片山工業 株式会社 様

Web操作から基幹システムへのデータの取り込みまで、
RPAで完全自動化を実現

ソリューション:
  • RPA
  • 受発注
業種:
  • 製造業

事例(PDF)

ブラウザ操作自動化 RPA導入事例

国内有数の自動車部品メーカーとして確固たる地位を築いている片山工業株式会社さまでは、インターネットを介しておこなう発注データの取り込み作業が課題でした。全て手作業でおこなう必要があったため、担当者に大きな負担がかかっていたのです。

そこで同社は一連の作業を自動化するためのソフトウェアを導入し、得意先のWebサイトと基幹システムの完全自動連携を実現しました。
システム導入の過程や導入効果を詳しくご紹介します。

 

国内有数の自動車部品メーカーが抱える「顧客Web処理」の課題

国内有数の自動車部品メーカー

岡山県の南西部、井原市に本社を構える片山工業株式会社さま。同社は、昭和22年に自動車用排気蛇管(※1)の製造・販売を開始して以来、自動車用燃料管や多層式蛇管などの開発に取り組んできました。その後、自動車用ドアーサッシュやモールディングなど外装用品の製造にも着手。今日では、国内有数の自動車部品メーカーとして確固たる地位を築いています。

また、自動車用部品の製造で培われた独創技術を応用し、建築用部品や農業用機械部品の分野にも進出。事業の多角化を推進中です。

 

QCサークルで「顧客Web処理」の改善に取り組む

同社の情報システム課のミッションは、企業情報を最短・最速で運用できるよう、最新のIT技術の情報収集に努め、情報システムの構築・整備を行うこと。そうしたなか、情報システム課に所属するQCサークル「イノベーター」では、生産管理課が担う「顧客Web処理」に注目しました。

「顧客Web処理」とは、取引先が開設した発注用のWebサイトへアクセスし、発注情報をダウンロードする作業のこと。
ヒアリングの結果、この処理には次の課題があることがわかりました。

左から武本さんと鈴木さん

 

「顧客Web処理」の課題

  • 生産管理課の担当者が1名でおこなっている。
  • 手作業のため時間がかかっている。
  • 担当者が休むと業務がスムーズに流れない。
  • 休日にもWebオペレーションがあるため、休日出勤しなければならない。
  • 取引先ごとにWeb画面の操作が異なる。しかも操作方法が複雑。
  • Webサイトへアクセスして、初めて発注データの有無がわかる場合がある。
  • サイトや回線の込み具合などから、作業に時間がかかることがある。

さらに調査を進めると、生産管理課には、「発注情報を自動的にダウンロードしたい」、「新着データが無い時はWeb操作を行いたくない」、「Web操作のマニュアル作成などの負荷を軽減したい」などの要望があることも判明。

また、Webを介した発注は17社で、全オーダー数の32%を占めていることや、「顧客Web処理」に費やす時間は月間2,400分(40時間)にも及ぶことが明らかになりました(図1)。

そこで「イノベーター」では、情報システム課のミッションにもとづき、生産管理課の業務改善に取り組むことに決定。「顧客Web処理」の削減目標は、課の方針により90%減、つまり1/10の240分(4時間)とすることに定められました。

 

図1:Webを利用している17社について、月あたりのオペレーション時間を調査。A社、B社、C社、D社の作業時間が長く、全体の50%以上を占めている。
(QCサークル「イノベーター」の発表資料より)

 

「顧客Web処理」を自動化するソフトを導入するしかない

解決策の検討

さっそく「イノベーター」では特性要因図などの分析手法を用いて対策を検討。担当者の増員や、オペレーションマニュアルの整備、取引先にシステム変更を依頼するなどの案も浮かびましたが、やはり「顧客Web処理」を自動化するためのソフトウェアを導入するしかないとの結論に達しました。

そこで、ブラウザ操作を自動化するソフトウェアをインターネットで検索し、ユーザックシステムの「Autoブラウザ名人(※2)」とX社のソフトウェアをピックアップ。両社によるデモンストレーションなどを経て、価格・機能・プログラム開発・業者の対応力などを比較した結果(図2)、「Autoブラウザ名人」を選定しました。

 

図2:ユーザックシステムの「Autoブラウザ名人」とX社のソフトウェアを、価格、機能、プログラム開発、業者の対応度の面で比較した表。総合点で上回った「Autoブラウザ名人」を導入することに。
(QCサークル「イノベーター」の発表資料より)

 

