EDIとは?種類や仕組み、具体的な活用事例まで徹底解説

EDI(電子データ交換)とは、企業間取引で発生する受発注業務などを電子化し、専用システムを通じてデータをやりとりする仕組みです。電話やFAXによる注文処理と比べて手作業を削減できるため、人為的ミスの防止や業務効率化に貢献します。特に多くの取引を抱える企業ほど、EDI導入によって業務のスピード向上やコスト削減のメリットを大きく実感できます。
ここではEDIの概要や仕組み、そして導入による効果や具体的な活用事例を紹介し、さらに導入を検討する際の製品選びについても解説します。
EDIとは、Electronic Data Interchange(電子データ交換)の頭文字をとった略語です。受発注・出荷・請求・支払などの各種取引データを通信回線を通じて、企業間でやり取りする電子商取引の仕組みのことです。
紙で受発注書や請求書を作成し、電話、FAX、郵送でやりとりをする商取引に代わり、かつては固定電話回線、現在はインターネットを活用して企業間でデータのやりとりを可能にします。これにより、手書きや郵送は不要になり用紙や印刷、輸送費用が削減になっただけでなく、取引のスピードや正確性が向上しています。
また、こうした取引をデータで保持できることはビジネスの情報の蓄積につながり、過去取引の検索・分析に強みを発揮し、昨今言われているDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも役立ちます。例としては、売上げや在庫に関するデータを正確に把握し、欠品や無駄な在庫を抑え、顧客へのサービス向上につなげることができます。
現在は、インターネット回線を利用した企業間取引が主流です。ここでは、メーカー、卸売業、小売業などの流通事業者間で利用されるEDI(電子データ交換)の標準仕様である流通BMSや、受発注で利用されているEOS、ウェブブラウザで取引をするWebEDI、E
メールを用いたメールEDIを紹介します。
流通BMSとは
流通BMSとは、流通業界向けに策定されたEDIの標準規格です。正式名称は「流通ビジネスメッセージ標準(Business Message Standards)」といい、小売業と卸売業、メーカー間のデータ交換を効率化するために制定されました。インターネットを利用した標準的なEDI規格で、XML形式でデータをやり取りするため、流通BMSが普及する前に主流だったEDI規格である「JCA手順」や「全銀手順」などの通信プロトコルに比べ、柔軟性が高く発注、出荷、請求、決済など取引全般を一元的にカバーできます。
EOSとは?EDIとの違いは?
EOS(Electronic Ordering System)は小売業などで広く利用される受発注システムで、特に店舗と卸・メーカー間の取引を自動化する仕組みとして発展してきました。EDIと同様にデータを電子的に交換する点は共通しますが、EOSは主に受発注業務に特化しているという特徴があります。
EDIを導入する際には、取引内容がほぼ受発注だけであればEOSを検討するのも一つの手です。ただし、請求や支払いなど、より幅広い領域で電子化を進めたい場合には、標準的なEDIや汎用的なクラウドEDIなどの選択が適しています。
WebEDIとは
WebEDIも、企業間電子商取引を実現するための一つの方式です。WebブラウザやWebサーバなどWeb技術を用いた電子商取引です。具体的には、伝票表示型(ブラウザ型)とファイル転送型の、2つのタイプがあります。
伝票表示型は、注文書など紙の伝票がそのままWebブラウザに表示されているイメージです。受注企業は、注文一覧から注文内容を確認し、納期回答や出荷情報を画面上の指定されている箇所に入力していくのです。
一方、ファイル転送型は、その名のとおりファイル形式でビジネス文書のデータをやりとりします。発注企業がサーバへアップロードした注文書ファイルを、受注企業がアクセスしてダウンロードします。
メールEDIとは
メールEDIは、メール機能を利用して注文書をExcelやCSVで送信し、取引をします。通信手段である電子メールを利用し、これまでFAXや電話などで発注していた業務をメールEDIに切り替えて、ファイルでデータをやり取りします。
受注する側は、注文データを基幹システムに取り込み、後工程である出荷や請求業務がスムーズになります。電子メールさえあれば受発注業務のデータ化がかなうメールEDIは、企業規模に関係なく業務を効率化できるところがポイントです。
