物流
サーモス株式会社 様
複数運送会社の送り状を一括管理
ペーパーレス&脱属人化を達成!サーモス製品の発送業務を送り状名人で改善
- ソリューション:
- 対象製品:
- 業種:
※本記事は、2023年月刊マテリアルフロー9月号に掲載の記事を転載したものです。
中期計画で全社的業務効率化の号令、長年の課題だった出荷業務改善に
魔法びんのパイオニアとしてオンリーワンの商品を生み出し続けているサーモスを知らない人はいないだろう。産業ガスを多種多様な産業分野へ供給する企業の日本酸素㈱(現:日本酸素ホールディングス㈱)をルーツとする同社は、1978年、世界初の高真空ステンレス製魔法びん「アクト・ステンレスポット」製品化で新たな価値を世に問い、1989年にはイギリス、アメリカ、カナダのサーモス事業を買収、日本酸素サーモス事業部と魔法びんの製造を担ってきた日酸サーモが統合することで現在のサーモス㈱の設立へと至る。魔法びんのパイオニアとして、社員全員がマイボトルを持ち、社内へのペットボトル持ち込みをゼロにするなどSDGsへの取り組みにも積極的で、人と社会に快適で環境にも優しいライフスタイルを提案し、ボトル製品市場でのシェアNo.1を続けている。
そんな同社の物流では、生産を海外に移転しており、マレーシア、中国、フィリピン等の海外工場から送りこまれる商品は、大きく魔法びん系商品とフライパン系商品に二分され、国内5拠点のセンターに保管された後、全国へサプライされる。中でもここ新潟事業所の物流センターは、品質保証関連の検査部門も設置し、自社運営を継続する中心的な役割のセンターである。
同社の物流業務プロセスに、ユーザックシステム㈱のEDI対応送り状・荷札発行システムの “送り状名人”が導入され、顕著な効率化が達成されたのはコロナ禍の2021年のこと。それ以前にはどのような現場の課題が顕在化していたのか、振り返ってくれたのは同社ロジスティクス部物流管理課マネジャーの阿部聡子氏だ。
「当時の中期計画の中で全社的課題として、業務の効率化が掲げられていました。あらゆる部門・部署で検討がなされる中で、当課では出荷業務の効率化が課題の1つであり、とりわけ複数の運送会社を利用して出荷する際の伝票の作業効率化が、最も緊急性が高いとの結論に至りました」
具体的には、受注の際データ入力の時間がかかっていたうえ、送り状自体もボールペンで個数・重量の記入作業を伴っていた。その作業負荷を何とかしなければ、との問題意識が高まりを見せていたという。ただ、あまたあるソリューションの中からユーザックシステムの製品にたどり着いたのは早かった。
「送り状と入力して検索すると、真っ先に出てくるのが送り状名人でしたので、出会うまでは簡単でした(笑)。そこでまず、当社のシステム部門とも相談し、導入検討を進めることとしました」(阿部氏)
確かに、具体的なソリューション導入の際は、実際に現場運用を進める部門の手応えも重要だが、ソリューションとのシステム連携を実現する上で組織のシステム管理部門との連携も不可欠。同社業務部情報システム課マネジャーの嵯峨山雅央氏に聞いた。
「運送会社系のシステム会社で、類似のソリューションも検討しましたが、それらはコストが合わなかったこと、我々の現場課題を直接解決はできない等の理由で棚上げになっていました。送り状名人の場合はそうした点もクリアでき、行ける、という手応えを掴めました。取引する運送会社が増えたり、先方のシステム変更があったりした際、専用の送り状システムとラベルプリンタの使用を求められる場合があり、その都度、基幹システムとの連携対応や作業工程が増える問題があったのですが、そうした点を解決できることが魅力でした」
導入の一番のポイントは、送り状名人の提供するソリューションが同社の課題にピタリとマッチしていたことのようだ。また導入プロセスが極めてスムーズだったのには、システム部門との連携が功を奏した部分があるという。たいていの場合、ユーザックシステム側SE部門とコンタクトするのは現場のロジスティクス部門なのだが、同社の場合システム部門が前面にSE部門とやり取りし、いわばプロ同士の連携で、基幹システムの事情を踏まえながら運用設計やルール決めをリードしたことで、送り状の出力に止まらず伝票からセットまでの一連の現場フローを全体的に見直し、効率化できたという。
運送会社別の煩雑な出力を一本化、問題だった紙・筆記作業も激減
具体的な導入前後のフローを見比べると図表1、2のようになる。中でも出荷指示から送り状発行までのプロセスがシンプル化されたことで、事務所での発行プロセスを取ってみても、効果が感じられた。それまで運送会社ごとに異なる手順で複雑な出力を余儀なくされていたものが、一人のオペレーターのPC入力で(写真1)、全運送会社向けの送り状が一斉に短時間で出力されるようになったからだ(写真2)。
