業務改善
RPAのトライアルから差がつく業務改善プロジェクト
コロナ禍で多くの企業がDX推進の重要性を実感し、新たにRPA導入を検討し始めたところもあるようです。しかし本格的な導入までに時間がかかってしまい、プロジェクトが途中で頓挫してしまうことも少なくありません。これは、何が原因なのでしょうか。
堺ヤクルト販売株式会社は、全国展開するヤクルトグループの地域販売会社であり、乳製品、清涼飲料、食品、化粧品といった幅広い商品を手掛け、地域の人々の健康と美を支えている。販売エリアは堺市をはじめ周辺9市1町、エリア内人口約150万人に対し、19拠点のセンターでカバーしている。広範囲に及ぶ販売活動と多岐にわたる商品ラインナップを見ると、日々の業務が繁忙であることは想像に難くない。
そんな同社は、2023年にRPA「Autoジョブ名人」を導入、手作業・属人化に課題抱えていた業務を自動化し、DX推進へ歩を進めた。この取り組みについて、同社管理本部 課長で同社のDX推進責任者である山下 顕志氏、同部の藤久耕三氏、直販営業部の栃下晴紀氏に話を聞いた。
同社がユーザックシステムのRPAを導入したきっかけは2019年にさかのぼる。同年、大手飲料メーカーのシステム部門で30年近く辣腕を振るってきた山下氏が、DX推進責任者として迎えられた。
当時「DX推進に取り組まなければ、会社が時代に取り残されてしまう」という危機感を覚えていた同社社長が山下氏と出会い、その豊富な経験に惚れ込みDX推進の旗振り役を任せたのだという。
「社内SEとしてグループ全体で導入している基幹システムのメンテナンスを担当しながら、現場が抱えている課題と解決策を洗い出していきました。
現場は手作業が多く、業務が属人化していました。退職した従業員が作成したマクロを動かして日報を作成し、100項目近くある月次処理を一つひとつ手作業でやっていました。
これでは、手間もかかるし、間違いも起こります。そこで、データを扱う日次、月次の業務についてはRPAを活用し自動化する、従業員の情報リテラシーを高める勉強会を実施する、などを盛り込んだ、3年がかりのDX推進計画を提案したのです」(山下氏)
山下氏はまず、管理部門で営業部門を担当していた藤久氏をRPA導入プロジェクトのメンバーにアサイン、業務の自動化に着手した。
10社以上のRPA製品を試しながら、最終的に5社ほどの候補を詳細に比較検討した。その結果、「Autoジョブ名人」とRPA導入から活用までの伴走支援を提供する「カスタマーサクセスプラン」を採用した。
選択の決め手はどこにあったのだろうか。
「当社の基幹システム特有の仕様に合わせて動かせるRPAであることが必須です。そして、ソリューションを『売ったら終わり』ではなく、最後までしっかり面倒を見ていただける会社であることを重視していました。そこで残ったのが『Autoジョブ名人』であり、ユーザックシステムでした」(山下氏)
このプロジェクトのために、多くのRPAを試してきた藤久氏は、
「RPAに触れるのは初めてでしたが、『画面にあるボタンをクリックする』という動作一つにしても、Autoジョブ名人は、タグで情報を取得するので(画像認識や座標指定に比べ)かなり精度が高いと感じました。業務を効率化するために、今後はシステムに詳しくない従業員もツール開発ができるようにしたいと考えていましたので、わかりやすく扱いやすい点も良かったですね」と、Autoジョブ名人の機能や使い勝手を高く評価している。
RPA導入プロジェクトには、管理部門だけでなく直販営業部から栃下氏も参加。
「初めて使うツールでしたので、サービス開始前から担当者とメールでのやりとりを重ね、わからない部分を毎回親切に教えていただきました」と、栃下氏。ユーザックシステムも「これまで導入いただいたお客様の中で、最も多くのロボットを作ってくださった。業務自動化への熱意を感じました」と応える。
栃下氏が信頼を寄せるカスタマーサクセスプランは、3か月で導入効果を実感できる伴走支援だ。
Autoジョブ名人導入時に、自動化したい業務を洗い出し、短期・中期・長期の各スパンで目標設定し、それに向けてRPA開発のスキルや本稼働までをサポートするのが特長。3か月が経過した現在、藤久氏と栃下氏が開発したロボットを各々の端末から実行し、効果を把握している。今後は社内へ広く定着させていく予定だという。
「先日(取材時)、RPA導入プロジェクトの最終報告会を、役員や各部門長も参加のうえで実施しました。どういった課題があり、それをひとつずつ解決していって、どれだけの効果を上げたかについて、ユーザックシステムの担当者から役員や部門長に報告していただきました。
ただ成果をアピールするだけではなく、『まだ課題も残っていて、RPAとほかのシステムとの連携も含めながら、これからもDXを推進していく必要がある』というところまで提案していただきました。会社としても初めてのことで、まず『プロジェクトの進め方を経験する』ところからのスタートでしたが、おかげさまでいい方向に進んだと思います」(山下氏)
同社の社長は産業革命に意欲的な人物で、RPAでの業務効率化が見えてきたいま、「次は生産性向上につながる取り組み」を目指して動き出したという。山下氏もこれに応え、データ活用や生成AI導入などを視野に入れ始めている。
「従業員の皆さんには『自分たちの業務を効率化したい』という所属部門に閉じた発想ではなく、『会社全体の生産性を上げるにはどうすればいいか』という横串の発想で、自ら考えながら行動できるようになってほしいですね。
例えば、RPAをどのように活用できるのか、もっと効率化するには他にどんなツールと組み合わせるのがいいのかなど、生産性向上につながる施策を自ら考えてみる。
そして、部門の壁を越えてコミュニケーションをとりながら施策を実現できる人材になってほしい。そうすれば、やりがいのある仕事ができて、会社全体としてもいい方向へ向かいます。そのために、情報リテラシーを底上げする教育にも力を入れたいと考えています」(山下氏)
堺ヤクルト販売株式会社のDX推進はまだ始まったばかりだ。基幹システムのメンテナンスから、業務の課題を抽出、手作業だった業務をAutoジョブ名人で自動化し、効率化の流れを作った。次は、Autoジョブ名人の活用をさらに全社に広げ、従業員一人ひとりが生産性の向上を意識し、部門の垣根を越えたコミュニケーションが活性化すればさまざまなアイデアが生まれる。
DX推進にはシステム導入だけでなく、それを本来の意味で業務に生かし、職場に根付かせることのできる、広い視野を持ったDX人材が欠かせない。ユーザックシステムもこれを肝に銘じ、同社のDX推進のパートナーとして支援していきたい。