル期以降の建築投資の冷え込みや、電気設備工事に関する内線規定緩和の影響もあって減少してきました。しかし、企業として成長し続けていかねばならないという使命があります。そこで、社内外の体制や情報システムの整備を経営理念にのっとり積極的に進めることによって、更にお客様に満足していただこうと考えました。その結果、縮小傾向にある市場ですが、売上はここ数年約30億を維持しており、シェアとしては拡大傾向にあるのだと思います。」と語ってくれた。
では、同社が推し進めた情報システムとはどのようなものなのか。その一つが、2006年1月に導入したユーザックシステムの「FAXお助け名人(現FAX受注名人)」だ。このシステムは、毎日大量に送られてくるFAX注文書を効率的に処理するためのもの。
それでは、このシステムが活躍する同社の「FAX受注センター」の様子を見てみよう。
(*1) IT経営百撰経済産業省は、中小企業の経営革新をITの活用によって応援することを目的に、平成16年度に「IT経営応援隊」を立ち上げた。「IT経営百撰」は、この「IT経営応援隊」に設置された「IT経営百撰選考委員会」によって、選出・表彰される制度のこと。
(*2) IT活用型経営革新モデル事業中小企業などが、ITを活用したビジネスシステムの構築に向け、その調査費用や導入費用などの一部が助成される、経済産業省が推進する事業のこと。
2つのディスプレイで、FAX注文書を効率よく処理
2006年1月から稼動し始めた「FAX受注センター」では、全国各地の得意先から送られてくるFAX注文書を一元的に受信・管理している。
センターのサーバーで受信したFAX注文書は、NTTのナンバー・ディスプレイ機能によって、営業拠点別の受注情報として自動的に振り分けられる。各拠点からは、ネットワーク経由でセンターのサーバーにアクセスし、随時受注処理を行う仕組みだ。遠隔地からのアクセスとなるが、レスポンスには全く問題が無い。
各拠点のクライアント端末には大きな特徴がある。1台のパソコンに、ディスプレイが2台接続されているのだ。ちょうど、パソコンのディスプレイが左右に大きく広がったようなイメージを想像していただければ良いだろう。もちろん、キーボードやマウスも一つだけである。
片方のディスプレイには基幹システムの受注入力画面を表示。もう一つのディスプレイには、画像化されたFAX注文書を表示させている。各拠点の受注担当者は、FAX注文書の画像を見ながら基幹システムで受注処理を行う。FAX機までいちいち注文書を取りに行かずに済むので効率が良い。また、センターのサーバーでFAX注文書を一元的に受信する仕組みなので、オフィスもずいぶん静かになった。
画面に表示させたFAX注文書の画像は、拡大/縮小、回転、印刷、文字入力などのほか、画像の差し替えも簡単に行える。同社の場合、注文書に描かれた文字や製品のイメージ図は仕様確定までに修正されることも多いため、この画像の差し替え機能は必須だ。文字や画像などが修正されたFAX注文書は、お得意先に再送してもらったり、同社のスキャナで読み込むなどした上で差し替えられる。
受注No.をキーとして、基幹システムと連携
また今回の導入を機に、「FAXお助け名人(現FAX受注名人)」と連携するよう、基幹システムにカスタマイズが加えられた。
カスタマイズの一つ目のポイントは、基幹システムの受注情報に、「FAXお助け名人(現FAX受注名人)」で画像化されたFAX注文書を、受注No.をキーにして紐付けられるようにした点。
同社の製造現場には工程管理用のタッチパネル式端末が設置されている。このカスタマイズによって、これらの端末からも画像化されたFAX注文書が確認出来るようになった。同社の注文書には図面が描かれていることも多く、製造現場でも完成品の仕上がりイメージが確認できるというわけだ。
また、経営企画課の工藤さんは、「事務所内でも過去の注文書を簡単に探し出せるようになりました。以前は注文書をファイルに綴じていましたので、問合せなどがあった場合、注文書を探し出すのに苦労することもありました。今では日付やお得意先名などで簡単に検索できるので助かっています。ペーパーレスにした効果は大きいですね。」と語ってくれた。
注文請書の自動送信で、クレームが大幅に減少
二つ目のポイントは、基幹システムで受注入力を終えると、「FAX受注センター」の送信用サーバーから、得意先へ注文請書を自動的に送信できるようにした点だ。
注文請書には、製品の仕様や数量、価格、納期などの情報のほか、FAX注文書の画像も添えられている。
注目したいのは、FAX注文に限らず、受注処理を行った全ての注文に対して注文請書を送信している点。同社の得意先(口座数)は約2,400件。月間の受注件数は、平常月でFAX 6,000件、電話 13,000件、その他 2,000件ほどと膨大。電話受注も多いので、注文請書の送信によってお互いが注文内容をしっかり文書で確認し合う効果は大きいようだ。しかもFAX機まで行ってダイヤルする必要もないので、手間がかからないし、番号の押し間違いなどのミスも起こらない。
「お客様からのクレームが、従来は受注件数の1.53%に上っていました。しかし、社内外の様々な業務の進め方を見直したり、注文請書を全件送信するようになってからは、0.13%にまで激減させることが出来たのです。当社では、クレーム情報は全件データベースに登録し、原因追及や対処などを徹底的に行っています。最終的には、もちろんクレーム0件を目指しますが、『顧客満足度向上』を目的にした情報システムの導入は、今のところ成功していると考えています。」と高野さんは語ってくれた。
OCRも検討したが・・・
「実は、『FAXお助け名人(現FAX受注名人)』を導入する前に、他社のOCR(*3)も検討したのです。」と高野さん。
「本当は、FAX注文書の文字を自動的に認識させ、データを基幹システムまでそのまま流したかったのです。しかし、OCRは文字の認識率に不安がありました。認識エラーのチェックは大変ですから。何より、誤った商品をお届けしては信頼に関わりますし、事務処理の負担も増えてしまいます。また、お得意先様に、 OCR用の注文書に切り替えていただくのも難しいと思いました。『FAXお助け名人(現FAX受注名人)』は全自動ではありませんが、その分人間がしっかり確認出来るからいいですね。お得意先様にも負担をかけませんし。」と高く評価していただいた。
(*3) OCR(Optical Character Reader)光学式文字読取装置。紙に書かれた文字を読み取って、コンピューターにデーターとして取り込む装置のこと。今回の場合、FAXで送られてきた用紙の内容を受信サーバーが読み取る、FAX-OCRを指す。
(2008年6月取材。記載の内容は取材時の情報です)