株式会社イケヒコ・コーポレーション 様
煩雑だったAmazon独自の出荷フローを劇的に改善
ラベル発行・受注処理等の業務負荷を95%以上削減
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※本記事は、2021年月刊マテリアルフロー1月号に掲載の記事を転載したものです。
明治時代の畳販売業をルーツに、創業130年を超える寝具製品の雄
“畳”をルーツとしていることから、い草関連製品を主力として全国量販店との取り引きを拡大してきたが、それだけではどうしても夏の商材という側面が強く、年間を通じて店舗の売り場を確保するための市場戦略から、こたつ布団、カーペット、クッション、マット類も含めた様々なインテリア商品に取り扱いジャンルを広げ、現在ではオールシーズン日本全国の専門店、量販店、ホームセンター等、小売業との取り引きを拡大、年間売上100億円を超える規模のビジネスを展開している。そんな同社でもご多分に漏れず、近年拡大基調にあるのはEC、通販関連の売上で、10年来続くAmazonとの取り引きも右肩上がりで増大しており、今後の展開を見据えると、現状の作業手法やシステムを抜本的に見直す必要に迫られていたのだという。そうした事情について振り返ってくれたのは、同社営業部の荒木盛治氏だ。
「当社製品は、い草等の自然素材で作った商品が量販される夏(図1)、こたつ布団等のファブリック商品が量販される冬(図2)、といったように、シーズン性が高いことから季節波動が大きく、繁閑に伴う作業負荷や人員配置の平準化を常に課題として抱えていたのですが、それに加えてAmazonをはじめとするEC業者では、ビッグセール的な販促企画としての波動も増加傾向にあり、夏と冬のピーク時の作業対応が深刻な問題として俎上に上っていました。
とりわけAmazonの商品の受発注業務スタイルやEDIはその他の国内の流通系の業務と異なり、ベンダーセントラルと呼ばれるAmazon独自のWebEDIによってデータのやり取り等を進める手法を続けてきたのですが、そのために取り扱い物量の増加がダイレクトに仕事量の増加に結びつき、業務にあたっている社員が当日の現場を終えてからそうした事務に取り掛かる等、作業負荷が膨大になっていたのです。
一例をあげれば、それまでAmazonのSSCCラベル(GS1-128規格のバーコードを利用した梱包識別用の物流ラベル)は、作業者が目視で全リストの中から1個ずつ探し出して発行するアナログな手順でしたので、例えば1,000行の中から1つを探し出すのに平均30秒としたらトータル3万秒かかってしまうわけで、時間的な負荷が特に問題視されていました。
Amazonに登録しているアイテムが2万SKU以上ある状況下で、ベンダーセントラル上で課される業務は、2~3人がかりで平均4~5時間という非常に重たいものとしてのしかかっていたのです」
拡大するAmazon関連業務効率化に、ユーザックのソリューションを検討
直面する課題への解決策として、ユーザックシステムのソリューションの検討を指示したのは、同社物流システム部課長の池田勝氏だった。「2年前、2018年のことです。元々、当社の販売系の基幹システムを取り扱っていた企業を介して、ユーザックシステムのことは存じ上げており、名人シリーズの存在も知っていました。そこで一度、東京の方に出向いてお話させていただき、これまでWEB上で行っていた作業のEDI化を進めることで、社内でもやりやすい形態にできないか、といった相談をしました」
ただ初めは概算でどれくらい、というレベルで、「なるほど意外とかかるのですね」という話にとどまり、それ以上詳しい領域には踏み込まなかったそうだ。当時はまだ売上もそこまでの投資に踏み切る水準には達していなかったからだという。それから約1年が過ぎた2019年の夏。「やがて、一層の物流量の増加もあり、現場作業者の負荷もこれ以上看過できない水準になってきたことから、このままでは物流が滞る懸念がいよいよ現実味を帯びてきました。
そこで、遅くとも次の2020年の冬のピークまでには、抜本的なシステムの改革を進めるという判断の下、改めて、今度はより具体的なご相談を開始しました。年明け早々にほどなくして正式契約に至ったのは、コロナ禍が最初のピークを迎えるよりも前の春先でしたが、それでも9月には本格導入にこぎつけられました」(池田氏)
具体的に導入されたのは、ユーザックシステムの流通業界向け新EDI統合パッケージ“EOS名人.NET”を軸に据えたソリューションだ (図3)。
ディスカッションの開始から約1年で実働に至るまでのプロセスは順調だったのだろうか。「従来の業務フローを振り返ると、まずベンダーセントラル上で先方のPO(Purchase Order)という注文No.が来ます。それを自社システムに落とし込み、次に社内の受注業務にデータを切り替え、その後、商品部門の出荷業務にペーパーの情報が回ります。作業者はそれを見ながら出荷業務を行い、出荷終了後、発注書を元に数量を確認。再びベンダーセントラル上で、商品を個々に確認しながらSSCCラベルを発行する……といった非常に複雑で手間のかかる工程でした。そうした工程の効率化について率直にご相談を重ねて調整し、完成・導入に至ったのですが、この分野についてはユーザックシステムの技術やノウハウのおかげで、とてもスムーズに効率化を進めていただいたと思っています(図4)」(荒木氏)
