株式会社セルート 様

RPA無料トライアル期間の2か月で、業務効率向上を実感

ソリューション:
  • RPA
対象製品:
  • Autoジョブ名人
業種:
  • サービス

事例(PDF)

※本記事は、2021年1月15日にビジネス+ITに掲載された記事を転載したものです。 撮影:大参久人

RPA導入には越えなければならない、いくつかの壁がある。たとえば、「どの業務から採用すれば良いのか」、「導入を進めるにあたりどのような社内体制が良いのか」、「ツール選定はどうすべきか」、「サーバ型にすべきか、クラウド型にすべきか」──などだ。こうした課題に多くの企業がつまずく中、管理業務でRPAを導入し、早々に成果を上げたバイク便で知られるセルートのRPA導入事例には、成功のヒントが隠されている。同社 常務取締役の杉浦晶子氏に、RPAの対象業務の見極め方から導入後の運用まで、RPA導入の各プロセスにおけるポイントを聞いた。

注文増に比例して、増え続ける「受発注業務」

1984年に設立したセルートは、バイク便事業で知られている輸配送のプロフェッショナルだ。バイク便だけでなく、軽四輪車での配送のほか、自転車配送などを展開している。また、配送業務にとどまらず、配達員手配のためのクラウドソーシングアプリケーション『DIAq(ダイヤク)』を自社開発しており、フードデリバリーサービスなどの企業による活用事例も増えているという。

加えて1995年からメディカル・バイオ関連輸送事業を開始し、治験中の医薬品や細胞・皮膚といった生体組織の運送・保管をはじめ、一般的な輸配送業者には真似できない強みを持ち、現在の新型コロナ禍ではPCR検体の輸送などで社会貢献も果たしている。

そうした同社だが、輸配送の注文を受けるごとに増える「受発注情報の処理業務」に大きな課題を感じていた。この業務をいかに効率化するか、それがRPA導入を検討しはじめたキッカケだったという。

複雑業務の時間削減を早期に実現した「逆転の発想」とは?

セルート 常務取締役 杉浦晶子氏

セルートでは、顧客からの輸配送の注文処理を経理グループが担当している。これが複雑で手作業が多いため、その効率化が喫緊の課題となっていた。そこで浮上したのが、RPA導入という選択肢だ。

セルート 常務取締役 杉浦晶子氏は、「RPA導入は、基幹システムを作り込んで対応するより手軽であり、なおかつ基幹システムだけで完結しない作業にも向くのではないかと考え、検討を開始しました」と語る。

まずは、RPAを導入することになった経理グループの業務を詳しく見ていこう。

経理グループには、輸配送に関わるあらゆる伝票が集まってくる。こうした伝票処理を一挙に引き受ける経理グループでは、輸配送の注文者に対する請求処理に加え、配送業務の業務委託者などに関わる支払いなどを行っている。

処理の仕組みは複雑で、たとえば「定期便の場合は、配送自体は毎日行うが請求書上は1件として請求する」、「配送員の運行管理データとしてのみ利用するため、請求処理せずデータを残す」など、あらゆるパターンに応じて、各伝票を請求処理に回すか、売上処理で終了するか、支払処理につなげるかなどをスタッフが1件1件仕分けしていた。

また、業務が属人化しており、なかなか生産性が向上しないという状況があったのだ。

このように、配送後の受発注データ処理にはさまざまな処理パターンがあるため、基幹システムでの自動化は難しい。一般的に、複雑な業務の効率化を検討する場合、顧客情報の共通化と作業のマニュアル化を図り、属人性を排除する方向で検討する組織が多い。だがセルートではそうしなかった。

杉浦氏は、「当初はマニュアル化も考えましたが、時間がかかります。それならば判断の部分だけ人が受け持ち、その後の作業はRPAが行うことにすれば、早期に時間削減が実現すると考えました」と振り返る。まさに逆転の発想である。

