株式会社日伝 様
専門総合商社・日伝の成功例に学ぶ
「継続的に効果を生むRPA活用」のヒント
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※本記事は、2021年1月13日に掲載された日経XTECHの記事を転載したものです。
急速に普及したRPAだが、活用が縮小していくケースも増加
ここ数年で、日本企業における活用が急速に進んだ「RPA(Robotics Process Automation)」。単純作業はロボットに委ね、人でなければ困難な業務に人的リソースを割くことが可能になる。多くの企業がその活用によって、働き方改革に不可欠な生産性の向上、自動化による人的ミスの削減、作業品質の担保といった効果を享受している。働き手不足が叫ばれる日本において、今後もRPAが果たす役割は拡大していくだろう。
ただ、このように導入企業が増えていく中では、思うような成果を得られずに利用を縮小させる企業も増えている。要因は様々だが、例えば、過度なRPAへの期待から、適用範囲を広げすぎてしまうことはその1つだ。定型業務で威力を発揮するRPAを、不定型業務にも適用してしまったがゆえ、効果を出せずに社内の信用を失うケースなどが頻発している。
また、仮に適用する業務の選択は適切でも、ロボットの運用やメンテナンスがおろそかになって効果が目減りしていくケースもある。利用規模が拡大していく中では、RPAツール自体に求められることや管理・運用体制が変わる。これらの継続的な見直しは、導入したRPAを“宝の持ち腐れ”に終わらせないためのポイントといえるだろう。
これらを実行し、継続的に成果を得ているのが、メカニカルパーツ&システムの専門総合商社の日伝だ。同社は2012年ごろから、EDI(Electronic Data Interchange)領域にRPAを適用。受発注業務の自動化による社員の負荷削減、生産性向上、顧客サービスの向上など、RPA活用の効果を順調に拡大しながら今に至っている。
今回は、この日伝の取り組みをひも解くことで、「RPAの効果を享受し続ける秘訣」を学びたい。
顧客の要請に応えるため、管理センターを立ち上げてRPAを導入
動力伝導機器や産業機器、制御機器、環境関連機器、FAなど、各領域のメカニカルパーツ&システムの専門総合商社として、多種多様な製品を扱う日伝。近年は、パーツ、システムの単体の供給にとどまらず、IoT機器や産業用ロボットなどを組み合わせたソリューション提案にも注力。トータルな視点から顧客の製造現場が抱える課題解決に貢献している。
現在進行中の第二次中期経営計画では、重点施策の1つに「生産性の向上」を掲げている。「このテーマは第一次中期計画から引き続き掲げているものですが、その間、一貫して取り組みの重要な柱となってきたのが、受注業務における『EDI化』です」と日伝の梶田 和良氏は紹介する。
そもそも同社が受注プロセスのEDI化にかじを切ったのは、ある顧客の要請がきっかけだった。以前は、この顧客の各事業所と、日伝の各事業所との間で個別にFAXで受発注を実施。FAXを受けた日伝の担当営業が、記載内容を基幹システムに手入力することで受注処理を行っていた。それが顧客の業務プロセスの変更に伴い、「全拠点の発注を1データにまとめてメールで送信したい」との要望が寄せられたという。
そこで日伝は、この要請に応えるべく、本社の営業推進部IT推進課に「EDIセンター」を新設。当該顧客の受注処理を集約するとともに、1ファイルにまとまった発注データを仕分けて登録する仕組みを基幹システム側に実装した。
「ただ、届いたファイルを基幹システムにアップロードする作業は、IT推進課の人員が手作業で行っていました。お客様からは1日5回、所定の時間に発注データが添付されたメールが送られてくるのですが、センターの誰かがこれを待ち構えていなければいけません。FAXよりは大幅に簡略化されるものの、『お客様から届いたCSVファイルをExcelに読み込み』『所定のマクロを実行してデータを整形』『基幹システムにアップロードする』という作業は毎回発生します。遅れ・漏れのないように作業を行うのが、我々現場にとって大きな負担になっていました」と梶田氏は振り返る。
株式会社日伝
営業推進部 IT推進課 リーダー
梶田 和良 氏
そこで、これらの業務を自動化するため日伝が採用したのが、ユーザックシステムの「Autoメール名人」「Autoブラウザ名人」「Autoジョブ名人」である。スピーディーな導入が可能であることや、使い勝手の良さ、コスト面などを総合的に評価し採用を決定した。
