業務改善
RPAのトライアルから差がつく業務改善プロジェクト
コロナ禍で多くの企業がDX推進の重要性を実感し、新たにRPA導入を検討し始めたところもあるようです。しかし本格的な導入までに時間がかかってしまい、プロジェクトが途中で頓挫してしまうことも少なくありません。これは、何が原因なのでしょうか。
人材不足が深刻な中堅・中小企業こそ、RPAなどによる業務の自動化が急務です。一方でコストや開発・運用人材の不足がネックになってRPAの導入に踏み切れない企業や、導入したもののエラーの修正ができずにスクリプトが放置され、期待する費用対効果が得られなくなってしまう企業は少なくありません。
東大阪市に本社を置くテラオ株式会社も同じ課題に悩んでいました。業者・個人向けの自転車用品などの販売を手がける同社は、2019年6月にAutoジョブ名人を導入し、受注業務など4つの業務を自動化してひと月あたり16~18時間の削減に成功します。しかしその後、エラーで停止したスクリプトが修正されずに放置されるといった問題が発生。稼働するスクリプトが2つにまで減少し、思うような費用対効果が得られないことが課題でした。解決策として、2024年6月から「Robo派遣」に切り替えたところ、従来よりも低いコストで売上アップを見据えた自動化体制の維持に成功しました。
「Robo派遣」導入の経緯や効果、今後の展望について、同社代表取締役の寺尾優美様にお話を伺いました。
※Autoジョブ名人導入時の事例はこちら
――2019年6月にAutoジョブ名人を導入し、4つの業務を自動化していたと伺っています。
寺尾優美氏(以下、寺尾氏):はい、そうです。導入当初は、受注や売上のデータを基幹システムに転記する4つの業務を自動化していました。ひと月当たり16〜18時間を削減でき、自動化できて本当によかったと思っていたのですが、実はかなり前から使わなくなっていたスクリプトがあることが分かったのです。
それは、メールで届いた受注データを基幹システムに自動で転記するスクリプトです。商品コードや数量が入力されたExcelファイルがメールで届くと、自動でファイルを特定のフォルダに保存し、データを基幹システムに取り込む仕様でした。エラーが発生したとき、社員がそのままにしてしまったのです。
――それはなぜでしょう?
寺尾氏:「エラーが出て使えなくなっている」と報告するのに抵抗があったのだと思います。対象のスクリプトは、Autoジョブ名人の導入時にユーザックシステムの担当者に開発方法を教えてもらい、私が開発しました。もしエラーの報告を受けていても、導入から数年が経過し、開発方法を忘れてしまっているため自分で修正するのは難しかったでしょう。ユーザックシステムに修正方法を相談するのもためらいがあったと思います。
ECサイトを刷新し、CSVデータを直接基幹システムにダウンロードできるようになったため、結局このスクリプトは必要なくなりました。もう1つ、Amazonの売上データをCSVでダウンロードし、基幹システムに転記するスクリプトも同じ理由で使わなくなりました。
利用するスクリプトが2つにまで減り、期待するような費用対効果が得られていないと感じていたときに「Robo派遣」のお話を聞いて切り替えてみることにしました。
――「Robo派遣」は、Autoジョブ名人のシナリオを初期費用0円、1業務5,000円/月からご利用いただける新しいサービスです。開発費用を一括でお支払いいただく必要はなく、月々の利用料のみで導入できます(Autoジョブ名人実行版の契約は別途必要です)。
寺尾氏:2024年3月にユーザックシステムの担当者から電話をもらい、「Robo派遣にすると、開発だけでなくメンテナンスもプロに任せられ、今よりもコストを下げられる」と聞き、それならと思って切り替えをお願いしました。
切り替えでは、まずWeb会議でユーザックシステムの開発担当者に今使っている2つのスクリプトを見てもらいました。せっかくなので、私が手作業で実施している部分も自動化してほしいとお願いしました。
―― どのような作業ですか?
寺尾氏:必要なデータをCSVでダウンロードする作業です。当社では、送り状発行システムから出荷済み商品の送り状番号と伝票番号のデータをダウンロードし、基幹システムの売上情報から該当する伝票データを呼び出して送り状番号を入力する業務をAutoジョブ名人で自動化していて、これまでデータのダウンロードは手作業でした。
代引き金額をチェックする業務も同様です。運送会社のサイトから代引き金額の支払いデータをダウンロードし、このデータと基幹システムのデータを照合する業務の自動化でも、データをダウンロードする部分は手作業でした。
今回「Robo派遣」に切り替える際に、手作業の部分を含めた一連の業務を自動化するスクリプトを開発してもらった結果、夜間に対象業務を自動で実行できるようになり、非常に助かっています。送り状番号の入力は毎日、代引き金額チェックのスクリプトは週に1回稼働していて、朝出社したら処理が完了している状態です。
――スクリプトの改修で印象に残っていることはありますか?