判断は人(場合によってはAI)、作業はロボットと割り切るのがRPA導入成功の1つのパターンのようだ。

「導入月に元が取れた」と語る、セルートのRPA導入プロセス

RPAの導入で、業務は具体的にどのように変化したのか。以前は配送伝票と基幹システム上の入力データを突き合わせ、情報に差異がある場合は修正をしていた。しかし、修正作業はほとんど発生しないため、単に「OKボタン」をクリックするだけの作業になることも多い。

そこで基幹システムから出力したデータをExcelシートに展開し、人が見て差異のない(修正作業が発生しない)データの一覧をまとめる。その後、RPAにはExcelシート上の該当データを開き、ひたすらOKボタンをクリックする作業をこなしてもらい、それ以外のデータは従来通り担当者が仕分けする形をとった。

同社のRPA導入は2020年7月からであり、(2020年12月取材時点では)まだ5カ月が経過したばかりだ。しかし、当初目論んでいた成果は既に出ているという。

現在稼働中のロボット3体の成果として、11月末までの全配送件数18万7595件に対し、ロボットが処理した件数が2万72件。ロボットが処理した割合(ロボ割合、ロボ率)は、当初目標10%を超えているほか、削減時間は月当たり66.9時間に上る。人件費に換算すると、導入したユーザックシステムのRPAツール「Autoジョブ名人」のライセンス価格を十分回収できる金額になる。

杉浦氏は、「2020年度中(2021年3月末まで)にロボ率15%を達成するように現場には指示を出しています」と目標を示す。

同社のRPA導入から最初の5カ月のうち、2カ月間はトライアル(無料お試し)期間であり、有償利用が開始されたのは9月からだ。同社は7月の段階でロボ率10%を達成しており、つまり正式導入前から「元が取れていた」ことになるのだ。

どうしてこれほど早い段階で成果を出せたのだろうか。その秘密は導入の進め方にあった。

どのように自社に合ったRPAを選定すべきか

前述した通り、セルートでは1年前からRPA導入の検討自体は進めていた。

はじめは、杉浦氏を含む数名の担当者でRPAの調査を開始した。杉浦氏は、「当時のRPAに対しては、定型業務の自動化ができるツールという程度の認識でした。そこでベンダーのハンズオンセミナーに参加して、実際に操作しながらRPAとは何かを知ることから始めたのです」と話す。

最初は自社サーバ内にRPAを導入する「サーバ型」の製品から調査した。すぐに分かったのは、サーバ型製品は高価なことである。導入しても利用されないと大きな無駄遣いとなってしまう。また、サーバ運用が必要になるので、自社の情報システム部の負荷になる。将来的なことは分からないが、初期導入でサーバ型はリスクが大きいと判断した。

次に検討したのが「クラウド型」の製品である。クラウドサーバー上で活用するクラウド型のRPAは、一般的にWeb経由でロボットを使用し、Webブラウザ上での作業を自動化するタイプとなっている。このクラウド型については、数種類の製品を比較して、すぐに断念した。その理由は次の2つだ。まず、自社の基幹システムがWindowsアプリケーションを利用しており、クラウド型のRPAでは動作しないため。次に、顧客の個人情報をクラウドに預けることへのリスクやセキュリティ面を懸念したためだった。

RPAロボットに操作を覚えさせる方式としては、「タグ解析」と「画像解析」の大きく2種類がある。タグ解析では基本的に操作エラーが起こらないが、画像解析では動作環境によって操作エラーが起こる確率が高い。経理業務にエラーは許されないのでタグ解析が必要だが、クラウド型の製品はWebアプリケーションのタグ解析はできても、Windowsアプリケーションのタグ解析ができないのだ。そのため、クラウド型の製品は選択肢から外れたのだった。

RPAに作業を覚えさせる方法は「タグ指定」「キーボード指定」「画像指定」「座標指定」の4種類に分けることができる

 

最後に検討したのが、インストールしたPC上で稼働するデスクトップ型の製品だった。サーバ型製品のデスクトップ版も含め、いくつかの製品とベンダーを比較した。検討を重ねた結果、下記の理由によりユーザックシステムの「Autoジョブ名人」に決定したのだ。

