セイコークロック 株式会社 様
バーコード化によって現場での手入力作業を削減。
作業時間が10%以上短縮され、誤発送率も低減しました。
- ソリューション:
- 対象製品:
- 業種:
事例概要
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- お取引先の要請に柔軟に対応可能なEDI、出荷システムの構築
- システム開発期間の短さ -半年後に迫った日本版SOX法への対応
- 基幹システムでは対応できない業務(EDI~出荷)にはパッケージソフトを利用し、開発期間を短縮する。
- 取引先ごとに異なるEDIメッセージの変換を、パラメタで設定可能なパッケージソフトで開発。
- バーコードによる出荷管理(出荷指図書を核にした検品、送り状発行)
物流センターシステム構築事例
信頼の時を刻む「SEIKO」ブランド
セイコークロックさまは、セイコーホールディングスさまの事業子会社として、世界中で信頼の時を刻み続ける「SEIKO」ブランドのクロック(置時計・掛時計・目ざまし時計)を作り続けています。
セイコーホールディングさまのルーツは1881年創業の服部時計店。1892年には同社の前身である精工舎を設立し、壁時計の生産を開始。その後、国産初の目ざまし時計の開発(1899年)、家庭用クオーツ時計の開発(1968年)、クオーツ目ざまし時計を世界に先駆けて発売(1976年)など、常に時代をリードし続けています。
現在、同社は100年を超える伝統とものづくりの技、先端技術力を活かし、クロックの企画・開発・製造から販売・アフターサービスまで一貫して行うトータルカンパニーとなっています。
同社の物流を一手に担うのが愛知県一宮市にあるロジスティックセンター。国内外の工場で生産されたクロックを、全国各地のお得意先に出荷しています。
ERPで対応できない物流業務を“名人シリーズ”でカバー
同社が基幹システムの全面的な刷新に取り組んだのは2008年夏。システムの老朽化や日本版SOX法への対応がその目的でした。
「2009年の1月から本稼働というスケジュールで新システムの構築に着手しました。2009年3月期の決算には日本版SOX法に基づいた決算処理をする必要がありましたから、2008年夏からのシステム構築というのは、まさにギリギリのタイミングでした」と同社 管理本部 主事の金子さんは振り返ります。
今回のシステム化にあたり、同社はSAP/R3で基幹システムを開発。一方、EDIや伝票発行、検品、値札発行、送り状・荷札発行業務など、物流業務の手足となるソフトウェアについては当社の“名人シリーズ”でシステム化を図りました。
「ユーザックさんには、当初、伝票発行業務のシステム化について相談をしていました。ところが話をしているうちに、EDIや検品などのシステムについても詳しいことがわかりました。パッケージソフトもお持ちでしたので、物流業務全般のシステム化をお任せすることにしました」と金子さん。
さらに、本稼働後の印象については「伝票発行はもちろん、EDIなどお取引先さまからのご要望にお応えする必要がある業務については調査や調整などが多岐に渡るため、イチから業務を理解しながらのシステム開発では、半年後の本稼働に間に合うはずがありません。その点ユーザックさんは、今回お任せした業務をよく知っていると言いますか、抑えるべきツボを心得ているためか非常に開発がスムーズでした。また、すでに業務に特化したパッケージソフトがあったこともポイントだったと思います。今回の成功は、物流業務のシステム化に豊富なノウハウと実績を持つ、ユーザックさんに負うところが大きいですね」と語ってくれました。
また、「ユーザックさんに決めたもう一つの理由はコスト面。オーダーメイドのシステムなら“億”はかかるところ、パッケージソフトのため、一桁違ったところも魅力でした」と金子さん。
では今回、同社にご採用いただいたシステムをご紹介しましょう。
EDIシステム~SAP/R3~物流システムの連携
システム構成
当社の“名人シリーズ” を全面的にご採用いただいた同社のロジスティックセンターの新システムは、図1のような構成になっています。
量販店、百貨店その他の小売、卸からの注文は“EOS名人” で受信し標準データベースに変換。これをSAP/R3に受け渡し受注・在庫・出荷指図データベースを生成。次に出荷指図データベースより出荷指図書を出力し、現場での作業がスタートします。
伝票・値札の発行
ターンアラウンド伝票、百貨店統一伝票などを発行するのは“伝発名人”。さまざまな種類の納品書を、自在に打ち分けます。出力された納品書を出荷指示書と照合しセットします(写真1)。取引先ごとに異なる値札も“値札名人”で出力。設定もカンタン(写真2)。
倉庫エリアでは、出荷指図書にもとづいて作業が流れていく
ピッキング
事務所での出荷準備作業に続き、倉庫エリアでは出荷指示書(図2)にもとづいてピッキング以降の出荷作業が行われます。この出荷指図書にはお得意先さまごとに異なる出荷時の注意点が記載されているほか、印字されたバーコードによってすべての業務に渡り、情報が紐づけられるように工夫されています。
ピッキングの担当者は台車を押して商品保管エリアに入り、出荷指示書に印字された品目コードでロケーションを探し、商品をピッキングします(写真3、4)。
ピッキングを終えた商品は、4本の出荷ラインにずらりと集められます(写真5)。
同社 国内企画本部・ロジスティックセンター グループ長の櫻井さんは、「新システムの導入後、従来の伝票単位でのピッキングから出荷指図書によるピッキングに変更しました。出荷指図書にはお得意先さまからのオーダーが集約できますので、動線がシンプルになり、効率が上がりました」と語ってくれました。
検品と送り状発行
検品作業は、出荷ライン上に置かれた集荷済み商品が入った段ボールケースからいったん商品と出荷指図書を作業台に取り出してから行い、確実を期しています。
出荷指図書のバーコードをハンディターミナルで読み込むと得意先への出荷情報が表示されるので、各商品のバーコードを読み、照合確認をします(写真6)。この検品業務を支えているのが“検品支援名人” です。
検品終了後、次工程で再度出荷指図書のバーコードを読むと“送り状名人” によって、送り状と荷札が発行されます。その後、これをケースに貼り、梱包・出荷となります(写真7、8)。
バーコード化により現場での手入力作業が削減され、作業時間が10%以上短縮されるとともに、送り状と荷札がその場で発行できるので、誤発送率は推定10万分の1レベルに低減。出荷精度も向上しました。
導入効果・今後について
導入効果のまとめ
伝票処理業務
出荷作業の標準化(専門性の排除)と送り状・荷札の自動発行により、伝票事務・出荷作業要員を2名減員。
ピッキング
伝票単位から得意先単位のピッキングに変更したことで動線が改善。また、ケースを集約することにより出荷梱包数も削減(運賃のコストダウン)。
出荷検収
送り状発行時間の短縮(出荷指示書のバーコードスキャンによる自動発行)により、繁忙期アルバイトの雇用数が減少。また作業時間も短縮した。
内部統制・会計基準
・出荷情報(送り状番号)による売上確定
・計上で内部統制にも対応(履歴管理)
今後について
構築・導入から20ヶ月。新システムは今、順調に稼働しています。今後について金子さんは「昨今の流通業界は、企業や拠点、組織の集約を含め、どんどん変化を続けています。そのため、EOSや伝票発行も含め、お得意先さまからのさまざまなご要望に柔軟にお応えできる体制を整える必要があります。その点、今回導入した“名人シリーズ”はPCベースのシステムなので、基幹系で作りこんだシステムとは違って融通が効き、大いに助かりました。流通向けに最適なシステムで、今後も頼りにしています」と語ってくれました。
―――ありがとうございました。
2010年9月取材(記載内容は取材時の情報です)