寺尾氏:開発担当者が、私の要望をくみ取った上で新たな提案をしてくれたことです。例えば送り状番号の基幹システムへの入力では、注文があった当日中に同じ取引先から別の注文が入ることがあり、売上番号は異なるものの、送り状番号が同一になるケースがあります。今回スクリプトを改修してもらったことで、こうしたケースにも対応できるようになりました。
最初はエラーが起きやすい部分を修正するだけだと思っていたのですが、新たに自動化できそうな箇所を指摘し、スクリプトに組み込んでもらえたのは非常にありがたかったです。課題として認識していても、自動化が可能かどうかを私には判断ができないので、プロに話を聞いてもらうのは大事だと思いました。
改修したスクリプトを初めて稼働したとき、思っていたのと少し違うところがあったのですが、開発担当者にメールを送ったらすぐに修正してくれました。私は分からないことがあるとすぐに電話をしてしまうのですが、いつも快くアドバイスをしてくれて非常に助かっています。「Robo派遣」は月々の利用料金に修正費用が含まれているため、エラーが起きても追加費用なしで、いつでも気軽に修正をお願いできるところがありがたいですね。
「Robo派遣」の導入により、ひと月当たり10~11時間の削減に成功しました。年間削減効果は30〜33万円で、3年間利用した場合の効果は100万円弱になります。開発と修正はお任せするため、前回は60万円程度かかっていた開発・修正の内部コストが今回は必要ありませんでした。
――「Robo派遣」は、人材不足がネックになってRPAを活用できない企業にとって、もう1つの選択肢になると思いますか?
寺尾氏:そう思います。これだけ人材不足が深刻になってくると、人を1人雇うだけでもかなりのコストがかかってしまいます。人を雇うと金銭的なコストだけでなく、教育のための時間的なコストがかかりますから、新しく人を雇って仕事を覚えてもらうよりも、スクリプトを動かして業務を自動化する方がいいと思います。機械にできる仕事は機械に覚えてもらい、人の代わりにやってもらうべきです。 Autoジョブ名人には独自のスケジュール実行機能が備わっているので指定した時間に実行でき、人と違って24時間365日ミスなく働いてくれるところが気に入っています。
ただ、これまでは開発に時間や手間がかかってしまい、正直なところ内製化は難しいかもしれないと感じていました。今回「Robo派遣」に切り替えてみて、自動化する業務の洗い出しと言語化さえできたら、あとはプロがエラーの起きないように開発してくれますし、月々の料金も安くすんで、非常に満足しています。
――Roboならではの良さ、というのもあるような気がします。
寺尾氏:そうですね。人と違ってミスをしませんし、残業代もかかりません。また、「こんな言い方をしたら気を悪くするかもしれない」などと気を遣う必要もありません。
ただ、社内だけで業務を自動化している場合、エラーでスクリプトが止まったままになってしまったり、自動化できる業務があるのに気づかなかったりする可能性があります。
「Robo派遣」のように、課題を指摘して論理的な説明ができるプロに話を聞いてもらうのは、費用対効果を上げる上で非常に重要だと思います。
――今後どのような業務に「Robo派遣」を活用していきたいとお考えですか?
寺尾氏: ECモールの受注業務に活用できたらと考えています。当社は楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングで個人向け販売をしていて、受注業務は現状、全て手作業です。
ピッキングリストを出して出荷処理に回したら処理が完了する注文がほとんどですが、プルダウンで選択する項目が抜けていたり、備考欄に記載があったりする注文が1割程度存在し、それらは個別に対応する必要があります。また、届ける場所や運送業者によって配送料が変わるため、届け先の住所を確認してから運送業者を選択しています。
また、最近は、注文した次の日に荷物が届くサービスが主流になってきています。当社は土日が休みなのでそうした流れに乗らずいったん様子見をしたのですが、やはり早く発送しているところに注文を取られているようです。そうなると当社でも対応していかなければならず、結果的に社員に休日出勤をお願いしなければなりません。ですので、「Robo派遣」で業務の一部だけでも自動化できたら助かります。
――自動化を前提にして業務を再構築すれば可能だと思います。これまで、業務を自動化する主な目的は時間削減でした。しかし最近では、自動化を売り上げ拡大の手段として位置付ける企業が増えています。
ちなみにAutoジョブ名人の新バージョン(7.0)は、自動化状況を一元管理する「Pixis Cloud」との連携が可能です。これによって、業務を可視化して「どの業務を自動化すれば売上アップにつながるか」を客観的に把握できるようになりました。
寺尾氏:それは興味深いですね。人ではなく、自動化を前提にして業務を再構築するという発想はありませんでした。売上アップにもつながるのであれば、ぜひ検討したいです。
――本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。