ただし、取引量が増えるとメールの仕分けや管理が煩雑になりやすいという面もあります。専用のソフトウェアやRPAなどを活用し、自動化の仕組みを整えることで効率的に運用できるようにすることが重要です。
EDIを導入することでどのような利点が得られるのか、主に受発注業務に焦点を当てて説明します。
受発注業務の効率化
紙や電話、FAXなどを使った受発注業務は、どうしても処理に時間がかかりがちです。EDIを導入するとオンライン上で自動的に注文情報が送受信されるため、担当者の手間を大幅に削減できます。
また、リアルタイムで注文情報が反映されるため、在庫の過不足も早期に把握できるようになります。タイムリーな受発注により、無駄な在庫を抱えるリスクを減らしながら、販売機会の損失も最小化できます。
人的ミスの軽減
受発注業務を手作業で行う場合、どうしても入力や転記のミスが発生しがちです。EDIならばシステムがデータを直にやり取りするため、人為的なエラーを大幅に抑えられます。
特に取引が多岐にわたる場合は、人的ミスによるコストや時間への影響が無視できません。入力や転記がほぼ不要になることで、従業員の負担も軽減され、より生産的な業務へリソースを振り分けられます。
コスト削減
EDIを導入することによる紙や人件費の削減効果は非常に大きいです。紙の伝票やFAXを多用する企業ほど、移行後のコストダウンを実感しやすいでしょう。
加えて、電子化により郵送や記入ミスのリカバリーに要する費用も削減できます。取引先とのデータ共有におけるやり取りもスムーズになるため、長期的には大幅なコストメリットが期待できます。
業務精度の向上
紙やFAXでは、どうしてもタイムラグや誤読といった問題が発生します。EDIによって正確なデータが即時に共有されるのは、業務全体の精度向上につながる大きな要因です。
取引先との情報伝達がスピーディになることで、受発注から在庫管理、請求処理まで統一感のあるフローを構築できます。結果として、ビジネス全体のスピードアップと顧客満足度の向上に寄与するでしょう。
EDI導入による具体的な効果を示す事例をご紹介します。
実際の事例を見ることで、EDI導入によりどの程度の改善が見込めるのかをイメージしやすくなります。特に受発注に特化した事例では、紙の削減や業務時間の短縮はもちろん、従業員が本来行うべき重要業務に集中できる環境づくりにも貢献しています。
有馬芳香堂事例
株式会社有馬芳香堂は、基幹システムとEDIシステムが連携しておらず、受注から出荷までの業務効率や正確性に課題を抱えていました。これらの課題を解決するため、同社は基幹システムを刷新し、ユーザックシステムの「EOS名人.NET」「送り状名人」「検品支援名人」を導入しました。これにより、受注から出荷までの業務プロセスが一元化され、出荷作業時間が1時間半以上短縮され、残業と出荷ミスの大幅な削減を実現しました。

基幹システム刷新に合わせて、スムーズに連携したい受注・検品・出荷業務システムは、いくつかのシステムを比較検討した結果、食品業界での導入実績が多く、メーカー自らが開発・サポートを提供する当社の『名人ソリューション』を選定。
受注業務は、さまざまな小売業のEDI(電子データ交換)をワンパッケージで管理できる『EOS名人.NET』、出荷検品においては、倉庫内の検品業務を支援する『検品支援名人』、複数の運送会社の送り状発行を一元化する『送り状名人』で対応し、ワンストップEDIプラットフォームを構築しました。
株式会社アンフィニ
株式会社アンフィニは、女性用インナーウェアの企画・卸売業者で、SKU管理と物流効率化の課題を抱えていました。今後のビジネス伸長において「売上拡大よりも、高利益体質になる」ことを主眼に置いています。中でも、消費者にとって価格や商品の多様性にメリットがある、ディスカウントショップや量販店との取引を拡大させるには、低価格帯の商品もSKU管理をし、商品の需給バランスや販売予測を把握することが必要でした。そのために、旧来の受注システムの見直しと物流の効率化を検討、ユーザックシステムの「EOS名人.NET」を導入し、自社でのシステム開発とメンテナンスを実現。
これにより、受注から出荷のプロセスが効率化され、業務の平準化が可能になりました。

毎日WebEDIで発注があるディスカウンターの対応がスムーズにいくだけでなく、同業他社が出荷まで2~3日かかってしまうFAX発注も翌日出荷が可能になり、優位性を発揮できました。