「それから今回、対象の業務以外に『現場出荷作業をこんな風にできますよ』といった様々な提案もいただき、改善の相談を重ねながら作り上げていただきました。そのため、時間短縮という当初の目的はもとより、現場作業の一層の標準化を進められました。ハンディ端末の導入で、未経験者が作業に取り組む必要が発生した場合でも、無理なく検品・梱包作業を進められるようになったことなどはその一例です(図5)。以前はその部分も伝票を1枚ずつ目視確認で進めていましたので、業務フローの効率化はそれだけでも目を見張るものがありました」(荒木氏)
どんな現場でも、それまでと異なる新しい試みの導入に際しては、従来の手法と比較して「これまでの方がやりやすかった」といった抵抗感やフリクションがつきものではあるが、このソリューションに関しては、効率化、時短化が明白なことから、現場はもとより、業務管理のセクションからも、高く評価され、またスムーズに受け入れられたという。「設計時はもとより、導入以降もユーザックシステムのレスポンスは非常にクイックでしたので、とても助かりました。現場で発生した個々の疑問に対しても、間髪入れずリアクションいただいたことで、作業する立場にとってもストレスなく導入が進んだと感じています。現在も基本的に2週間に1度のペースでWEB会議を重ねていますので、現場との課題共有も含めて、スムーズに行えているのではないでしょうか」(荒木氏)
導入後の改善もクイック対応。事務作業9割超、出荷作業3割削減
クイックな改善実現の一例として、SSCCラベルプリンタの出力スピード向上事例を池田氏に伺った。「ハンディスキャナで製品を認識するとラベルがプリントされるのですが、当初、この出力されるまでのタイムラグが作業者の期待している『ピッと読み込んですぐに出てくる』イメージと異なっていまして、長い場合だと10秒くらいかかっていたのです」
実はそれには理由があり、当初、プリンタで出力するSSCCラベルと運送会社用の荷札ラベルの2種類のラベルがそれぞれ異なる2機のPCからの指示でプリントされる方式だったため、万一、両者の信号が同時に影響し合って情報そのものが消去されたりしてしまうようなトラブルを避けるため、あえて通信に間隔を開けたオペレーションとしていたのだという。
そこで相談を受けたユーザックシステム側は、これを改良し、1機のPCで2種類のラベル出力をプリンタに指示するオペレーションとすることで、それまであったタイムラグを解消、クイックなプリントアウトにより、作業者がストレスなく検品・出荷作業に取り組めるフローを実現したそうだ(図6)。
「ユーザックシステムの場合、そうした現場感覚を反映するためのやり取りが無理なく進められたのはWEBミーティングの場で直接SEさんとコンタクトして要望を伝えられた点も非常に大きいと感じます。当初はコロナ禍による止むを得ない選択肢であったとは思いますが、遠方への移動を考慮せずに時間さえ合えば同時に会議に参加できるシステムの効果は、意外なほど大きいものだと感じました」(荒木氏)稼働後の効果測定をまとめたものが(図7)だ。
ただ、荒木氏の印象によれば「事務作業部分では従来比で95%以上のカットを実現した手応えはあります」というから、従来作業がほぼ不要になったかのような業務削減が達成されたわけで、システムの新規導入効果としては破格の水準と言えそうだ。実は取材に伺った11月末が同社の冬の物流量のピークで、ここでの波動による作業負荷をクリアする目的で導入されたソリューションなのだが、想定を上回る水準でその目的が達成されたことになる。
とはいえ、同社の物流フロー改善ビジョンはそれだけにとどまらない。「ECが伸びているとはいえ、当社の物流量全体で見れば、まだ8.5:1.5程度で量販店扱いの方が圧倒的に多いのが現実です。ただし、次期の決算ではこれが8:2程度には変わる予測で、個別包装のEC向けのB2Cが増えることは出荷数の増加に直結しますので、今回導入した業務フロー改善の重要性はますます高まる一方です。Amazonとの取り引きに限ってみても、来年は2倍に増えるかもしれませんし、数年のうちに10億円に達する見込みでもあり、今、改めて近未来に向けての物流体制の構築を急ぐ必要が明白なことから、B2B、B2Cを含めたEC物流全体の新システム構築も検討しているところです」(池田氏)
驚くことに、その新システムの導入稼働は、次の冬季シーズンをターゲットに進められているのだという。今回紹介したAmazon向けフロー開発~実稼働プロセスといい、同社のシステム改革に取り組むスピードは他とは一線を画すレベルにある。奇しくもコロナ禍で需要増大傾向に拍車がかかったイケヒコ・コーポレーションによるロジスティクス改革の次の一手にも、大いに期待ができそうだ。