選定の理由について鈴木さんは、「価格や機能、プログラム開発などの項目ごとに両社のソフトを採点したところ『Autoブラウザ名人』の方が上回っていました。特に、プログラム知識が少なくても比較的容易に自動化手順を開発できる点がポイントでした」。

武本さんも「X社のソフトウェアはプログラムを組むようなイメージがあり、とっつきにくそうな印象を受けました。一方『Autoブラウザ名人』にはそのようなことはなく、作りやすそうに思いました。もう、全然違いましたね」と語ってくれました。

 

Autoブラウザ名人とは

「Autoブラウザ名人」は、インターネットエクスプローラーの起動、取引先のWebサイトへのアクセス、IDパスワードの入力、メニュー選択、ダウンロードやアップロードなど、担当者の負担になっているブラウザ操作を自動化するためのソフトウェアです。また、ブラウザ操作だけでなく外部プログラムの起動も自動化できるため、バッチプログラムなどを起動させ、基幹システムとの自動連携を実現することも可能です。

 

「Autoブラウザ名人」の導入

作業時間の多い12社の「顧客Web処理」を自動化

「Autoブラウザ名人」の導入にあたり、「イノベーター」では前述の17社のうち、作業時間の多い12社(自動車メーカー、自動車部品メーカー、建機メーカー、住宅設備メーカーなど)について自動化を進めることに決定。特に自動化が難しそうな3社についてはユーザックシステムにスクリプト(=自動化手順)の開発を依頼し、残りの9社については3社のスクリプトを参考にしつつ、自社で開発をおこなうことになりました。

そして、2008年10月の導入以降、順次スクリプトの開発を進め、2009年3月には12社目の開発が完了。生産管理課に引き渡したところ、Web業務の自動化について高く評価されました。しかし、基幹システムへのデータの受け渡し作業を依然として手作業でやらなければならない点を指摘されました。

そこで「イノベーター」は、ダウンロードしたデータを基幹システムへ受け渡す仕組みもACCESSとバッチプログラムで開発。さらに、予期せぬエラーが発生した場合、担当者にメールで知らせる仕組みも用意しました。これらの仕組みもスクリプトに組み込むことにより、ついにお取引先のWebサイトと基幹システムを一気通貫で結ぶことに成功したのです。

 

作業時間が1/10に

導入効果を鈴木さんに確認すると、「2009年4月の本稼働直後は、改善前の月間2,400分から806分に、約66%の作業工数を削減できました。ただしこれには、本稼働後に暫定的に行っていたデータの検証作業時間なども含まれています。そして、2009年8月には検証作業も廃止しました。この時点で効果測定をしてみると、導入前の月間2,400分から194分に、つまり92%の作業工数を削減でき、当初の目標を達成しました」とのこと。

194分の作業について武本さんは、「それほど手間ではないため、あえて自動化を見送ったサイトもあります。そのサイトの顧客Web処理が54分。残りの140分は、基幹システムとの連携にかかわるチェック時間。データを受け渡したあと、オーダーの重複チェックやマスタ未登録に対処するための時間です」と説明してくれました。

 

導入の効果

  • 「顧客Web処理」の作業時間を2,400分から194分に短縮。Web操作から基幹システムへのデータ取込は「0」分に。
  • 担当者が休んでも、作業がスムーズに流れるようになった。
  • 休日に作業をする必要がなくなった。
  • オペレーションマニュアル作成の手間がなくなった。
スクリプト編集画面
HTMLドキュメントビューワ

 

 

自動化できない問題発生も、パッケージソフトの機能強化で対応

一方、今回の導入には苦労もありました。ユーザックシステムがあるサイトのスクリプト開発を試みたところ、なぜか自動化できない箇所があったのです。別ウィンドウに画面遷移をする、これまでに自動化実績のあるパターンです。よく調べてみると、単なるリンクによる画面遷移ではなく、サーバー内でいくつかの処理が実行されたのちに新たなウィンドウが立ち上がる仕組みであることがわかったのです。当時の「Autoブラウザ名人」の機能では、このようなサイトの自動化は困難でした。

「これには困りました。このサイトの自動化ができなかったら、導入した効果が半減してしまいますから」と鈴木さん。

これに対しては、ユーザックシステムが「Autoブラウザ名人」の機能強化を行い、問題のサイトも自動化できるようになりました。鈴木さんは「自動化できたと聞いた時はほっとしました」と笑って話してくれました。

 

さらなる活用を目指して

スクリプトの開発期間を武本さんにお尋ねすると「大体1社(サイト)3日位です」とのこと。武本さんは、本稼働後もスクリプトの自社開発を進めておられ、現在は1社増えて13社のサイトを自動化しています。