データ整形もRPAツール上で実装可能 設定も直感的に行える
2012年の導入以来、同社は継続的に仕組みをアップデートしてきた。現在の運用形態は図1のようなものだ。まず、顧客からメールを受信したタイミングで、Autoメール名人によって添付ファイルを取得・保存。またWebサイトよりデータ取得する顧客もあり、Autoブラウザ名人・Autoジョブ名人による取得・保存も行っている。
あらかじめ設定した内容のデータ整形を自動実行したのち、Autoブラウザ名人がファイルをWebブラウザ経由で基幹システムに投入する。Autoジョブ名人は、一連の作業におけるブラウザ上のカーソルの動きなどを制御する。
株式会社日伝
営業推進部 IT推進課 チーフ
南野 小奈美氏
受信メールからの添付ファイルの取得、データの整形、Webブラウザ経由での
基幹システムへの投入という一連の流れを自動化している
「Autoメール名人のデータ変換機能を使うことで、データ整形プロセスもExcelなどの外部アプリケーションを使わずに実行できます。GUIで扱える使いやすさと併せて、当社にとってなくてはならないものとなっています」と日伝の南野 小奈美氏は説明する(図2)。
入力データと出力データのマッピングを行うため、設定が容易に行える点も特長だ
Autoメール名人とAutoブラウザ名人の適用により、1日5回のデータアップロードが完全に自動化された。現在は、基幹システム側から受注登録処理のエラーが返された場合のみ、確認・対応すれば済む環境が実現できている。
「また当社は、エラーが発生した場合の再発防止と改善に力を入れています。エラーの原因がRPAにあれば仕組みを修正しますし、仮にお客様のデータに入力不備があれば、入力方法の周知徹底などのご協力をお願いしています。というのも、せっかく自動化しても自動処理への不信感があるとRPAを適用できる範囲が狭くなったり適用を取りやめることになります。そうなると、最終的に当社のみならず、お客様にとっても不便な状況になってしまうからです。改善サイクルを常に回し続けることが、RPAの効果を持続させるポイントだと私たちは考えています」と梶田氏は強調する。
これには、日伝におけるEDIセンターのような、中央集約型の運用体制を構築することも1つのカギになるだろう。運用やエラー修正に関するノウハウを集約・蓄積することで、スムーズな対応が可能になる。
顧客側にどんなメリットがあるかを訴求することも重要
さらにもう1つ、同社がRPAの継続活用に向けて重視していることがある。それが、「顧客側にもメリットを生む」ことである。
「例えば、受注した部品の在庫が当社にない場合はメーカーに手配します。メーカーからいつ納品されるかは、担当者が調べた上でお客様に連絡するのですが、実はこれまで、この納期回答業務は人手で行っていたため、手が回り切っていない状況でした。そこで当社は、この業務にもRPAを適用。Autoメール名人、Autoジョブ名人により、基幹システムに入力された納期情報を、メールでお客様に自動回答するプロセスを構築しました」と同社の田中 省吾氏は言う。
日伝にとっては、納期回答業務にかかる担当者の手間と時間を削減できる。また顧客にとっては、納期を速やかに知ることができ、その後の納品計画を立てやすくなるメリットがあるだろう。このように、RPA活用・自動化に向けた顧客のモチベーションを創出することが、継続的な効果増大に向けてとても大切なのである。
「電子化され、人の手を離れる業務が増えるほど、業務プロセス全体の精度も高まります。これが、お客様に対するサービスの品質向上にもつながっていきます。この方針のもと、現在は納期回答に加え、出荷通知を発行する際にもAutoメール名人を活用しています。さらに多彩な局面で、ユーザックシステムのツールを活用していければいいですね。提案を期待しています」と日伝の林 和宏氏は述べる
株式会社日伝
営業推進部 IT推進課
田中 省吾氏
株式会社日伝
営業推進部 IT推進課
林 和宏氏
2012年に特定顧客との取引でスタートした日伝のEDIは、現在、150社・400拠点以上との取引に利用されている。本社オフィスでは、合計8台のロボットが日々膨大なトランザクションを処理し、替えの利かない存在となって同社のビジネスを支えている。さらに、この経験を生かし、将来的には日伝のソリューション自体にユーザックシステムのRPAを組み込んで提案する計画もあるという。
自社、そして顧客のメリットを生むRPA活用を体現する日伝。RPA活用の壁にぶつかる企業は、ぜひ参考にしてもらいたい。