株式会社マツヤ 様
1カ月に100以上のスクリプトを開発し、3,276時間の削減に成功!
「標準化スクリプト」でWebEDI業務の課題を解決
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事例概要
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- 「IPORTER」と「BtoBプラットフォーム」から注文データを手作業でダウンロードしており、負担だと感じていた。
- RPAのシナリオ開発に時間を割くのは困難だった。
- 注文データのダウンロードをRPAで自動化し、年間3,276時間の効率化に成功。
- 「名人マーケット」や「カスタマーサクセスプラン」を利用し、1ヵ月に100以上のスクリプトを開発。年末の繁忙期に導入効果を実感できた。
EDI(Electronic Data Interchange:企業間電子データ交換) システムでデータをやり取りする際に広く利用されてきたINSネットのディジタル通信モードが、2024年1月に終了します。この「EDIの2024年問題」によって、今後従来のEDIシステムをWebEDIに切り替える企業が増えると予想されます。
大阪市に本社を置く株式会社マツヤは、東京、神奈川、名古屋、京都、神戸、福岡、沖縄に拠点を持つ食品卸売業の会社です。ホテルやレストラン、ハウスウェディングを中心にヨーロッパの食品を卸している同社は、取引先ごとに異なる仕様のWebEDIに対応するためにAutoジョブ名人を導入し、受注作業を自動化しました。
導入ではWebEDIの自動化に特化した開発済みのシナリオ「標準化スクリプト」を利用し、1カ月あまりの間に100以上のシナリオを開発。全社で1日あたり約400回の自動処理を行い、年間3,000時間以上の削減を実現したそうです。RPAを導入し、早期に大きな成果を上げる秘訣を伺いました。
(左から)キャビア、トリュフ、生ハム、ワイン
受注業務を効率化するためにAutoジョブ名人を導入
――貴社が考える食品卸売業界の課題について教えてください。
小嶋康之氏(株式会社マツヤ システム管理部 次長):
食品卸売業界は朝が早いのが特徴です。大手のホテルですと必要な食材を前もって注文していただけることが多いのですが、ホテルと比べて小さなレストランは夜中まで営業した後に次の日の食材を発注します。我々はその注文を朝から処理し、その日のうちに取引先に配達しています。当社の取引先は全国で約1万店舗あり、発注いただく食材は多いところで50〜60アイテムに上ります。
当社ではこうした多種多様なアイテムを取り扱う、リードタイムが非常に短い作業を毎日複数回、繰り返し行っています。そのため、いかに作業時間を短縮するかが課題です。
大谷浩平氏(株式会社マツヤ 管理本部 常務取締役):
当社の出社時間は定時が7時です。社員は通常6時から6時半に出社するのですが、受注書を出力するという単純作業のために30分早く出社している状況です。こうした作業を効率化できればと考えてAutoジョブ名人を導入することになりました。
――どのようなきっかけでAutoジョブ名人をお知りになったのですか。
大谷:
以前からお付き合いのあった、内田洋行の小原さんにご紹介いただいたのがきっかけです。
小原理一郎氏(株式会社内田洋行 情報ソリューション事業部):
食品卸売業界における受注データの取り込みは非常に重要な課題です。我々は解決策の1つとしてRPAを提案しており、特にWebEDIを利用した受注業務の自動化に強い点を評価して、今回Autoジョブ名人をご紹介しました。
小嶋:
小原さんにご紹介いただいた後にトライアル期間を経て製品を購入し、2021年の9月頃から本格的な導入作業に取りかかりました。
標準化スクリプトを利用して
IPORTERとBtoBプラットフォーム(インフォマート)の受注業務を自動化
――どのようにして業務自動化プロジェクトを進められたのですか。
小嶋:
食品卸売業界は繁忙期が12月です。12月に受注業務が自動化されていれば、現場の負担を減らせると同時にRPA導入効果のアピールにもなると考えました。そこで2021年9月からユーザックシステムが「名人マーケット」で提供している「標準化スクリプト※」を利用して、受注業務を自動化するスクリプト開発に取り組みました。
※標準化スクリプト:BACREX、ChainFlow、BtoBプラットフォーム(インフォマート)、FINET、IPOTERなどとのWebEDIの操作を自動化するための開発済みシナリオ(スクリプト)。RPAツール『Autoジョブ名人』で動作する。名人マーケット( https://meijin-market.com/ )よりダウンロード可能で、2022年3月現在、34種類のシナリオのダウンロードが可能。
その結果、9月後半には「よし、これを全国の拠点に導入しよう!」と思えるまでになっていましたね。そして10月に顧客の数が最も多い大阪から、実際の導入と稼働をスタートしました。11月には東京、名古屋、京都、神戸、福岡の全国5つの拠点にも導入し、結果的に12月の繁忙期に間に合わせることができました。
