日本リビング保証株式会社 様
業務担当者が自らRPAを構築。
社内キャンペーンで他の業務への導入も促す。
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事例概要
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- コールセンターで受付けた案件を2か所のシステムに手作業で転記入力していた。
- DX推進の方針が示され、RPAも有力な手法として検討・導入を進めた。
- 多忙なIT部門では対応してもらえず、業務担当者自らがRPAに取り組んだ。
- 転記入力業務の他、請求書発行など他業務の自動化も図り社内アピールに心掛けた。
- 画面遷移の模様を動画化した社内デモにて大きな反響があり注目を集めるようになった。
- 社内キャンペーンでRPAシナリオを募集するなど、RPAの定着・拡大を図っている。
住宅総合アフターサービス企業
日本リビング保証株式会社様は、ハウスメーカー等住宅事業者を通じて、住宅オーナーに建物や設備機器の長期保証や第三者検査、定期点検・メンテナンス工事などを提供する「住宅総合アフターサービス企業」です。
2009年の設立以来、住宅市場のニーズに巧みに対応し、2018年には東証マザーズへの上場を果たすなど、急成長を遂げています。
同社のコールセンターは、リフォームや修理・点検の申込、相談などすべての案件の窓口となっており、施工・保守業者や設備メーカーへの取次ぎなど、日に100件以上を受け付けています。
なかでも最も扱いが多い大手ハウスメーカーA社の案件専任に4名のオペレータを配置し、A社受付システムとの取次業務を行っています。その業務に「Autoジョブ名人」を導入、高い生産性を発揮しています。
しかし、実際にRPA構築に当たった方は、IT部門ではなく、その業務に日々携わる担当者でした。
社内DX推進とRPAの導入
その担当者が、業務運営本部・オペレーション部の林理美チーフです。
林:
コールセンターに電話で寄せられた用件と対応内容は、応対したオペレータがその場でエクセル上のヒアリングシートに書き込みます。その受付内容を別のスタッフが整理してA社のシステムにログインし入力していきます。
例えば、A社のお施主様からの、設備機器の修理や交換(トイレが壊れたので修理してほしい等)の受付です。
センターが稼働を始めた3年前は、A社システムへの入力だけでよかったのですが、その後運用が変わり、当社のシステムにも記録入力する必要が加わり、双方のフォーマットが異なるので、転記作業が煩雑化し、入力漏れや転記ミスも懸念されていました。
業務の自動化や効率化を図るため、Excelプラットフォームを利用する「StiLL」を使用し、少しずつ進めていましたが、設定が難しく、だれでも扱えるソフトではなかったので、着電の数値集計程度にとどまっていました。
そんな折、社長からDXによる業務効率化推進の方針が示され、その一つとしてA社転記業務のRPA化の検討を進めました。
トライアル期間中に自・他部署の業務自動化にトライアル
林:
検討にあたり、RPAを提供する4~5社に資料請求しました。最初にレスポンスのあった会社がユーザックシステムさんでした。私はコールセンター分野の人間で、システム構築の経験も専門スキルもありません。ただ、HTMLやWebの知識は多少あり、タグ解析ビューア等も理解していた程度でした。
その私が第一候補に挙げたシステムが「Autoジョブ名人」でした。スクリプト編集画面のUIが「リスト型」で見やすかったこと(注:最新のVer.5.0では「フロー型」も追加)、それに資料請求の反応に見るように対応の良さが決め手となりました。まずはトライアル期間中に、A社の転記業務の自動化に取り組むこととしました。
具体的には、
①受信メールに添付されたエクセルファイルをダウンロードし、開き
②その中から当社番号の案件を検索
③A社のシステムにログイン
④A社が採番した受付番号を入力
⑤修理等を担当する会社を入力
⑥当社の受付スプレットシートに記録を残す
という一連の処理で、前日の案件を毎朝2名のオペレータが各30分かけて1件ごとに手入力していた業務です。この業務は3日間程度で自動化することができました。
会社にアピールするために、トライアル中にさらに多くの事例をつくろうと、別部署の業務にも手を拡げました。検査サービスに関わる請求書発行業務です。
検査依頼のあった事業者に対する請求書を、当社と事業者双方の計上金額を照合したうえで発行する業務の自動化です。請求書発行のマニュアル(手順書)を片手に、勤務の合間に1か月くらいでつくり上げました。
毎月50~60件の請求書を、1人の担当者が月2回、各半日費やす業務です。
社内デモで大きな反響
林:
この段階で、「よくは分からないが、RPAはすごいらしい」の噂が社内で広がりました。そこで、これら自動化した業務の画面遷移の模様を動画化し、社長も参加する説明会でプレビューしました。
「オオ~、そんなに簡単にできるんだ」の声があがるなど、大きな反響があり、その後の社内決裁もスムーズに運びました。ただし、このRPAプロジェクトにIT部門は直接関わらず、助言等にとどめることとなりました。
この点、同部の平井部長は、
平井:
当社のIT部門は人的リソース不足の状態でした。例えば今回のRPA案件の中には、データ取り込みの機能を基幹側で追加実装してもらえれば実現する業務もあったのですが、要望を出しても、そこまで手が回らない。業務をもれなく正確に理解してもらうための擦り合わせにも時間がかかり、その間に会社の業務やシステムが更新されてしまうリスクもありました。
IT部門の手を煩わすことなく、現場のスキームでスムーズに自動化が進められることが何より良かった。
RPAの実現が社内DXプロジェクトの突破口となり、チャットボットの導入をはじめ、SFAやAI-OCRなど、さまざまな業務やサービスのIT化の検討を現在進めています。
定量・定性両面での効果
A社転記業務と検査請求書発行業務の自動化による効果を、同社による「業務棚卸シート」(運用開始後の9月時点)から見ると、年間792時間、人件費にして136万円の削減効果が見込まれており、平井部長も「狙い通りの定量的効果があった」と実感されています。
また当初、A社を5名で担当していましたが、導入直後に1名が退職したものの、自動化により4名でも無理なく対応できているとのことです。
その業務に当たるスタッフの声が定性面での効果を表しています。
「当社コールセンターでのA社の受付は朝10時からなので、9時からの1時間は貴重な時間です。自動化により、入力漏れや転記ミスはなくなり、朝出社したら入力が完了したスプレットシートを目視チェックするだけなので、1時間のほとんどを昨夜のメール返信やWeb問い合わせ対応に充てられ、ゆとりをもって業務に向き合えるようになりました」
さらに社内キャンペーンでRPAを拡大
コールセンターでのRPAの成功を契機に、現在社内キャンペーンを推進中とのこと。
林:
実際の業務で使えるRPAシナリオ募集しています。2つ以上のシステム(エクセルと当社のシステム、あるいはWebなどとの連携)を使ってスクリプトを作成し問題なく動くことが条件です。
例えば、『修理の訪問予定日の前日に「明日伺う」旨のメッセージをSMSで客先に自動発信』など、6件がエントリー中です。採用されれば、『スイッチゴールド』(注:金(ゴールド)に交換可能な同社発行の電子マネー)が進呈されるインセンティブなキャンペーンです。
平井:自分が携わる業務をあらためて見つめ直すいい機会にもなっています。
さらに、「会社のシステムだから」「IT部門がやってくれる」といった待ちの姿勢から、自らがつくり関与することで「自分に返ってくる」「できるかも、やってみよう」という意識変革が起きつつあります。
「面白く、新しく、良くなりそうだったら、とりあえずやってみよう」という、自由闊達で進取の精神に富む社風がRPAの定着・拡大を後押ししています。