SDG株式会社 様(旧:昭和電機株式会社)
RPAを導入し59の業務改善に着手
年間10,500時間の削減を目指す
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昭和電機様(以下、同社)は「風」を使った産業ソリューションを提供する機器メーカーで、電動送風機、集塵機、乾燥機のほか、近年は風と重力を組み合わせたリハビリテーション装置やトレーニング装置も開発しています。
産業用電動送風機はシェア6割に達し国内トップ。日本を代表する「風を生かしたものづくりの会社」がどのようにRPAに取り組まれたのかを伺いました。
働き方改革の一環として「身の丈にあったRPA」を導入
同社は、2017年から社内働き方改革の一環として、事務系社員を中心に定時退社を推奨していました。しかし、仕事が終わらないまま退社するわけにもいかず、残業時間は思うように削減できませんでした。そこで同社が目をつけたのが、定型的なパソコン作業をロボット化するRPA(Robotic Process Automation)です。
同社は、さまざまなRPAツールを比較検討した結果、ユーザックシステムの「Autoブラウザ名人(現:Autoジョブ名人)」と「Autoメール名人」を導入しました。これらの製品を選んだ理由は「多機能・高価格な製品ではなく、必要な機能だけを備えた、身の丈にあった使いやすい製品であり、導入前後に手厚いサポートがあることも決め手となりました」(経営管理部 ICTグループ春山国彦氏)。
同社のICTグループは、RPA導入後にユーザックシステムによる技術講習を受講し(全4日、1日3時間)、1~2日目は講師の手助けが必要でしたが、3日目からは自力でシナリオを作成できるようになりました。「シナリオ作りは、基幹システムからデータを抽出する方法さえ理解できれば、それほど難しくはありませんでした」と春山氏は振り返ります。
勤怠管理の自動化から開始
まず、同社が着手したのは勤怠管理の自動化です。RPA導入前は総務担当者がタイムカードの打刻モレをチェックし、該当する社員とその上司に対して、個別に注意喚起メールを送るというたいへん非効率な運用でした。これをRPAで勤怠管理システムから条件に該当するデータを抜き出して、該当する社員とその上司にメール送信するプロセスに自動化しました。
月間140時間の時短を実現
最初のプロジェクトである勤怠管理の自動化を成功させたことで、RPAの本格導入への確信を得たといいます。「基幹システムからのデータ抽出が無事成功したので、あとは利用範囲を拡張していくだけでした。その後、現業部門にヒアリングを行い、どの業務プロセスをどう自動化していくべきか検討し、2018年中に46業務をRPA化する計画を立てました」と春山氏。その後、対象業務はさらに追加され、最終的に59業務のRPA化を決定しました。
そして、2018年5月末時点で全体の4割にあたる21業務のRPA化が完了し、時短効果は月間140時間に及んでいます。
59業務すべてのRPA化が完了すると、年間10,500時間の時短が見込まれ、空いた時間を使って、さらにお客様サービスを深め、顧客満足の向上から売上の拡大につなげて行くのが目的です。
2つの業務で月98.7時間を削減
RPA化が完了した21業務のなかで、もっとも改善効果が大きかったのは、顧客への納期回答業務と請求書の確認業務のRPA化でした。
顧客への納期回答は、これまでは基幹システムから納期回答に関するデータを抽出したうえで一覧表を作成。そこから納期回答書に転記したあと、取引先にファックス送信するという非効率な業務プロセスでした。しかしRPAの導入後は、基幹システムから納期データを自動収集し、営業担当者ごとにデータを切り分けて納期回答書を作成。それをPDFファイルの形で各拠点にメール送信するプロセスに自動化しました。営業担当者は、受け取ったPDFファイルにいっさい手を加えることなく、そのまま顧客にメールで納期回答が可能となったのです。この取り組みにより月間 92 時間が削減しました。
請求書の確認業務は、これまで経理部門で一括発行し、各営業所に確認後、顧客に発送していました。さらに経理部門は請求書のチェックモレを防ぐために、営業所と電話でその内容を確認していました。しかし現在、請求書は顧客ごとにPDF形式で作成され、各営業所に自動的にメール送信しています。
また営業所から請求書の内容をチェックしたという返信がない場合は、督促メールが自動送信されます。その結果、月間6.7時間分の作業が削減しました。
この2つの業務の自動化により月98.7時間を削減でき、春山氏は「RPAを導入して、期待を上回る成果が出ています。現在は、利用が1年間に限定されたライセンスを導入していますが、十分な効果が見込めることが分かったので、導入規模をさらに拡大する予定です」と今後のRPA活用による業務効率化を期待されています。
安定性への評価
「Autoブラウザ名人(現:Autoジョブ名人)」は、業務の継続性への配慮の点でも現場から高く評価されています。「いったん業務が自動化されると、それが安定的に継続動作しているかどうか、いちいち確認しなくなるものです。しかし今回のRPA導入に際し、シナリオ実行が失敗したとき、自動的に通知されるよう設計しました。これにより、たとえば出勤途中にエラーメールを受信した場合、出社するまでに対応方法を検討できるので、復旧までの時間を短縮できます」(経営管理部 ICTグループ兼総務グループ 栗山隆史氏)。
シナリオ作成を成功させるコツ
「自動化を進めるためにはいくつかコツがあることが分かりました」と栗山氏は語ります。重要なのは、現場の業務内容を細部まで理解することです。特に、現場にとって当たり前のことは要注意です。あまりに当然のプロセスは、現場にヒアリングしても語られることがなく、結果としてその作業内容がRPAシナリオに盛り込まれなくなります。そうした事態をさけるため、ICTグループでは業務内容をヒアリングするとき、単に話を聞くだけでなく、現場で実際にパソコン操作してもらい、その様子をビデオで録画しています。またヒアリングのとき「自動化する」と言うと、何もする必要がなくなると誤解される恐れがあるので、「ロボット化」という言葉を使って説明するよう心がけているとのことです。
同社は今後、RPAをさらに推進していく計画です。特に受注入力の自動化が重要な課題とのこと。注文書は顧客ごとに書式が異なるため、現在は営業担当者が手作業で入力せざるをえません。これを基幹システムに自動取り込みできるようになれば、営業担当者の負担は大幅に軽減されます。
この他に技術的には自動化が可能ではあるが、顧客の要望あるいは社内の業務慣習により人の介在が求められている業務がいくつかあります。これらについても顧客や社内に、ていねいに説明しながら自動化を進める方針です。
栗山氏は「ユーザックシステムは今後、ユーザー間の情報共有を図る場を設けてほしい」と述べました(※)。
他社との情報交換を深め、同社のRPAを活用した業務効率化は、さらに強力に推進されていくことでしょう。
※現在はユーザックシステムが主催する「RPA研究会」によってユーザー間の情報共有が図られています。