――自動化した受注業務について詳しく教えてください。
小嶋:
当社は取引先にホテルが多いこともあり、受注業務の多くをホテル専用のWebEDIシステム「IPORTER」を使って行っています。今回メインで自動化したのは、このIPORTERとBtoBプラットフォームで行っている受注業務です。
IPORTERの画面はそれぞれのホテルでURLが異なるため、受注データを出力するためにはホテルごとに受注画面を開かなければなりません。この作業に手間がかかり、以前から効率化できないだろうかと思っていました。そこで、まずは「IPORTER 受注データ自動DL&納品書印刷標準化スクリプト」を利用してスクリプトを開発し、受注書を出力するところまでを自動化しました。
BtoBプラットフォームに関しては、基幹システムに受注データを取り込み、受注書を出力するところまでを自動化できると判断し、一連の作業を「インフォマート BtoBプラットフォーム 受注データ自動DL標準化スクリプト」を利用して自動化しました。
――標準化スクリプトを利用した開発はいかがでしたか。
小嶋:
開発したスクリプト数は、IPORTERが89本、BtoBプラットフォームが17本、合計106本です。9月中にこれだけの数のスクリプトを開発できたために、12月の繁忙期に間に合わせることができました。
――通常は月に1~3本のペースでスクリプト開発を行います。1カ月に100本以上というのは、通常の30~100倍のペースですね。
小嶋:
標準化スクリプトを使えば、取引先のホテル名やID、パスワードなどの決められた項目を入力していくだけで、それぞれのWebEDIに適したスクリプトが簡単に開発できます。しかし、簡単とは言ってもカスタマーサクセスプランを契約していなければ、短期間でこれほど大量にスクリプト開発を行うのは難しかったと思います。
――カスタマーサクセスプランの感想をお聞かせください。
小嶋:
当社の場合、ユーザックシステムのご担当者の方とパソコンの画面を一緒に見ながらスクリプト開発を行いました。1回2時間、計3回のオンラインサロンが終わった後も、引き続きWeb会議ツールを使ったリモート開発でご協力いただき、さらに電話やメールなどでもアドバイスをしていただいています。担当の方には開発時だけでなく運用時にも相談に乗っていただき、大変心強いです。
カスタマーサクセスプランでは、当社の事情を把握している固定のご担当者の方が対応してくれるため、問い合わせのたびに一から事情を説明する必要がありません。特に質問をすればすぐに回答していただける点は助かりますね。
今回、標準化スクリプトを使ってIPORTERとBtoBプラットフォームの受注業務を自動化したことで、会社全体で1カ月あたり273時間を削減できました。1年に換算すると3,276時間を削減できたことになります。
自動化によって業務改善に対する社員の意識が変化したと実感
――これからさらに自動化の範囲を広げていきたいとお考えですか。
小嶋:
まずは朝の出力業務を全て自動化したいと考えています。受注業務で利用しているWebEDIは、IPORTERやBtoBプラットフォーム以外にも何種類かあります。今後はそうしたほかの受注業務も順次自動化していくつもりです。あとは単純作業のうち、自動化できる部分をいかに見つけていくかですね。
――貴社と同じような課題に悩んでいる同業他社に向けて、アドバイスをお願いします。
大谷:
食品卸売業界は社員の労働時間が長い業界です。ですから特に人手に余裕がない中小企業は、業務の中に自動化できる部分があれば自動化すべきだと考えています。
RPAは導入コストがかかり費用対効果が出にくいイメージがあるかもしれませんが、当社は年間3,276時間もの削減に成功しました。これは時給を2,000円だと考えても600万円以上の労務コストが削減できたということですから、かなりの費用対効果があると言えるのではないでしょうか。
小嶋:
業務を自動化しようと考えると、新たにシステムを開発しなければならないと考えがちです。しかしそのためには莫大な時間とコストがかかります。一方でAutoジョブ名人のような小回りが利くRPAであれば、比較的低コストで短期間のうちに導入することが可能です。あらかじめ標準化スクリプトが用意されているため、開発にもそれほど手間がかかりません。
今回メインで自動化した受注業務は、人の手で行うと2分ほどで完了できるちょっとした作業です。こうした作業を自動化することをためらう企業もあるかもしれませんが、実際に自動化してみると、削減時間のような定量的な効果だけでなく、「ミスがなくなった」「業務改善に対する社員の意識が変わった」などの定性的な効果を実感しています。
これまで当たり前だと思っていた業務に対する考え方が、自動化によって「もっと改善できるのではないか」などと変化した。これは会社にとって大きな成果です。費用対効果はもちろん重要ですが、こうした目に見えない効果を積み重ねていくことも大切だと考えています。