大阪府箕面市 様
今伝えたい、箕面市の魅力!ARアプリを通じて感じてほしい箕面とは。
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Introduction
大阪府の北摂豊能地域に位置する箕面市。箕面は、大阪府唯一の「日本の滝100選」である箕面大滝や、神亀4(西暦727)年創建の古刹「勝尾寺」など、多くの見どころがある街です。
このほど箕面市では、国のデジタル田園都市国家構想交付金を活用し、これらの見どころを楽しめるアプリ「ARでみのお歴史発見!」をリリースしました。市内に点在する見どころスポットに行きアプリを操作すると、往時の写真や再現CG、VRを楽しむことができるほか、記念写真の撮影も可能で、箕面の魅力をリアルに感じることができます。
「ARでみのお歴史発見!」のリリースにあたり、企画立案から運用までを担当されている、箕面市地域創造部箕面営業室 室長 辻 紗織 様と辻 祥子 様に、アプリに込めた想いをうかがいました。
箕面の魅力を「売り込む」ために
―箕面市地域創造部箕面営業室様の役割やお仕事について、お聞かせください。
箕面営業室は、その名のとおり、「箕面の魅力をより多くの方へ売り込む取組み(=いわゆる営業)」を行っている部署です。具体的には、箕面の観光促進、シティプロモーション、ふるさと納税、大阪・関西万博に向けた取組、民間企業などとの公民連携の取組や商工業や労働に関すること、さらに、箕面市のPRキャラクター「滝ノ道ゆずる」の活動のお手伝いなど、幅広く所管しています。
自治体で、「営業」と名前が付く部署はあまり無いかもしれませんね(笑)。
―「ARでみのお歴史発見!」の検討にいたった背景や課題を教えていただけますか。
箕面市は、大阪府の北西部に位置し、市域に「明治の森箕面国定公園」や「箕面大滝」を有する自然豊かなエリアです。その自然環境が大きな観光資源である本市では、明治の森箕面国定公園の利用数が昭和50年の279万人をピークに減少傾向にあり、検討当時(令和2年数値)には135万人と半減していました。
紅葉スポットとして認知していただいているため、秋の紅葉期には多くの方に観光に来ていただけるのですが、その他の季節、特に自然資源を生かしにくい冬期は一年を通じて最も閑散としてしまうことや、自然資源が最大の観光資源であることから天候によって観光客の来訪が左右されてしまうことが課題でした。また、都心から電車で約30分というアクセスの良さと市内の観光名所をつなぐ二次交通の不足により、観光客の箕面市内での滞在時間が短いことも課題でした。滝を見たら、そのまま帰ってしまう方が多いのです。
これらの課題を解決し、年間を通して観光客の方に来訪していただけるよう、令和4年度に箕面市観光協会が「箕面観光戦略」を策定しました。この「箕面観光戦略」において、自然環境だけではない「観光コンテンツの創出」がアクションプランのひとつに位置づけられました。そして、市内に点在する観光スポットと箕面市の歴史に着目し、季節や天候・時間帯に左右されない通年集客・市内周遊観光に資する新たな観光コンテンツとして、デジタル技術を活用したいと考えました。これらのことから、誰もが手軽に楽しむことができるスマートフォンアプリ「ARでみのお歴史発見!」の検討に至りました。
古くからの歴史資産があり、住宅都市として発展してきたその歩みは箕面市の魅力。
デジタルコンテンツとして活用できないか。
―入札に至るまでの過程を教えてください。
「箕面観光戦略」の策定にあたり、公民連携箕面観光戦略会議の委員として箕面市も参加しました。そして、市内散策を促すデジタルコンテンツの開発を検討していたところ、AR技術を用いたまちあるきのアプリ開発の事例があることを知り、更なる検討を進めました。たつの市さんのまちあるきアプリです。
箕面市は、山岳信仰など古くから人びとに大切にされてきた歴史資源が豊富にあり、また、明治時代には箕面有馬電気軌道が開通し、住宅都市として発展してきた経緯があります。その強みを活かしたコンテンツの開発に取り組むこととなりました。
そして、デジタル田園都市国家構想交付金など、国や大阪府の交付金等を活用し、令和5年度中のリリースに向けて、令和5年4月上旬に開発事業者を選定する総合評価方式による一般競争入札を実施し、ユーザックシステムが落札しました。
―ユーザックシステムのプロポーザルについて、ご評価いただいたポイントは何でしょうか。
まずは、ARアプリ開発の実績があることです。前述したたつの市さんのまちあるきアプリは、本市が目指すアプリに近しいものがあり、アプリ開発元であるユーザックシステムの実績を評価しました。
また、アプリの運用には開発時にかかる費用だけでなく、保守費用等経年で必要な経費も発生します。本市としては、経年コストをできるだけ抑えながら運用することも重要と考えていますので、その点も評価しました。
―落札後、プレイベントを経て本稼働にいたるまでの過程をお聞かせください。
