デジタライゼーション
株式会社アステックペイント
動いたときの感動がすごい
事務担当者が自ら受注処理のシナリオ作成
送り状名人とAutoジョブ名人で事務処理を自動化した塗料工場
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アステックペイントは建築塗料の製造販売を手がけるメーカー。本社は福岡にあり、東京や大阪、沖縄などにも営業拠点を構える。今回伺ったのは福岡空港近くにある福岡工場で、住宅用の塗料の製造を担っている。建物を美しく保ち、市場のニーズを反映した高品質・高機能な塗料と評価を得ている同社の製品販売実績は右肩上がり。増えるオーダーに対し、どのように受注・出荷業務を効率化・自動化したのか。
受注は二重入力が必要で、 早朝や土曜日にも作業が発生していた
福岡工場で作業に従事しているのは15名程度。工場内での業務の大きな流れとしては、福岡事業所の受注センターから来たオーダーに従って、仕入れた顔料をかくはん機に入れて塗料を製造する。できた塗料は運送業者によって顧客である塗装業者に配送している。オーダーの色を作るための顔料添加量やロットナンバーなどの書かれた「レシピ」を工場の事務担当が作成し、調色チームが作業を行なうという流れになる。
アステックペイントは完全受注生産なので、注文は毎日来る。以前は福岡事業所の受注センターが社内システムに登録した注文と同じ注文情報を、福岡工場でも事務担当者が入力し、レシピを作成していた。受注センターが登録しているのと同じ内容を、工場でも二重入力する手間が発生していたわけだ。
以前、手入力していたという筒口浩光氏は、「完全受注生産なので、注文は毎日来ますし、運送業者が来る時刻も決まっています。最初の受注入力が遅くなると、作業全部が遅くなるので、早朝や土曜日に出勤して、入力することがありました」と振り返る。
オーダー増に対応すべく、 まずは「送り状名人」を導入
なんとか人手でカバーしてきた受注処理だったが、2018年頃からオーダーが増えてきて、いよいよ回らなくなってきた。「創業当初はオーストラリアから塗料を仕入れて販売していたのですが、2015年から自社製造品の販売を始め、営業体制を拡充したこともあり、オーダーが増えたのが背景にあります」(筒口氏)。
こうした課題を解決すべく、前任の担当者が導入したのが、関西物流展で出会ったユーザックシステムの「送り状名人」だった。送り状名人を使うことで、社内システムに登録された顧客住所をCSVファイルで取り込み、異なる業者ごとの配送伝票も一括で作ることが可能になった。配送伝票を出力し、商品に添付すれば作業は完了。あとは出荷チェック担当者を経て、商品が配送されるという流れだ。
送り状名人の導入で事務処理の負荷が軽減した福岡工場では、さらなる省力化・自動化を模索。続いて導入したのが、ユーザックシステムのRPA「Autoジョブ名人」だった。
導入のきっかけは生産部のメンバーがユーザックシステムの説明会に参加したこと。複数のRPAベンダーの見積もりを経て、サポートへの期待と送り状名人の実績でユーザックシステムのRPA導入を決めたという。
実際、Autoジョブ名人のシナリオを作成したのが、福岡工場で事務を担当していた有村理香氏である。有村氏は、ユーザーとして送り状名人を使っていたが、Autoジョブ名人の稼働とともに、手作業で行なっていた業務の自動化を担当することになった。「事務作業を自動化することにしたので、事務作業がわかる人として任せられたんだと思います。実際、1日の半分くらいはこの事務作業で費やしていましたし、できるか自信はなかったけど、自動化したいとは思いました」(有村氏)。
有村氏がシナリオ化したのは調色レシピの出力である。CSVファイルで得られた注文情報を定型のExcelフォーマットに貼り付け、社内システムと別に利用しているパッケージに取り込む。あとはパッケージソフトを操作し、印刷処理を行なうと調色のためのA5サイズのレシピと出荷チェック用のシールを出力する。
動いたときの感動はすごかった そして楽しいに変わった
決して、PCに詳しいわけではない有村氏。「最初は用語が難しくて、特にタグ解析に関しては、わからない用語が連発でした」と振り返る。しかし、実際に手を動かしてみたら、シナリオ作りも慣れたという。途中はユーザックシステムのサポートも活用したという。「Excel操作の自動化でつまづいたので、電話で相談させてもらいました。すごく親身になって教えてもらったので、きちんと解決しました」(有村氏)。
試行錯誤の末、3~4ヶ月で本稼働するシナリオができた。「動いたときの感動はすごかったです。それが作っていくうちに楽しいに変わり、もっといろいろなもの動かしたいと思いました」と有村氏は振り返る。1回10分の作業が6~7回分自動化されたので、午前中の作業時間がかなり削減されたという。
同社で特徴的なのは、工場で利用するITの導入・運用を工場側の生産部で行なっている点だ。送り状名人も、Autoジョブ名人も、基本は工場側での導入。業務フローを熟知した生産部が製品選定、導入、運用までを行ない、情報システム部が導入や運用をサポートしている。「導入をどこが担当するんですか?と聞かれて、工場側でやりますと言うと、けっこう驚かれます」と筒口氏は語る。
社内でもRPAが横展開 シナリオを作れる事務担当者も増える
レシピの出力のほか、今まで一部手動で行なっていた、送り状名人の操作もAutoジョブ名人で行なえるようにした。CSVファイルのダウンロードや取り込み、伝票作成まで、定期的にスケジュールで動かしている。また、受注の件数分を手作業で登録していたため、在庫管理パッケージへの出荷済・製造済の登録もAutoジョブ名人を使うことで自動化した。上司といっしょに業務フローとシナリオへの落とし込みを相談しながら自動化を進めたという。
現在は、すっかりAutoジョブ名人にも慣れ、工場の事務処理についてはかなり自動化が進んだという。今まで事務所で出力していた配送伝票も、指示書のバーコードを読み取ることで出力できるようになり、業務はますます効率化している。有村氏は、「自動化するにあたって、作業を分割して、うまくシナリオに落とし込めないかと考えるようになりました」と語る。
最近では福岡工場だけでなく、社内の別部門でもRPAの導入がスタートしている。たとえば、同じような出荷業務を抱える別の工場でもAutoジョブ名人を一部導入しているほか、福岡事業所ではシナリオ作成できる事務担当者も現れており、有村氏が操作やノウハウなどをサポートしているという。「ユーザックシステムにはAutoジョブ名人の利用が社内にひろがるような教育プログラムやセミナーを期待している」と全社展開への意欲を見せた。
現時点で開発版2本、実行版8本が導入され活用中。ユーザックシステムとしては、アステックペイント社が全社的に業務効率化・生産性向上の意識が高まっていく中、RPAの導入効果を把握・実感いただき部署をまたいだ業務プロセスの自動化(デジタライゼーション)を進めていただけるよう、支援したいと考えている。