奈良県高市郡高取町
日本三大山城のひとつ、
『高取城』を未来へつなげる取り組みとは
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ARアプリ導入事例
日本の古代史のはじまりとされる、奈良・飛鳥地方に位置する高取町。同町は、日本三大山城の一つ『高取城』でも知られているほか、古墳時代や飛鳥時代に造られた歴史的価値の高い遺跡や古墳も数多く現存している。また、江戸時代には高取藩が置かれていたなど、今なお歴史情緒が色濃く残る町である。
高取城目当てに全国からお城マニアが訪れたり、美しい自然に触れられるハイキングコースがあるなどして人気の高取町だが、より一般の方にも高取城の魅力を知ってもらえる方法はないかと「ええR高取町」アプリの制作に着手。
そこで今回は、「ええR高取町」アプリを導入した経緯と、それまでに抱えていた問題点、そして導入後の実績について、高取町総合政策課の岩﨑さんとまちづくり課の白木さんにうかがった。
町の魅力の新たな発信の仕方と、地元住民を巻き込んだ官民一体となった町おこしの新たな機運。長年高取町が課題に挙げていた問題点が、アプリ導入により道が拓けたという。
高取城は町のシンボルもっとアピールしたい
―開発のきっかけを教えてください
岩﨑
高取町の恒例行事で、高取城の魅力をPRする「たかとり城まつり」というイベントがあるのですが、それ以外にも町を盛り上げる方法が無いかと悩んでいた時に、アプリ開発者であるユーザックシステム(株)の本岡さんと偶然知り合いまして、町のシンボルである高取城をもっとアピールできるためのツールを開発出来ないかとご相談させていただいたのがきっかけです。
もともと町のPRについてどんな課題を感じておられましたか?
白木
高取町では住民の方々が主導して、三月の町屋の雛めぐりや十月の町屋の案山子めぐり、十一月に行われるお城まつりなど積極的にイベントを開催していただいています。おかげ様でどのイベントも盛況で、城好きの方やハイカーの方を中心に毎年一定数の集客がございます。
しかし、逆を言うとイベントの時でしか町の事をアピールする機会が無く、通年での集客が長年の課題でした。その他にも、高取町は吉野町と明日香村に挟まれているため通過されることが多く、せっかく日本最大級の山城があるにもかかわらず、その魅力が伝わってないと感じていました。また、お城はもちろんですが、城下に広がる街並みも本当に美しく、城下町の情緒も是非楽しんでいただきたいですし、壷阪寺の桜や紅葉など、まだまだ知られていない高取町の魅力を町として何か 発信できる方法がないかと考 えていました。
高取城を3DCGで再現使いやすさにもこだわる
アプリを作成していく上でのエピソードなどはございますか?
岩﨑
本岡さんはとてもお城が好きな方で、以前からARアプリの構想を持たれていたそうです。私たちとしても、町のシンボルである高取城を3DCGで再現出来ればより多くの方によりわかりやすく魅力を伝えられるのではないかと想い、内容はすぐに決まりました。
一番のこだわりは、やはりかつての高取城を3DCGで再現したところですね。一般の方に情報として発信するので、古い文献などから情報を読み解き、時には実際に城跡のある山に何度も登り調査を重ねた上で、城の本丸はもちろん城の裏手にある井戸の位置なども出来る限り忠実に再現しました。大学の教授も太鼓判を押すほどリアルに再現出来た自信作です。
アプリとセットで作成したパンフレットも非常に精巧な出来で、他社の方ではここまでのものは出来なかったと思います。それも、専門的な知識を持つユーザックシステム(株)さんだからこその技ではないでしょうか。更にご年配の方が使うことも想定して、アプリの使いやすさにもこだわりました。
多くのメディアに取り上げられる。インバウンド客に対する手ごたえも
反響はいかがですか?
白木
「たかとり城まつり」の開催時期に合わせて、マスコミ向けに発表したのですが、すぐに多くの取材依頼が来ました。NHKや全国規模の新聞社はじめ、多くのメディアでアプリの事を取り上げて頂きました。特に町外からの反響は大きく、メディアに出た直後は今まで経験したことのない数のお問合せを頂き、しばらくは電話対応で手いっぱいになることもありました。また海外からのダウンロードも少しずつ伸びてきており、今後のインバウンド客に向けての手ごたえも感じています。
うれしい悲鳴ですね
白木
はい!リリース以来ダウンロード数も順調に伸びていますし、パンフレットがほしいというお問合せもよく頂いていますので、確実に効果は出ていると思います。アプリを通じて町外の人が高取町に興味を持って頂ける機会が増えたのは嬉しいですね。今まではイベントを行っても目玉になるものがなく、なかなか町の魅力や高取城のすばらしさが伝わりにくかったのですが、こうした3DCGやパンフレットなど目に見える形でアピール出来るようになったので、非常にわかりやすくなりましたし、見てもらいやすくなりました。
また今まで町には高取城専用のガイドブックがありませんでしたので、パンフレットを作成したことで、町外のお 客様に向けてガイドもしやすくなりました。
アプリを手にした観光客で町がもっとにぎわえば
今後のビジョンを教えてください
白木
今は高取城だけに3DCGを導入していますが、今後は城下の土佐街道の街並みにも3DCGでの復元を拡げていきたいですね。アプリを片手に高取町が年中観光客で溢れかえるようになれば最高ですね。そのためにも行政が住民の方々ともっと協力して、見所マップをどんどんパワーアップしていかないとと思っています。
また、一度訪れたら終わりにならないよう、魅力のある情報をアップしたり町づくりにも力を入れていきたいです。その他、高取城以外にも日本には立派な城跡がたくさんありますので、他の地域とコラボしてARアプリのネットワークを作り、新しいPRの形を生み出していけたら面白いですね。このアプリにはそれだけの可能性やポテンシャルがまだまだあると思っています。
高取城を未来につなげたい
今なお山上に見事に残る石垣を誇る高取城には、ハイキングや観光に来てくださる方がおられます。大変ありがたいことと感謝しております。建物が残っておらず、往時の城の様子をイメージしにくいという状況については、ARアプリの3DCGにより改善されたと思っております。
せめて城下の土佐街道からお城へとあがる登城ルートだけでも、江戸時代の頃の道幅を再現し、整備したいと考えています。現在は一部の木を伐採するなど景観についての改善を行っていますが、高取城全体を観光資源として活用するための整備はまだまだ実現できていません。登城ルートの整備に加え、乗用車での観光客には駐車場が必要になりますし、
水洗トイレも不可欠です。また江戸時代には城下からお城の石垣が見えていたと伝わっていますが、いずれはそこまで復元してみたいという思いがあります。かつて、私(前高取町長である植村家忠氏は、高取藩主植村家第十六代当主)の先祖が苦労して守ってきた高取城を、未来につなげていきたいと思っております。
前高取町長 植村 家忠さん