日本の貿易の重要な役割を担う、曳船業界のRPA活用事例

財務省が発表した貿易統計によると、2019年の日本の輸出額は前年比5.6%減の76兆9278億円、輸入額は5.0%減の78兆5716億円で、貿易収支は1兆6438億円の赤字でした。米中の貿易摩擦が日本の中国に対する輸出にも影響し、輸入額の減少は原油価格の下落が大きな要因だったようです。

こうした貿易の輸送手段は海上輸送と航空輸送に分けられますが、その比率はどれくらいかご存知でしょうか。なんと日本の輸出入の99.6%が海上輸送です。そして、輸出入額の増減にかかわらず、海上輸送量は毎年右肩上がりで増加しています。

一般の消費者は日常生活する上でほとんど意識しませんが、たいへん重要な役割を担っている海上輸送。実は相当リスクを伴う輸送手段でもあります。世界中を航行する船は台風などの悪天候にあうこともあれば、武装した海賊に襲われる危険もあります。船会社は船舶と船員の安全のため、自衛隊や海上保安庁の協力も得ながら、さまざまな取り組みを行っているのです。

次に国内に目を向けて見ましょう。国内の輸送は圧倒的に自動車(トラック)が多いと思いがちですが、50.9%が自動車で、内航海運が43.7%、鉄道5.2%、航空0.3%です。国内貨物の4割以上が船というわけです(輸送トンキロでの実態)。そして大震災などの災害時は、陸路が使えない場合があるため、内航海運への期待が高まっているといいます。

このように私たちの生活や産業を支えている船が必要とするのが港。日本には漁港を除く港湾数が約1000あると言われています。その中で最もコンテナ取扱数の多い東京と神奈川がある東京湾の様子をスマホアプリ「Ship Finder」で見ると、ある日の14:00、351隻もの船が存在していました。アイコンが大きいとはいえ、大渋滞している様子が伺えます。

こうした船を安全に着岸、離岸するために必要とされているのが、曳船やタグボートといわれるもの。船舶や水上構造物を押したり引いたりするための船です。また、多数の船舶が行き交う港や環境に精通することが困難な外航船や内航船の船長を補助し、船舶を安全かつ効率的に導く専門家が水先人です。一般的には水先案内人として知られていますが、水先人は港に近づいた船に乗り込み、船長に代わって船を先導し、船舶交通と水域の安全を守る極めて公共性の高い仕事なのです。タグボートや水先人が、日本の貿易を陰で支えているといっても良いのではないでしょうか。

さてタグボートはどのようにして数多くの船の入出港を把握し、安全な船の誘導をおこなっているのでしょうか。

タグボートを運営しているのは、海運業を営んでいる民間企業、港の管理組合などで、日本港湾タグ事業協会に加盟している事業者88 社・団体のタグボート数は391隻あります。これらの事業者が担当する港の入出港予定を、日々ウェブサイトで確認し、システムに入力します。そしてタグボートへの作業指示をおこなう流れとなります。

ところが、船の入出港を公開しているウェブサイトは、岸壁ごとに選択する必要があります。例えば横浜港の場合は39の岸壁があります。一括して情報を取得できないため、毎日39回操作を繰り返し、画面に表示された入出港情報(コールサイン、船名、総トン数、全長、入港時刻など)を確認しなければなりません。ミスが許されない気を使う作業です。

あるタグボートを運営する事業者は、こうした手作業による入出港情報の収集からシステムへの入力までの業務改善に取り組みました。今後ますます需要が拡大すると見込まれ、担当者の作業がこれ以上の負担にならないよう、早急な対応が必要となったのです。タグボートの作業指示などのシステム開発をお願いしているシステム会社に相談したところ、やはりウェブサイトからデータを一括でダウンロードできないと、基幹システムには連携できないとのことでした。

そこでRPAを活用して、人と同じ操作を自動化してはどうかと提案を受けました。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、マウスやキーボードのパソコン操作を人に代わって自動化するソフトウェアで、働き方改革を進める企業に注目されています。国内外の多数のRPAツールが国内でも提供されていますが、開発しやすさ、自動化の安定性、価格など、様々な選択肢があり、どれが自社に合っているか悩む企業も多くいます。

このタグボート事業者から相談を受けたシステム会社は、ウェブサイト操作に実績が豊富なユーザックシステムの「Autoジョブ名人」を選定しました。「Autoジョブ名人」は、2004年から業務自動化を支援してきたノウハウが蓄積したユーザックシステムのRPAの最新版で、マイクロソフトのIE、グーグルのChromeといったウェブサイトやWindowsアプリの様々な業務の自動化に実績が多く、安定性も高いという点を評価しました。

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実業務に即して自動化した手順は以下の通りです。
1)入出港情報公開サイトへのアクセス
2)入出港情報メニューの操作
3)岸壁の選択
4)表示された入出港情報からデータを取得(全項目をコピー)
5)取得したデータの保存(EXCELシートへのペースト)
6)保存したデータのシステムへの入力
3)から5)は岸壁数だけ繰り返す。

これら一連の操作をRPAで自動化したことで、担当者の負担が大幅に軽減され、的確なタグボートの作業指示のスピードがアップしました。精神的なストレスもなくなり、港湾交通の安全な運営を維持できるようになりました。

このような重要ではあるが単純な操作を繰り返す業務は他にもあり、さらにRPAの活用範囲を広げ、人は本来やるべき業務に集中できる環境を整えていく計画です。

<参考資料>
財務省
国土交通省
一般社団法人 日本船主協会
公益財団法人 日本海事広報協会
日本港湾タグ事業協会
日本水先人連合会

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