セルートがユーザックシステムの「Autoジョブ名人」を選んだ主な理由
・Windowsアプリケーションのタグ解析ができる
・操作学習方式がフローチャート型でなくスクリプト型である(フローチャート型は作るのは簡単だが、保守が難しい)
・個人情報を預けないので、リスクやセキュリティ面で安心できる
・自社の使い方から考えてリーズナブルな価格である
・困った時の問い合わせ先が製品を開発した企業になるため、「柔軟に対応してくれる」

価格面について補足すると、前述したように経理伝票処理に関しては、当初10%のロボ率で65時間程度の時間削減ができれば良いという具体的な目標があった。それで削減できる人件費より価格が下回れば、導入対象になった。

さて、なぜセルートが早期に成果を出せたのかという問いに対する答えを述べよう。それは、ほかの製品を調査しながらRPAの使い方についても習熟していったからだ。

杉浦氏によれば、RPAの使い方にはいくつかのパターンはあるが、同じパターン内では似通っており、1つ学べば応用が利くのだという。Autoジョブ名人に関しても、使い方を理解するまで時間はかからず、トライアル期間が始まってすぐにロボット開発に着手することができた。

自分たちのチームの成果につながることがモチベーションとなる

トライアル期間が2カ月あったことも、Autoジョブ名人に決めた大きな理由の1つだ。杉浦氏は、「トライアル期間が1カ月では短い。2カ月あればいろいろなことができます」と話す。

開発方法はすぐに分かったので、トライアル期間の大半をロボット開発・保守のルール作りに費やすことができた。また、スクリプトの書き方のルール、命名ルール、採番ルールなど細かいルールもトライアルの段階でしっかり設定でき、ロボット化する業務選定のプロセスと選定ルールもスムーズに決められたという。

ロボットの開発は、情報システム部門ではなく、現場のスタッフが兼業で行っており、現時点では経理グループが担っている。「現在、東京と大阪に1人ずつ開発担当者がいます。Excelのマクロを組める程度のスキルがあり、作ることが好きな人にお願いしています。現場スタッフに任命したのは、自分たちのチームの成果につながることが開発のモチベーションになると考えたからです」(杉浦氏)。

将来的に全社展開した場合も、各事業部に開発を任せたいが、まずは開発要望件数を見ての検討を予定している。

開発担当者は「ユーザックのサポートは満点」と評価

ユーザックのサポートについてまとめておこう。製品選定時の決め手の1つとなった「スピーディーな対応」については、「営業担当の方を最初は技術講座のインストラクターだと勘違いしていました。それくらい製品に詳しく、ほとんどの問い合わせに即答してくれました。『営業なので良く分かりません。技術的なことは開発に』と言わないことに好感を覚えました」と杉浦氏は振り返る。

スクリプト開発担当者は、「ユーザックのサポートは満点」と評価しているという。「Autoジョブ名人には、メールにCSVファイルを添付する際、自動的にメール本文のテキストにしてしまうという不具合がありました。問い合わせたところ、数時間後に設定ファイルが送られてきて不具合は解消しました」(開発担当者の声)。

また、開発者向けのスキルアップ講座がオンラインで提供されている。これも情報が充実しているとセルートでは好評だ。講座だけではなく、個別の「お悩み相談」も用意されており、回答が丁寧だという。

RPA導入を検討する組織に対して、杉浦氏は、「RPAは万能ではありません。Excelのマクロでできるようなところは、それと組み合わせて自動化を実現していくのがいいと思います。また、現場が自分たちの問題を解決するために導入するのが望ましい。社長が『RPAというのが流行っているらしいから、うちでも導入を検討しなさい』という会社では、なかなか成功しないでしょう」と、現場が主体的に導入を推進する重要性を強調する。

また、「最終的にはグループ会社にも展開していきたいですが、まず経理グループでしっかり実績を作り、経営管理本部から少しずつ各事業部へアピールしていきます。開発できる人も増やしていきたい」と杉浦氏は今後の抱負を語った。

企業プロフィール
会社名 株式会社セルート
本社 〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-31-18 高田馬場センタービル2階
設立 1984年11月28日
資本金 5,000万円
Webサイト https://www.saroute.co.jp/

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