今回のようにブラウザ操作を自動化すると、取引先がWebサイトの変更をおこなった場合、どうなるのでしょうか。この点について鈴木さんは「変更前には取引先から連絡がありますし、当社でスクリプトの修正も可能と思いますから心配していません。修正期間中のみ、手作業で対応すれば良いのですから」と答えてれました。

今後は納品書の発行やCADデータの授受も自動化する計画。さらに、技術の伝承やレベルアップを目的として、他の情報システム課のメンバーへの社内教育を進めており、今後のご活用がますます楽しみです。

 

改善活動に対する社内評価

「顧客Web処理」に対する「イノベーター」の意欲的な改善活動は、全社的にも様々な評価をいただくようになりました。

まずご紹介するのは、懸案だった「顧客Web処理」から解放された生産管理課から「イノベーター」に届いたメールです。

生産管理課から届いた感謝のメール
「このたびはAutoブラウザを導入してくださいまして、ありがとうございました。Webによる受注情報受信では、人によるハンド処理が必須でした。Autoブラウザを導入することにより、ハンド処理が軽減され処理が早くなり、また手入力・処理ミスなど人的ミスもなくなり、正確な情報が基幹システムに入るようになりました。今後も、Web情報配信は増えると思います。Autoブラウザをどんどん活用し、工数削減、紙の削減に取り組んでもらいたいと思います」(原文のまま)

 

QC大会で見事1位に表彰される

次は片山工業さまのQC大会の模様です。同社は、全社を挙げてQC活動に取り組んでいますが、2009年4月に開催された第89回QCサークル大会(年3回開催)において「イノベーター」が今回の活動成果を発表したところ、出場8サークル中、見事1位と評価されたのです。さらに、2009年8月に開催された第51期QCサークルチャンピオン大会(※3)においても1位に輝くという、素晴らしい成績を収められました。

講評では、成果をきちんと出している点や、他部署の業務改善に積極的に取り組んだ点が特に評価されました。

また今回の取材にあたり、当社も発表時のスライドを拝見したところ、データを駆使した分析手法や課題解決までのプロセスが見事にまとめられており、非常に感心いたしました。まさに、サークル名「イノベーター(=革新者)」にふさわしい、改善活動だったと言えるでしょう。

2009年10月、片山工業さまの本社工場にて、ある自動車メーカーへの納入業者が一堂に会し工場交流会がおこなわれました。「イノベーター」は、この交流会でも活動成果を発表するという名誉を担っています。写真は、交流会で発表をする藤井さん。

 

 

導入してよかった

最後に鈴木さんから、「今回のシステム導入は、単に生産管理課にラクをしてもらうために導入したのではありません。面倒な手作業はできるだけ自動化して、その分本来の生産管理業務に集中してもらいたいと考えました。そういう意味でも狙いどおりの効果が現れているようです。また、経済効果は月間86,381円とみていますので、投入コストも2年以内で回収できるでしょう。Web操作から基幹システムへのデータの取り込みまでが完全自動化でき、『Autoブラウザ名人』を導入して本当に良かったです」と評価していただきました。

 

(左から)武本さん、藤井さん、鈴木さん

 

有難うございました。
2009年11月取材(記載内容は取材時の情報です)
2022年 3月一部改訂
※1:表面積を大きくして吸熱・放熱作用の効果が上がるようにらせん状に作られた管。
※2:2019年10月、Autoブラウザ名人からAutoジョブ名人に切り替え
※3:その年度に開催された各QCサークル大会上位2位までが出場する。

 

システム概念図

企業プロフィール
会社名 片山工業 株式会社
本社 〒715-8502 岡山県井原市西江原町1005-1
設立 1947年(昭和22年)
資本金 9,600万円
事業内容 各種自動車用部品、農業用機械部品、各種専用機械、建築用部品の製造・販売
Webサイト http://katayamakogyo.jp/
担当者の声
担当者コメント
片山工業株式会社さまへのサポートでは、当社が作成したスクリプトをもとに、スクリプトの作成方法をご説明させていただきました。スクリプトの作成は特別難しいものではなく、基本がわかれば他のサイトの自動化も容易です。また、今回は当時の「Autoブラウザ名人の機能では自動化ができないサイトがあり、若干苦労しましたが、開発とサポート部隊が一体となってすぐに機能強化を図り、無事自動化に成功しました。お客様のご期待に応えることができ、本当に良かったです。
担当者
西日本システム サポート部:西平 達紀

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