契約後、まずは開発するアプリ内で見ることができる18カ所の見どころスポットを決定しました。観光客の市内回遊性を高めることもアプリ開発の目的のひとつでしたので、市内最大の観光名所である「箕面大滝」や「箕面滝道」、「勝尾寺」だけでなく、他の場所にも足を伸ばしていただき、市内での滞在時間の延長につながるよう見どころスポットを選定しました。18カ所のうち、3カ所ではアプリ内でAR技術を用いた再現CGを楽しんだり、現実世界と仮想世界が融合したAR画像と一緒に記念撮影を撮ることもできます。
次に、選定したスポットで表示させる昔の画像の選定に取り組みました。市が所有する行政史料の中から、魅力的な写真を選ぶ作業には少し時間を要しました。また、市民の方から提供いただいた写真も使用させていただいてます。
ARスポットのひとつでもある箕面駅では、本アプリの目玉でもある「360°VR体験」ができます。明治44年頃のラケット型線路の箕面駅周辺の様子を再現するため、当時の様子が分かる市所有の写真をユーザックシステムへ提供しました。また、当時の電車をVR上で再現するため、阪急電鉄様にも多大なるご協力をいただきました。
さらに、箕面駅での再現VRを製作してもらいつつ、他2カ所のARスポット「箕面大滝」や「勝尾寺」で出現させるAR画像についても打合せを進め、勝尾寺様の協力も得ながら形にしていきました。
また、ユーザックシステムにはアプリのPR動画の作成も依頼しました。完成した動画は、箕面市の魅力を存分に引き出してくれており、とても素敵な動画に仕上がっています。
そして、いよいよ2月10日(土)には、箕面市観光協会主催の冬季イベント「箕面の森Winterプロムナード2024」のオープニングイベントが開催され、それに合わせてアプリをプレリリースしました。同日に実施された大阪梅田駅から箕面駅までの直通電車による阪急貸切列車ツアーに参加されたお客様や、瀧安寺前広場で行われたバレンタインコンサートに来場された方にアプリの広報をさせていただきました。また、見どころスポットの一つであり、宝くじ発祥の地である瀧安寺では、多くの方に「デジタル富くじ」を体験いただきました。
当日夕方はあいにくのお天気で、期待していたほど客足は伸びなかったのですが、広場では大型ビジョントラックでPR動画を流し、アプリプレリリースに係る周知広報を実施することができました。
その後、プレリリースから3月末の本格リリースまでの期間、箕面駅前のVR動画の表示方法やAR画像の出現の仕方、アプリ内のアイコンの表示方法、文言の調整等魅力的なコンテンツになるよう最終調整を進め、リリースに至りました。
時代に合わせた新しいコンテンツを創出し「箕面」の魅力を発信したい。
―「ARでみのお歴史発見!」へのご評価はいかがですか?
アプリをお使いいただいた方からは、昔の写真などを見られるので、箕面の歴史を感じることができ面白いといった声をいただいています。昔、箕面駅の線路がラケット型でUターンをするような形だったことについては、ご存知でない市民の方もたくさんいらっしゃると思います。
また、アプリのトップ画面にアンケート機能を設けています。それにより、アプリのユーザー様がどこから本市にいらっしゃったのかや、交通手段、年代などの情報がわかるようになっています。現在までのところ、それほど情報量は多くないのですが、この結果を分析して、今後の観光施策立案に役立てたいと考えています。
一方、アプリをお使いいただくためにはもっと周知広報が必要だと感じていますが、箕面駅前でアプリの使い方等をお尋ねいただいたこともあり、少しずつユーザーは増えつつあるのかな、と感じています。
―レポートへのご評価はいかがですか?
ダウンロード数など、アプリの利用者数が目に見えて分かるので、「イベントの実施に合わせてダウンロード数が伸びた」とか、「周知広報をもっと頑張らなければ」など、参考にしています。
―貴庁と同様の課題をお持ちの自治体様に向けメッセージをお願いいたします。
現代は多様性の時代ということもあり、観光に求められるものも多様化しているように感じます。箕面市は、都市圏から約30分で来訪でき豊かな自然を楽しむことができる場所として、これまで多くの方に観光に来ていただいていました。豊かな自然を楽しんでいただくことはもちろんですが、これからは時代に合わせた新しいコンテンツを創出することによって、「観光地・箕面」の新たな魅力を発信していけたらと考えています。
そして、今後はインバウンドの受け入れ体制を整えていくなど、観光地として必要な整備を進めるため、常にアンテナを張りつつ観光施策に取り組んでいきたいと思います。
―今回、昔の箕面市の写真を集めていただくにあたり、個人の方のご協力もありました。とても貴重なお写真でしたので、箕面市の歴史・魅力をお伝えするために活用させていただいております。今後も様々な市内の古いお写真を募って、さらなる箕面市を深堀していけるような取り組みになれば面白いなと考えております。ありがとうございました(城郭CGディレクター本岡)。
※2024年7月取材。記載の情報は取材時のものです。