EDI受発注業務をスムーズに進める、おすすめの製品を紹介します。
どのような方法でデータをやり取りするのか、既存の業務システムとの連携はどうするのか、といった観点でご検討ください。
EOS名人.NET
EOS名人は、取引先とのさまざまなEDI形式にとらわれることなく、受注データを一本化して基幹システムに取り込み、出荷や請求など一連の受注業務を効率化できる優れものです。
データの送受信だけでなく、データの訂正や緊急発注入力、納品書や一括納入明細書、 ピッキングリストの発行など、EDI業務全体をカバーできます。
「特定の小売業としか取引をしない」場合ならば、その小売業専用パッケージソフトがあれば事足りますが、複数の取引先を抱えている場合は、どの小売業とのEDIも共通のPCで使えるEOS名人はお勧めです。
また、利用者の認証や操作ログの保存機能もあり、内部統制にも対応しています。
RPAでWebEDI業務の効率化
発注企業から受注データをWebブラウザやファイル転送型で取得し、出荷対応をする場合であれば、業務の効率化にはRPAが役に立ちます。
Web画面の操作の自動化はもちろん、受注データをダウンロードしてデータを整え、基幹システムに連携するところまでの自動化シナリオを作成するのです。RPAは、こうした日々発生し、締め時間があるなど、ミスが許されない定型業務の活用に非常に向いています。
Webブラウザ経由で注文データをダウンロードし、受注処理する業務を自動化できるRPA「Autoジョブ名人」の詳細資料請求はこちら→
それでも、多数のWebEDI取引先の数だけ、RPAシナリオを開発するのはすぐにはできないものです。Autoジョブ名人ではさまざまな業界でよく使われているWebEDIサイトにアクセスしてデータを取得する定型的なRPAシナリオを安価に提供しています。
Autoジョブ名人のWebEDIの業務自動化シナリオ(名人マーケット)→
RPAでメールEDI業務の効率化
EDIシステムを構築するほどのコストは割けないが、業務をデジタル化し効率を上げたいとか、取引先のシステムの関係上、EDIを活用することが難しい場合はメールを活用したメールEDIに取り組むのがよいでしょう。すでにメールEDIでやり取りをし、添付ファイルの受領、展開、基幹システムへの取り込みが煩雑な業務となっているのであれば、ここでもRPAが有効です。ただし、メール業務の自動化においては、汎用的なRPAではうまくいかない点も多くあります。その理由は、主に下記の通りです。
- 対象メールが特定できない(随時追加されていく受信フォルダから、対象メールの特定に失敗する)
- パスワードの処理ができない(別メールでの送付される「添付ファイル開封パスワード」の処理ができない)
- 添付ファイルの処理に時間がかかる(ファイルの変換や並び替えをExcelなどで処理する時間がかかる)
こうしたメールならではの処理に、メール業務の自動化に特化して開発されたRPA『Autoメール名人』を活用することをお勧めします。
▼Autoメール名人でメールEDI業務を効率化した事例はこちら▼
参考事例<ツインバード工業株式会社>:ギフトサービス企業からのメールEDIによる注文の取り込みと納期回答業務の効率化事例
参考事例<株式会社山善>:一日8回、定刻にメールで送られてくる注文情報を基幹システムに取り込み、受注・出荷・売上データに反映する業務の自動化
EDIは、企業間取引の円滑化を通じて業務全体の生産性を押し上げる仕組みとして注目されています。受発注に特化したEOSや、WebEDI、メールEDIなど、多様な選択肢が存在するため、自社の業務形態や取引先の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
具体的な導入事例を見てもわかるように、EDIで受発注業務をデジタル化するメリットは多岐にわたります。エラー削減、コスト圧縮、作業スピードの向上など、企業規模にかかわらず効果を期待できます。さらに、RPAを組み合わせることで人手に頼る作業を減らし、より戦略的な業務に時間を割けるようになるでしょう。
導入にあたってはシステム選定と取引先との連携調整が鍵になります。費用対効果を見極めながら、適切なタイミングでの導入・運用計画を立てることで、スムーズな業務プロセスの実現と競争力の強化を目指してください。