もう1つの効果は伝票類のペーパーレス化だ。
「以前は、例えばバラ品が6個あれば実際は1個口で足りるのに荷札が6枚出てしまうといった、不要なものも一律印刷される仕様になっていました。また、お客様の問い合わせに対応するために複写の送り状控や出荷の明細をホチキス止めしたものをファイリングして保管する作業が発生し(写真3)、膨大な時間がかかっていました」(阿部氏)
送り状控の量は1か月当り段ボール約2箱分で、問合せに迅速に対応するために営業所別・日付別にファイリングし、直近3か月分はキャビネット保管していた。また控えを規定年数保管するスペース確保も大変だった。送り状名人導入後は、問合せ番号は出力データで確認可能となり、ファイリング、伝票保管の問題を両方を解決できた。「その効果は劇的でしたが、さらにこのプロセスでは検品してOKが出ないと照合・印刷できないので、原理的にもミスが発生しない流れになったことも見逃せません」(阿部氏)
流通系、EC系どちらも劇的に効率化されたことは間違いないことを、阿部氏と共に送り状名人の導入と並行してロジスティクス部の業務効率化に取り組んできたキーマンである相田恵子氏が実感を込めて語ってくれた。
「以前はそもそも複写の送り状で、ピッキングを見ながら重量も手書き、個口も手書き、備考も手書きと、とにかく手書きすることが多くて、ペンが絶対に必要だったのですけれど、今ではペンがなくてよくなりました。何も書くことがありませんから。これまでのフローだと決して手放せなかったペンを持つことなく最後まで仕事ができるようになった、この身軽さは格別ですね」
そうは言っても、新たなシステム・機器の導入・稼働に際しては、何らかの障害や初期トラブルは付き物。しかし同社のケースでは、同時にいくつもの業務フロー変更を伴う様々なカスタムが施された取り組みだったのにもかかわらず、稼働初日から出荷が滞るようなこともなく、スムーズな運用が展開されたという。これも同社のシステム部門の積極的関与があればこそ、だったようだ。
同社の導入・運用プロセスがそこまでスムーズだと、逆にシステム変更に対応しなければならない側、例えば複数の運送会社サイドからは何らかの懸念や疑問・不安等、ネガティブな反応は無かったのだろうか。
「確かに、はじめは私も身構えていたのですが、こちらから電話して『送り状名人という……』と話し始めると『ああ、それならやったことあるよ』というフレンドリーな反応がとても多く、ホッとしましたし、送り状名人がこの分野のソリューションとしてメジャーな存在であることを再認識できました」(阿部氏)
導入と並行で周辺業務も効率化、作業人員・時間共に大幅改善を達成
経営的な視点から、費用対効果の指標や判断があるのか聞いてみると、「例えば紙だったら、年間に9万枚以上の削減にはなっています。すると使用していた紙はもとより、作業時間そのもの、保管スペースも不要となり、結果的に残業がなくなりました。送り状名人単独ではなく、並行して取り組んだ各種改善の成果ではありますが、工程数で見ると、過去10工程くらいあったものが4工程に、つまり6工程ほどの削減を達成しています」(阿部氏)
EC系の出荷作業を見ると、当日の出荷分をトータルピックし、オーダーに合わせて箱、封筒等の梱包品を揃えて仕分け後、ハンディによるチェックで検品、間違いなければ自動的に荷札が出力されるので、貼り付けて、台車に載せる。この作業の繰り返しだ。
一方、出荷バースエリア(写真4)での流通向けの出庫作業フローに目をやると、まず自動倉庫から出庫して来たパレットをフォークで搬送される。それぞれ集荷タイミングが異なるため運送会社ごとにまとめられ、タイミングが早いものから順にトータルピッキング、先に出荷の振り分けを行い、荷札を貼って、出荷体制を整え、一部発生するバラ単位の受注品も、同じエリアで顧客ごとに仕分けされ、バラ分とケース分を合わせて出荷される(写真5)。
「出荷伝票の作業は、ECも含めてだいたい3名必要だったものが、今は2名でまだ他の業務を取り込めるような余裕が生まれましたので、相当な省人化を実現しており、当初、我々がやりたかったことは、すべてできたと感じています」(嵯峨山氏)
長年にわたりサーモスが抱えていた煩雑な出荷工程を、劇的に効率化させたユーザックシステムの送り状名人。これを契機に、今後も両社のコラボレーションは、更なる物流改善に向けて深まりを見せてくれそうだ。